白銀あくあ、戦力外通告2回連続2度目。
12月14日、俺はこの日、2回連続2度目となる戦力外通告を受けた。
「ちょっと! なんで私があんたと一緒にキャッチボールしなきゃいけないのよ!」
「仕方ないでしょ! 俺達は無力なんだから!!」
キャッチボールを止めた俺と小雛先輩は両手と両膝をグラウンドにつけて項垂れる。
これが無力な俺達に突きつけられたどうしようもない現実だ。
遡ること数十分前、慌てて駆けつけた俺の元にカノンがやってくる。
『あくあ、姐さんがイキんでる顔を見られるのが恥ずかしいんだって……』
嘘……だろ? まさか、またカノンと同じ理由で戦力外通告を貰うとは思わなかった。
でも、恥ずかしいなら仕方がない! そういう琴乃の女の子らしい部分が俺は好きだ!!
「小雛先輩……俺、琴乃の力になりたいです!」
小雛先輩はゆっくりと立ち上がると、珍しくキリッとした顔で俺の肩をポンと叩く。
「……諦めなさい、あくあ。私達にできるのは、草野球をするくらいよ!!」
ほらぁ! そうやってまた草野球に流れに持って行こうとする!!
え? 草野球がダメならサッカーかバスケット?
どっちにしろやってる事は同じじゃないですか!!
俺はむくりと起き上がる。
「こうなったらもう、俺の気持ちを頑張っている琴乃に伝えるしかない!!」
「ちょっと! あんた、また、アホな事をするんじゃないでしょうね!?」
俺はダッシュで自分の部屋に戻ると、乙女咲の運動会で着ている応援団の衣装を身に纏う。
鉢巻を締めて気合を入れた俺は、再びグラウンドに戻る。
全ては今も頑張ってくれている琴乃を全力で支えたいという一心からだ。
「何その格好?」
「まぁ、見ててくださいよ。小雛先輩」
俺は琴乃がいる病室に体を向ける。
「琴乃ー! 頑張れー!! 俺がついてるぞー!!」
俺は頑張ってくれている琴乃を全力で応援する。
ごめんな。琴乃。戦力外を食らった俺にできるのは全力で応援する事だけだ!!
ほら! 小雛先輩も何、ボケーっとしてるんですか!!
一緒に全力で応援しましょうよ!!
俺が小雛先輩を巻き込んで精一杯のエールを送っていると、病室の近くにある窓が開いてカノンが顔を出す。
「あくあー! 姐さんが、応援は嬉しいけど恥ずかしいからやめてだってー!」
くそおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
俺は、なんの役にも立てないのか!!
再び俺がグラウンドの上で打ちひしがれていると、真剣な顔をしたえみりと楓の2人が出てきた。
「姐さんが痛みとか不安から気を紛らわせるために、なんか適当な配信して欲しいって言ってました!」
「ゆかり、あくあ君の事を頼んだぞ!!」
そういう事ならまかせろ!!
俺達は白銀キングダムの配信部屋に移動すると、すぐに配信をつけた。
「というわけでですね。今から緊急配信を始めます!!」
俺が配信をつけると、すぐにみんなが集まってきた。
【あれ? 今日って姐さんの出産予定日じゃなかったっけ?】
【出産報告キター!!】
【うおおおおおおおお!】
【待て! 小雛ゆかりも配信つけたぞ!】
【雲行きが怪しくなってきたな】
【あくあ様、もしかしてまた戦力外通告受けました?】
【↑ソレダ!】
【ラーメン捗る:え? あくあ様が出産!?】
【↑あくあ君が出産してどうする!!】
【草野球の配信はここですか?】
【↑本当に草w】
おっ、小雛先輩も配信つけたな。
俺はすぐに通話アプリで小雛先輩と繋ぐ。
「えー、というわけで、2回連続2度目の戦力外通告を受けました。白銀あくあです。多分、この様子だと3回目、4回目も怪しくなってきました。ね? 小雛先輩」
「だって、仕方ないじゃん! 私達、子供産んでないんだもん!!」
小雛先輩は台パンする。
あのー、小雛先輩。そういうのは琴乃のお腹の中に居る子供の教育に悪いんでやめてくれませんか?
