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【21】学祭を楽しむ

さて私と神野くんはギリギリまで展示作りをしていたのであまり知らなかったのだけど、ミス研ではもう一つの企画が進行していた。屋台でフランクフルトを売り、屋台に来た人にミス研の展示コーナー紹介のチラシを配って誘導し、展示を見て一番良かったブースに投票してくれた人に小さなチョコをプレゼント。チョコのために来てくれる人がどれだけいるか分からないが、なかなか良いアイデアだと思う。

当日私に課せられた任務はそのチラシを配る役だった。合宿にも参加できないほどの体調不良で体力不足と思われているのでみんなから心配されたが、このくらいならまあ出来そう。と言うか、実は体力なら私は無尽蔵なのだ。三日三晩不眠不休でチラシを配り続けることだってできる。

「ミステリー研究会です。展示もよろしくお願いします」とにこやかにチラシを配っていると、二人組の男子が「俺たちここの大学初めてなんで案内してほしいなー」と声をかけてきた。仕事中なのでと断っても終わるまで待つなどと言って去ってくれない。困った。君たちが誘ってるのゾンビですよ。

と、「花宮さんちょっと来て」と屋台奥の設営テントの方から神野くんの声がした。呼ばれてるので失礼しますと言ってそそくさとテントに帰ると、「しばらく俺が代わる。井田が遊びにきてるから相手してやって」と神野くんが私からチラシを受け取って出て行った。いつの間にか呼び捨てになっている。

「有は相変わらずスマートだな〜。さりげない守り方がかっこいいんだな、うん」と一人頷いている井田くんは(こちらは名前で呼び捨てになったらしい)何やら両手一杯に屋台の食べ物を抱えている。フランクフルトも買ったらしい。


「なんでそんなたくさん食べ物持ってるの?」


「香澄センパイが何を所望しても応えられるようにだ!」


ははあ…だがしかし。


「私も香澄も、食べ物興味ないよ」


「………あれ?もしかして…食べない?」


「…さあね」


「リサーチ不足だった…」


と言いながら井田くんは抱えている食べ物を食べ始めた。リサーチ以前の問題な気もするが。


「香澄と約束してるの?」


「してない。偶然会える可能性に賭けてる」


マジでリサーチ以前の問題じゃないか!

しかし、天は自ら助くるものを助くのか(ちょっと違うか)、香澄が「やっほー」と言いながらやってきた。手にはミス研のチラシを持っている。

ちょうどお好み焼きを口一杯に頬張っていた井田くんが挨拶もできずに必死で飲み込もうとしている間に、香澄と私はミス研の展示を見に行く流れになった。


「あかりが最近ずっと遅くまでやってたやつでしょ?神野くんと揉めながら」


「方向性が決まってからはそんなに揉めてない…。香澄は推理小説って読む?」


「あんまり。私が好きなのは歴史小説」


それは初耳。


「オレも!オレも三国志大好きです!センパイは孔明と周瑜ならどっちが」


「いや私は欧州史専門」


後ろから付いてくる井田くんが「勉強してきます…」と撃沈している。がんばれ。

展示室に到着するとまず真っ先に私たちのコーナーを見てくれて、「なかなかいいじゃん、読んでみたくなったよ」とお褒めの言葉を貰う。読むなら、読むならABC殺人事件からにしてほしいという気持ちを抑え込む。

香澄はクリスティ展示に投票してくれてチョコを貰うとそれをそのまま井田くんにパスし、「一生大事にします!」と言われて「早く食べなさいよ…」と呟いていた。


結局クリスティ展示はミス研全体での2位となり、私と神野くんはまたハイタッチをした。

神野くんが「ABC殺人事件なら1位が獲れた…か…も…」と言いかけて、私の目が(今更言うか?!)と釣り上がったのを見て口を閉じた。


ゾンビも割と表情豊かなのである。


  (続)

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