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月街アヤナ、誘い方がわかりません!!

 みんな、恋人とのスキンシップはどうしてるんだろう?

 私は悶々とした気持ちを抱えながら、お布団の中で寝返りを打つ。

 あくあと付き合ってから、もう1ヶ月近くが経とうとしている。


「やっぱり、こういうのって自分からアピールしていかなきゃダメだよね……」


 あくあの周りには魅力的で素敵な女性が多い。

 それもみんな私よりも全然大人で、仕事のできる余裕のあるお姉さんたちばかりだ。

 私の頭の中に、すぐにレスバする年上のゆかり先輩の顔が浮かんできたけど、現実から目を背けるようにそっと視線を逸らす。


「みんなは、どうやってあくあとイチャイチャしてるんだろ……」


 普通に、イチャイチャしよっか? って言うべき?

 無理無理! そんなの恥ずかしすぎるし、どういう顔をして言えばいいのか全然わからないよ!

 それに、疲れてるから無理って断られたり、気を遣われていいよって言われたら、とてもじゃないけど立ち直れそうにない。


「あああああああああ!」


 私はお布団の中で足をジタバタさせる。

 はい! 現実逃避終わり!


「恥ずかしいけど、やっぱり恥を偲んでみんなに聞かなきゃダメかなぁ……」


 私はお布団の中でモゾモゾする。

 うう、頭の中でぐるぐる考えすぎちゃって寝れないけど寝なきゃ……。

 色々と考えすぎて脳が疲れていたのか、気がついたらいつの間にか寝てしまっていたようだ。


「ふぁ」


 私は軽く欠伸をする。

 んん、まだちょっと眠たいかも。

 私は上半身を起こすと、寝ぼけ眼をゆっくりと擦る。


「うゎ……」


 汗をかいたせいで、パジャマが肌に張り付いて気持ちが悪い。

 私はシャワーを浴びて服を着がえると、みんなのいる食堂に向かう。


「おはようアヤナちゃん」

「おはよう」


 私はいつものようにみんなと挨拶を交わすと、空いていた席に座った。

 隣のテーブルはカノンさんといつもの4人か。


「なぁ、お前ら、ちょっといいか?」


 珍しく真剣な顔をした楓さんを見て、同じテーブルのカノンさん、琴乃さん、えみりさん、ペゴニアさんが食事するのを止める。

 楓さん……あんな真面目な顔をしてどうしたんだろう?

 私の頭の中に解雇の二文字が浮かんでくる。

 まさか、国営放送をクビになったとか? さ、流石にそれはないよね?

 私も食事をする手を止めて、隣の会話に耳を傾ける。

 ぬ、盗み聞きは良くないけど、偶然、話が聞こえてきたんだから仕方ないよね。


「楓パイセン……もしかして朝イチから大きいの漏らしました?」

「ちょっと! えみり先輩、私が朝カレーを食べてるのを見てわざと言ったでしょ!!」


 ちょっと、えみりさん!?

 私もカノンさんと同じ朝カレーなんですけど!?


「いや、そうじゃない。これはガチの話だ。お前ら……妊娠してから、どうしてる?」


 妊娠してから、どうしてる? って、何の話だろ?

 妊娠した後の生活に関係する話かな?


「どうしてるって? 食事とか運動のこと?」


 カノンさんは私と同じように頭に疑問符を浮かべて首を傾ける。


「ばっか、お前、そうじゃねぇよ。あくあ様との触れ合いについてだよ! みんな、ちゃんとイチャイチャしてるか?」


 楓さんの言葉に、食事を続けていた琴乃さんが咽せる。

 私は座り直すフリをして、より近い隣の席へと座り直した。

 だ、だって、参考になるかもしれないし!!


「楓さん!?」


 琴乃さんが、朝から何言ってるんですか? って言いたげな表情を見せる。

 それを見たえみりさんが、楓さんを援護するように琴乃さんを宥める。


「いやいや、姐さん。これって結構死活問題じゃないですか? 姐さんだってイチャイチャしたいけど気を遣って我慢してる日だってあるでしょ?」

「うっ……」


 琴乃さんは図星だったのか、えみりさんに指摘されて顔を赤くする。


「た、確かにそうですけど……そういう、えみりさんこそ、どうしてるんですか?」

「私ですか? 私は普通にカノンとイチャイチャして発散してますよ」

「ちょっとぉ!?」


 ふふ、えみりさんとカノンさんってすごく仲がいいよね。

 楓さん、琴乃さん、ペゴニアさんの3人はカノンさんの反応を見て笑顔を見せる。


「お前……カノンの事が好きすぎだろ」

「ふふっ、仲がいいのはいいと思いますよ」

「なるほど、その手がありましたか……。参考になります。私もお嬢様とイチャイチャしたい」


 確かに仲のいい人とイチャイチャするっていうのはありかも。

 じゃあ、私も小雛先輩と……?

 うーん、それじゃあなんか満たされない気がする。むしろ疲れそう……。


「で、カノンはどうしてるんだ?」

「わ、私ぃ!?」


 それが一番気になる!

 カノンさんは私と同世代だし、いくらお姫様と言っても、イチャイチャしたい気持ちは変わらないよね?

 私はカノンさんの言葉が聞き取りやすいように、5人が座ってるテーブルに顔を近づける。


「えー……どうしよう」


 カノンさんは恥ずかしそうな素振りを見せる。

 可愛い。可愛いけど、そういう面倒臭い前置きはいいから、さっさと言って欲しいと思った。


「普通にソファで隣に座ったりとか? 甘えたいなぁって雰囲気出したら、ちゃんと応えたりしてくれない?」


 だから、それができるのはカノンさんくらいなんだって!

