015_イキは良い良い、帰りはもっとヨイ。
子作りだという言い訳の効かない性行為というものに対して罪悪感を抱くのは間違いではないだろうかとは、常々思ってはいた、と小町は内心呟く。
というかその辺りを、深く踏み込んで考えたこともなく、周囲の姦しい友人知人のお喋りからその手の知識を蓄えたり、それ相応の年齢になったあたりでそのような物語やら漫画やらにより好奇心を満たしたりしただけであり、気持ちの良いものであるという認識が先に立っていた感じではある。
もちろん自分で自分の身体に色々と試したことはあり、それほど過激ではないものの、性的に達したことは珍しくはなく。ただ、生活の本質が武芸者、武芸一般、探索者としての技量を磨くことに中力していたために、それらから得られる快感が、性的なそれを中和していた、誤魔化されていたこともまた確かだったのだなぁと小町は振り返って考察していく。
ああ、つまりはそういう柵から解放されて、ただただ逞しい男に抱かれて快楽を貪ることが酷く魅力的で中毒性があり、そう、純粋に行為そのものが気持ちよく楽しいということを知ってしまったが故の、こう、初心者が陥りやすい罠のようなものであったのだ、そうに違いない。
「理論武装をしているところすいませんが、続けますか?」
「……!!」快感で声にならない呻き声を上げつつ、淫魔イチローの逞しい身体にしがみつく、小柄な幼女のように見える小町さん(20歳成人済です)、細めながらしっかり肉のついた足で、必死に絡みついていきます。
「もうこれでおしまいにしなければ、かえれなくなる」
「帰らなくてもいいんじゃないですかね?」
「お前、これ、やっぱりなんか中毒性のある何かだろう」
「かえすがえす宣言しますが、私が使っている淫魔術そのものには中毒性はありません、ただただ痛みが抑えられていてその分快楽が増大していて、性的な接触を媒介にして違いの体力が回復しているだけのものです」
「それはそれで、性質が悪い」
「ええそうですね。何度も求めるのは快楽をそれこそ何度もかず限りなく得たいという、小町さんの欲望、性欲が原因なわけです。つまり、小町さんはエロいのですよ」
「ううう」
さすがに深夜から続けて数時間、いや、十数時間ほど、ある程度快楽を抑えた接触を挟みつつとはいえ、性交をした結果、普通に日没を迎えつつあります。
「あ、いや、これはダメだ、駄目な流れだ」
「駄目になっちゃいましょうよ、誰も止める他人はいませんよ?」
「そいうわけにはいかない、というか、一度拠点に帰っておかないと、捜索隊が出る」ちょっと真面目な、ちょっと慌てた表情で小町。
「そのまま、行方不明者とした扱われたら、諦めがつきませんかね?」
「そんなわけにいくか!」
「まあ確かに、死体が出ないので捜索の区切りがつきにくそうではありますから時間がかかりそうではありますが」
「それもあるが、捜索隊が出るとお金がかかるんだ、ある程度探索者保険やら武芸者保険やらをかけてあるが、家族に迷惑がかかる。だから、今日中に一回拠点に、迷宮安全地帯に戻って生存確認の信号を打っておかないと……、あ」
「どうしました?」
「あの時、緊急救助用装置って、結局作動させたんだっけ?」
「ああ、腕につけていた機械ですか?」
「……思い出せない、多分作動はできなかったはずだけれども、あれどこにやったっけ?」
「身につけていなかった装備一式は、迷宮内に置き去りですが、腕時計はこっちに持ってきましたね」
「それなら、記録を確認しておこう。あ、うわ、そういや、巨斧おいてきてしまってるじゃんか……地味に痛いな、あれ気が入っていた武具なのに」
「取りに行きますか?」
「行ってもいいの?」
「はい、もちろんです、最初に言ってますように、保険適用対象者の自由意志がまず優先されますので」
「それじゃあ……今日中に回収して生存信号を打っておきたい」
「迷宮内の移動ならそれほど時間はかかりませんよ、装備回収して移動して、多分1時間くらいでやれるんじゃないですかね?」
「……」
「もう一回くらいする時間はありますね」




