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33,アルミン王子


 真夏の暑い日。

 タタール帝国の第三王子、アルミン・フォン・クールバッハは、百名ほどの従者を連れてトルーナン王国にやってきた。


 トルーナン国王のクリストファーは謁見の部屋でアルミン達を迎えた。

 上座の豪華なイスに座ったクリストファー王。その隣にはクリステル姫が立ち、部屋の両側に文官と武官が並ぶ。


 アルミン王子は、クリストファー王の前に片膝をついて名乗った。

「クリストファー王においては、ご機嫌麗しく。わたくしはこのたびアリサ姫との婚姻を賜りました、タタール帝国の第三王子のアルミン・フォン・クールバッハと申します。末永くよろしくお願いいたします」

 10歳という年齢に合っている華奢な体だった。短く切りそろえた髪は黒く艶めき、黒い瞳には邪気はなく、少女のような顔立ちをしたあどけない少年だった。

「苦しゅうない。立ちなさい」

 王が促すと、すっくと立ち上がる。

 背は120センチくらいで、背筋を伸ばした姿は王族としての意志の強さを感じさせた。


 王子の後ろには、タタール帝国から付いてきた乳母のサンドラ・アーネイトと執事のローベルト・シュタインが控えている。

 サンドラは背が高く、体重が百キロに達するのではないかと思うほど太っていた。アルミンの母親は彼を生んですぐに亡くなってしまったので、サンドラはアルミンの幼少期から面倒を見ていた。

