小雛ゆかり、あいつもまぁまぁ頑張ってるんじゃない?
「へぇ、結局、明乃ちゃんって名前になったんだ」
「はい、旦那様が自分の好きな人や尊敬する人から名前をもらってはどうかと言われてこうなりました」
ふぅん、そうなんだ。
あくあにしてはなかなかいいアドバイスなんじゃない。
「もっとカノンさんから名前を取ると思ったからちょっと意外かも」
「ふふっ、それだとお嬢様が恥ずかしがりますから。でも、明乃だとあだ名はアキノンになるでしょう?」
ペゴニアさんはニヤリと口角をあげる。
なるほど、考えたわね。
多分、カノンさんの事だから、明乃ちゃんが大きくなるまで気がつかなさそう。
「それにしても随分と日本人ぽい名前にしたわね。アーニャとかいいんじゃないって私は思ったけど……」
「その名前も候補でした。でも、ここは……この国は、私にとっても思い入れのある場所になりましたから。ふふっ、まさか学校に通えるなんて思いもしませんでした」
そっか……。それは良かったわね。
少し恥ずかしそうに笑みを浮かべるペゴニアさんに釣られて私も笑顔になる。
いいわね。お母さんって顔をしてるじゃない。
私は近くのテーブルにいる楓とえみりちゃんへと視線を向ける。
「次は私のターン! ボッチ・ザ・ジダンダ小雛ゆかり、エロサキュバス城まろん、年齢詐称系アイドル加藤イリア、乙女ゲーに囚われた電子世界の妖精鞘無インコ、そして、知性の化身森川楓のカードを犠牲にして、全員集合だよ。悪夢の世代を召喚!! ふっ、勝ったな!」
「甘い! 私はカウンターで世界で最も羨ましがられた妹の白銀らぴす、亡国のプリンセスハーミー、褐色元気娘のフィーヌース、小悪魔ふらんちゃん、パチモンの捗ることオニーナちゃんのカードを犠牲にして、偽乳特盛隊を召喚!! これにより場に出た大きい人は全員退場! まろんさんが退場した事で召喚失敗だああああ!」
「ぬわぁにぃぃぃいいいいいい!?」
そこ、カードゲームで盛り上がるのはいいけど、あんた達はちゃんと子供の名前考えてるの?
絶対に何も考えてないでしょ。
視界の端に映った白龍先生がその光景をニヤニヤしながら見つめる。
すると編集の人がそろりそろりと白龍先生の後ろから近づいてきて、その肩をポンと叩いた。
「白龍先生、ここに居たんですか? 今朝が〆切だっていいましたよね?」
「ひぃっ!」
それを見たインコと羽生総理がゲラゲラ笑う。
あんた達も自分の後ろはちゃんと見た方がいいわよ。
「インコさん、案件が終わったら乙女ゲーだっていいましたよね?」
「げげっ!」
「総理、こんなところで油を売ってたんですか? さあ、行きますよ」
「はい……」
インコはマネージャーに、総理は揚羽さんに連れられてリビングから退場する。
ほらね、言わんこっちゃない。
「ゆかり、呑気な顔をして周りを見ていますけど、貴女も他人の事は言えなくてよ」
「はいはい」
私の後ろから母が音もなく近づいてきた。
もう、遊びに来るのはいいけど、私にあんまり構わないでよね。
「ゆかり、まさか寝屋でもあくあ様にそんな素っ気のない態度を取ってるんじゃないでしょうね?」
「そもそもあいつの寝室になんか行かないわよ」
私の返しに母が驚いた顔をする。
「ゆかり……そんな事では、あくあ様にそっぽをむかれてしまいますよ。ほら、母が用意したこの下着を着用しなさい」
「嫌よ」
何よこれ。こんなの私が着るわけないじゃない。
こんなの穿いてたらお腹壊しちゃうわよ。それにほら、私はあくあが奥さん達に対抗して作った毛糸のパンツがあるから大丈夫。ほら、このお尻に入った大怪獣ゆかりゴンが可愛いでしょ。
「貴女って人は、あくあ様からそこまで寵愛を受けておいて、なんで……」
私の母が頭を抱える。
もう! 別にいいじゃない!!
「ところでその毛糸のパンツ、母の分はないのですか?」
「あいつに言ったら作ってくれるんじゃない?」
私の一言で母が秒で目の前からいなくなる。
ふぅん、あいつもたまには役に立つじゃない。
「あっ、間違えた」
「わ、私も」
反対側のテーブルで編み物をする琴乃さんとアヤナちゃん達を見て私も微笑ましい気持ちになる。
みんな本当に良い笑顔ね。それもこれも全部、あいつのおかげか……。
そう考えると、たまには甘やかしてあげてもいいのかなと思った。
「あっ、あくあ君が長野から戻ってきたって!」
「みんなで出迎えに行きましょう」
「ふふっ、そうね」
あくあの同級生3人が席から立ち上がる。
それじゃあ、私も久しぶりにあいつの顔でも拝みに行ってやるか。
私は膝に乗ったシロを横に退かせると、あくあを出迎えるためにリビングを後にした。
すみません。入院していたのでこの話は短いです。
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