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千聖クレア、天我アキラ改め白銀あくあ探検隊始動!

 救急車で運ばれて行った天我先輩の事は心配ですが、こっちもこっちであくあ様が探検隊の隊長になった事でより一層不穏さを増しています。

 テレビに映ったキリッとしたあくあ様のお顔を見た私のお腹がキリリと痛み始める。

 イタタ……。できればこのまま何もなければいいのですが……。

 私がそんな事を考えていると、現場でカメラを回している本郷監督があくあ様に話しかける。


『あくあ君、次からは危険だから私が先に井戸に降りて安全を確認するよ』


 本郷監督からの素晴らしい提案に対して、我らがあくあ様は即座に首を左右に振る。


『それで本郷監督が怪我したら、俺が天我先輩に顔向けできません。大丈夫、俺なら万が一の可能性で古井戸が崩壊して中で生き埋めになっても、中から土砂を掘り進めて自分で脱出できますから!』


 嘘……でしょ。

 そんな事が普通の人間にできるんですか? なんて、一瞬でも考えてしまった自分のほっぺたをビンタしたいです。

 あくあ様は、邪神あーくあ様はそういう人間的な常識で語ってはいけない人でした。


『それに……』


 あくあ様は本郷監督が撮影するカメラにゆっくりと近づいてくる。

 あっ、あっ、あっ、待ってください。そんなかっこいいお顔で近づいてこられたら、まるでテレビを見ている自分が迫られているみたいな感覚に陥ってしまいます。


『もし、本郷監督に何かあったら俺が嫌ですから、ここは俺にカメラを任せてください』

『あ、あくあ君……』


 くっ! 私は脇腹を手で押さえると、奥歯を強く噛み締めて必死に耐える。

 近くに置いてあるノートパソコンで掲示板を見ると、そのかっこよさに耐えきれずに何人かの掲示板民が脱落していました。

 しかし、実際にそれをされている本郷監督はそんな状況でも一切動じません。


『でも、それを撮影する私にだってプライドはある。絶対に私が撮影するから』


 さすがです、本郷監督。

 本郷監督から強い意志を感じたあくあ様は力強く頷く。


『……分かりました。そういう事なら、俺が先に降りて中の安全を確保した上で降りてきてください』


 それでもやっぱりあくあ様が最初に降りる事は変わりません。

 あくあ様に対して、貴重な男子だから危ない事はやめてくださいとか無理しないでほしいとか、そういうのは通用しないんです。

 一度あくあ様がやると決めたらやる。私たちはその選択に従うのみです。

 あくあ様は古井戸に降りるために、手早く準備を整える。


『それじゃあ、行ってきます!』


 腰紐をつけたあくあ様はまるでレンジャーの隊員やレスキューの隊員みたいなスピードで古井戸の中に降下していく。

 えっと、私はアイドルじゃないから分からないけど、アイドルってそういう訓練もやってるんですか? すごいなぁ……。あはは……。

 1番下に到着したあくあ様は地面や壁を触って確認する。


『あー、確かに底がぬかるんですますね。でも、壁は頑丈そうです。本郷監督! もう、来ても大丈夫ですよ!!』

『わ、わかった。今から行くね!』


 撮影用のカメラを手に持った本郷監督がゆっくりと降りていく。

 その一方でカメラを通して徐々に近づいてくるあくあ様のお顔に、テレビを見ている私たちはドキドキする。

 1番下まで本郷監督が降りると、最後はあくあ様が優しく抱きしめるように両手で受け止めてくれた。

 くっ! もう埋蔵金なんてどうでもいいから、ずっとこれを流しておきましょうよ。

 だって、どうせ見つからない埋蔵金より、絶対にこっちの方が撮れ高が高いじゃないですか!!


