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ラーメン捗る、チームの仲間。

 白銀カノン復活記念ゲーム大会も今日でいよいよ最終日だ。

 一般人枠として参加した私は、最終日にラーメン捗るのアカウントで配信を始める。


【捗るキター!】

【最終日に捗る視点だと!?】

【待ってました】

【小雛ゆかりの配信からやってきました】

【夢の検証班4窓が完成した】

【捗る、頑張れ。このチームはお前にかかってる】

【頼んだぞ。捗る】

【今日はあくあ様と捗るのW視点でイク!】


 えっ? 捗るがあくあ様でナニだって?

 それはいつもの事だろ。

 まぁ、最近はお腹の中に子供がいるから、あくあ様とはあまり濃厚なイチャイチャはできてないんだけどな。

 その代わりと言ってはなんだが、あくあ様といちゃつくカノン達を見て私は日々のぐへへ養分を満たしている。


「ちーっす。お前ら今日も悶々としてるかー? 毎日の妄想で体調チェック。これが健康と長生きの秘訣よ。どんなに忙しくても毎日好きな男の子とのアレやコレを妄想してコンディションチェックしておけ。お前らと捗るさんの約束な!」


 朝から好きな男の子、あくあ様とのアレやコレの妄想に耽ると頭もスッキリするし、仕事や勉強にも集中できるようになるからお薦めだ。

 私はただの1人の女性として、この妄想健康法を日本全国、いや! 世界各国に広めたい。

 いいか。妄想の世界に浸れば、他の事なんて全部どうでも良くなるんだ。

 戦争とか差別とか、くだらねぇ事をしてる暇があるならその時間で好きな男の子とのアレやコレを妄想しとけ。

 私もついこの前、羽生総理と外交について話したけど、女なんて好きな男の子の話だけですぐに仲良くなれるんだから。


 あくあ様は世界を平和にしてくれる。


 私が主導して立ち上げた国際あくあ様連合、通称国連の理念もまさにそれだ。

 是非とも世界の各国はこぞって私の国際あくあ様連合に参加してほしい。

 ちなみに参加特典はこのラーメン捗るが嗜みや姐さんの妨害にも屈しず、地べたを這いずり泥水を啜りながらも苦難と困難に耐えて集めた白銀あくあ特選画像集と、あくあ様のガールフレンド達の全面協力でよりリアルに進化したあくあ様の御神体Mk-2だ。

 核ミサイルで外交? 時代遅れにも程があるな。時代は御神体外交だよ。

 いいか、御神体を制するものが外交を制すんだ。

 同じただの棒でもただ全てを無くす事しかできない核ミサイルより、妄想が捗る御神体方がいいに決まってるじゃん!!


【開幕から終わってるw】

【おい、こいつの配信画面の隅っこにあるバナー見ろw】

【え? お前の配信スポンサーいるの? ってHP開いたらなんじゃこれw】

【国際あくあ様連合wwwww】

【国際あくあ様連合って何!?】

【HPが世界平和連合のパチモンで草w】

【ワーカーホリック:いつの間にそんなものを……うっ、また嫌な予感がします】

【おい、お前ら国際あくあ様連合のHPみろ!】

【あくあ様の特選画像集と御神体Mk-2だってぇ!?】

【ふぁ〜っ!】

【なん……だと? アレよりさらに進化した御神体があるのか……】

【会員名簿を見たら、一番上に日本と羽生総理の名前があって安心した】

【↑やっぱ、うちらの総理は行動が早いな!】

【何を考えてるかわからないトップより欲望に忠実なトップの方が同じ女としては信頼できる】

【黒蝶揚羽:また議会を通さずに勝手な事をして!!】

【↑こーれ、明日の謝罪会見の内容です】


 おっ、ログインできたな。

 私は自分の拠点にログインすると、あくあ様達の拠点に移動する。

 おー、でっかくなったなぁ。ってぇ!!

