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【26】プレゼントを選ぶ

さて、冬季休暇を「香澄のお家の別荘にお邪魔する」という理由でなんとか実家に帰らずに乗り切った私には、新たな難題が持ち上がっていた。

クリスマスそのものを忘れ去っていたこのゾンビに可憐な贈り物をくれた神野くん。何かお返しをしなければと井田くんに探りを入れたところ、2月に誕生日が来るらしい。

男性へのプレゼント…正直、人生で父親にしか贈ったことがない。しかもひげ剃りとかネクタイとかいかにも父親に贈るようなものしか買ったことがない。同い年の男の子に贈るもの…ってなに?


「なんでしょうかね…香澄さん」

「そーゆーのは私に聞かれても…。あかりが選んだならなんでも喜んでくれるんじゃないの?あ、手編みのマフラーとかどうよ」

「もともとそういうの得意じゃないけど、今はたぶん壊滅的だと思う…」


素早い動作と共にゾンビが苦手なこと、それは細かい作業。たぶんマフラーが完成するまでに軽く5年は経過するだろう。


「それもそうか…。まあ普通に市販のマフラーとか手袋とか…。あとは趣味に関わるものとか?」


趣味…私と同じく推理小説が好きなことくらいしか知らない。読みたいものは読んでるだろうしなぁ。小説…読書…。


「と、図書カード?」

「いや親戚のおばさんからのプレゼントじゃないんだから」

「ですよね…」


と、香澄が私の手元を指差して。


「神野くんに貰ったの、それ?」

「う、うん」

「可愛いじゃん、いいね」

「うん…でもつけるのに苦戦してる」

「あぁ…分かる。アクセサリーってもう全部ゴムで出来ててほしいって思っちゃうよね。ネックレスとかもさ、びよ〜んと」

「留め具が磁石だと嬉しい」

「それいい」


ちなみに結局井田くんはいまだ香澄にプレゼントを渡せてはいないらしい。今可愛いって言ってたから、これとお揃いらしいブレスレット、物としては気に入ってくれるのではないだろうか。物を見る段階までいかなそうだけど。


「分かんなかったらもう一緒に買いに行っちゃえば?」

「うう〜ん」


それはなんかちょっと恥ずかしい。それに自分が目一杯のサプライズ状態で受け取ったので、(クリスマス当日のクリスマスプレゼントがサプライズになるという不甲斐なさはともかく)自分からも少しくらいは驚かせたい。


妙案も浮かばなかったので、とりあえず色々見れば何か見つかるかもとデパートや雑貨屋などを練り歩くことにした。人の多いところは苦手だが、ゾンビ体力だけは売るほどある。生前は一日中歩いたりしたら疲れて足が痛くなったりしたものだけど、今はまるで平気。

自慢の体力で探し回った結果、結局何にすればいいのか全然分からなくなってしまい、ふと目に留まったお洒落なタンブラーを買うことにした。お酒はまだ1年先だけど、ジュースでもアイスコーヒーでも使えるだろう。これだけではちょっと寂しいかなと、ネコが描かれた可愛いチョコレートも添えた。以前に特に猫が好きだと聞いたことがあったので。


さて当日。サークル帰りにちょうど二人になれたので、思い切って渡してみた。


「神野くん、お誕生日おめでとう。あのこれ、ブレスレットのお礼…」

「…え、…ありがとう。誕生日ってよく知ってたね」

「井田くんに聞いたの」

「あぁ、それで。なんか今日やけに井田がこっち見てニヤニヤしてると思った」


アノヤロウ。


「ほんとにありがとう。えっと…このチョコレートは…その…バレンタイン…の?」


バ………バレンタイン??!そういえば…つい先日そうだった気も…。誕生日プレゼントを買うことで頭いっぱいになっててバレンタインなんて完全にすっ飛んでた。ま、紛らわしっ!私ってばなんて紛らわしいアイテムを添えてしまったのっ。どうしよう、そうですとも違いますとも言いにくい。えーーーっと。


「あ、うん分かった。まあそうかなとは思ったんだけど、一応。うん」


なんか納得されてしまった…。ごめんなさい、クリスマスに続きバレンタインまで頭から飛んでるゾンビで本当にごめんなさい…。


それでも。今までに見たことがないような笑顔で喜んでいる神野くんを見て。頑張って探して良かったなって、思った。


  (続)

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