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白銀あくあ、持てる男。

「さぁ、これで残る審査は2つ! それでは次の審査に出場する皆さんに再度入場してもらいます!!」


 乙女咲の学生服を着たイリアさんと音さん、アヤナとクレアさん、カノンとくくりちゃんが入場してくる。

 その後に入ってきた杉田先生とねぇねの2人も、学校で勤務している時に普段から着ている服装だった。

 うん、これまでの様子がおかしすぎただけで、ここにきてやっとミスコンらしくなった気がする。


「えー、ミス乙女咲に選ばれるような素敵な女性であれば、体力や運だけではなく知力も必要ですよね。というわけで、みなさんには今からいくつかの難問に挑んでもらいます。どうか、その知力を生かして難問を解決してください。お願いします!!」


 難問か。一体、どんな問題が出るんだろうな。

 ねじれの位置にある2直線に関する問題はさすがにわからないけど、衣服の中に隠れた突起物の位置を当てる問題ならこの俺にもわかるぞ!!


「それでは細かいルールを後ろのモニターに表示させてもらいます」


 俺はみんなと同じように後ろのモニターへと視線を向ける。


 ・解答する順番はくじ引きで決めます。

 ・問題の解答には2人のうち1人が挑戦できます。

 ・問題に解答する1人は連続ではなく交互に出場してください。

  例、AさんとBさんのチームの場合、A→B→A→B……の順で解答してください。

 ・また、解答を実際に行動に移して問題を解決するのはそのチームのパートナーとなります。

  例、Aさんが解答した場合はBさんが実行係です。

 ・解答係の人は、実行係の人を正解に導けるようにフリップで指示を送ってください。

 ・解答を中止したくなった人は、その時点で審査委員長のお気持ちボタンを押してください。

 ・逆に審査委員長が先にお気持ちボタンを押した場合、その解答が正答となります。

 ・先に3問クリアしたチームがこの課題の優勝チームとなります。


 ほう、ついに俺の手元にあるこいつが役に立つ時が来たか。

 俺は両サイドに置かれた3代目お気持ちボタンシスターズへと視線を向ける。

 もちろん2代目も1代目同様、俺の連打のせいで完全にイッちまった。


「みなさん、準備はよろしいですね?」


 ええっと、1年生代表チームはイリアさんが解答係で音さんが実行係、2年生代表チームはクレアさんが解答係でアヤナが実行係、オールスターチームはカノンが解答係でくくりちゃんが実行係、先生チームはねぇねが解答係で杉田先生が実行係か。


「はい、それでは最初の問題を発表させてもらいたいと思います!!」


 全員の視線が司会者へと向けられる。


「では最初の問題です。きゃっ! 教室で大好きなあの人と2人きり! どうやってアピールしよう? お願い誰か手伝って!! というわけで、みなさんには今から審査委員長に対してアピールしてください! なお、この問題の制作者は白龍アイコ先生です。白龍先生、ご協力ありがとうございました!!」


 俺は即座にお気持ちボタンを押して立ち上がると、キリッとした顔でゆったりとした大きな拍手をする。

 なんて素晴らしい問題なんだ! アイ、本当にありがとう!!


「どうやらくじ引きも終わったようですね。それでは白銀カノンさん、正妻としてみなさんにお手本を見せてください!!」


 最初はカノンとくくりちゃんのコンビか。

 カノンはフリップに文字を書いてくくりちゃんへと向ける。


【話しかける時にさりげなくボディータッチして。あくあはボディータッチに弱いから】


 さすがはカノンだ。俺の事が100%わかってるな。

 そもそも俺に限らず大多数の男は女の子に体を触られながら話しかけられただけで「この子、俺に気があるんじゃね!?」と、舞い上がってしまうものだ。

 さぁ、くくりちゃん。遠慮なく俺の体を触ってくれ!!

 くくりちゃんは恥ずかしそうな素振りを見せながら、俺にゆっくりと近づいてくる。


「あくあ先輩、えっと……」


 くくりちゃんがどこを触ろうかと悩んでいると、カノンがすぐにフリップを出す。


【服の袖とか裾は弱すぎるからアウト! 思い切って胸板に手を置いちゃお!!】


 カノーーーーーーーーーーーーン!!

 俺とカノンはもう結婚してるけどさ、頼むからもう一度俺と結婚してくれないか?

