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白銀あくあ、ハイクラスラグジュアリーアイドル。

 アイの妊娠で喜んだのも束の間、母さんから美洲お母さんが倒れたと言う連絡が入った。

 俺はバイクを安全運転で飛ばすと、美洲お母さんが入院してる病院に向かう。


「美洲お母さん! 大丈夫!?」


 俺が病室の扉を開けると、美洲お母さんの顔に白い布切れが覆い被さっていた。

 嘘……だろ?

 俺が膝から崩れ落ちそうになると、美洲お母さんが手を伸ばして顔にかかった白い布切れ……じゃなくて濡れたタオルを手に取る。


「あくあ君?」


 あああああああああああああ!

 無事で良かったぁぁぁあああああああああ!

 安心した俺は膝から崩れ落ちた。


「あくあ君、どうしてここに……?」

「いや、美洲お母さんが倒れたって聞いて。それよりも、そのタオルはどうしたんですか?」


 俺は立ち上がると、美洲お母さんに近づく。


「ああ、実は小雛ゆかりが看病に来てくれてな」

「えっ? 看病?」


 普通に考えて小雛先輩に看病なんてできるわけないでしょ。俺は困った顔をする。

 それこそ小雛先輩は、俺が熱を出した時にも俺の事を殺しかけたんですよ。

 この世界で一番看病とかしちゃいけない人じゃないですか。


「それって美洲お母さんの止めを刺しに来たの間違いじゃなくて?」

「あんた、ぶっ飛ばすわよ!」


 うわぁっ!? 俺は声がした方に顔を向ける。

 すると、椅子に座った小雛先輩は誰かが持ってきたフルーツ盛りの蜜柑をパクパクと食べていた。

 えっ? 自分が持ってきたやつを食べてるだけだって!?

 あ……うん、それってありなんですか?


「あくあ君、心配をかけてごめんね。倒れたのもただの過労だから、安心してくれ。医者からも2、3日安静にしてたら治るって言われたから、これを機に健康診断の検査とかもしておこうと思うんだ。だから、しばらくは入院して家に帰れないけど大丈夫だから」

「わかりました。でも、ただの過労だからって無茶したらダメですよ。ちゃんと休んでくれないとお医者さんより俺が怒りますから!」


 俺の言葉を聞いた美洲お母さんは嬉しそうに笑った。

 だけど、その後に表情を曇らせる。どうしたのだろうか? 美洲お母さんの反応を見た俺は首を傾ける。


「ああ、他の仕事は延期にしてもらったんだが、延期できなかった仕事があってね。それでキャンセルせざるを得なかったのが少し心残りなんだ。詳しい話が聞きたかったから、そこの小雛ゆかりから聞いてくれ。私は眠くなってきたから、少し寝るよ」

「美洲お母さん、ゆっくり休んでね」


 俺は美洲お母さんのお布団を整えると、小雛先輩が食べ終わった後のみかんの皮を回収して、周辺を簡単に掃除してからそっと病室を出る。


「で、美洲お母さんのキャンセルした仕事ってなんなんです?」

「ああ、それね。この後、私と美洲が出る美洲の特別番組なんだけど、生放送だから美洲抜きで撮影する事になったのよ」


 なるほど、そういう事でしたか……。

 美洲お母さんを題材とした番組なのに、本人が出れないとなると現場はすごく苦労してるだろうなと思った。

 よしっ! そういう事なら、美洲お母さんの息子である俺が一肌脱ぎますよ!

 幸いにもこの後、俺の予定は空いている。


「小雛先輩、俺に任せてください!」

「……なんかすごく嫌な予感がするんだけど、あんたまさか物凄くアホな事を考えてないでしょうね?」


 小雛先輩がジト目になる。

 き、気のせいですよ!

