02 縁談
遅くなりました。すみません。
色々付け足してたら長くなりすぎた……
青くきれいに澄み渡った空の日、巨大な青い火柱が上がる。ゆっくり草を食べていた羊たちは熱風と爆風にさらされ、一目散に逃げ出していった。発生させたのは10歳になったグランだ。
「よし! 収束も指向性もバッチリだ。」
自分が出した魔法では基本魔力操作ができていれば、自分に影響がないため、グランは出した火柱で火傷をすることはない。さらに筒の出口が狭くなったような形を魔力で作り、収束させ、一定の方向へ指向性も持たせてあるので、地面が焦げるということもない。
密度を高めた魔力は強力すぎて、現象に変化させ放出するとその後の操作が出来なかったが、魔力で器を作ることで、収束・指向性を威力の減衰を起こさずに持たせることが出来るようになった。
指向性を持たせないと一人の時はいいが、味方などがいる時は敵も味方も何もかも巻き込むため使い物にならない。
ちなみに変化させられる性質、この世界では属性と呼ばれているが、火・水・風・土・光・闇・雷と7つの属性、7大属性と呼ばれるものがあり、他には魔力があれば発動できる無属性という、魔法を扱う上で基本なるものがある。
この世界では何故か魔力の色や髪色に適性が大きく影響されるのだが、自分は火属性に適性があるが、色と属性がちぐはぐなのは滅多にいないため、異端とされている。
だがこういう例がないわけではないので目立った迫害などはないが、人によって威力の強弱が激しいので軽蔑されたり、冷たい視線など、貴族の者からは基本的に嫌われている。
両親は属性判定で、僕が火属性に適性があるとわかり、さらに一般的なものより威力が高いといわれ、喜んだ。
日課のトレーニングを終えて家(現代の日本の家屋に例えると旅館ぐらいだろうか)に戻ると、父のレナードがものすごく喜んでいて、母のユリアが嬉しそうな笑みを浮かべていた。
席について朝食はすでに食べたので、紅茶を飲みつつ、なにか良いことがあったのかと聞くとレナードが
「なんと……さっきグランに縁談が来たんだ!」
「ゲホゲホッ⁉」
飲んでいる紅茶が気道に入り咳き込む。いきなりの爆弾発言はやめてほしい。
「う``ぐっ…… 一体誰からですか?」
聞き間違いであってほしかったが仕方なく誰からか聞いてみる。
すると相手は公爵家の令嬢フィーナ・フォールトらしい。
僕がこの前、王城で開かれたパーティーで出会った女の子だ。
ルーフェルト王国では貴族の子息は10歳になると、貴族社会に出るため顔合わせのパーティーが開かれるのだ。なのでグランも10歳になったため、パーティーに出席するために王都へやってきたのだ。
オリントン領から王都への道中、魔物や盗賊が襲ってくることはなく無事に王都についたのだがグランは馬車の窓から見える王都の人に驚いていた。
「ふふっ そういえばグランは王都は初めてだものね。」
「ああそうだな 今までオリントンから出たことがなかったから気になるのも仕方がないな。」
両親がそんなことを言っているが僕は街並みに驚いているわけではない。ちらほら見える猫耳や犬耳を持つ獣人を見るのに必死なのだ。この世界の獣人はケモ耳と普通の人と同じ耳を持っているようだ。
そんなことをしているうちに王都の屋敷についた。
王都の屋敷はオリントン領の屋敷よりは大きくないが周囲の屋敷よりかは大きかった。
「旦那様、おかえりなさいませ。グラン様も大きくなられまして。」
「ああ、久しぶりだな、セバス。グランとは赤ん坊のときにオリントン領の屋敷出会っただけだからな。」
この世界では地球と同じ時間の進み具合なのだが、明らかに10歳の身長ではなく地球の12歳ぐらいの身長だ。この世界では、背は少し高いぐらいなので、どうやら成長するスピードが地球より早くなっているらしい。
晩餐も終わり、寝る身支度をしてベッドに入る前にテラスから見える王都を見ながら明日のパーティーのことを考える。
「はあ……パーティーなんて出たことないからなあ。」
