心理戦
学校も終わり、帰宅した藍香はテレビとスマホを交互に見ている。
そんな姿を父、貢平は冷めた目で見ていた。
「試験勉強は進んでいるのか?」
「ちょっと待って! 今、良い所だから!」
藍香は貢平の言葉を掌で遮る。
「うっ……」
貢平は頭を掻きながら、晩酌の席に戻った。
このテクニックは使える!!
藍香は様々な情報をスポンジのように吸収していった。
藍香はFreeーWiFiを求めて、屋上に昼食に来ていた。もちろん羽村も一緒である。
「ねぇ、真桜」
「んー?」
「真桜、最近カラオケに嵌っているわよね」
「うん」
「私の目を見て」
「何~、突然~」
ポッキーを齧っていた羽村は藍香の目を見る。
「しかも私の知らない曲ばかり」
羽村は頷く。
「誰の影響かしら? 男?」
羽村は藍香から視線を逸らし、左下を見て答える。
「うん」
「嘘ね!」
羽村は驚いた表情をするも、反駁する。
「ち、違うもん! 私にだって男の子の一人や二人……!」
「家族ね。お父さん? お母さん?」
「違う!」
羽村は藍香の瞳を真っすぐに見て答える。
「ひょっとして、お兄ちゃん?」
「ち、違う……」
またもや左下を見て答える。
「お兄ちゃんから聞かされているのね?」
しばらく黙ったままの羽村だったが、小さく頷いた。
「ねぇ、なんで分かったの?」
「いや、別に……」
「凄い凄い! どうやったのか教えてよ!」
「いや、別に大したテクニックを使ったわけじゃないんだけど……」
「一勝あげるからさ!」
「いや、いい。というか真桜、宗教の勧誘とか気をつけなさいよ」
「え、なんで?」
折角、心理学を齧ったのに分かりやすすぎる羽村だった。