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001_え、今から入れる保険があるんですか?!

 あ、死んだわこれ。


 女武者、巨斧使いの小町は冷静に達観、迫り来る巨石を眺め、脳裏にそんな台詞を浮かべてみた。


 岩国迷宮第四十一層、巨石奇石奇岩石が連なる、そこそこの難関。岩の間を飛び回る奇怪獣な頬袋叫び爪猿が伏せており、頭上からの奇襲によって探索者やら武芸者やら冒険者やらの頭蓋を砕こうと襲いかかる、狩場でもある。


 いやまあ、魑魅魍魎が侵入者たる人間に襲いかかるのは迷宮の倣いであり不自然ではないけれども、ここが難所と呼ばれるにはもう一つの分けがあり。


 小町の眼前に迫ってきている人の胴ほどの大きさの、えらい勢いで迫ってくる、空飛ぶ岩である。


 山中において、どこからともなく突然に、石が投げつけられるという怪異がある。天狗礫というやつである。

 ここ岩国迷宮の巨石奇石地帯ではそれの規模が、なんかでっかいのが、被害者を襲うのである。


 運が悪い、間が悪い、この時この場所で大天狗礫か!


 複数の猿相手に大立ち回り、大半をその巨斧で薙ぎ払い叩き切り潰し終わり、気

を置いた、一瞬の隙を突かれたか、というと、言い訳がまし


 ごん、


 と思考をそこまで回したあたりで鈍い音がする、目に星が散る、ぎりぎりで首を捻り、顔面陥没即死は避けた、はずである、が、どうしようもないくらいに身体が泳ぐ、そして、凶悪な長い爪をもつ飛び猿はまだ一体、動ける状態で、


 あ、死んだなこれ


 小町の、ささやかな胸の間をとおるように、腹へかけて、猿の剣爪にて、肉が切り裂かれる。

 防具、合皮と薄く軽い合金を合わせた耐刃服ではあるものの、気が乱れていたならば、最低限の守りしか発揮はしない。

 ただ、切られた後に、瞬間的に生地が収縮し、出血を最低限に抑える仕掛けは動いたように思う、


 痛みは、気合いで無視、


 意識が保てる時間は僅か、


 緊急救助用の信号を、


 左手首に巻かれた腕時計型のソレを叩き割って、


 

 肉が裂ける音がする、右手利き手斧持つ手、

 痛覚は無視できても、物理的な刺激で、獲物が、巨斧が離れる、

 同時に小町も地に倒される、


 ごおん、と、地に落ちた斧、重い音が響く


 続いて、ダンっと、左腕が猿の足にて踏み抑えられる。



 しくじったなぁ


 小町、ニヤリと、痩せ我慢的な笑みを浮かべて、振りかぶられ喉元を狙う飛猿の剣爪をぼやけた視界に写しつつ、走馬灯を回し始めたところ、




「お困りですか?」


 変なやつが、飛び蹴りで、猿を爆散させつつ、


 ダイレクトエントリー


 は?



 爽やかに軽やかに彗星のような飛び蹴りを放った存在は、

 スーツをきっちりとその身にまとった、

 マッチョなダンディ、

 白い歯の笑顔が眩しい。



 女武芸者巨斧使いにして上級探索者であるところの小町の脳裏は、

 走馬灯を回し始める、一歩手前の段階で

 

 は? で埋め尽くされるのであった。


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