雪白えみり、徳元埋蔵金を探せ!!
姐さんの出産から1週間以上が経った。
それでも私を取り巻く日常は何一つ変わらない。
「金が……ねぇ」
いつものように金がない私は、聖あくあ教本部で配られている無料の水をがぶがぶと飲む。
この宗教の1番いいところをあげるとしたら、水と食事が誰でも無料で貰えるところだ。
そういう意味では、ここを作って本当に良かったなと思う。
私はソファに座ると、目の前で美味しそうにパンケーキを食べていたりんに視線を向ける。
そういえば、りんってガチの忍者なんだよな。
忍者はその昔、偉い人に付き従ってたと聞く。
ワンチャン、その時の繋がりで偉い人が隠した宝の地図でも持ってないかなと思った。
「なぁ、りん。お前、お宝が埋まった地図とか持ってない?」
「あるでござるよ」
へぇー、あるのかー。
まぁ、そううまい話が転がってるわけないよな。
ん?
今、あるって言ったか……?
私は目を見開いてりんに詰め寄る。
「え? 本当に?」
「本当でござる。前にあく丸が拾ってきた古い巻物を部屋に置いてあるで候」
き、き、きたーーーーー!
ついに雪白えみり大逆転物語の始まりだ!!
苦節ン年、やっとこの貧乏生活から解放される。
私は空に向かって両手の握り拳を突き上げた。
「よし、今すぐに取りに行こう。私にはその巻物が必要なんだ!!」
「えっ? あ、わかったで候」
私はりんを連れて聖あくあ教の本部から出ようとする。
すると、その道中で偶然出会したクレアが私達を見てジト目になった。
「えみりさん、また変な事を企んでませんよね?」
私はクレアの追求から逃れるように目を逸らす。
「ソンナコトナイヨー」
「バレバレな嘘をつかないでくださいよ。もう!!」
おい、りん、早く逃げるぞ!!
え? 妊婦だから走っちゃダメ? それはそうか。
私は仕方なくクレアに全ての事情を説明する。
「ううっ、何故か猛烈に嫌な予感がします。イタタ……。お腹が痛い。えみりさん、お宝探しは別にいいけど、妊婦なんだからあまり無理しないでくださいね」
「おう! 任せとけ! たくさんあったら、お前にもちゃんと分前やるからなー!!」
私はクレアに手を振ると、りんを連れて聖あくあ教の本部を出る。
ぐへへ! もし、お宝を手に入れたら換金して、1分の1御神体付きあくあ様人形とか作ってもいいな。
それか、カノンのそっくり人形作って、毎晩抱き枕にしたっていい。
これは夢が広がるぜ!
白銀キングダムに到着した私達は、宝の地図があるりんの部屋に向かう。
「これで候」
「うおおおおおおおおおおおお!」
私は若干あく丸の涎でベタベタになった巻物を広げる。
すると、そこには、徳元埋蔵金の在処をここに記すと書かれていた。
徳元と言えば、江戸時代最後の大将軍だ。
その埋蔵金は3000億を超えると、前に国営放送で楓パイセンが言っていた気がする。
「それじゃあ拙者は仕事に戻るで候」
「ああ! りん、ありがとな! あとは私に任せろ! 宝を見つけたらみんなで山分けしようぜ!!」
巻物を握りしめた私は、いつよんこといつものメンバーに連絡を入れた。
もちろん退院明けの姐さんに無理はさせられないので、みんなで姐さんの部屋に集まる。
「えみり先輩、その巻物って本物なんですか?」
ノリが悪い私の後輩、嗜みことカノンがジト目になる。
おいおい、そんな事を言ってるとお前の恥ずかしい秘密を掲示板でバラしちゃうぞ!!
「ばっか、お前。これはガチだって!! だって、あの忍者が持ってたんだぞ!!」
ん? でも、拾ったのはあく丸だっけ? しかも忍者の里じゃなくて最近拾ったとか言ってたような……。
いや! そんなこまけー事はどうでもいいんだ!!
忍者が宝の場所が書かれた巻物を持っていたという事実が1番重要なんだよ!!
「ふーん。まぁ、別に偽でもいいけど、こういうのってワクワクするわよね」
「わかります。私が子供の時、こういう番組をやってたんですよね」
巻物の中を見た姐さんが目をきらめかせる。
いつもはこういうのを止めてくれる姐さんが乗り気なのは結構意外だな。
私が調子に乗って、姐さんが子供の頃って昭和の話ですかと言ったら、今にも人を消し去りそうな目で睨まれた。
あ、すみません……。姐さんも私と同じ平成生まれでしたね。サーセン……。
巻物を見た楓パイセンが腕を組んで珍しく真面目な顔をする。
「えみり、流石にこれは私達だけじゃ手に負えない。カノンは大丈夫にしても姐さんは出産直後だし、肝心なお前とパワー担当の私が妊婦だからな。ここは他の人の手を借りるしかないと思うんだ」
確かに……。
リーダーの姐さんはもちろんのこと、パワー系の楓パイセンやなんでもできる器用担当の私が不在だと、残っているのはトラップに引っかかるサービス枠のカノンしか残ってない。
私的にはそれだけでも大満足だが、カノンも出産してそう経ってないのであんまり無理させるわけにはいかないんだよな。
「じゃあ、どうするんです?」
「何、私にツテがある。こういう時のあいつらだろ」
そうして楓先輩はベリベリのプロデューサーを呼び出した。
なるほど、確かにベリベリのスタッフならどうにかしてくれるかもしれない。
さすがです。楓パイセン!!