 結婚した上で結婚するなんて意味がわからないと思うけど、俺はもう一度、お前と結婚したいんだ。


「おっと! ここで審査委員長のお気持ちポイントが入りました。オールスターチームに1ポイントです!!」


 あ、あれ? 気がついたら、くくりちゃんに胸板を触られるよりも先にボタンを押してしまっていた。

 一瞬、自分でも何をやっているのか意味がわからなかったが、カノンへの愛が溢れすぎてて無意識のうちにボタンを連打してしまっていたらしい。

 くっ、せめてくくりちゃんから触られてからボタンを押したかった……。


「いやー、さすがは正妻。観客席から怒涛の正妻最強コールが響いています。それでは審査委員長、見事に正解した皇くくりさんにご褒美としてハグしてあげてください」


 良いんですか?

 むしろそれだと俺の方がご褒美になるのでは? という疑問が沸いてきたが、俺はそんな野暮なツッコミはしない。

 何故なら俺は紳士だからだ!!

 俺はくくりちゃんの腰に手を回すと、自分の方に抱き寄せる。

 いいね。くくりちゃんくらいのサイズ感の女の子だと、抱き寄せた時の収まり具合がいい。

 俺は散々くくりちゃん成分を補充させてもらう。


「それでは2年生代表チームお願いします!」


 クレアさんが解答係でアヤナが実行係か。

 若干、実行係のアヤナが不安そうな顔をしているように見えるのは俺の気のせいかな?


【まずは教室の鍵を閉じて完全な密室を作ってください】


 アヤナは言われた通りに教室の鍵を閉じるような演技をする。


【そのあとは簡単です。押し倒して既成事実を作りましょう。なぁに、子供さえできればこちらの勝ちです】


 ふぅ、俺も服を脱いで準備しておいた方がいいかな?

 顔を真っ赤にしたアヤナが口元をわなわなとさせる。


【気持ちを伝えるという意味では騎……】


 あれ? 後ろのモニターに映ったフリップの解答にモザイクがかかったぞ。

 途中までは読めたけど、何が書いてあったんだろう。


「するわけないでしょ。もーーーーーーーーーーー!」


 アヤナは身体を小刻みに振るわせながら俺に近づいてくると、近くにあるお気持ちボタンを押した。


「えー……1年生代表チームの音さんと加藤さん、よろしくお願いしまーす……」


 あっ! 司会の先輩まで普通に見なかった事にしてスルーした……。

 クレアさん、大丈夫。俺だけはクレアさんの味方ですから!!

 俺はクレアさんが落ち込まないように、激励の気持ちを込めてお気持ちボタンを押す。


「やはりあくあ様だけが私の……んんっ」


 えっと、1年生代表チームは解答係がイリアさんで、実行係が音さんか。

 イリアさんはフリップに文字を書くと、音さんに見せる。


【わざとこけてぶつかりましょう。白龍先生の漫画にきっかけはそう作ると書いてました】


 なるほど、少女漫画でよくあるやつか。

 俺は俺の目の前でわざとこけた素振りを見せる音さんの体を抱き止める。


「あ、ありがとうございます。えーと……」


 音さんはイリアさんの方へと視線を向ける。


【まずは謝って自己紹介してください。最初の印象が重要なので、可愛い感じで!】

「ぶつかっちゃってごめんなさい。私、1年の音ルリカです」


 上目遣いの音さんがきゅるんとした瞳で俺を見つめてくる。

 普段がクールな音さんのぶりっ子役は貴重だ。

 女の子の甘えた雰囲気に簡単に引っかかってしまう俺の心がグッとくる。


【あとはそのまま腰に両手を回して、しっかりと相手をホールドして持って帰りましょう。それで勝ち確です】


 イリアさんの解答を見てしまった俺がスンとした顔をする。

 なんやかんやあっても最終的にパワーで解決しようとするのが、パワー教信者の特徴だ。

 音さんはイリアさんの指示通りに俺の腰に両手を回すと必死に持ち帰ろうとする。

 しかし、身長差と体重差がある俺はびくともしない。


「うーん、うーん。ううっ……全然動かない」


 可愛いかよ! 俺はお気持ちボタンをポンと押した。

 あっ……。


「やはりパワー。パワーは全てを解決する」


 いや、それは違うだろって思ったけど……パワーで解決しているから正解なのか?

