056_馬に蹴られたくらいで死んでたまるか。
シーン:普通は死なないまでも大怪我をするのではないかなと心配されるのは常人の肉体を持っている人限定なわけであり、一端の武芸者やら迷宮探索者となればその常ならぬ肉体、育成された筋肉やら位階が上がったことによる骨密度の上昇やらでとにかく頑丈に、像が踏んでも壊れないどころか痛がるまでにとんがった仕上がり具合になっていくまであるわけであり。ではどうすればその肉体に打撃を痛撃を一撃を与えることができるかというとそれはまあ同じように鍛えられ階位がある程度上昇し技術を磨いてきた武芸者やら探索者やら、腕を磨かざるを得ない環境に住む化け物になるわけでございまして。となるとそれに含まれる馬ならば蹴られたら只では済まなくなるのであり、諺が成立することに。
「いやあれは本当に蹴られることを前提にしていないというか、どこから出てきたんでしょうかね?馬」首を傾げる斧野家長女小町(20)。
「ある程度身近でありそれでいてそう滅多にないような珍しい死因を挙げてみたのではないかな?ある種の冗談というか馬鹿馬鹿しさを印象付けようとしているんじゃないかと、そんなことが起こるわけないだろう、という意外性と言葉の調子その良さが口派にあがりやすかったというのもありそうではあるね。それはともかく人の恋路は邪魔されたくないというのは同意だねぇ」珈琲をいただきながら斧野家長男小角(20)。
小町と小角は二卵性双生児であるもののよく似た容姿をしていて、一見双子の姉妹にしか見えないけれども、小角は幼女に見えるけれども男の子であり小町はその見た目どうり幼女、ただし実年齢は双方二十歳で成人済み飲酒喫煙公益賭博可能な年齢、いやこれらが紙巻を飲んでいたらば絵面が不味すぎることは間違いないが。
(ちなみに小町、小角双方、煙草は吸えなくもないけれどもとくに好きでも嫌いでもないので習慣化しておらず、酒の方は嗜む程度と自称しているけれどもこちらは血筋血脈的にうわばみが絡んでくるのでざるかたが、博打の方は迷宮探索がそもそもその気があるものであるので、嫌いではなく、博徒として盛場へと顔を出すことは遊びで行くことはない。つまり、情報収集の一環として訪れることは普通にあるので作法そのものには詳しい。)
「あーそういえば最近小角兄様、迷宮の方へは?」小町がなんとはなしに。
「親父どのが年末に切れたので、退避も兼ねてボビーと潜ってきたよ。年越しも迷宮内で迷宮逆さ富士で茄子鷹を狩ってきた!こいつは春から縁起がいいねぇとか言いながら」序でに手に入れた扇をばさっと片手で広げて口元を隠しながら笑う小角。
「初夢迷宮とか七福神迷宮とか呼ばれているとこかあぁ、私もちょっと気になってはいたんだよねえ。ただ混んでそうで敬遠してたんだよなぁ」ええと正式名称はなんという迷宮だったっけ?と小町。
「武山迷宮だね、神奈川、江ノ島あたりだねえ」しらす丼、美味しかったよと小角。
「人混みがひどくなかったですか?」敬遠小町。
「迷宮内はそれほどでもないかな?それなりに深い階層だったし、まあ、似たようなことを考えていた探索者はいたけれども、喧嘩になるほどでは。あと、ええと、ボビーが守ってくれたしね」頬を赤らめしなをつくるまるで幼女にしか見えない男の娘な小角。
「それは、まあ、よかったですね」なんと言っていいのかなこんな時どんな顔をすれば良いのかわからないよ小町。
「とってもとってもよかったよう」笑えばいいと思うよ、と艶やかに、何かというかナニかを思い出しながらこちらも笑う男の娘な小角。
「そういえばそのボビーはどうしたの?」無な表情からの質問小町。
「親父殿と道場。けじめをつける、つけさせる、って」男の人って野蛮だよねぇと、のたまわく男の娘。
「おーやっぱりそこは怒るんだ男親、いや普通に怒るか?息子をたぶらかし、肉欲に溺れさせた悪い男だもんなぁ」棚に上げどっこいしょな呟き淫魔。




