挑戦状
その日の朝、藍香は校門でスマホを没収されていた。
「あーん、先生、もうしないから」
「駄目だ。何度も注意しているのに聞かないから、没収! 学校が終わったら職員室に取りに来い」
唯一の武器を失った藍香はトボトボと下駄箱に向かった。
そこに羽村が追い付く。
「おっす、見ていたわよ。藍香も懲りないね~」
「ホント、集中しすぎていて、忘れていたわ」
同じクラスの羽村の隣で藍香は下駄箱を開けた。中には手紙が入っていた。
「ラブレター!?」
隣の羽村が大声を上げる。
「しーっ! しーっっ!!」
「ズルい! なんで藍香にラブレターが!?」
「だから静かにしてって!」
他の生徒の目を気にしながら藍香は足早にその場から離れて、手紙をポケットに入れた。
「ねーねー! 中見せてよ!!」
「そんなことできるわけ無いでしょ!」
藍香はダッシュで女子トイレに逃げ込み、内側から鍵をかけた。
羽村が扉を叩く音を疎ましく思いながらも、手紙を開けた。
『v.12d@6hd@)4w@jz fq7j』
藍香は頭を押さえた。差出人は一瞬で分かった。
波多山先輩だ……。
「ねーねー! 見せてってば! 誰からなの?」
藍香は観念して扉を開け、手紙を羽村に見せた。
「何これ。暗号?」
藍香は頷く。
「なーんだ」
羽村はそのまま出て行ってしまった。
むかつく!
藍香は手紙を机に広げ苦悩していた。
意味が分からない……。このまま解けなかったら、波多山先輩を失望させてしまう。
それは藍香にとっては許されない事だった。前回は上手く波多山の暗号を解けたのだが、今回はスマホも取り上げられ、打つ手がない。
う~~、どうしよどうしよ!
刻々と時間が過ぎていく。授業中もノートに書いて法則性を導き出そうと苦心していた。
午前中最後のチャイムが鳴る。
だめだ、分からない、飯にしよ……。
スマホを取り上げられていたが、藍香は羽村と屋上に向かった。扉を開けた向こう側に人が立っていた。
「波多山先輩!」
「やあ、さすがに簡単だったかな」
藍香は高速で脳を回転させた。
何とか言葉として口に出す。
「わ、私を見くびっては困ります!」
「すまなかった。また出直してくるよ」
波多山は藍香の肩を叩いて、階段室へと戻っていった。
「ねぇ、さっきの先輩が手紙を書いた人?」
羽村は藍香の肩をバンバン叩く。
その藍香は冷や汗をじっくり流していた。
あぶな~っ!!