 私は飛んできた弾を回避する。

 そ、そうだった、私って同じチームじゃなかったんだ……。

 すぐに武装を解除した私は、両手を挙げて降参の姿勢を態度で示す。


『皆さん、私です〜。みんなのラーメン捗るですぅ〜』

『なんや。捗るかいな! 敵かと思ったわ!!』


 ふぅ、もう少しで蜂の巣にされるところだったぜ。

 私は拠点に近づくと、外に置かれたボックスに今日の上納金、持ってきた素材を放り込む。

 もちろんチームじゃない私は拠点にも入れないけど、これは私が面白半分で裏切ったせいだから仕方がない。


【お前が裏切るから……】

【小雛ゆかり、そろそろ捗るを許してやってよ】

【ちゃんと箱に小雛ゆかり様へって書いてあるw】

【捗るとあくあ様が同じチームに入るのは不安だから、これくらいの距離感でいい説もある】

【↑それな】

【捗るはあくあ様が居る時は変な事言わないし、意外と分別がある方だと思う】

【そうなんだよな。捗るって意外と常識ある】


 アイテムを預けた後は再び素材採取だ。

 せっかくここまできたなら車で移動して遠いところの素材を取ってこようかな。

 私は自分が作って上納した車を借りるために外のガレージに移動する。

 あれ? 私が用意した車はどこ?


『インコさん、誰か車使ってます?』

『ドキィッ!? あ、あれなぁ……はは、き、昨日、奪われてもうたんや……』


 えっ? あの車、奪われたんですか?

 私はコメ欄に視線を向ける。


【昨日のアレだよ】

【あの時、お前の上から小雛ゆかりが降ってきたじゃろ】

【その小雛ゆかりは、お前の用意した車に乗ってあそこまで行ったんだよ】

【で、メアリー様チームにコインも車も装備も全部奪われた】


 なるほど、そういう事か。

 昨日からガレージに車ないからおかしいなと思ってたけど今、車がない理由に納得した。


『それじゃあちょっと、私、代わりになるもん用意してきます』

『助かるで。後少しで最終決戦やからな』


 うーん、かと言って今から車を作るのも面倒だし……あっ、マップに難破船出てるじゃん。

 私はキングあくあ号と名付けられた板切れの上に乗ると、必要な道具を抱えて海上に現れた難破船を目指す。


【こいつ、ゲームうまw】

【なんで木の板一枚でこんなにもスイスイ運転できるんだよw】

【昨日これで数時間も漂流してたあくたんと小雛ゆかりは……】

【ちゃんと潮の流れ読んで運転してるの草w】


 難破船に到着した私は、手慣れた手つきで船を修理していく。

 まずは壊れた部分を修理して、ついでに耐久値の減った船腹も補強する。

 うん、とりあえずはこれで修理完了かな。

 最後に持ってきたタンクから船を動かすのに必要な燃料をしっかりと補給する。


「難破船改め、ラーメン捗る号しゅっぱぁーつ!」


 私はチーム小雛ゆかりの拠点がある方に面舵を切る。


『インコさぁん。船、持ってきましたよぉ〜』

『えっ? あんた、船なんてゲットしたの? やるじゃない!!』


 げげげ!? この声は小雛パイセンじゃないですか。

 もう、起きてきたんですね……。

 私は船に近づいてくる小雛パイセンに警戒する。


『よし、こいつの名前はクイーンゆかり号2世よ!!』

『あっ、はい……』


 さようならラーメン捗る号。

 お前は今日からクイーンゆかり号2世だ。

 短い間だったけどありがとな。


【RIPラーメン捗る号】

【クイーンゆかり号2世、不吉すぎる】

【こーれ、沈没します】

【どこで座礁するのか今から楽しみ】

【みんな座礁と沈没を前提にしててワロタw】

【捗る、どんまい!】


 拠点に到着した私はすぐに船をリフォームする。

 広い船室の中にアイテムボックスを作り、襲撃に必要な武器や弾薬、回復アイテムや素材を放り込んでいく。

 せっかくだから現地でものを作ったりできるようにして、リスポーン用のベッドも配置しよう。

 船内を一通りリフォームした私は船から降りると、船腹の色を塗り直してよく見えるところに大怪獣ゆかりゴンの画像を貼り付ける。

 これできっとあの人も満足してくれるだろう。おっと、名前も入れておかなきゃな。大怪獣ゆかりゴン号だっけ? あれ、違ったっけ? まぁ、こまけー事はどうでもいいや。

 良い女はそんな事を気にしたりしないからな!!