 ローベルトは細身で髪は白い。70歳相応の見かけをしている。彼もサンドラとともにアルミンを育ててきたのだ。



「これが王子の結婚相手のアリサ・ド・ルシュクエールである」

 王の紹介でアリサが進み出る。

「トルーナン王国、第三王女のアリサでございます。よろしくお願いします」

 白いドレスの裾を両手でつまんで腰を下げた。



  *


「あー、やだやだ!」

 アリサが手足をバタバタさせると、それに合わせてイスがきしんだ。

 メリッサ姫専用の応接室。それは仲間とのお茶会に使われることが多い。

「まだ18歳なのに、年貢の納め時になっちゃうのー! これから、やりたいことがたくさんあったのにー」

 彼女はシルクのロングドレスの裾を握り、バタバタとあおいで体にこもった熱気を飛ばす。

「でも、可愛い子だったよな。将来は美形になるぜ」

 そう言ってタケルが苦笑いする。

「だったら、あんたが結婚しなさいよ」

 ジトッとタケルをねめつけるアリサ。

「アリサちゃんがいらないんだったら、私がアルミンちゃんを貰おうかしらん」

 胸の前で両手を組み、少女のように目に星を輝かせるローレンツ。

「アルミンちゃんたら、かわいいわーん。あの子がまだ毛の生えていないチンチンをフルフルさせて迫ってきたら、わたし……どうにかなっちゃうかもー」

 体をくねらせるローレンツ。彼は引き締まった長身の体を持つ20歳の男性。

「あの、か細い体を抱きしめて、ほっぺにチュッチュしてあげたいわん」

 ローレンツは天井を見上げて、よからぬ妄想に浸っている。


「はー」

 アリサが長いため息をつく。

「そんなに気を落とすなよ。王子と結婚すれば戦場に出ることがなくなるかも。……のんびりできるかもしれないぜ」

 タケルが慰めた。しかし、戦争に関わることが無くなるのは、自分の才能を発揮できなることでもあるので、彼は複雑な心境だった。

「タケル……」

「なんだい、アリサ」

「あんたは私の主席参謀でしょ。なんとかしなさいよ」

 そう言ってテーブルに突っ伏し、また大きなため息をついた。

「なんとかと言われてもなあ……」

 タケルは考える。

 あからさまに追い出したら、タタール帝国との同盟関係に亀裂を生じる。なんとか、王子の方から逃げ出すように仕向けないと。

「どういった嫌がらせをするべきかな……」

 タケルは思考を巡らせた。


  *


 数日たって、王子達の荷ほどきも終わって落ち着いた頃、タケル達はアルミン王子の部屋に向かった。


「本当にやっちゃっていいのーん」

 そう言ってローレンツが顔をニヤつかせる。

「ああ、いろいろ考えたけど、もうこれしか方法がない。やってくれ……」

「分かったわーん」

 タケルはアルミンの自室のドアをノックした。

「どうぞ」

 アルミンの返事がしたので、二人は中に入る。

 廊下の端では、アリサが様子をうかがっていた。


「よく、いらっしゃいました」

 アルミン王子が立って出迎える。

「今は一人でしょうか?」

 タケルが訊ねるとアルミンは小さくうなずく。

「あいにく、サンドラもローベルトも席を外しているので、ろくなおもてなしもできません。ちょっと、呼んできます」

「ああ、いいから、いいから。ちょっと話をしたかっただけだから……」

 部屋から出ようとするアルミンをタケルが止めた。王子が一人になる時を見計らってやってきたのだ。

「そうですか……」

 その後、タケルが気まずそうに口を閉ざすので、部屋は静かになった。


「タケル参謀のことは聞いています」

 アルミンが口を開く。

「ああ、そう」

「モランタン高原の会戦では、孤立したコスタリカ軍を救出し、追撃してきたマクドリア軍を一人で押しとどめたんでしょ? 並の参謀にはできないことです」

 目を輝かせてタケルを賞賛する。

「まあね……」

「それに、ガルガント軍の侵攻作戦の時は、三万人以上の敵を1万で追い返したんですよね。我が、タタール帝国でも話題になっていますよ」

 アルミンは尊敬のまなざしで少し興奮していた。


「そうなんだ……そういった風に誉められるとやりにくくなるなあ……」

 苦笑いしてタケルがローレンツに視線を投げる。

 ローレンツはアルミンの後ろから抱きついた。

「アルミンちゃーん」

「あっ、何をするんですか」

 もがいて離れようとするアルミンを強く抱きしめて、少年の薄い胸をサワサワとなでるローレンツ。

「ああー、やめてください」

「アルミンちゃん、可愛いわー」

 ほっぺたにチュッとした。

「ああー、やめてくれ。タケルさん、この変態を止めてください!」

 しかし、タケルは困った顔で視線を背けた。

 グルだと知って唖然とする王子。

「アルミンちゃーん。お兄さんが可愛がってあげるわー」

 ホモの手は少年のズボンの中に侵入する。

「あー!」

「ちっちゃなドングリちゃんですねー。ああ、ドングリが成長してアスパラガスになってきまちたよー」

 ローレンツは興奮すると幼児言葉になる。


「何をやっているんですか!」

 アルミンの声を聞いて乳母のサンドラが部屋に飛び込んできた。

「王子を放しなさい!」

 ローレンツからアルミンをもぎ取るように引き離す。

 遅れて老執事のローベルトもやってきた。

「噂は聞いていましたけど、本当にド変態だったんですね」

 サンドラはゴミを見るような視線をローレンツに投げる。

「王子と親睦を深めようとしただけよーん。私と王子が固く結ばれれば、タタール帝国との同盟関係が確固たるものになるはずよーん」

「うるさい、黙らっしゃい! このド変態」

 王子をしっかりと抱きしめたまま、サンドラはローベルトを見た。


「仕方がありません。ローベルト、あなたがこいつの相手をなさい」

「はあ?」

 ちょび髭も白くなっている執事が口を開けたままで固まる。

「あなたの清廉なるケツで、その男の汚らしいイチモツを清めてあげるのです」

「はあ?」

 ローベルトとローレンツは、このバアサンは何を言っているんだと困惑して黙り込む。


「もう嫌だー!」

 アルミンが泣きながら部屋を飛び出していく。

 サンドラとローベルトが慌てて追いかけた。


 二人きりになった部屋に、アリサが入ってきた。

「ちょっと、かわいそうじゃないの」

「なんだよ、君が頼むからやってあげたんだぜ」

 タケルが小さくため息をつく。彼もいたいけな少年をいじめるようなことはしたくない。

「でも……やり過ぎなような……」

「アリサ……君のためにしたことだろ。それとも、なにかあ……」

 タケルが皮肉そうな笑いを浮かべる。

「本当はあの子と結婚したかったのかあ。一緒に風呂に入ってさあ、後ろから抱きしめてチンポをクイクイっと引っ張ってさあ、早く大っきくなーれ、大っきくなーれ、使えるように早く成長してねー、とかいう遊びをしたかったのかい」


 アリサの顔が真っ赤になった。

「バカ! 死ね!」

 彼女はドスンドスンという足音を響かせ、客間から去って行った。


  *


 翌朝、アルミン王子の一行は挨拶もせずに城を出て行った。


 しばらくして、タタール帝国から釈明と謝罪の要求が届いた。


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