『中は思ったより狭いんだね。確かにこれが崩れてきたらひとたまりもないかも』


 あくあ様は本郷監督の手を優しく握りしめると、本郷監督に対して、いえ、カメラを通してテレビの前に居る私たちに向かってホッとするような優しい笑顔を見せる。


『安心してください。俺が絶対に守りますから』


 その笑顔を見た瞬間、今までお預けを食らっていた私の体が熱くなる。

 一瞬で無表情になった私はテレビに向かって無言で拍手をした。なるほど、これが賢者タイムってやつですね。

 それにしてもさすがです、邪神あーくあ様。そうやってまた信者を勝手に増やすんですね! あーくあ!!

 これには流石に百戦錬磨の本郷監督も耐えきれなかったのか、一瞬だけ反応が遅れてしまう。


『う、うん、ありがとう。あくあ君。って、見て。横穴がある!!』


 カメラのターンに合わせて、おどろおどろしいテロップと共にナレーションが流れる。


【古井戸の奥に謎の横穴!? ついに徳元埋蔵金を発見か!?】


 だから気が早いんだって!!

 それにしても、本郷監督はさすがはプロですね。

 あのヘブンズソードを最後まで撮り切っただけの事はあります。

 一瞬にして持ち直しました。


『しかも反対側にもあるみたいですね』

『本当だ!!』


 カメラがターンすると、反対側にはさっきよりも少し小さい穴があった。

 これは少しだけ期待できそうです。


『とりあえず、先にこの大きい方を探索してみませんか?』

『いいね。そうしよう』


 ここでも何故かあくあ様を先頭に横穴を進んでいく。

 もちろん危険だからとかいう、ツッコミを入れてはいけません。

 なんならこの世界で1番危険なのはあくあ様です。

 2人が移動している間に私が掲示板を確認すると、なんとか捗るって人が、前を歩くあくあ様のお尻が気になって何も集中できないと書き込みしてました。

 さすがは掲示板民の鑑。お金や財宝より欲望に忠実すぎます。

 あくあ様達が穴を進み始めて数分、撮影をしている本郷監督の目の前を歩いていたあくあ様が急に立ち止まりました。


『あくあ君、どうかした?』

『ダメです。ここから先は行き止まりですね』


 あくあ様が持っている小さなカメラで行き止まりの壁を映す。

 残念ですが、ここには何もなさそうですね。

 2人は向きを一転させると、来た道を戻って行く。

 その最中に足を滑らせそうになった本郷監督の身体ををあくあ様がとっさに掴みました。


『んっ! あ……ありがとう。あくあ君』

『い、いえ、こちらこそ。咄嗟とはいえすみません』


 偶然とはいえおっぱいを揉まれた本郷監督はどういう表情をしているのでしょうか。

 私を含め大多数の人達がそんな事を考えていたら、あくあ様のヘルメットに取り付けられたカメラがちゃんと赤面した本郷監督の顔を映していました。

 さすがはベリベリのスタッフ。番組作りに一切の妥協がありません。これがプロなんですね。


【希少! 恥ずかしがる本郷監督!! ※本人にはナイショでこのシーンを使ってます!!】


 そこにテロップとナレーションはいらないでしょ!!

 あと、スタジオにいる糸井さんや石坂さんがにっこりと笑うカットも必要なかったですよね!?

 こんな事ばっかりしてるから、みんなに警戒されるんですよ!


『ねーーーーー! なんかあったーーーーー?』

『何もありません! 行き止まりでした!!』


 スタート地点に戻ってきたあくあ様は上にいる小雛ゆかりさんに言葉を返す。


『それじゃあ反対側の穴に行ってみましょう』

『うん』


 ここでもあくあ様は自ら先陣を切っていく。

 もちろんそこには深い理由なんて何もありません。

 どっかのエビ煎餅のCMと一緒で、あくあ様はもう誰にも止めらないんですよ。


『本郷監督、気をつけてください。こっちはすごく狭いです』

『わかった』


 さっきの穴と違ってそんなに大きくないから、あまり進みが早くありません。

 その間に掲示板を確認すると、なんとか捗るって人が「まるで嗜みたいだぜ」という書き込みをして、乙女の嗜みって人にプンスカされていました。いいぞー、もっと言ってやってくださーい!