「というわけなんですよ」
「事情はわかりました。そういう事なら私たちに任せてください! 実は私、こういうのをやってみたかったんですよ!!」
ベリベリのスタッフは仕事が早い事に定評がある。
その翌日、私たちはベリベリのプロデューサーから、埋蔵金を捜索してくれるメンバーを紹介された。
「こちらが埋蔵金捜索メンバーになります!」
「埋蔵金捜索隊隊長の天我アキラだ! 宝の地図だと!? そういうのは我に任せろ!!」
あ、うん……。天我パイセンはそういうの好きだよね。
私達4人はにこやかな表情で顔を見合わせる。
「パワー担当! 天我アキラ探検隊副隊長の白銀あくあです!! 飛んできた丸太からスタッフを守るのはこの俺だ!!」
あくあ様……埋蔵金捜索隊なのか、探検隊なのか、その辺の設定は天我パイセンとちゃんと擦り合わせておいた方がいいと思いますよ。
でも、天我アキラ探検隊の響きに天我先輩がめちゃくちゃ感動してたからいっか。
「えっと、天我アキラ探検隊? 隊員の黛慎太郎です」
ほらぁ! そこら辺の打ち合わせを良くせずに見切り発車するから黛くんが困惑してるじゃないですか!!
「同じく隊員の猫山とあです。ねぇ、このヘルメット、他のサイズなかったの?」
とあちゃんのヘルメットがブカブカなのは、スタッフちゃんとわかってるね。
でも、現場じゃ危険なんで、ちゃんとサイズが合ってるのを被せてください。
ただのバイトだったのに、何故か現場監督まで任せられていた私はキリッとした顔で指摘する。
「現場総指揮の小雛ゆかりよ!! まぁ、この私にドーンと任せておきなさいよ!!」
小雛パイセン、なんでそんなに暇なのにお金を持ってるんですか……。
金なし、暇なしの私と3日くらい代わってくださいよ。
あと、ベリベリのスタッフといつものメンバーが揃って一気に不安になってきました。
それって私だけですかね?
私がそんな事を考えていると、隣に座っていたカノンが私の服の裾をぐいぐいと引っ張る。
「えみり先輩、これって本当に大丈夫なんですか?」
「やっぱりお前も同じ事を考えてたんだな。カノン」
私はキリッとした顔をする。
でも動き出した企画は、BERYLとベリベリはもう止まらねぇんだ。
私は覚悟を決める。
「というわけで、こちらの天我アキラ探検隊の皆さんには実際の捜索をお願いするので、みなさんには謎解きをお願いしたいと思うんです」
あー、なるほど。それはいいかもしれないと思った。
私はカノンや姐さんと顔を見合わせると、無言で頷きあった。
ホゲーっとして何も気がついてない楓パイセンを除いた私とカノン、姐さんの3人は気がついているけど、あのBERYLと検証班が手を組んでお宝を探すドリーム企画を逃す手はない。
いつの日か、この私の正体がバレた時にこの番組は伝説の番組として後世に残されるだろう。
「わかりました。そういう事なら協力させてもらいます!」
「うん、私たちも謎解き頑張る!」
「ええ、みんなで力を合わせて頑張りましょう!」
「なーに、メアリーの知性担当、国営放送の知的アナウンサー枠のこの私にドーンと任せておいてくださいよ!!」
楓パイセンの言葉を聞いて、スタッフのみんなが一様に心配そうな顔つきになる。
うん、その気持ちは痛いほどわかるが、楓パイセンには知性をも覆す野生の勘があるから安心して欲しい。
「カノン、そっちは任せたぞ」
「うん、あくあこそ、頑張ってね」
全く! そこは隙があればすぐにイチャイチャする!!
いいぞ。もっとやれ!! なんなら私もその間に挟んでくれ!!
「琴乃、出産したばかりなんだから、あんまり無茶したらダメだよ」
「はい、大丈夫です。あくあさん。私は基本的にここで居て、みなさんからの謎解きの相談をするくらいにしておきますから」
姐さんは幸せそうな顔で微笑む。
娘の琴葉ちゃんができたからか、以前の姐さんよりだいぶ丸くなった気がする。
ぐへへ。今度姐さんのおっぱいも吸わせてくださいってお願いしようかな。
もしかしたら、ワンチャンあるかもしれない!!
「楓も来月には出産なんだから、あんまり無茶しないように」
「うん、わかった!!」
そういえば楓パイセンのお腹もだいぶ大きくなってきたな。
もしかして予定よりかなり早く出産したりするんじゃないか?
なんか急にそんな気がしてきた。
玉藻先生とマリア先生に、年末年始、どちらかは絶対に家にいてくださいねって言っておこう。
「えみりもあんまり無茶したらダメだよ」
「はい、わかりました!!」
お、今、お腹が少し動いた気がするな。
さすがは私の子供だ。ノリがいい。
いいぞ。どうせ人の人生なんて短いんだ。お前もノリで生きてりゃどうにかなる!!
「それじゃあみんな、改めて円陣を組むわよ!」
小雛パイセンの一声でスタッフも入れて全員で円陣を組む。
なんかこう、だんだんと埋蔵金が見つかるような気がしてきたぞ。
「徳元埋蔵金捜索隊行くぞー!」
「「「「「「「「「「「おーっ!」」」」」」」」」」」
こうして私達の終わりのない埋蔵金を探す旅が始まった。
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