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沖縄の姉妹、全ての始まり。

『ピピピ、ピピピ! 朝だよ〜! 起きて、お姉ちゃん!!』


 私は寝返りを打つと、あくあ君ボイスの目覚ましのボタンを手のひらで押してアラームを止める。


「んん……もう、朝ぁ……?」


 はっきり言って私は朝が弱い。

 ベッドの上で微睡みながら、棚に置いたメガネを探して手を彷徨わせる。

 すると、外からバタバタという慌ただしい足音が聞こえてきた。


「アキねぇ、おはっよー!!」


 妹のナオが私の上に乗ってくる。

 全くもう……。朝から元気なんだから。


「ほら、アキねぇ、早く起きないと職場に遅刻しちゃうよ?」

「ん……わかってるって」


 私はゆっくりと体を起こすと、棚の上においてあった眼鏡を掛ける。


「ナオ、朝から嬉しそうね。なんかあった?」

「えへへ。アキねぇ。実は私、あくあ様の沖縄ライブチケット当たったんだ!!」


 ナオは私に向かってスマホに映った当選画面を見せつける。

 え……嘘!? 本当に当たってるじゃん!!


「良かったね。ナオ。おめでとう!」

「ありがとう。アキねぇ! これで私もアキねぇみたいに生のあくあ君に会う事ができるよ!!」


 ナオは嬉しそうな顔を見せる。

 その笑顔を見ただけで、私も自分の事のように嬉しくなった。


「ふふっ、私の場合、あくあ君と会ったと言っても、仕事の関係で少しだけ喋っただけだもん。ライブを見れるナオの方がいいわよ」

「えー? そうかな? あくあ様って仕事で関係がある人と付き合ったり結婚したりしてるし、私からするとワンチャンあるかもしれないアキねぇの方が羨ましいよ」


 私は部屋を出ると、顔を洗うために浴室の隣にある洗面台に向かう。

 洗面台にまでついてきたナオは、悪い顔をすると私の背後に回って私の無防備な腋をくすぐってくる。

 ちょ、もう! ふふふっ、やめてっててば! 私、腋が弱いんだから!!


「アキねぇって、朝はダウナー系だけどメガネ美人さんだし、胸も大きいし、ストレートの黒髪が綺麗だし、絶対にチャンスあると思うんだよね。あと、あくあ様って仕事できる女の人とかに弱そうだし!」

「ないって! あくあ君の周りなんて、私よりも美人さんばっかりだよ!!」


 それこそ、宇宙ライブに必要な訓練を見学した時に、暇だった女優の小雛ゆかりさんがあくあ君についてきていたけど、テレビで見る小雛ゆかりさんよりも10万倍くらい綺麗だったもん。

 きっと、カノン様とかえみり様とか生で見ると信じられないくらいの美人さんだよ。


「ほら、そんな事よりナオは勉強大丈夫なの? スポーツ推薦が決まってるとはいえ、高校に入ってから留年したら意味ないんだよ」

「わ、わかってるって。最近はその……将来の事を考えて、ちゃんと勉強とかだってしてるし」


 ナオは私からスッと視線を逸らす。

 全くもう、わかりやすいんだから。


「本当に?」

「本当だよ〜」


 ナオはぷくーっとほっぺたを膨らませる。

 ふふっ、その顔はちゃんと勉強しているようね。


「ナオはバスケットでプロを目指したりしないの?」

「んー……。それも考えたけど、他にもやりたいっていうか、興味がある事ができたんだよね」


 何それ? 私は聞いてないんだけど。

 私はナオに対して、追求するような視線を向ける。


「むふふ。アキねぇには内緒〜」

「あっ、ずるい! ナオ、私にも教えてよ。教えないと……」


 私はナオの後ろに回り込むと、さっきの仕返しをした。


「ちょ、アキねぇ!? ぷぷっ、私も腋、弱いんだってばぁ!」

「いやいや、ナオだってさっき、私の事をくすぐってきたじゃん」


 ほれほれ〜。

 私は洗面台の前で妹のナオをくすぐり続ける。


「2人とも、何やってるのー? 朝ご飯もう出来てるわよ〜!」

「「は〜い!」」


 私とナオは顔を見合わせると、慌ててリビングに向かう。

 お母さんの作ってくれた朝食を食べた私は、朝の支度を整えて家を出る。


「おはよう、アキちゃん」

「おはようございます」


 私は近所のおばちゃんと軽く朝の挨拶を交わすと、駐車場に停めている自分の車に乗り込む。

 さてと、今日も頑張りますか!

 車のエンジンをかけた私は、いつものように地元ラジオ局の放送をつけた。


『沖縄の皆さん、おはようございます! 今日から、そちらで少しの間、お世話になるBERYLの白銀あくあです! 短い間ですが、よろしくお願いします!!』


 あっ、ライブの宣伝だ。

 これから来るって事は、生放送じゃなくて事前に録音していたあくあ君の音声データを流しているのかな?