 それこそえみりさんは、反省の意味も込めて一度くらいカノンさんに冷たくされたらいいと思いますよ。


『くっ! 狭すぎてこれ以上は進めそうにないです。あと、ライトで見た感じこの先も行き止まりですね』


 ああ〜、せっかく苦労して先に進んだのに行き止まりかぁ〜。残念。

 元からの期待値が低かったとはいえ、それはそれ、これはこれです。

 あくあ様は何かに気がついたのかライトの先に目を細める。


『あっ! でも、行き止まりになんかあります!』

『えっ!?』


 テレビの映像が本郷監督の撮っているカメラから、あくあ様のヘルメットに取り付けたカメラに切り替わる。

 あっ、あっ、あっ! 行き止まりにお地蔵さんみたいなものが置いてあります!

 ここでお決まりのナレーションと共にておどろおどろしいテロップが表示される。


【古井戸の奥に謎の地蔵菩薩を発見!!】


 うっ……なんか急に怖くなってきました。

 私は身体が少しだけブルっとする。


【地蔵菩薩の謎を検証!!】


 地上に戻ってきたあくあ様は、みんなと一緒に撮ってきた映像を確認する。

 映像を見るのが怖いのか、あくあ様の背中にスッと隠れてチラチラ映像を見ているとあちゃんがかわいい。

 それと比べて、反対側からあくあ様を盾にして映像を見ている小雛ゆかりさんは女子力0点です。


『うーん、これは一体なんだろうな。あっ、ちょっと天我先輩に報告してきます』


 あくあ様が天我先輩に電話をかける。

 あっ、天我先輩の事、ちゃんと忘れてなかったんだ……。


『天我先輩、あくあです。怪我の様子はどうですか?』

『どうやら捻った時に足首を捻挫したみたいだ。だが、心配するな! 必ずライブには間に合って見せる!!』


 天我先輩、さすがです。

 SNSのトレンドを見ると、【頑張れ、天我先輩!!】がランクインしていた。


『で、後輩、古井戸の奥はどうだった? 宝箱はあったか!?』

『いえ、宝箱はなかったんですけど、古いお地蔵さんが置いてました』

『ふむ……もしかしたらそれはその地域の道祖神、土地神かもしれないな。地域の人に聞けば何かわかるかもしれない』


 ここで再び例のおどろおどろしいテロップがナレーションと共に登場する。


【道祖神!?】


 いや、別にそこはテロップいらないでしょ!!

 どうでもいいところにナレーションとテロップをつけすぎなんですよ!!


『わかりました。それじゃあ、周囲の人に聞き込みをしてみます!』

『うむ! 頼んだぞ、後輩!!』


 あくあ君は電話を切ると、他のみんなに天我先輩から聞いた事を伝える。

 そこでとあちゃんと黛君が聞き込みのために、画像をプリントアウトしたものを手に持って近くに住んでいる人を探しに向かう。

 すると、2人が歩く先に人影が見えてきた。


【第一現地民発見!?】


 いやいやいや! テロップとナレーションで秘境の奥地感を出してるけど、普通に同じ日本の人だからね!?

 あと、そのテロップはもういいって!!


『あのー、すみません。ちょっといいですか?』

『と、とあちゃん!? それに黛君も!?』


 2人に話しかけられたお姉さんはびっくりした顔をする。

 うん、普通に農作業してる時に話しかけられたら、びっくりしちゃうよね。

 お姉さんは2人から手渡された写真へと視線を落とす。


『あぁ、確かこれは、過去に井戸の水が枯れかけた事があって、その時に作ったとひいおばあちゃんから聞いてます。うちのお母さんとおばあちゃんなら、もっと詳しい説明が聞けるかも、良かったらどうぞ』


 なるほど、そういう理由でお地蔵さんが置いてあったんですね。

 2人はお姉さんの自宅に案内されると、縁側でお茶を飲みながら当時の話とか時代背景とかを聞く。

 そのおかげで謎は全て解決したけど、お宝とは何も関係ない事がわかってしまった。


『貴重なお話ありがとうございます!』

『あのー、これ、良かったら……』


 黛君は袋の中から白い粉が入った袋を取り出すと、それをお姉さんに差し出した。

 ちょ、ちょ、黛くん、それ大丈夫ですか!? なんか変なものじゃないですよね!?