なんせ前世ではきらびやかなパーティーなんかとは無縁だったのだ。作法などは両親からきっちり叩き込まれているが、人前はそんなに慣れているわけではないのだ。今から気が重い。まあ、なるようになるだろう、と思い眠りについた。
翌日、パーティーは夕暮れ前から始まる。開始より早めに来たのだがだいぶ人がいる。僕の格好は黒のタキシードだ。
開始時刻になると国王が登場し、開会のことばが述べられる。
「皆の者、これが初めてであろう。わしがエリオスじゃ。いずれこの王国を支える者たちとして日々努力してもらいたい。では乾杯をするとしよう。 乾杯 」
「「「「「乾杯!!」」」」」
親は離れて派閥に別れて談笑し、子どもは親の派閥の者同士で集まったり、上級貴族の嫡子もとに行き、媚を売ったりしている。
まあうちは派閥とは無関係だし、媚を売る必要もないのだが。まあそんなわけで、挨拶などはするが基本ボッチなわけだ。
しばらくぶらぶら歩きながら飲み物や大きなガラス張りの窓から夜景を楽しんでいると(もちろんノンアルコールだ)、前に子どもたちが集まっているのが目に入った。
囲まれているのは純白の髪に銀の髪留めをした美少女だ。白い髪に薄い桃色のドレスの組み合わせに美しさが際立たされ、誰もが目を引かれる。そのせいか、次々と話しかけられている。大変そうだなと思っていると、目があった。気のせいかと思いスルーしようとするとなんとこっちに近づいてきた。
「フィーナ・フォールトと申します。よければわたくしとお話しませんか。」
フォールト家は確か公爵家のはずだ。そんなお嬢様がなんで僕にほほえみながら話したいと言ってくるんだ?ここで拒否すると向こうに恥をかかせるため、伯爵家のこっちに拒否権はないじゃないか。
「グラン・アースルトです。貴女のようなお美しい方からとは光栄です。どうぞ私でよければ。」
「ではあちらの方で二人で話しましょう。」
そう言って人が数人しかいないテラスへ連れて行かれる。周りにいた貴族の子どもたちからの嫉妬の視線が背中に刺さる。
「ふふっ、驚かれましたか?グラン様、いきなり私から声をかけられて。」
「ええ、なぜフィーナ様は僕に?」
「あなたからは他の者とは違う雰囲気を感じましたから。見ている世界が違うような感じでしたので、私と同じような。あと私のことはフィーナでいいですよ。」
「流石に公爵のご令嬢に対して呼び捨ては出来ませんよ。」
「意外といけずなのですね。」
この子はしっかりしているのだろう。少し幼いところがあってかわいいのだが。流石に僕と同じ転生者ではないはずだ。そう考えながら雑談に花を咲かせていく。ふと気づくともう閉会の時間が迫っていた。かなり長い間話していたようだ。
「もうそろそろ終わりですし、戻りましょうか。」
「そうですね、楽しい時間はすぐに過ぎてしまいますね。」
テラスから戻ると父と同じくらいの年齢の男性が近づいてきた。
「やあフィーナ楽しんできたかい? そっちの男の子は?」
「グラン・アースルトと申します。」
「ああ、レナード伯の息子くんだね。」
「ノーマン公爵お久しぶりです。」
後ろから父のレナードが来た。
「グランくんが娘のフィーナともう仲良くしててね、驚いたよ。普段はあまり積極的に話さないのにね。」
そんなことを親たちは話しつつパーティーは終わった。
フィーナか、まさかそうなるとは。美少女だし問題はない。だがどうして僕なのだろうか、あの天才と言われている第二王子も話しかけている輪の中にいたのに。そう考えながらレナードに了承の返事をする。
二週間後、王都の屋敷で顔合わせがあった。(もうすでに会っているのだが会わないといけないのは習慣らしい)
「よろしくおねがいしますね、グラン様。」
近距離のフィーナの笑顔に一瞬ドギマギさせられる。この笑顔に落とされない者はいないだろうと思いつつ、返事をする。
「ああ、よろしくね。ええっと・・・・・・」
「私のことはフィーナと呼んでください。」
「フィーナ、それなら僕のことも名前で呼んでください。」
こうしてこの世界に転生して10歳で婚約者が出来たのであった。
設定説明がいるような気が……
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