表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/55

36,ビッグ・ボブ

 アリサとタケル、それにローレンツは厩舎の中に連れて行かれた。

 大きな馬小屋には数多くの馬が繋がれていて、タケル達を見て興奮したのか、地面を足で蹴っていななく。

 奥に行くと丸太で組まれた牢屋のような物があった。

 小部屋から馬の番人らしき小男が出てくる。

「どうしたんですか兵隊長殿」

 汚れた作業着姿の小男は、アリサの前にやってきて遠慮なくじろじろと体を眺めた。

「ああ、これはトルーナン王国のお姫様だ。ライナー様のご命令でビッグ・ボブに接待させるようにとのことだ」

 隊長の説明に小男は白いロングドレスを着たアリサをさらにジローッと見た。

「こんな上玉をボブにくれてやるとはもったいねえなあ、やつに壊される前に俺が味見しちゃあダメですかねえ」

「ダメだ! ライナー司令官閣下の指示であるぞ。少しでも命令に逆らうようなら処罰する」

「あー、はいはい、分かりました。こいつらはボブに相手させますぜ……」

 アリサ達は、木の牢屋に放り込まれて鍵をかけられてしまう。

「じゃあ、後始末は頼んだぞ」

 兵隊達は去って行った。

 異臭が漂う広い牢屋の中をタケルが見回すと、隅に大男がいびきをかきながら寝ていた。

 外の小男が棒でバンバンと牢屋の丸太を叩く。

「おい、起きろ、ボブ! 差し入れだぞ。上物だから大切に味わえよ。殺すんじゃないぞ。後で俺も楽しませてもらうからな」

 ボブがゆっくりと上体を起こす。眠そうにボンヤリした目でアリサを見た。

 タケルが門番に聞く。

「なあ、門番さんよお。この怪物は何なんだ」

「そいつはボブといって手の付けられない暴れ者だ。戦争でしか役に立たないから普段はここで暮らしているってえわけだ」

 門番はニヤついて答えた。


 ボブはゆっくりと立ち上がる。

 2メートルを優に超える身長。目は小さく口は大きい。毛むくじゃらの大きな体だが、髪の毛はなかった。素っ裸に腰布を巻いているだけ。ファンタジー小説に出てくるゴブリンのよう。

「う、うおー……女だあ。女、女、ああいい匂いだぜえ」

 ボブはゆるりとアリサに迫ってきた。

「タケル、どうすればいいのよ」

 アリサの声が震えている。

「力じゃかないそうにないな。とにかく時間を稼ごう」

 タケルは二人と打ち合わせをしてから、ボブを囲むように3方向に分かれた。


 ボブはアリサに近寄っていった。

 背後にいたタケルが思い切り膝の内側を蹴る。カクンと体勢を崩し、大男は片手で体を支えた。

「ウオー!」

 すぐに立ち上がったボブはタケルに襲いかかる。

 すかさず、アリサがすねを蹴ったが、相手は痛がるそぶりも見せない。

 ボブはクルリと回ってアリサに向かう。

「今度は私よん」

 ローレンツが後ろから思い切り肛門を蹴った。

「ガウッ」

 のけぞって止まったが、目を細めてローレンツに両手を伸ばす。

「それっ」

 タケルが棒で背中を叩く。しかし、全くダメージを与えていない。

 ボブを混乱させるべく3人は順番にけん制攻撃をして巨人が疲れるのを待っていた。


「そんなことをやっていても無理だぞ。ボブは疲れ知らずだからなあ」

 見物していた門番は、面倒そうに言う。

「つまんねえなあ……ちょっと放っておくか」

 しばらく様子を見ていた門番は飽きてきたので、小部屋に戻ることにした。


「どうするの、タケル。これじゃあラチがあかないわ」

 息が弾んでいるアリサ。

「そうだなあ……ローレンツ、ちょっと」

 タケルはローレンツを呼んで短く話す。

「分かったわん」

 アリサがボブの相手をしている隙に、ローレンツは黒い儀礼服の飾り紐を引きちぎって輪っかを作った。

「ヘイ! ボブちゃーん。私見てえー」

 つられてローレンツの方を見たとき、彼はボブの目に土を投げつけた。

「ウホー」

 慌てて土を払いのけるボブ。直後、ローレンツを睨んでつかみかかる。

 ローレンツは体勢を低くするとボブの足下にスライディングした。またを通り過ぎるときに、ひもの輪っかをボブのチンコに引っかけた。

「それそれー、召し捕ったわん」

 ローレンツがひもを引っ張るとボブが絶叫した。

 ひもの輪は引くと締まるようになっていたのだ。

「アリサ、やれ!」

 タケルに言われて、アリサはボブのみぞおちにキックをたたき込む。

「ウホホー」

 一瞬、動きが止まったが大男はダメージを受けた様子もなく、アリサに向かっていった。

「ローレンツ!」

 タケルの催促。

「はいはいー」

 ローレンツは再度、ひもを引っ張った。

「ウギャホー!」

 バンザイのように両手を挙げてボブは静止する。

「アリサ! もう一度だ」

「アアーン、まったくぅ」

 彼女は白いロングドレスをビリビリと破って白くて長い足を露出した。そして、クルリと回転すると高くジャンプしてボブのあごを思い切りキック。

 クビの骨を軸としてクルリと顔が回る。ボブは白目をむいて悶絶した。

 脳が攪拌されて脳しんとうを起こしたのだ。


「よし、脱出するぞ」

 そう言ってタケルは、ローレンツと一緒にボブを部屋の端に移動させた。


  *


「なんか、静かになったなあ」

 門番が牢の前にやってきた。

 中を覗くとアリサが白い足をむき出しにして倒れており、ピクリとも動かない。

「ちぇっ! 殺しちまったのかよ。生かしておくように言っても分からねえよなあ、あの大猿は……」

 ため息をつきながら牢の鍵を開けて中に入った。

 すると突然、死んだと思っていたアリサがバネ仕掛けのように飛んで門番の腹を蹴る。

 うめき声を上げて彼は気絶した。

「よし」

 隅で死んだ振りをしていたタケルは門番から鍵を奪い取り、アリサと一緒に外に出た。

「ああーん、すごーい、大きいわん」

 ローレンツがボブの腰布をめくって股間の物を見ている。

「何やってんのよ、ローレンツ。そんな物を見てないで、さっさと行くわよ」

 あきれたアリサが言うと、ローレンツは「ハーイ」と言って外に出た。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