 それよりも内装もうちょっと綺麗にしておこっと。


【捗るのこういう細部にまでちゃんとこだわるところ好きw】

【やっぱ、こいつってヲタなんだよなぁ】

【ガワは大怪獣ゆかりゴン号で偽装してるけど、内側があくあ様一色なのがいいね】

【船室に設置したロングソファがあくあ様のカラーなのいいわ】

【↑ソファの上に置いたあくあ様のクッションとか、後ろにあるあくあ様のフラッグもな!】

【箱の表に書かれたデフォルメあくあ様なのかわいい】

【これ、手書きの画像をゲームに読み込ませてるのか。すごく器用だな】

【うわああああ。あくたんの全身が書かれたカーペットだぁ】

【嗜みと姐さんがこの内装を見たら喜びそうw】

【嗜みチームと交渉して、これロケラン100発分と交換してもらえw】

【↑メアリー様チームとコインで交換してもらえ】

【あ、あれ? ワンチャン、このチーム戦わなくても勝てるんじゃね?】


 ……コメ欄を見た私は目が点になる。

 そ、その手があったかぁ〜。

 私は試しに大会運営が用意した全チームが参加しているチャットに船内の画像を貼る。


[ラーメン捗る:この船、売ったら誰か買いますか?]

[白銀カノン:ロケランの弾、全部渡せます]

[メアリー:言い値で買いましょう。コインも全部あげるし、うちの奴隷達も持っていっていいわよ]

[白銀カノン:リアルマネー使えますか?]

[マナート:リアルで油田渡せます。私の国、油だけなら死ぬほどあるんで]

[白銀カノン:同盟、いや、私のチームを傘下にいれませんか!?]

[メアリー:カノン、見苦しいわよ。交渉はスマートに、最初の一手で決めなさい]

[白銀カノン:だって、絶対に欲しいんだもん! ていうか、お婆ちゃんのコインは全部、うちの姐さんが集めたコインでしょ!]

[メアリー:今はうちのコインよ。それとも、負け犬の遠吠えかしら?]

[白銀カノン:ぐぬぬぬぬ! お婆ちゃんなんて嫌い!!]

[フューリア:↑同意します]


 みんな、すまん。いや、本当にごめんなさい!!

 3日間、どのチームも今日のために頑張ってきたけど、やっぱ最終的に世界を救うのはロケランの弾じゃなくて、好きな男のグッズなんだわ。

 こんな事なら、最初からあくあ様デザインの乗り物とか道具とか量産してコインと交換しておけばよかった。


【嗜み、必死だな!】

【嗜みとかいう香具師が必死すぎて草ぁ!】

【マナートさん、駄菓子を買う感覚で油田を差し出さないで】

【さすがです。メアリー様!】

【フューリア様草w】

【これは裏取引の現場ですか?】

【ルールなんでもありだから、ありっちゃあアリなのか】

【おい、捗る。普通に配信の画面に映ってるけど、これ外に出しちゃいけないやつじゃね?】

【あーあ、限定チャットグループの画像が流出しちゃった】

【こーれ、普通なら謹慎です】


 や、やっちまったぁ!

