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【16】鍛える

毎週恒例ゾンバナ(ゾンビ話)定例会。今日のお題は「表情筋の鍛え方」。と言うのも先日、私のことを人でないと見破った井田くんに何がきっかけで気付いたのかと尋ねたら「表情…かなぁ?」と返ってきたのだ。


私と香澄は出逢った瞬間に互いにゾンビであることが分かったが、あれは一種のシンパシーだろう。また自分という、ゾンビでありながら普通に生活してる存在を認識していたからでもある。


井田くんは何の前置きもなしにいきなり見破った。よく覚えてないけれど何か違和感があった、表情かなと思う、そしてよく観察すると呼吸をしてないように見えた、と。


「というわけで表情らしいですよ香澄さん」

「そう言われてもなぁ…野生の勘じゃないのあの人」


まあ野生の勘っぽさは否定できない。他の人には特に気付かれないわけだし。なんか急に鈍臭くなったなとは思われてるだろうけど。


「でもまあたしかに、ストレッチとか階段昇り降りの練習とかはしてるけど、表情筋を鍛えるのは意識したことないわ」

「私も。てか体動かすのに比べたら表情変えるのははるかに楽だよね。笑うとか眉上げるとか…そんなに労力要らないし意識もほとんどしてない」

「私よりあかりの方が表情豊かだと思うわ。ん〜こうして見てても特に違和感はないけどなぁ…」

「そもそも表情筋を鍛えるって私たちできるのかな」


我々ゾンビである。表情筋に限らず、「鍛える」ことは可能なのだろうか。


「いや〜〜〜…無理なんじゃない?これでも一応死体だし。動かしにくい体をスムーズに動かせるように訓練してるけど、鍛えられてはいないかと。なんにつけ変化するとは思えない…いやあかりこないだニキビできたんだっけ?」

「しかも治った」

「なんでやねん…」


薬塗ってたら治ったんだよね。もしかしたら小さな傷とかも絆創膏貼ってたら治ったりするだろうか。今度やってみようかな。ただ子供の頃のように外で遊ばないし、運動部でもないし、お腹空かないから料理もしないしで実は小さな怪我すらする機会が割と無い。


「ゾンビの自信がちょっと失われるよね」

「でもあかりはちゃんとゾンビに噛まれたって分かってるんでしょ?」

「うん昼寝から起きたら目の前にゾンビ。トラウマだよ」

「トラウマはウケる」


ケラケラ笑う香澄はやはり普通の女の子に見える。まあ考えててもしょうがない。普段の運動とボイストレーニングに鏡の前でフェイストレーニングも加えよう。そもそも見破れる人はほとんどいないんだし。


「あかりはそれよりね、バレそうになった時に使う言い訳でも考えておきなさいよ。馬鹿正直にゾンビって答える人いる?」

「はい…すいません。今度からはエウタリカ星の皇女って最初から言う」

「…なにそれ」


香澄をますます爆笑させてしまった。


  (続)

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