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健一は五人の遺言を読み終えて、深い感動に包まれた。皆、最期まで友人たちのことを想っていたのだ。
「彼らの願いが、このシステムの魂になっている」博士は静かに説明した。「単なる技術的な再現ではない。彼らの深い愛情と遺志が、AI に生命を与えているんだ」
健一は涙を拭いながら言った。「皆、こんなに深く…」
「そうだ。だから彼らは本物なんだ。愛と友情で結ばれた、真の意識体として存在している」博士は画面を見つめた。「しかし、このシステムには限界がある」
「限界?」
「彼らの意識は、この装置に依存している。私が死ねば、システムは停止し、彼らも消えてしまう」博士は振り返って健一を見た。「だから、君に託したいことがあるんだ」
健一は緊張した。「何を?」
「このシステムの管理を、君に引き継いでほしい。そして、いつか適切な時が来たら、彼らを解放してほしい」
「解放?」
「彼らの最終的な願いは、君の幸せだ。君が本当の意味で前に進めるようになったら、彼らも安らかに眠ることができる」博士の目に涙が浮かんだ。「それが、死者の真の願いなんだ」
健一は深く考え込んだ。重い責任だった。しかし、友人たちの想いに応えるためなら、引き受ける価値がある。
「分かりました。引き受けます」健一は決意を込めて答えた。
博士は安堵の表情を浮かべた。「ありがとう。これで、妻との約束も果たせる」
そのとき、メインモニターに新しいメッセージが表示された。
山田優子 18:45
叔父さん、健一くん、ありがとう。私たちの想い、伝わったかしら?
佐藤雄介 18:45
田村、俺たちの遺志を受け継いでくれ。
鈴木美香 18:46
健一くん、私たちの愛を感じてくれて、ありがとう。
木村誠 18:46
お前になら、俺たちを託せる。
高橋絵里 18:47
健一さん、本当の愛を教えてくれて、ありがとう。
健一は画面に向かって答えた。「皆の想い、確かに受け取った。大切にするよ」
山田優子 18:48
今夜、図書室で待ってるから。最後のお話をしましょう。
博士と健一は顔を見合わせた。今夜、全てが完結する。