『石川県にあるBERYL村で、みんなが塩作り体験した時の塩です。すみません、他になんかお菓子とかあったら良かったんですけど、ベリベリのバンの中を見たらこれしかなくて……』

『いえ、これで十分です! ありがとうございました!!』


 黛くん、そこらへんで買ってきたようなお土産より、そっちの方がよっぽど貴重だよ!!

 むしろ今、探してる徳元埋蔵金3000億より、4人が汗水垂らしながら作ったそのお塩の方がよっぽど価値があると思う。

 なんならあくあ様の汗水から作ったお塩をオークションに出品したら、3000兆円くらい簡単に荒稼ぎできると思います。ええ、世の中にはえみりさんみたいな、私では足下にも及ばない人が数え切れない程いますから。


『というわけで、この古井戸は埋蔵金とは関係ないみたいです』


 黛くんやとあちゃんから説明を受けたスタッフ達はがっくりと肩を落とす。

 しかし、落ち込んだ探検隊にえみりさんから電話がかかってきました。


『あくあ様、えみりです! 例の巻物に書かれていた暗号文が解読できました!!』

『な、なんだってぇ〜!?』


 ええっ!? あの巻物に書かれていた暗号文が解読できたんですか!?

 あくあ様はすかさずスピーカーに切り替える。


『はい! 水乃教授の解読によると、その地図に書かれていた山は赤城山じゃなくて榛名山だったみたいです! それを元にカノン達に地図を探してもらったところ、榛名山にそれっぽい場所を見つけました!!』


 それじゃあ今までの茶番は一体なんだったんですか!!

 天我先輩なんか歌合戦のライブがあるのに怪我しちゃったんですよ!!


『よしっ! そうと決まれば、榛名山に行くわよ!!』

『『『おーっ!!』』』


 小雛ゆかりさんの掛け声で、全員が榛名山へと向かう事が決まる。


『と、その前に、お坊さんを呼びましょう』


 小雛ゆかりさんはスタッフに指示をして、近くの神社から神主さんを呼んで古井戸をお祓いをしてもらうと共に、近くのお寺から呼んだ尼さんに水不足で亡くなったかもしれない人を供養してもらう。

 あのー……すみません。皆さんが真面目にしてる時に申し訳ないんですけど、そこの2人、聖あくあ教の信徒です……。ごめんなさい。なんの効力がなかったとしても、うちは絶対に関係ありませんから!!


『それじゃあ、改めて榛名山に行くわよ!!』

『『『おーっ!』』』


 全員でバンに乗って、地図に書かれた場所に向かう。


【白銀あくあ探検隊! 人類未開の地、グンマーの更なる奥地へ!!】


 ベリベリのスタッフは群馬県民全員に怒られろ!! と、思いました。 

 でも、なぜか群馬県民の皆さんはSNSで喜んでいます。全く意味がわかりません。

 群馬、いいところじゃないですか。なんせ胃腸の弱い私は、月一で群馬の四万温泉に行ってるんですよ!!


【SNSで噂のグンマー県庁発見!? ※群馬県知事公認!!】


 どっからどう見ても群馬県みなかみ町にある矢瀬の遺跡でしょ!!

 私、川古温泉に行くついでに見たことあるもん!!

 掲示板で風呂ネキにおすすめされてから何回か行ったけど、あそこは神経痛に効くし、群馬県は温泉がたくさんあって本当にいいところだよ。

 この番組、一回くらい炎上しないかな……。ていうか、知事公認ってどういう事!?