【ラーメン捗る:ぐへへ! いっそ、小雛パイセンも妊娠すればいいんですよ!!】
【↑ソレダ!】
【さすが捗る。これが検証班の本気か!!】
【そうだそうだ。小雛ゆかり、お前もあくあ様の子供を妊娠するんだよ!!】
【ソムリエ:え!? ゆかりとあくあ君が子作り配信するって!?】
【↑うおおおおおおおおおおおおおおおお!】
【盛り上がってきました!!】
【鯖ちゃん:●REC!】
【小雛ゆかり、お前があくあ君の子供のママになるんだよ!】
【ついでにお前があくあ様のママになってもいいんだぞ!】
しかし配信と言っても、何をすればいいんだろうな。
ただ、いつものように小雛先輩とぐだぐだと喋っているのでは味がない。
それじゃあ俺たちの日常となんら変わり映えがないからだ。
「小雛先輩、せっかくだからなんかゲームしませんか?」
「え? 何するの? 野球ゲーム?」
小雛先輩、もう野球から離れてください。
それとも神様がなんとしても、俺達に野球をやらせようとしているのか。
「いやいやゲームと言っても、そういうゲームじゃないんですよ。今から俺が琴乃とのアレソレをクイズにするんで、小雛先輩が回答者になって答えてくれませんか?」
「いいわよ。そういうのは得意だから、任せておきなさい!!」
本当かなぁ?
小雛先輩は自信満々な表情で胸を叩く。
【クイズ番組で1問も正解できなかった小雛ゆかりさんの配信はここですか?】
【クイズ番組でドベ常連の大女優さん】
【あくあ様。小雛ゆかりにクイズは無理です】
【ラーメン捗る:姐さんを励ます配信で、姐さんへの羞恥プレイが始まった!】
【↑それなw!】
【姐さんがんがれ!】
【姐さん、痛みも感じないくらい羞恥心で悶えちゃいそう】
【↑ばっか、それが狙いなんだよ!!】
とりあえず、第一問は何にしようかな?
ああ、そうだ。あれがいいな。
「えー、皆さんも俺、白銀あくあが琴乃の事が好きなのはご存知ですよね? そこで問題です! 俺は琴乃のどこが1番好きなんでしょうか!」
「はいはい!」
小雛先輩は元気よく手をあげる。
さすがは自分から自信があると言っただけはありますね。
「こんなの簡単でしょ! あんたと言えば胸一択でしょ!!」
小雛先輩はキラキラとした純粋な瞳でそう答える。
【正解!!】
【小雛ゆかり……さっきは無理だって言ってごめんな!!】
【まぁ、これは外さないでしょ!!】
【ラーメン捗る:デカ尻!!】
【↑おま、バカ! 後で○されるぞ!!】
【あーあ、捗る……】
【RIP捗る!!】
【ソムリエ:いやいや、身長がデカいところでしょ!!】
【↑どうしてお前らは自分からそう地雷を踏んでいくんだw】
【RIPソムリエ!!】
腕を組んだ俺はうんうんと頷く。
確かに俺は琴乃の大きな部分がとても好きだ。
だが、1番はそこじゃない!!
「ぶっぶー! 正解は思いやりがあるところ。周りをちゃんと見て気遣いができる優しさがあるところです!!」
「ちょっと! その理由はもっともだけど、あんたならそこは普通に答えなさいよ!!」
解答が外れた小雛先輩はカメラの前で悔しがる。
いやいや、確かに俺が好きなのは否定しない。むしろ、俺は大好きだ。
でも、流石にそれが1番好きはなんかこう、色々とダメでしょ!!
【あくあ君……素直になっていいんだよ】
【あくたん、本当は胸が1番好きなんでしょ! 早く白状して!!】
【せっかくあくあ様が真面目に答えてるのに、周りからそういう解答を強要されてて草w】
【姐さん色んな意味で悶えてそうw】
【なるほど、痛みをより強い羞恥という痛みで相殺するって事ですね!!】
【ラーメン捗る:あくあ様。姐さんは胸を褒められるのも満更じゃないみたいですよ!!】
【↑おい!!】
【捗る。こいつwwwww】
えっ? 琴乃がそれでもいいって!?
いや、コメントが流れるのが早すぎてよく見えなかったし、多分きっと俺の気のせいだろう。
俺は気を取り直して2問目に移る。
「それでは2問目です。俺が琴乃の仕草で1番好きなのはどこでしょう?」
小雛先輩はしばらく頭を悩ませた後に、ポンと手を叩く。
「わかった! 琴乃さんって良く腕を組んでるわよね。だから正解は腕を組む仕草! 何故なら琴乃さんの大きなものが腕を組んだ時に強調されるから!!」
俺は小雛先輩の言葉にずっこけそうになる。
小雛先輩、そろそろそれから離れてくれませんか?
流石の俺も、ここでそんな不謹慎な解答はしませんよ!!
確かに好きだし、その仕草も好きだけど!!
【ラーメン捗る:これ、正解です!】
【やっぱり全てが胸に帰結するんだよね】
【そういう話になると急にコメ欄の知能指数が下がる件について】
【↑元々そんなに高くない件について】
【↑確かに!!】
【言われて見れば、姐さんって良く腕を組んでるよな】
【へー、あれってアピールするためだったんだ!!】
【私も明日から腕組んでデカいのアピールします!!】
あれ? なんかみんなコメ欄でそっちの話ばっかりしてない?