 俺は専属のスタイリストチームのみんなを呼び出すと、事情を説明して協力してもらった。


「完璧だ……。見てくださいよ、小雛先輩」


 完全に美洲お母さんになりきった俺は、変身を後ろで見ていた小雛先輩へと視線を向ける。


「あんたってやっぱバカでしょ! なんであんたが美洲に変装してるのよ!!」

「いや、だって、美洲お母さんが主役の番組なんだから、主役の美洲お母さんがいた方がいいでしょ!」


 小雛先輩から借りた台本を見ると、基本的に美洲お母さんは座ってるだけでいいと書いてあった。

 そもそも美洲お母さんは口数が多いタイプじゃないし、喋り倒す俺と小雛先輩が異常なだけで、バラエティに出る役者はそれが普通とされている。


「しかし、あんたらって本当に親子だったのね。メイクさんも上手いんだろうけど、気持ち悪いくらい似てるわ」

「そうでしょうそうでしょう」


 男らしい体型とか喉仏を誤魔化すような服装にもしてもらったし、見た目はこれで十分にうまく誤魔化せると思った。


「でも、声はどうするのよ? 全く喋らないなんて事ないんだから、絶対にバレるでしょ」

「ちょっと待ってください。あっ、あー、あー、あー、ん、あーーーーー、あ、あ、あ! どうかな? 小雛ゆかり、これでいつもの私になっただろう?」


 俺の声を聞いた小雛先輩は呆れた顔をする。


「あんたとえみりちゃんって無駄に器用よね」


 無駄じゃないですよ! こうやってちゃんと役に立ってるんですから!!

 ともかく、これで万事大丈夫。ええ、そう思っていた時期が俺にもありました。

 俺は、この甘い判断をすぐに後悔する事になる。


「というわけで、今日のスペシャルゲスト! 雪白美洲さんです!!」


 俺は司会を務める楓の掛け声に合わせて舞台袖からスタジオの中に入る。

 くそぉっ! よりにもよって、なんで司会が楓なんだ!!

 こんなの秒でばれちまうんじゃないか? 俺はこちらをジロジロと見つめる楓の視線から目を逸らす。


「あれ? 美洲様……なんかちょっと、若干? 顔、変わりました?」


 嘘だろ!? この特殊メイクレベルの加工を野生の勘で見抜いたというのかっ!?

 俺は内心汗をダラダラと流しながら、適当に上手い嘘をついて誤魔化す。


「か、過酷な役者業に従事するあまり、役にのめり込みすぎて若干顔が変わる事とかってあるんですよ」

「ほへぇ、そんな事ってあるんですね」


 ふぅ、うまく誤魔化せたぞ。

 楓が純粋で良かったと、俺はホゲの神に心から感謝する。


「あれ? 美洲おばちゃんってば、今日、若干声おかしくない?」


 くそぉっ! なんで楓だけじゃなくてえみりが居るんだ!!

 小雛先輩もこういうのは早めに気がついて言っておいてくださいよ!! そしたら、生放送の前に事情を説明して根回しするのに!!


「えっと……過酷な配信業で声が枯れてですね」

「配信業……? ああ、確かにたまに小雛パイセンと一緒にゲームしてますね。でも過酷?」


 し、しまったぁ!! 俺は配信してるけど、美洲お母さんはあまりしてなかった!!

 ホゲってる楓と違って、鋭いえみりの追求に俺はタジタジになる。

 そんな俺を見かねた小雛先輩が助け舟を出してくれた。


「ほ、ほら、美洲って声優とかもやってるじゃん」

「あー、確かに」


 ナイスフォローです。小雛先輩!!

 さすがは俺の先輩だ!! 今日だけは素直に褒めちゃう!!


「あれ? 小雛パイセンが美洲おばちゃんに助け舟を出すなんて珍しくないですか? それによく見たら美洲おばちゃんなんかデカくない? もしかして、身長伸びた?」


 えみり、鋭いよ!! 細かい検証なんてどうでもいいから、楓みたいにもうちょっとホゲっていこう!!

 俺がそんな事を考えていたら、えみりの隣に居たカノンがひょこっと顔を出す。


「えみり先輩。生放送であんまり時間ないんだから司会の進行を邪魔しちゃダメですよ」

「あ……うん」


 さすがはカノンだ!!

 後で家に帰ったらみんなの前で10回はディープキスするぞ!!