 私は誰も見てないのにわざとらしいリアクションをして、すぐに画面を切り替える。

 ふぅ……雪白えみりじゃなくて、ラーメン捗るで参加してて助かったぜ。

 これがタレント雪白えみりなら限定チャットグループの流出を理由に確実に活動休止になるだろうけど、今の私はタレントじゃなくてただの一般人、ラーメン捗るだ。

 私は心の底からタレントじゃなくて良かったと胸を撫で下ろす。


「まぁまぁまぁ、皆さんこれは気のせいってことで……見なかった事にしておいてください!! おなしゃぁす!!」


 私は気を取り直してさっきのチャットグループに、今の発言は無かった事にしてくださいと書き込む。

 そうでもしないと、今まさに船一隻でメアリー様とカノンの間で戦争が勃発しそうな感じになっていたからだ。

 世界を平和にしてくれるのが男の子なら、世界に戦争を巻き起こすのもまた男の子なのである。

 うん、我ながら深いな。


『ちょっと! あんた今、裏で普通に私の船を売ろうとしてたでしょ!!』


 げっ、全てを察知した小雛パイセンがこっちに近づいてくる。


『そ、そんな事ないですよぉ〜。試しに聞いてみただけですって』

『ふぅん、それなら良いんだけど……また、裏切ろうとしてないわよね?』


 し、してませんって!

 私はパソコンのモニターから顔を背ける。

 あれ、おかしいな。後ろめたい事はなにもないはずなのに、自然とそうなってしまう。


『まぁ、いいわ。それよりも、そろそろ時間だから一緒に襲撃拠点作りに行くわよ』

『は、はい』


 私達が狙うのは一番コインを集めてるメアリーお婆ちゃんの拠点だ。

 1位を狙うならちまちまコインを集めるよりも、一番多くコインを持ってるところから奪うのが一番効率が良い。

 さすがというべきか、1位の奪還を狙っている嗜みチームも私たちとは反対側に襲撃用の拠点を建築していた。


『ここが良いわね。5分で拠点作るから、その間ちゃんと守ってね』

『合点承知!!』


 私はこちらに気がついたメアリーお婆ちゃんのチームの狙撃を柵で防ぎながら反撃していく。

 その間に小雛パイセンが順調よく襲撃用の拠点を……んん? 順調良く?