俺の気のせいかな。
「ブッブー、残念ながら外れです。正解は、琴乃が顎に手を当てて物思いに耽る時でした! 思慮深い琴乃らしい仕草だし、その時に見せる横顔も好きなんですよね。それか、カノン達と一緒に居る時に、たまに普通に子供っぽくはしゃいでる時ですね。俺はそういうギャップに弱い男ですから。それと、小雛先輩、いい加減それから離れてくださいよ。好きなのは否定しませんけど」
「ぐぬぬぬぬ! こんなのわかるわけないでしょ!! 次よ次! 次はもっと簡単なのにしなさいよね!!」
小雛先輩は地団駄を踏んでわかりやすく悔しがる。
ちなみに小雛先輩、俺が1番好きな小雛先輩のリアクションは、それです。
やっぱり小雛先輩が悔しがる姿からでしか摂取できない何かがあるんですよ。
【ラーメン捗る:速報! 姐さん、陣痛より羞恥心で悶える!!】
【姐さんにさらなる痛みを与えてる配信はここですか?】
【姐さん、陣痛どころじゃなくなってて草w】
【ソムリエ:いいぞー、もっとやれー!】
【↑だから、お前、後で怒られても知らないぞ!】
【さすがはあくあ様、姐さんの事をちゃんと見てる】
【姐さん、あくあ様にいっぱい好きなところあげてもらって良かったね!】
【姐さんも、こういうのは陣痛じゃない時に聞きたかっただろうなw】
【↑それなw】
仕方ない。
このままじゃ小雛先輩が当てられそうにないし、次はもっと簡単な問題にしようかな。
「それでは第3問です。俺が琴乃の身体で1番好きなところはどこでしょう?」
「胸!」
手を挙げた小雛先輩は自信満々に即答した。
いや、だからね。それも好きだけど、そろそろそれから離れましょうよ!!
【今度こそデカ尻だ!!】
【デカ胸かデカ尻か悩ましいな】
【デカ胸派VSデカ尻派】
【あくあ様は高身長女子も好きだから、そっちの可能性もある】
【姐さんジム行ってるし、太ももとか腹筋とかの可能性もあるんじゃない?】
【↑それもあるな】
【悲報、あくあ様の癖が多すぎて意外と難しい】
【↑それな!】
【朗報、あくあ様の癖が多いおかげで、多くの女性がどれかに引っかかって救われてる!!】
【↑それな!!】
【あれ? 捗るとソムリエは?】
【捗るとソムリエが居なくなってるけど、ついに姐さんに消されたか?】
【↑草wwwww】
【RIP捗る、RIPソムリエ!!】
確かに俺は琴乃の大きいのが好きだ。
もちろんそれだけじゃない。全部が好きだ!!
ただ、その中でも1番好きな部分がある。
「残念ですが、正解は腋でした!! 俺は良く琴乃とジムで鍛えるんですが、やっぱりトレーニング後の腋が、最高にたまらないんですよね。特にジムが終わった後の汗ばんだ時の腋、これはたまらないものがあります。とはいえ、他の部分も捨てがたい!! いや、やっぱりここは全部だ!! 1番なんて決められない!! 琴乃ーっ! 俺は琴乃の全部が好きだー!!」
「だから、そんなのわかるわけないって言ってるでしょ!! ムキーっ!」
小雛先輩は自分の配信席から飛び出ると、俺の上に飛び乗ってしがみついてくる。
ちょっと、小雛先輩。いくらクイズが当たらないからってしがみついてくるのはダメですよ。
俺が小雛先輩を背負ったままその場をぐるぐるしていると、外から走る音が聞こえてきた。
「あくあー!! 産まれたよー!!」
「本当か、カノン!?」
俺はカノンの言葉を聞いて、小雛先輩を背負ったまま慌てて病室へと駆け出した。
【ラーメン捗る:速報、姐さん出産完了、母子ともに健康です!!】
【↑うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!】
【やったああああああああああああああああ!】
【姐さん、出産、おめでとう!!】
【ついに姐さんがお母さんに!!】
【姐さん、無事に産まれてきて本当に良かった!!】
【ソムリエ:陣痛より配信の方がキツかったって言ってました!】
【↑草w】
【今後もあくあ様には出産の度に配信してもらおう】
【あくあ君、野球以外にもできる事が増えて良かったね!】
あっ! やべ、配信つけっぱなしだ!!
えっ? 小雛先輩が代わりに消しに行ってくれるって!?
ありがとう。小雛先輩!!
俺は小雛先輩に礼を言うと、愛しい琴乃と娘が待っている病室に向かって走っていった。
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