「それでは美洲様はこちらの席に、他の皆さんはあちらの席にお座りください!」


 俺達は楓の指示に従って自分達に用意された席に座る。

 ふぅ、スタートで若干躓きかけたが、ここまではなんとか完璧だ。

 俺はいまだに疑った視線でこちらを見ているえみりの視線を全力で回避する。


「えー、まずは日本を代表する大女優でスターの雪白美洲さんについて、出演者の皆さんと共に迫っていければなと思っています。それでは最初に、この映像をどうぞ!」


 俺は美洲お母さんの出演作を全て網羅している。

 だから、どんな問題が来ても大丈夫だ。

 俺は余裕のある顔で、モニターへと視線を向ける。


『えっ? 免許ですか?』


 免許? ああ、そういえばフォーミュラの映画に出演した時に免許を取ったって言ってたっけ。

 そういえばその話を母さん、しとりお姉ちゃん、らぴすの3人に聞いた時に、何故か話をはぐらかされたんだよな。


『どわーっ!』

『助けてくれーっ!』

『うぎぎぎぎっ!』


 嘘……だろ?

 美洲お母さんの危険運転に耐えきれなかった教官たちが次々とムチウチになって離脱していく。

 そうして教習所から教官達がゼロになった……。


『なんとしてでも美洲様に免許を取らせてみせます!!』


 プロジェクト美洲、挑戦を諦めなかった教官達と書かれたロゴがカッコよく表示される。

 いやいやいや、普通に諦めましょうよ! 小雛先輩といい、危険運転をする人を卒業させたらダメだって!!

 そもそも教官が居ないのに誰が教えるんですか!?


『どうも、さすらいのバイト鬼教官、雪白えみりです!! 金がなくて困っていたら、とんでもない金額で急募してたので慌てて応募しに来ました!! えっ? 秒で採用? すぐに出てくれ? わかりました!!』


 俺はモニターに厳しい視線を向ける。えみりはこの時って、まだ妊娠してなかったんだっけ?

 よくわからないけど本当に無事で良かった……。


『オーケイ! まずはアクセルを優しく踏んで、ブレーキを上手に踏む訓練から始めましょう!』


 えみりに指導された美洲お母さんの運転が劇的に改善していく。

 いやいやいや、教えるのうますぎかよ!! えみりは、ついでにうちの小雛先輩にも運転を教えてくれ!! 頼む!! って、危険運転で撮影から追い出された小雛先輩も追加の講習受けに来てるんかーい!

 俺は心の中で幾度となくつっこむ。


『やったー、免許とれたー!』


 ズタボロになってガムテープで補修された教習車の前で美洲お母さんが喜ぶ。

 その後ろでえみりが無言で泣いていた。きっと大変だったんだろうな……。


『というわけで、みんなでドライブにいかないか?』

『『『えっ?』』』


 母さん、しとりお姉ちゃん、らぴすの3人が顔を見合わせる。

 その後、画面が暗転すると3人の悲鳴や叫び声と共に、映画のようなエンドロールのテロップが流された。

 あのー、テロップに乗ってあった犠牲になった教官達ってなんですか?

 あ……生きてるんなら別にいいんです。


「というわけで雪白美洲さん、この時の心情について一言お願いできますか?」


 俺は椅子から立ち上がると、カメラの前で土下座した。


「ご迷惑をおかけした教習所のみなさん、本当にすみませんでした!! 免許は返納しようと思います!!」


 親の免許返上をサポートするのも、子供ができる親孝行の一つだと思う!!