『ちょっと! なんでこれ建たないのよ。もう!! 待って、8分、ううん、10分以内に建てるから』


 こーれ、嫌な予感がします。

 小雛パイセンがモタモタしてる間に、相手の攻撃が激しくなってくる。

 どうやら、反対側のカノンチームが秒で拠点を建て終わったせいで、拠点の制作にもたついているこちらに攻撃が集中しているようだ。


『12分、ううん、15分以内に建てるから!!』


 結果から言うと、20分以上かかった。

 小雛パイセンはギリ20分以内にできたって言い張っていたけど、私のコメ欄で時間を計測していたリスナーによると24分38秒かかったらしい。

 その間、ずっとメアリーお婆ちゃん達の攻撃から1人で耐えてた私はよく頑張った方だと思う。


【おい、お前らがモタモタしてる間に、天鳥社長がとあちゃんのチームを筆頭に多数のチームと交渉して大連合作ったぞ】

【最後は小雛ゆかり・あくあ様チームVSメアリー様チームVSカノン様チームVSベリル大連合か】

【4チームくらいだと追うのが楽になるから助かる】

【まぁ、お笑いのこのチームを除いて、メアリー様やカノン様のチームに対抗するとなるとそれくらいしないと勝てないわな】

【とあちゃんは大同盟を最後に裏切りそうだけど、天鳥社長はそこも計算済みだって言ってたな】


 ともかく襲撃拠点ができた事で、これで最終決戦までのおおまかな準備は整った。

 あとは時間が来るまで素材を集めて、できる限り物資を充実させておきたい。


『えーと、美洲……さん。一緒に素材採取いきましょうか』

『う、うん。わかった』


 ふぅ、間違えて美洲おばちゃんって言いそうになったぜ。

 配信中だから、ちゃんとを気をつけないとな。


【もうどこも最後の準備に整えてるね】

【大連合チームも、メアリー様チームの拠点のそばに襲撃の拠点建て出した】

【もうラストスパートか】

【みんながんがれぇ〜!】

【捗る。このチームを頼んだぞ!】

【あの小雛ゆかりも最後の最後に黙々と素材採取してるな】

【↑あの女、負けず嫌いだから】

【おっ、あくあ様が最後の休憩から戻ってきたぞ!】

【おかえりあくあ様!!】


 おっ、あくあ様が帰ってきたか。

 私と美洲おばちゃんは最後の採取を終えて拠点に戻る。


『それじゃあ、全員揃ったところで発表があります』


 みんなの前に立った小雛パイセンは全員の顔をぐるりと見渡す。


『今日までの3日間、色々とあったけど、それも今日で最後! 最後はみんなで勝って1位で終わりましょう!』

『『『『おおー!』』』』


 小雛パイセンの言葉に全員が拳を突き上げる。

 ここまでこのチームに貢献してきた私も、最後はこのチームに勝ってほしいと思った。

 何よりラーメン捗るとして、いや! 掲示板民の1人として! 嗜みちゃん大勝利だけは絶対に阻止しなければいけないという謎の使命感がある。

 私がキリッとした顔をしていると、小雛パイセンの操作するキャラの顔がこちらに向く。


『というわけで、あんたもこの3日間よく頑張ったわね』


 えっ? ま、ままままさか、ついに小雛パイセンのデレイベント発生でつか!?

 私はぐへった顔で、ちょっとイタズラするくらいまでなら許してくれるかなと妄想する。


「はい。じゃあ、今から同じチームとしてよろしくね」


 あっ、そういう事ね。

 私は小雛ゆかりチームの5人目に加わった自分の名前を見てニヤニヤする。


【捗る。良かったなぁ!】

【やったー!! ついに捗るがあくあ様と同じチームに入ったぞー!!】

【敬虔な信者:記念のスクショ撮りました】

【小雛ゆかり、ちゃんと優しいんだよな】

【小雛ゆかりはこういうところで帳尻をちゃんと合わせてくる女ですよ】

【捗る。もう2度と裏切るんじゃねぇぞ】

【捗る頑張ってたもんなぁ】

【小雛ゆかり、深夜1人で配信してた時に匂わせてたからあるならここだろうなと思ってました】


 うっ、うっ、うっ、苦節3日。

 このラーメン捗る、小雛ゆかりさんの足を舐める気持ちでゴマを擦って、なんとかあくあ様と同じチームに入れました。

 よーし、嗜みの所に自慢しに行ったろ。


「ちょっと他のチームの偵察に行ってきまぁす」


 私はアイテムを置いて1人乗りのヘリで嗜みの拠点に向かう。


「おい、みんな。あくあ様と同じチームに入った事を自慢して、あいつらにマウントを取りに行こうぜ!!」


 ただの冷やかしと言われようが私は気にしない。

 ここで行かなきゃ、掲示板民として廃るぜ。


【こ、こいつw】

【良いぞ。捗るちゃん大勝利してこい!!】

【やったー、嗜みにマウント取る回きたー!】

【さすがは捗る。期待を裏切らないプレイ】

【感動のシーンからのこれですよw】

【あーあ、お前、また口聞いてもらえなくなるぞ】


 私はヘリで嗜み達の拠点に颯爽と駆けつけると、拡声器を使って冷やかす。

 っと、その前にチームチャットはオフにしておこう。


『おーい、嗜み〜。あくあ様と同じチームに入ったぞ〜』

『ちょっと待って、今それどころじゃないんだって』


 なになに、なんか揉めてるの?

 私は嗜み達の拠点の屋上にヘリを止める。

 よっこらしょっと。ちょぉっとだけお邪魔しますね。ぐへへ!

 私が拠点の中にお邪魔すると、嗜み、姐さん、ソムリエのお馴染みの3人、略してオナ3が揃ってた。


『うっうっうっ、私このチームに迷惑かけてばっかりだから辞める!』

『楓先輩、誰も迷惑だなんて思ってないですよ』

『カノンさんのいう通りです。楓さん、失敗は誰にでもある事ですから』


 ははーん、また楓パイセンが何かやらかしたんだな。

 私は自然な流れで3人の輪に混ざる。


『そうだぞ。みんなに迷惑かけてるぞ〜』

『ほら、やっぱり! って、この声、お前、捗るじゃねぇか!!』


 あ、バレた。

 全員の操作するキャラの視点がこちらに向く。

 うっ、直接顔が見えてないのにみんながジト目に見えるのは私だけだろうか?