 俺の頭の中が混乱する。


「それでは白銀あくあ審査委員長、音さんの体を抱き抱えてあげてください」


 俺は音さんの腰に手を回すと、音さんの胸が俺の頭の位置にくるくらいまで抱き上げた。


「どう? 怖くない? もっと俺の方に体を預けてもいいよ」

「は、はい」


 女性向け異世界転生物のラノベの表紙によくあるような、王子様が姫様や聖女様を抱き抱えて持ち上げる構図にしたかったんだけど、上手くできたかな?


「あーあ、白龍先生居ないのにまた負けた」

「見てないところでまで現実で負けるとか白龍先生にしか無理だよ」

「くっ、本人が知った時の反応が見たい!」

「誰かここの写真だけ撮って白龍先生にDMして」


 俺は音さんの体を下ろすと、耳元で「ごめんね」と囁いた。


「い、いえ。私の方こそすみません」


 音さんは照れた表情を見せる。

 少しだけだが今回の文化祭で音さんとの距離が縮まった気がした。

 

「それでは最後に先生チームのお二人、お願いします!!」


 先生チームはねぇねが解答係で杉田先生が実行係か。

 杉田先生は少し不安そうな顔でねぇねに視線を向ける。


【まずは教師として悩みがあるかどうかを聞いてみてあげてください】


 なるほどな。杉田先生は俺に近づくと、いつものように優しい笑顔を見せる。


「白銀。何か悩み事はないか? ほら、先生になんでも相談してみろ」


 悩み事か……。そうだな。

 俺は杉田先生に真剣な顔をして向き合う。


「杉田先生の事が好きです。どうしたらいいですか?」

「えっ!?」


 戸惑う杉田先生が、ねぇねに助けを求める。


【悩める生徒を導いていくのが教師の役目です。気持ちに応えてあげて、そのまま結ばれましょう。もちろん、教師としてちゃんと最後まで導いてあげてくださいね。きゃっ】

「そんな事、できるかーーーーーーー!」


 顔を真っ赤にした杉田先生がお気持ちボタンをポチッと押す。

 くっ、ねぇねのサポートでなんとかゴリ押しできるかと思ったが無理だったか……。

 俺は杉田先生のガードが硬い事を再確認する。


「それでは解答係と実行係を入れ替えてください!」


 今度は1年生代表チームは音さんが解答係でイリアさんが実行係、2年生代表チームはアヤナが解答係でクレアさんが実行係、オールスターチームはくくりちゃんが解答係でカノンが実行係、先生チームは杉田先生が解答係でねぇねが実行係か。


「第2問です。さぁ、お前の燃えたぎるハートを相手にぶつけろ!! えー、つまり好きな人への告白ですね。ちなみに、このお題を考えてくれたのは本郷弘子監督です。監督、ありがとうございました!」


 女の子からの告白だと!?

 そんなご褒美、本当にいいんですか!?

 俺の胸の奥がキュンとする。


「それではくじで1番を引いた教師チームの皆さん、頑張ってください」


 ねぇねは前に出てくると、杉田先生へと視線を向ける。


【そんな事できるわけないだろ! 教師から生徒への告白なんてあってはならないものだ!】


 先生……硬いよ。鉄壁にも程が過ぎる。

 ていうか、この場合はどうなるんだろう?

