矯正
ケトがセルリアに命じられたのはクレスを矯正する事、ケトのセルリアへの忠誠心は高く指示されたことには手を抜かない。その為手段を選ばぬそれはロートを混乱させるには十分すぎる行為だった。
細い腕がロートの目の前に突き出され、指先に吊るされる糸と円形状の鉄、その円鉄は右へ左へと交互にリズミカルに動き出す
だが、ロートの混乱は不思議と口から疑問が出る程度で困惑する程ではなかった。
「な、なぁ……あんたは今何をしているんだ?」
だがその言葉は届かない、その行為にケトはそれ程にも集中していた。そして続く台詞
「貴方はだんだん良い子になる、貴方はだんだん良い子になる、貴方はだんだん良い子に…………」
呪文のように吐き出される子供だましは長い時間繰り返された。
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どのくらい経っただろうか
何時間もされていたように感じたし数分の出来事だったのかもしれない、確かに時間感覚は狂わされた気がするが意識はハッキリとしていて人格ともかく矯正された気はしなかった。
「なぁオッサン…」
「はい、どうしましたか?」
「俺は何をされたんだ?」
「意識が覚醒して来て今の状況を知りたいようですね。貴方は先程私の催眠術によって都合の良い性格…もとい良い子になったのです!」
自信満々に胸を張り上げ どうだと言わんばかりにロートに視線を向けてくる
「………いや、特に何も」
と言いかけると扉がガチャと開いた
扉から姿を現したのは小柄なシルエット、セルリアである
「おーい帰ったぞ矯正出来たか」
「お帰りなさいませセルリア様無事何事もなく矯正する事が出来ました」
「そうかそうか!ならロート私は疲れたから今から椅子になれ、この部屋に座る椅子がないんだ」
椅子!?
どういう事を言っているのか想像してみるがやはり少女の言っているのは自分に少女が座る為の椅子になれと言うことにしか聞こえない、普通の奴隷であるならばそのような事はあり得るのだと思うがロートは少し特別な奴隷だったのだ。
「俺を買った時に誓約書読まなかったのか……?」
セルリアが答える
「誓約書…?何の話をしているんだお前は、そんなの読んでないに決まっているだろうが。そもそも私はそんなもの渡されていない」
思い出してみると確かにこの少女は奴隷商人から誓約書を貰っていなかった
「俺は特殊奴隷なんだから誓約書に従ってもらわないと困る、そもそもそこに椅子があるだろ」
特殊奴隷とは一般奴隷と違い 人権をある一定残した状態で至る奴隷の事で、特殊奴隷になる条件は色々あるがロートは親も住む場所も無く飢え死ぬ可能性の所を奴隷商人に見定められ契約書と共に品出しされたのである。
「そんなの知らんしお前の意見も聞いていない……が、少し気になるな」
「何か変なことでも言ったか?」
「いや、お前は矯正されているのかと少し疑問に思ってだな」
「俺は矯正なんかされてないぞ」
「と、こいつは言っているが本当に矯正したのかケト?」
「はて、おかしいですねしっかり催眠術をかけたつもりなのですが……」
「お前は催眠術使えないだろ!何度言ったらわかるんだグズ!ほんと使えないガードだな!!」
「有り難きお言葉ッッ!!」
会話の流れが変な気がするが気にしないでおこうと思った
「そういう訳だから俺は椅子にはならない」
「そんなの知らんしお前の意見は聞いていない取り敢えず」
すわれと一言セルリアに言われただけのロートは一瞬目の前の少女が鬼にでも怪物にでも見えた、目の前に自分の手も足も出ない圧倒的な存在が居ると認識した人間がとる行動は限られる、ロートの場合指示されたことをいち早くこなそうと体が動いてしまっていた。
いかに相手の気の収まる行動を取る事が座る行為ならばそこが床だろうが剣山だろうが座っていただろう。
背を伸ばし正座する状況を少女は確認し、
そのまま朝まで正座なと、一言残すと部屋を出ていった。