『もう、捗るってば、変なこと言うならさっさと帰ってよ!』

『めんごめんご! ついついノリで……ちゃんと私が説得してやるから安心しろ』


 仕方ない。可愛い後輩のためにここは私がどうにかしてやるか。

 私はゆっくりとソムリエに近づく。


『森川、迷惑かけたから辞めるって本当か?』

『……うん、私のせいでコイン全部取られたようなもんだし』


 なるほど、1番の根本的な理由はそこか。

 だが、そんなのは私達にとってはすごく些細な問題だ。


『迷惑? 迷惑ならリアルでいっぱいかけてるだろ!!』

『捗る!?』

『捗るさん!?』


 私は止めようとする嗜みと姐さんを手で制止する。


【こいつ本気で止める気あるのかwww】

【嗜みも姐さんも捗るなんか信じちゃダメだよ】

【それでも捗るなら! 捗るならきっとどうにかしてくれる!!】


 まぁまぁ、2人ともそこで大人しく見ておきなさいって。

 説得ならこの私、ラーメン捗るに任せてくださいよ。


『いいか。この程度の迷惑、今まで私達が森川にかけられた迷惑からしたら屁でもねえぞ』

『ほ、本当に?』


 私は操作するキャラと同時に力強く頷く。


『そうだ。だからお前はでかい顔して一緒にいたら良いんだよ。な、みんな?』

『ああ、うん……そうだね』

『ソウデスネ』


 嗜み? 姐さん?

 2人とも過去のソムリエのやらかしを思い出したのか少しだけトーンが下がる。


『じゃあ、私はみんなと一緒にいても良いってこと?』

『当然だろ。それにお前がダメなら、私なんてどうなるんだ? お前が霞むくらい周りに迷惑かけてるぞ!!』


 自慢じゃないが、今だって嗜みの前でただ大勝利ぃ〜って言いに来ただけだからな。


【そうだぞ。森川】

【こいつなんてただの冷やかしだからな】

【嗜み限定の迷惑系配信者、それがラーメン捗るです】

【そうだぞ。こいつの方がはるかに終わってるぞ】

【森川、お前はアホだけど捗るよりはるかにマシだぞ】

【そうだそうだ。こいつより酷い奴なんていないぞ】

【捗るですらミリも気にせず生きてるんだから、お前も気にするなよ】

【パワー系だけど、森川ってこういうところ繊細よな】


 あれ? なんか私の方が心が痛くなってきたぞ。

 コメ欄にいる掲示板民どもを全員コメント禁止にしてやろうかな。


『うっ、うっ、姐さん、カノン、こんな私だけどまたよろしくねぇ』

『はいはい、大丈夫ですよ』

『ね。楓先輩、最後に逆転目指してみんなで頑張りましょう!』


 ふぅ、どうやらうまくまとまったみたいだな。

 っと、もうこんな時間か。

 そろそろ襲撃の時間だから拠点に戻らないとな。


『それじゃあ、またな』

『うん、捗る。ありがとね』

『捗るさん、ありがとうございます』

『捗るぅ〜。また、後でなぁ〜!』


 うんうん、雨降って地固まる。同じ男の下に集まってきた姉妹の結束が固まって何よりですわ。

 私は乗ってきたヘリに乗ると、急いで自分の拠点に戻る。

 って、あれ? なんで私ってここにきてたんだっけ? あっ、そうだった!!


「捗るちゃん大勝利で嗜みを煽るの忘れてたぁぁぁああああああああ」


 一番大事な事を忘れてしまった私は空の上で1人、絶望した。


【こいつ本当にバカw】

【草wwwww】

【捗る、お前ってやつはw】

【別に言わなくて良かったじゃんw】

【後悔するところ、そこ!?】

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