 SNSを見ると群馬の知事さんが今年の年始は観光でがっぽり稼げるぞと言って喜んでいました。本当に意味がわかりません。


『というわけで、榛名山に到着しました! ここから先は車じゃ進めないみたいなので歩いていきましょう!』

『ちょっと、待ちなさい! あんた、少しは自分の安全も考えなさいよ!! ほら、ここは私が先に行くから』


 例のごとくあくあ様と小雛ゆかりさんの2人が我先にと前に出る。

 もちろん冷静なとあちゃんと黛くんの2人は、喧嘩しながらも前に進んでいく二人の後を周囲を確認しながらゆっくりとついていく。

 もうずっとこっちを映しててもいいんじゃないかな。

 私がそんな事を考えていると、目の前を行く小雛ゆかりさんの叫び声が聞こえてきた。


『あくあ君!? ゆかりさん!? 2人とも大丈夫ですか!?』


 慌てた本郷監督が前を行く2人に追いつく。

 するとそこには……。


【大蛇!!】


 いちいちテロップとナレーションで言わなくても見たらわかるから!!

 大蛇を手で掴んだあくあ様は、毒がないことを確認してから山に返す。

 だから、あくあ様はなんでそんなにも動じないんですか?


『あっ、見てください。小雛先輩!! あっちに穴が!!』


 あくあ様が指を差した方に、本郷監督のカメラが向けられる。


【素晴らしい穴、発見!!】


 だから、素晴らしい穴ってなんですか!?

 その無駄にキラキラとした画面効果もいらないでしょ……。


『なんて素晴らしい穴だ……間違いなくここにある。そんな気がします』


 スタジオに居る糸井さんがキリッとした顔をする。


『かなり大きいですね。人は余裕で通れそうだけど、みんなどうする?』


 例の如く、あくあ様は一足先に穴の中を確認する。

 だから、あくあ様は少しは自分の重要性に気がついて!!


『とりあえず行けるところまで行ってみましょう。ダメそうなら私たちは引き返すから』

『うん、僕もそれでいいと思う』

『ああ、僕も中を探検してみたい!』


 黛くんは目をキラキラと輝かせる。

 そういえば黛くんってテーマパークに行った時もそうだけど、こういうの結構好きだよね。


『じゃあ、決まりだな。みんな、俺の後についてこい!!』


 あくあ君は普通に先頭を切って先に行く。

 うわぁ、崖じゃないけど穴の中がなだらかな斜面になってるから登り降りが大変そう。

 あくあ様はロープや杭を使いながら、みんなを穴の先に誘導していく。

 しかし、その先にあったものは巨大な川でした。


『ゴムボートを出しましょう』


 流石にこれ以上は危険だと思ったのか、スタッフの1人がロープのついたゴムボートに乗ってその先を確認しにいく。

 でも、その時に事件が起こりました。ゴムボートを持ってくる際に、穴が空いてしまったのでしょうか。

 穴の空いたゴムボートが転覆して、中にいたスタッフが川に投げ出される。


『うおおおおお! 俺に任せろ!!』


 あくあ様は川の中に飛び込むと、スタッフを抱えて戻ってくる。

 ね。ゴムボートなんかより、あくあ様に全部任せておけばいいんですよ。

 私は思考が完全に停止した頭でテレビにツッコミを入れる。


『小雛先輩、ちょっと俺、このまま行ってきますわ! さっき飛び込んだ時に見つけたんだけど、横穴らしきものがあったんで!!』

『ちょっと、あくあ! あくぽんたん! 待ちなさいってば!!』


 あくあ様は小雛ゆかりさんが止めるよりも先に、水の中に潜っていきました。

 さすがはあくあ様です。決めてから行動するまでのレスポンスが尋常ないくらい早い。


『あくあー! ねぇ! ねぇってば! 聞こえてるのー!?』


 5分くらい経ってもあくあ様が戻ってきません。

 心配した小雛ゆかりさんが水面に向かって何度も呼びかける。

 でも、何の反応もないまま10分以上が過ぎました。


『ちょっと、酸素ボンベとかないの!? 私も中に様子を見にいくから!!』

『待ってください。すぐに用意しますから!!』


 小雛先輩が探検服の上着を脱ごうと手をかけたところで、水の中からあくあ様が顔を出した。


『あっ! 小雛先輩、もしかしてサービスシーンの撮影ですか!? そういうのは、俺がいる時にやってくださいよ!!』

『なんで私がこのタイミングでサービスシーンの撮影をしなきゃいけないのよ! あんた、本当にバカでしょ!! そもそも私のサービスシーンなんて、あんたくらいしか需要ないじゃない!!』


 小雛ゆかりさん、あくあ様に需要があるのは最大級のマウントだって気がついてますか?