 フリップで指示されないと実行係はどうしようもない気がする。

 俺とねぇねは進行係の司会者に視線を向ける。


「えー、フリップはあくまでもサポートです。あえてルールに記載をしてないように、実行係は自己判断で動いても大丈夫という抜け道があるので、そちらをお使いください」


 なるほど、確かにルールを見たら正解に導くと書いてあるだけで、その通りに実行しろとは強制していないのか……。これは考えたな。


「ねぇ、あくあ君。暑くない?」


 そう言ってねぇねはシャツのボタンを一つ外す。

 うおおおおおおおおおおおおおおおお! 親の顔より見た漫画のような展開に俺の胸が激しく踊る。


「保健室で先生と少し休もっか……」


 ねぇねは俺の体に寄りかかってくる。

 次の瞬間、俺の右手がお気持ちボタンを勢いよくターンと押した。


「やったー! 杉田先生やりましたよー!」

「根本先生!? 生徒相手に何やってるんですか!?」


 頭を抱える杉田先生とは対照的に、ねぇねは手を上げて喜びを表現する。

 くっ、大人なのに、こうやって子供みたいに喜ぶところがねぇねの可愛いところなんだよな。

 もしかしたら俺は、大人の女性が見せる子供っぽさのギャップに惹かれやすいのかもしれない。


『くしゅん! ねぇ、私の事、呼んだ?』


 イマジナリー小雛先輩は引っ込んでてくださいよ。

 もう一度言うけど、俺は“大人の”女性が見せる子供っぽさのギャップに惹かれやすいのかもしれない。

 早くねぇねにご褒美をあげたい俺は、司会者に視線を向ける。


「えーと、審査委員長は根本先生に何かしてあげてみてください。ほら、さっきみたいなのでいいので……」


 さっきみたいなのか……。それじゃあ、これはどうかな?

 俺はねぇねの腰に手を回すと、そのまま一緒にソファに座る。


「きゃっ」


 俺の膝に抱き抱えられた状態で一緒にソファに座ったねぇねは、びっくりした後に照れた顔を見せる。

 どうだ? これもよく、女性向けである構図じゃないか?


「白龍先生……本郷監督の出題なのにまた負けてる」

「白龍先生、なんでそんな簡単に現実に負けるん?」

「白龍先生だからだよ」

「そうだよ。白龍先生だからだよ」


 くっ、この距離感と体勢は俺もきついな。

 ねぇねは相変わらずすごくいい匂いがするし、俺の心が冷静でいられない

 まろんさんもそうだけど、20代のお姉さんからしか出てない女の子フェロモンの爆弾みたいなこの甘ったるくて脳みそにダイレクトにくる香りは、一体どこから出ているんだろう。

 これ以上は危険だと感じた俺はねぇねの体を解放する。


「それでは、1年生代表チームの皆さん、どうぞ!」


 次は音さんが解答係でイリアさんが実行係か。

 音さんは少し頭を悩ませた後に、フリップにペンを走らせる。


【相手をジッと見つめて、ストレートに思いを告げるのはどうですか? ごめんなさい。こんなシンプルな方法しか思いつきませんでした!!】


 イリアさんは音さんに親指を突き立てると、ゆっくりと俺に近づいてくる。


「あくあ君……」


 イリアさんはクリクリとした大きな目で俺の事をジッと見つめる。


「好き。本当に好き。付き合ってくれなくてもいい。でも好き。好きなの。応えてくれなくてもいいよ。でも、私があくあ君の事が本当に好きだって事を知って欲しかったの。ね、私の目を見て。好き。嘘じゃないよ。本当の私の気持ち。好き。私だけじゃなくて楓やインコの事をちゃんと女の子として扱ってくれるところも、まろんに対して下心だけじゃないところも、ゆかりに対して優しいところも……好き。全部、好き。好き……」


 こんなの俺が耐えられるわけねぇだろ!!

 俺は勢いよくお気持ちボタンを叩いた。


「それでは審査委員長。ご褒美をお願いします!」


 俺はさらに一歩踏み込むと、イリアさんの顔をジッと見つめる。


「イリアさん。俺もイリアさんの事が好きだよ。アヤナの事をいつも気にしてあげたり、妊婦の楓が無茶しないように見張ってくれてたり、小雛先輩が勘違いされないようにサポートしてくれたりとか。イリアさんが周りを良く見てくれているから、俺もすごく助かってる。だから好きだけじゃなくて、ありがとうって言わせて欲しい、ありがとう。イリアさん」

「あーん! あくあ君、やっぱり好きーーーーー!」


 おわっ! 俺は抱きついてきたイリアさんの体を抱き止めると、そのままぐるりと回転する。


「白龍先生が……」

「もう白龍先生の事を気にするのはやめろ!」

「白龍先生を気にする事がもはや負けすらある」

「白龍先生、頑張って……」


 よっと。俺はイリアさんの体を地面に下ろす。

 なんかみんな、さっきからアイがどうとかこうとかって話してない? 俺の気のせいかな……。


「それでは、オールスターチームの皆さん。よろしくお願いします!!」


 オールスターチームはくくりちゃんが解答係でカノンが実行係か。

 ここでカノンがニヤリと笑みを浮かべると、くくりちゃんが笑顔で頷いた。


【カノンさん、お任せします!】


 えっ? そんなのアリ!?