 バイク乗りの1人として、ただの初心者でしかない小雛先輩はともかくとして、美洲お母さんは免許をとっちゃいけない人だと判断した。

 退院したら家族のみんなと連携して、絶対に免許を返納させようと、俺は心に誓う。


「美洲おばちゃん……ありがとう。本当にありがとう!!」


 えみりは涙を流しながら拍手をする。

 そっか、えみりもバイトの教官だもんな。言いたくても言えなかったんだなと理解する。

 スタジオの中が謎の感動に包まれると、ここで一旦CMが入った。

 すると小雛先輩が近づいてきて、俺とひそひそ話を始める。


「ちょっと、あんた、そんな事、勝手に言って大丈夫なの? 後で美洲に怒られたりしない?」

「大丈夫です。俺が責任を以て免許返納させますから」


 そんな事よりも、俺たちがヒソヒソ話してるせいで、またえみりがこっちを疑いの目で見てますよ。


「じーっ……小雛パイセンと美洲おばちゃん、いつの間にそんなに仲良く……」


 ほらほら、小雛先輩もさっさと自分の席に戻ってくださいよ。

 これ以上一緒に居ると、勘のいいえみりにバレちゃうかもしれませんから。


「それでは次の映像はこちらです!!」


 俺はモニターへと視線を向ける。

 すると、夜の店でバイトする美洲お母さんの姿が映し出された。


「実はこれ、ごく短期間なんですが、高校卒業した後にラウンジでバイトしてた時の美洲様の写真になります。美洲様は下積み経験がほとんどなかったんですが、この時は一人暮らしを始めたばかりだったので、お金が必要で短期でちょこっとだけやっていたと、当時のママさんから聞きました」


 へぇ、美洲お母さんにもそんな時代があったんだな。

 それにしても18歳には見えないくらい綺麗だ。写真に写ったお客さん達もデレデレした顔をしている。

 って、時間が経っているとはいえ、お客さん達の顔にモザイクとか入れなくていいのかな?

 俺は写真をまじまじと見つめると、首を傾ける。あれ? なんかこの人たち、どこかで見た事があるような……。


「ちなみにこの写真に写ってるお客様が誰かわかりますか? あ、勘の鋭いえみり、どうぞ!」

「藤財閥の藤蘭子会長です!!」


 あああああああ!

 言われてみたらそうだ。

 蘭子お婆ちゃん若い!!


「ちなみにこの隣にいるのが、若かりし頃の森長めぐみさんです! メリーさん一号機の中の人といえば、皆さんわかりますね。そう、みなさんをビスケット地獄に落とし込んだ犯人です!!」


 楓の言葉にみんなが苦笑する。

 蘭子お婆ちゃんもめぐみさんも若いなぁ。

 それと後ろにいるのは蘭子お婆ちゃんのお姉さんの藤堂紫苑さんかな?


「というわけで、次の写真がこちらです!」


 次は誰だろう?

 随分と若いグループみたいだけど……って! この顔は間違いない!!

 俺は写真に写った人がすぐに誰か気がついた。


「「羽生総理!」」

「正解です!」


 えみりとカノンはハイタッチして喜び合う。うんうん、2人とも、可愛いぞ〜。


「ちなみに当時、自衛隊に所属していた羽生治世子内閣総理大臣を筆頭に、丸太で有名な佐藤議員、ヘソだしの行方議員達が所属していた部隊の親睦会だそうです。いやぁ、この頃から仲が良かったんですねぇ。ところでラウンジのママさんから聞いた話によると、酔って転けた羽生総理が美洲様の体にダイブしてきたとか……これは、本当ですか?」


 楓が俺に話を振る。

 はっきり言って俺はその時の状況を知らないし、羽生総理も不慮の事故なら悪くないと思う。

 でも、これはそういう問題じゃないんだ。


「ええ、本当です。抱きつかれました」


 観客席のお客さん達から笑い声と共に暖かな拍手が飛んでくる。

 総理、すみません。でも、カンペにもそう書いてあったんですよ。


「それでは次の写真が……おわっ!?」


 お酒を嗜む色気のある顔をした美洲お母さんがモニターに映し出される。

 綺麗だ……。って、そうじゃない! 当時の美洲お母さんって18歳でしょ!?

 未成年飲酒でアウトだし、時効だから無罪にはならないんじゃない?


「あっ、ちなみにこの時の日本は18歳が飲酒しても大丈夫だったそうです。そういう歴史を感じる写真ってことですね。一瞬、ブラックな画像かと思ってびっくりしましたよ。これはイエローですね。黄色信号です」


 ふぅ、危なかった。音さんのはただの疑惑でしかなかったけど、現代ならこれは確実アウトだ。

 もし、美洲お母さんが俺みたいに朝の特撮番組に出てたら完全に一発アウトだったろう。

 俺が軽く息を吐いて気持ちを落ち着けると、次の写真に切り替わる。

 ってぇ!? 俺はモニターに映し出された写真に目を見開く。


「あくあ!?」

「あくあ様!?」


 スーツアクターの既婚者のお姉さんとその奥さんとベッドの上に腰掛けて、仲良く肩を組む俺の写真がモニター映し出された。

 それを見たカノンとえみりの2人が驚く。

 小雛先輩は俺にジト目を向けると、異常に気がついた楓が慌てる。


「あ……ホゲっててなんか違うオニやばい写真が出てきました」


 ほげええええええええええええええええ!