 私の予測通り、SNSを見ると小雛ゆかりさんのアカウントが秒で炎上していました。

 このアカウント、いつ見ても炎上してるなぁ……。


『で、なんかあったの?』

『それは帰ってから説明します』


 これ以上は進めない事もあって、全員で来た道を引き返す。

 結局、お宝はあったのでしょうか?

 他のチャンネルも気になりますが、こちらの結果も気になってチャンネルが変えられません。


『というわけで、俺が撮ってきた画像を確認してください』


 あくあ様が撮った映像に切り替わる。


【素晴らしい穴の中にある素晴らしい横穴!!】


 だからその素晴らしい穴って何なんですか!!

 掲示板を見ると、なんとか捗るって人が【この鍾乳洞、数の子みたいだ】ってしょうもない事を呟いていました。こんなにも掲示板を見て損したなぁと思ったのは生まれて初めてです。

 水中にある横穴を泳ぎ切ったあくあ様が浮上して水の中から出ると、その奥に謎のお社が立っていた。

 ひぇ〜っ! 待ってください。ここ、本当に足を踏み入れて大丈夫な場所なんですか!?

 邪神あーくあ様の一部が封印されてたりしませんよね!?


『とりあえず拝んでおくか』


 あくあ様は手を合わせてお社を拝むと、また水の中に潜って来た道を戻っていった。

 そこで映像が再び地上に居るあくあ様達に切り替わる。


『というわけで、流石にこの先は祟られてもいけないんで、危険なんじゃないかと思って引き返してきました』

『それで正解よ! あそこはきっと足を踏み入れちゃいけない場所だって』


 その後、探検隊のみんなとスタッフで周辺に聞き込みをする。

 うーん、やっぱりあそこに埋蔵金が隠されていたのでしょうか?

 外が暗くなってきた事もあり、あくあ様達一行は現場から引き上げえみりさん達と合流しました。

 あっ、怪我してた天我先輩も戻ってきてる!

 それを見て少しだけホッとした。


『えー、そういうわけでですね。周辺の人に聞き込みをしたり、水乃教授や教授の知り合いの方にもご協力いただいたんですけど、榛名山は過去に噴火した事があるらしく、あのお社はそれを鎮めるために作ったのではないかという説が今のところ濃厚です。残念ながら、埋蔵金とは関係がなさそうでした。というのも、お社を分析してくれた水乃教授曰く、お社の造形から作られた時代が違うみたいなんです』


 なるほど、そうだったんですね。

 ここで榛名山を後にする時に、みんなが2度目にお祓いをする映像が映し出された。

 それと、小雛ゆかりさんが胡散臭そうと言ってたその霊媒師さんもうちの信徒です。ごめんなさい。


『というわけで、残念ながら今回は不発に終わったのですが、俺はまだこの巻物の可能性にかけてます! だから、次こそは必ず徳元埋蔵金を見つけて見せますよ!! みんなもそうだよな!?』

『『『『『『『『『『おーっ!!』』』』』』』』』』


 あくあ様の言葉に全員が拳を突き上げる。何でみなさん、そんなにも埋蔵金に目をきらめかせているんでしょうか……。そこに居る邪神あーくあ様を使えば、3000億円なんてすぐに稼げますよ。


「はぁ、疲れた……」


 イタタ、私は気苦労で痛んだお腹を手で押さえてぐったりとする。

 年明けに速攻でグンマーに行かなきゃ。グンマーの秘湯達が私を呼んでいる!!

 こうして、第一回徳元埋蔵金発掘スペシャルは終わりを迎えたのでした。

 って、結局、私の胃を痛めただけでなにも見つかってないじゃないですか!! もう!!

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