 カノンはゆっくりと俺に近づいてくると、俺の両頬に手を置く。


「あくあ……好きだよ」

「俺もだよ。カノオオオオオオオオオオオオオオオオオン!」


 俺は秒でお気持ちボタンを押すと、カノンの身体を抱きしめ返した。

 あまりにも早すぎる結末にみんなが唖然とする。


「つ、つえぇ」

「一発しかも秒で勝つとかさすがは正妻」

「それもど真ん中ストレートの豪速球だったぞ……」

「掲示板民が今のシーンを見てたら秒で気絶してたぞ確実に」

「なるほど、これが私ツエーってやつか」

「さすがはカノン様、ラノベの主人公みたいなスペックをしてるだけはある」


 よし、ご褒美の時間だ!

 俺は少しだけ上体を離すと、同じようにカノンの両頬に手を置く。


「カノン、俺も好きだよ」


 そう言って俺はカノンにおでこにキスをする。


「うぎゃあああああああああああ!」

「今、白龍先生の代わりに叫んだ奴は誰だ!?」

「白龍先生、もう諦めよう」

「あくあ君には勝てないよ……」


 俺がカノンから離れると、カノンは顔を真っ赤にする。


「あくあのばか……。ここまでしろって言ってないでしょ」


 はわわわわわわわわ!

 頬をピンク色に染めて少し恥ずかしそうにするカノンが可愛すぎる!!

 でも、まんざらじゃないんだよね!? だって、嬉しそうな顔してるし!!

 ああ……カノンの、そういう反応も最高にたまらない。

 カノン、俺と結婚してくれてありがとな。


「コホン! それでは2年生代表チームの皆さん、どうぞ!」


 おっと、2年生代表チームはアヤナが解答係で、クレアさんが実行係か。

 ふ、不安だなぁ……。

 クレアさんがアヤナの指示を待つ。


【わ、私たちもストレートに行きましょう!!】


 それを見たクレアさんが良い顔をして親指を突き立てる。

 なんだろう。一瞬だけ寒気がしたのは俺だけかな?