 楓はすぐに画像を切り替える。

 観客席にいる皆さんとスタッフのみんなはお互いに顔を見合わせると、すごく気まずそうな顔をしていた。

 その空気に耐えられなくなった俺は思わず前に出てしまう。


「いやいやいや! なんかこう、写真を撮ってる場所が悪いからアレだけど、そんな事ないから!!」


 あっ、しまった。普通に地声で喋ってしまった。

 俺が横に視線を向けると、ポカンとした顔のカノポンとホゲった顔の楓が視界に入る。


「あ、あくあ!?」

「あくあ君!?」

「あ……やっぱりあくあ様だったんですね」


 えみり、気がついてたなら、もうちょっと助け舟出してよ!!

 くっそ〜、こうなったら仕方がない。ネタバレだ。


「ちょ、ちょ、一旦、待って! まず美洲お母さんについて説明するから!」


 俺はスタジオに居た全員に美洲お母さんが体調不良だった事、大事には至っていない事、その代わりに俺が来た事について丁寧に説明する。


「うん、それはわかったけど、なんであくあが美洲さんの変装をする必要があったのかな? 普通に出てきたら良かったじゃん……」

「ほらね。私の言った通りじゃん。カノンさんナイスツッコミ」


 それは言うな!! 俺だって、なんでこんな事をしてしまったのか、いまだによくわからないんだ!!


「いやいや、あくあ様には私達にも想像できないような何か深い考えがあったんですよ!」


 さすがだ、えみり!! ありがとう、えみり!!

 深い考えなんて何一つないけど、そういう事にしておいてくれ!!


「刹那的に生きてるこいつに、そんな深い考えなんてあるわけないでしょ」


 小雛先輩はちょっと黙っててください!!

 ジト目になった小雛先輩は、楓にもう一度さっきの写真をモニターに映すように促す。


「で、これは何?」

「いやいや。だから、これは、その……違いますやん!」


 俺はしどろもどろになりながら写真を否定する。

 カノンと小雛先輩が俺を見る目がますますジト目になっていく。


「ていうか、この写真、切り取りですって! 全体を見てもらえればわかりますから!!」


 え? 全体の写真がある?

 それなら最初からそれを出してくださいよ!!

 モニターに切り取られる前の写真が映し出される。


「膝の上に子供……? も、もしかして……」

「さすがです。あくあ様!!」


 あ、あれ? なんか想像してた写真と違う……。

 もっとこう和気藹々としてた写真だったはずなのに、ベッドの上で撮ってるからかいかがわしく見える。


「いやいや、ただ俺は娘さんがドライバーファンのファンだっていうから、ね。ほら、そういうのあるでしょ!?」

「はあ!? 私なんてボッチ・ザ・ワールドだって、半笑いになった子供に指差された事しかないんですけど!?」


 それは小雛先輩の日頃の行いのせいでしょ!

 むしろ、子供に人気が出て良かったじゃないですか!!


「ともかく、普通になんでもないですから! ほら、写真撮った皆さんにも確認してくださいよ!!」


 舞台袖からスタッフのお姉さんが出てくると、楓に何かを囁く。


「えーと、どうやらあくあ君の証言が正しかったようです。でも、別にしてたからと言ってね?」

「うん。あとあと面倒な事にならないために報告はして欲しいけど、別に問題ないよ」


 ほっ! そうだった。この世界の男に浮気はないんだった。

 この世界の女性が求める男性はユニコーンのような男性じゃなくてバイコーンのような男性だ。


「というわけで、出演者が変更になったけど、このまま番組を続けたいと思います!」


 こうして俺は、美洲お母さんの代役を務めた収録を無事に終える事ができた。

 途中、正体がバレちゃったけど……まぁ、盛り上がったからいっか!

 細かい事は気にしない。それがハイクラスラグジュアリーアイドルの白銀あくあスタイルだ!!

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