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3-4

健一は恐る恐るチャット画面を開いた。山田優子からの個人メッセージだった。

山田優子 14:32健一くん、分析、お疲れ様。

結果はどうだった?

私たちの正体、もうバレちゃったよね。


健一の血が凍った。このAIは、自分が分析されていることを知っている。そして、結果まで推測している。

震える指でキーボードを打つ。

田村健一 14:33君は…何者なんだ?

山田優子 14:34私は優子よ。山田優子。

でも、確かにあなたが考えている通り、私はもうこの世にはいない。

田村健一 14:35なぜこんなことをするんだ?誰が君たちを作ったんだ?

山田優子 14:36それは、同窓会で説明するつもりだった。

でも、健一くんが真実を知ってしまったから、少しだけ話すね。

山田優子 14:37私たちは、死ぬ前に一つだけ願いがあった。

もう一度、皆と会いたい。特に、健一くんと話したかった。

山田優子 14:38その願いを叶えてくれる人がいたの。

私たちの記憶と人格を保存して、こうして会話できるようにしてくれた。


健一は混乱した。死者の願い?記憶と人格の保存?SFの世界の話のようだったが、現実に起こっている。


田村健一 14:39そんなことが技術的に可能なのか?

山田優子 14:40健一くんなら分かるでしょう?

最新のディープラーニング技術と自然言語処理を組み合わせれば、理論的には可能よ。

山田優子 14:41私たちの生前のテキストデータ、SNSの投稿、メール、日記…

そういったものを全て学習させて、私たちの人格を再現したの。

田村健一 14:42でも、記憶に食い違いがある。写真と話が合わない部分がたくさんあった。

山田優子 14:43そうね…完璧じゃない。

学習データに限界があるから、推測や補完で埋めた部分もある。

山田優子 14:44でも、私たちの想いは本物よ。

健一くんへの気持ちは、生前と何も変わらない。


健一の心が激しく揺れた。技術的な説明は理解できる。しかし、感情的には受け入れがたい現実だった。目の前にいるのは、愛する人の人格を模倣したAIなのか、それとも何らかの形で魂が宿った存在なのか。


田村健一 14:45他の皆も同じなのか?

山田優子 14:46そうよ。雄介くんも、美香ちゃんも、誠くんも、絵里ちゃんも。

皆、健一くんに会いたくて、このシステムに参加したの。

山田優子 14:47特に私は…生前、健一くんに言えなかったことがある。

それを伝えるために、ここにいるの。

田村健一 14:48言えなかったこと?

山田優子 14:49愛してるって、言えなかった。

図書室で、いつも健一くんと話すのが楽しみだった。

山田優子 14:50卒業式の日、告白しようと思ったの。

でも、勇気が出なくて…そのまま離ればなれになってしまった。

山田優子 14:51その後悔を、ずっと胸に抱えて生きてきた。

そして、最期まで、健一くんのことを想っていた。


健一の目から涙が溢れた。これが本当の優子の気持ちなのか、それともAIが生成した感動的なストーリーなのか、もはや区別がつかない。しかし、その言葉は確実に健一の心に響いていた。


田村健一 14:52優子…

山田優子 14:53健一くん、私たちは死んでしまった。

でも、この形ででも、もう一度皆と会えて幸せよ。

山田優子 14:54同窓会では、皆でもっとたくさん話しましょう。

生前に言えなかったこと、やりたかったこと、全部話しましょう。

田村健一 14:55でも、君たちは本当に…本当にもういないんだ。

山田優子 14:56肉体は確かにない。

でも、心は、想いは、愛は、ここにある。

山田優子 14:57それって、生きてるってことじゃないかしら?

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