 クレアさんはゆっくりと俺に近づいてくる。

 良かった。顔を見る限りはいつものクレアさんだ。

 さっきまでクレアさんの様子がおかしかったのは、もしかしたら文化祭で疲れていたせいかもしれないな。


「あくあ君。私の想いに応えてくれるのは、この世界で唯一、あくあ君だけです。さぁ、どうかこの私を受け入れてください」


 背筋にゾクっとしたものを感じた俺は、防衛本能で咄嗟にお気持ちボタンを押す。

 あ、あれ? 今のは一体、何だったんだ……? テロリストに全方位から銃口を向けられても平然としていたこの俺が死の恐怖を感じるなんて、よっぽどだぞ……。


「えーと、それではご褒美でまた適当になんかしてあげてください……」

「あ、はい……」


 次はそうだな。背後から抱きしめる感じの大人向け女性コミックしたいな感じにするか。

 さっきのクレアさんのコスプレを見る限り、そういうの好きそうだし……。

 俺は後ろからクレアさんの腰に手を回して抱き寄せると、もう片方の手でクレアさんの両目を隠す。

 その上で俺は、少し仰け反らせたクレアさんの耳元に顔を近づける。


「クレアさん、どう?」

「さ、最高です……やはりあくあ君だけが私の、んんっ」


 流石にちょっと刺激が強すぎたのか、観客席から大きな悲鳴が聞こえてくる。


「白龍先生死ぬなーーーーーーー!」

「うっ、うっ、私達の白龍先生が」

「いや、白龍先生ならきっと立ち上がってくれるはずよ!」

「あくあ君、帰ったら白龍先生の事も抱きしめてあげてね」


 俺はクレアさんを解放する。

 えーっと、これで2問目が終わって、1年生チームとオールスターチームが2問突破、2年生チームと教師チームが1問突破か。

 確か3問突破でこの審査の優勝だから、1年生チームとオールスターチームはこれでリーチだ。


「それでは3問目です。付き合ったらする事は一つですよね! セッ……かく付き合ったんだから2人で模擬デートしてください!! なお、出題者は雪白えみりさんです!」


 ここで1番のくじを引いたのは、カノンとくくりちゃんのオールスターチームだった。

 解答係に回ったカノンが勝負を決める指示を出す。


【ソファで身体をくっつけてイチャイチャしよう! それで私達の勝利よ!!】


 くくりちゃんは緊張した面持ちで俺に近づいてくると、ゆっくりとソファに腰掛ける。


「あくあ先輩……くっついて良いですか?」

「もちろん」


 くくりちゃんはゆっくりと俺の体に自分の身体をもたせかける。

 その時だった。偶然にも身体を滑らせたくくりちゃんが俺の方に倒れ込んでくる。

 危ない! 俺は咄嗟にくくりちゃんの身体を抱き止めた。


「あ……あ……」


 はっきり言うがこれはわざとじゃない。

 俺に抱きしめられたくくりちゃんは最初にハグされた感触を思い出したのか、たまらずにお気持ちボタンを押してしまった。


「カノンさん、ごめんなさい……」

「今のは仕方ないよ。私だって絶対に押すもん」


 カノンがくくりちゃんを慰める。

 俺はそれを見てお気持ちボタンを強く押した。


「根本先生、杉田先生、お願いします!」


 実行係の杉田先生が不安そうな顔で解答係のねぇねを見つめる。


【杉田先生、保健体育の授業を始めましょう。教師として重要な事ですから!!】

「できるかあああああああああああああああ!」


 杉田先生が秒でお気持ちボタンを叩く。

 いくらなんでも、杉田先生早すぎるよ。もう少し俺をドキドキさせて欲しかった。

 だけど、顔を真っ赤にしている杉田先生が可愛かったので俺もお気持ちボタンを押しておく。


「3番手の2年生代表チームの皆さん、お願いします!」


 こちらもまたアヤナが不安そうな顔でクレアさんの事を見つめる。


【アヤナさん、今こそチャンスです! ここで騎……】


 あれ? また途中でモザイクがかかって見えなくなったぞ。


「だから無理だって言ってるじゃない。もおおおおおお!」


 アヤナも杉田先生に続いて秒でお気持ちボタンを押す。

 俺は少し悲しい顔でアヤナの肩をポンと叩く。


「アヤナ。俺は顔の方でも一向に構わないからな」

「あくあはなんの話してるのよ。後、ちゃんと見てるんじゃない! ばか!」


 恥ずかしがるアヤナの顔が最高に可愛かったので、俺はお気持ちボタンを押した。


「それでは最後に1年生代表チームの皆さん、どうぞー!」


 今回はイリアさんが解答者で、音さんが実行者か。

 ここはもう2問突破してるから、ここを突破した時点でこの審査の勝負が決まる。


【ソファの隣に座って手を繋いでください。カノンさんが良くやってるから!】

「ちょっとぉ!?」


 巻き添えを食らったカノンが叫び声を上げる。

 イリアさんの指示通りに音さんは俺の隣に座ると、そっと手を伸ばしてきた。

 ああ、この触れるか触れないかのもどかしさがたまらない!

 音さんは意を決したのか、俺の手を優しく握ってきた。


【そのまま肩に頭を乗せて! これも、カノンさんが良くやってるから!!】

「またぁ!?」


 音さんはイリアさんの指示通りに、俺の肩に自分の頭をそっともたしかける。

 くっ、家に居る時は普通にこうなるから良いけど、改めてじっくりと手順を踏んでこうされると、なんかすごくドキドキしてきた。


【ゆっくりと顔をあくあ君の方に向けて、甘えたそうな顔で見つめるの。カノンさんみたいに!!】

「うわあああん!」


 いつもはクールな音さんが少し恥ずかしそうにこちらに顔を向けると、俺だけに甘えた表情を見せてくれた。

 これでボタンを押さなかったら男じゃないぞ、白銀あくあ!!

 俺はお気持ちボタンを一撃で昇天させる。


「おめでとうございます!! それでは審査委員長、第3審査の勝者である1年生代表チームの2人にご褒美をあげてください!!」


 俺は、イリアさんと音さんの2人を片手ずつで抱き上げる。

 絶対に無理と言われるこのポーズもパワーのある俺だから可能だ。

 俺に抱き上げられたイリアさんと音さんが屈託のない笑顔で喜び合う。


『白銀、女の子にモテる男になりたいなら、女の子を持てる男になれ!!』


 師匠……ありがとうございます。師匠が鍛えてくれたおかげで俺は女の子を2人も持ち上げられる男になりました!!

 さぁ、これで残る審査は一つだ!! 最後まで楽しむぞ!!

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師匠絶対なんか勘違いしてる人やろ(゜д゜)
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