 なんの参考にもならないアドバイスに私はジト目になる。


「なんか面白くないので10点」

「右に同じく。10点と言いたいところですが、お嬢様が可愛かったので+10点で20点」

「むしろ、前置きが長かったから−10で0点で」

「えっ? これって点数つけなきゃダメなんですか? じゃあ、80点で」

「なんで点数つけるのよ!!」


 ふふっ、あそこは相変わらず仲がいいな。

 見ているこっちもほのぼのとした暖かい気持ちになる。


「姐さんならカノンに甘いから100点つけるかと思ったけど、80点なんだ? 残りの20点の理由は?」


 カノンさんの解答に10点をつけたえみりさんが、残りの20点について追求する。


「えー、カノンさんくらいの年齢ならそれで満たされるかもしれないけど、私の年齢になると、もっとイチャイチャしたいなぁって思っちゃうわけですよ。少しのイチャイチャで満たされたとしても、もっとイチャイチャしたいって思っちゃうので、そこでマイナス20かなと……」

「確かに、そう考えると80点って妥当かも」


 わかる!

 軽いイチャイチャだけで満たされるならいいけど、私も絶対にもっとイチャイチャしたくなっちゃうタイプだと思う。


「そうならないように、イチャイチャの濃度を上げればいいんじゃないかな? 2人だけの合図を決めておくとか、2人だけの秘密の時間っていうのかな。みんなに見えないようなタイミングに手繋いだりとか、結構ドキドキするよ?」


 嘘……でしょ……?

 私も含めた5人全員が驚いたような顔をする。


「カノン……オマエスゲエヨ!」

「カノンさん、流石です……」

「おま、私たちに隠れてそんな事していたのかよ!?」

「さすがはお嬢様です。その強かさ、やはりメアリー様の血を引いていらっしゃるだけの事はあります」


 やっぱりあくあの正妻になるだけの事はある。

 私は改めて、カノンさんってすごいんだなって思った。

 でも……これって、どうやって合図を送ってるんだろう?

 やっぱり、自分からお願いしなきゃダメなのかな?

 うう、結局、自分から誘わなきゃダメなんじゃ参考にならないよ。


「そういう楓先輩はどうやって欲望を発散してるんですか?」

「そんなのお前決まってるだろ。頭を使うんだよ。頭を使えば疲れて眠くなるだろ? そういう事だ」


 みんなが楓さんに向かって、残念なものを見る顔つきを見せる。

 楓さんって、あの偏差値70を超えるメアリー卒なんだよね?

 それも特待生って聞いたけど、何かの間違いだったのかな?


「だから私はいつも寝る時には、バリオン非対称性とか、アモルファス固体とか、アクシオンとか、テクニカラーについて考えるようにしてるぜ」


 今、あくあ死ねって言った……?

 私は楓さんの言っている言葉の意味がわからなくて混乱する。


「楓パイセン、ちゃんと頭がよかったんですね」

「楓先輩、ごめんなさい。ネタだと思ってたけど、鉛筆転がして入学したのは本当かもしれないって1ミリくらい疑っていました」

「すみません。今、ホゲってて聞きそびれてたんですが、私の話がでましたか?」

「この世であくあ死ねなんて思ってるのはフューリア様くらいですよ」


 どうやら私の頭は、ペゴニアさんと同じレート帯らしい。

 意味がわかってるえみりさんとカノンさんも、やっぱりメアリーなんだなって思いました。


「じゃあ、姐さんは?」

「私ですか? 私は大人なんで普通に我慢してますよ」


 ふーん。やっぱり琴乃さんくらい大人になったら、イチャイチャしたくても我慢できちゃうんだ。


「それに、生まれてくる子供の事を考えます。そうすると、思考もそれて幸せな気持ちにもなって満たされますよ」

「それ、ある!」

「確かに、子供の事を考えてるとそういう気分にならないかも」

「もはや、これは真理では?」

「琴乃様、流石です」


 なるほど……。ただ、これだと私の参考にはならないかな。

 でも、私が妊娠した時には役立ちそうだから、ちゃんと覚えておこっと。


「ペゴニアさんはどうしてます?」

「私もそれに近いですね。お嬢様や皆様、旦那様のお世話を焼く事で発散してますから」


 へぇ、そうなんだ。

 それじゃあ私も、やっぱりイチャイチャしたい時は小雛先輩のお世話でもしようかな……。

 なぜか知らないけど、考えただけで少し疲れてきた。


「で、アヤナちゃんは?」

「私は普通に自分で……」


 って、私!?

 私がハッとした顔で声の先へと視線を向けると、えみりさんがニヤニヤした顔でこちらを見ていた。

 ううっ、どうして私が盗み聞きをしていたのがバレちゃったんだろう。

 私はえみりさんに手招きされて、カノンさんの隣の席に座る。


「アヤナちゃん、イチャイチャしたい時にはイチャイチャしたいって自分からハッキリと言わないと、あくあも相手が多いから待ってるだけど1ヶ月くらいは待たされちゃうよ」

「やっぱり自分から誘わなきゃダメなんだ……」


 カノンさんの言葉に私は項垂れる。

 そうだよね。普通に考えてあくあと付き合ったり結婚してる女の子って10人超えてるし、待ってるだけだとなかなか自分の番まで回ってこないよね。


「あくあが忘れるって事はないだろうし、待っててもいつかはあくあからイチャイチャくれるとは思うけど、ちゃんとイチャイチャしたい時には自分から言った方がいいよ」


 問題はどうやって、あくあを誘うかだ。

 もうどうせ恥はかいたんだし、こうなったら、5人に相談してアドバイスを貰った方がいいよね。

 私は意を決すると、自分の悩みを打ち明けて5人に相談に乗ってもらった。

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