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【5】フィクションを学ぶ

「○○先生の新作読んだ?」などと盛り上がるミステリー研究会の部室。

まあ私は全く読書どころじゃなかったのでなんにも読んでない。

ゾンビの情報収集と、なにかしら参考になるかもとゾンビ映画を大量に観ていた。「キャー怖いー」などと言いながら。

いや実際それなりに怖かったのだけど、なにせ自分がゾンビなものだから色々と気になってしまう。

映画ではゾンビが扉を破って侵入してくるようなシーンがけっこうある。数の暴力ということなら分かるけど、別にゾンビは力が強くはなっていない。

少なくとも私は体が動かしにくい分、生前よりはるかに弱い。木製のドアだとしても破ることはできないだろう。

ゾンビが歩く時の、両手を前に出してる様子はあれはそのまんまだ。多分人間を襲おうとしているという描写かと思うけど、実際のところ四股がこわばっている状態で頑張って歩こうとすると、なぜか両手は前に出る。そのほうが楽なのだ。ゾンビになって初めて必死で歩いた私が全く同じ姿勢だった。

たまに前衛ゾンビ映画とでも言うのか、ゾンビが超スピードで走ったりなんなら空を飛んだりする作品もある。「ね゛えよ!!!」とゾンビ以来最大音量の声が出た。

こちとら階段降りるだけでも四苦八苦である。死んだ体で全力疾走とかふざけないでもらいたい。


そんなわけで全く本を読んでいない私。みんなからお薦め本などを聞いていると、美人の部長が「サークルとして夏休み何もしなかったので、秋の連休にミニ合宿でもしようかと思うんだけど」と言い出した。

とは言え体育会系でもないし、お洒落なペンションに泊まってバーベキューでもしながらみんなで親睦を深めようというくらいのものらしい。


うーん…泊まり…かぁ…。……無理…だな。

まず私のノーメイクの顔は青白過ぎる。体も見える部分にはファンデーションを軽く塗ってるからメイク落としてみんなと温泉とか無理。ゾンビに噛まれた肩口の傷もそのまま残ってるからびっくりされてしまうだろう。(生きてないから治ることはない)

てきぱき動くこともできないし、ゾンビとバレなくても迷惑をかけてしまうだろう。

バーベキュー食べても味しないしな!ちくしょう!


というわけで、体調が優れないことを理由にお断りした。

はあ〜〜〜。切ない。なんで私はゾンビなんだろう…。みんなと一緒にバーベキューを楽しむことも許されない…。

いや言うまい…ゾンビに噛まれたのになぜか意識を保っているだけでもとんでもなく幸運なことなのだ。でも悲しい。しょんぼり。しょんぼりぼり。


と、サークルも終わりめちゃくちゃしょんぼりしながらトボトボ歩いていると、「花火大会くらいなら行ける?」と神野くんが声をかけてきた。

気を…使ってくれている。いかんいかん。この世の終わりみたいな顔をしていただろうか。


「え、えぇと、うん、そのくらいなら多分」

「じゃあ週末いっしょに行こう。体調悪くなったら無理しないで。また連絡するね」


うん…。あれ?これはデート?

え〜〜〜〜〜??デート???!え、ゾンビってデートしていい??

ゾンビのガイドラインに違反してない?

誰か、お客様の中にゾンビのガイドラインを作成してる方はいらっしゃいませんか?!


どうしよう…でもこれ断ると花火大会も無理なほどに体調不良ということになっていよいよ心配されてしまう。

…やるしかない。花火大会デートをこなせるほどに生きてる女の子を演じるしかない。

ミッションが高難度過ぎる…。まずデートの経験がないのにゾンビとしてデートを成功させるとか難解過ぎる…。


とりあえずデートのガイドラインだけでもこなそう…。

デート予定日まであと4日!


   (続)

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