 私はあくあ君の声を聞きながら会社に向かって車を走らせる。

 すると、【ようこそBERYL】と書かれた看板が目に入ってきた。


「もう、ここら辺もBERYL一色ね」


 BERYLのライブを記念して、街の至る所にBERYLを歓迎する看板が立っている。

 それどころか大通りでは、平日の昼間なのに、もう歓迎飲み会をしている人達までいた。


「いいなぁ。私も昼から飲みたいよ」


 でも、今から仕事だし今日は我慢我慢。

 その分、忘年会でたくさん飲もうっと。

 職場に到着した私はラジオを切ると、ゲート手前で車を停車させて車の窓を開く。


「おはようございます。高嶺先生」

「おはようございます。今日もよろしくお願いします」


 私は自分のIDを提示すると、職場である国立宇宙開発機構、沖縄宇宙通信局の敷地内に入る。

 ここでは衛星軌道上にある人工衛星から送られてくるデータを元に、人工衛星の姿勢制御を行なったり軌道修正を行なったりする場所だった。

 でも、宇宙開発の麒麟児、エーロイ・マスク氏が率いるSpace Experience X社が国立宇宙開発機構に対して多大なる投資を行った事でここも様変わりしちゃったのよね。

 かくいう私も、そのSpace Experience X社からの出資金で雇われた研究員だ。

 私は自分の車を駐車場に停めると、ロックをかけて自分に与えられている研究室へと向かう。

 すると通路の向こう側から、同じ職場の仲間が私に気がついて手を振る。


「高嶺先生、おはようございます。昨日頼まれていたデータ、暗号化して送信しておきました」

「ありがとう。後で見ておくわね。それと夜勤、お疲れ様」


 私と入れ替わりで家に帰る研究員は、軽く伸びをしながら駐車場へと向かって行った。

 さてと、私も自分の仕事をしなきゃね。 

 自分に与えられた研究室に入った私は、荷物をロッカーに入れて自分のデスクの椅子に座る。


「さてと、今日も始めますか」


 私は自分のパソコンを起動する。

 するとふざけた顔をしたAIが出てきた。


『おはようございます。アキ先生』

「おはよう。みことちゃん」


 ここでは最新型AI3510が社内のサーバーと全所員のパソコンを管理している。

 間違いなく世界最高のセキュリティのはず……なんだけど、若干、人間臭いところがあるみことちゃんから、なんとも言えないポンコツ臭を感じるのは私だけだろうか。

 そもそもAIにユーモア値の設定なんている? でも、そこが鯖兎こよみが天才と言われる所以だ。普通の人間ならAIにユーモア値なんて設定を入れようと思ったりなんてしないもん。


「暗号化されたファイルが送られてきているはずなんだけど……」

『はい、ございますよ。白銀あくあ、ドキドキシャワータイムというファイルですね』


 私は椅子から転がり落ちそうになる。

 ちょっと待って。何そのファイル!?


『あ、すみません。これはAI3510が個人的に収集しているファイルの一つでした。聞かなかった事にしてください』

「いやいやいや! 普通に気になるでしょ!!」


 やっぱりポンコツじゃん!!

 私は椅子の背もたれに体重をかけると、ズレたメガネを直して軽くため息を吐く。


『暗号化されたファイルを解読しました。送られてきたデータを画面上に表示しますか?』

「よろしく」


 私は送られてきたデータと睨めっこするように画面を見つめる。


「うーん、やっぱおかしいよねぇ」


 本当に微かだけど予想よりも人工衛星の姿勢がずれていってる。

 でも、人工衛星の姿勢が想定よりズレる事は珍しくない。

 なぜなら、人類はまだ宇宙をそこまで解明しきれていないからだ。

 だからある程度の誤差であれば、それもある事として処理される。

 これも普通なら誤差の範囲内だけど、私はこのズレに規則性があるような印象を抱いた。


「みこと、どうしてかわかる?」

『人工衛星のアクチュエータと姿勢制御センサーに異常は見られません。ソフトウェアの誤作動も確認できない事から、単純に大気抵抗か重力傾斜トルク、太陽放射圧か地磁気トルクのせいではないでしょうか?』


 普通に考えたらそうよね。

 でも、私の直感がそうじゃないと言っている。

 私の先生も言っていたけど、研究者は自分の直感を大事にした方がいい。


「これ以上詳しく調べるには、ここじゃダメそうね」

『はい。それに調布にある本部に行けば、ここにある機能を制限してるAI3510より上のグレードのAI3510が使えます』


 関東にはSpace Experience X社の本部もあるし、千葉の観測所のデータと照らし合わせると色々とわかりそうね。

 研究者としての血が騒いだ私は、すぐに出張許可を取って荷物をまとめる。

 こういう時のために、急な主張のために必要なものをキャリーケースに纏めてあってよかった。

 私はスマホを開くと、お母さんにメッセージを送る。


【私:しばらく仕事で東京に行ってくるわ】

【母:気をつけていってきてね】


 細かい事を気にしないお母さんは、出張の理由すらも聞いてこなかった。

 こういう、ゆるーいところがうちの家のいいところよね。私が実家から出ないのもそれが原因だ。

 私は続けて、妹のナオにメッセージを送る。


【私:ナオ、私、しばらく東京に行ってくるから】

【妹:え〜!? いいないいな〜! アキねぇ。なんでも良いからお土産買ってきて! あ、あくあ様とコラボしてる東京ONASU買ってきて!! 聖女製菓曰く、あくあ様のと同じサイズのお菓子なんだって!!】


 へ、へぇ、そうなんだ……。

 私はお菓子の画像を検索すると、その大きさに息を呑む。

 DE、DEKAI……SUGOKU、DEKAI……。

 って、そんな事をしてる場合じゃないんだってば!!

 私はパソコンの電源を切ると、必要なデータを持って自分の研究室を後にした。

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https://x.com/yuuritohoney

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