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幕間、ななしの山の民、ラストサバイバー!!

本編で小雛先輩とちょっとだけムフフな事をしてるので番外編の幕間を転載します。

また、このお話はなろうの第356話【羽生総理、責任と責務。】の続きになります。

そちらを先にお読みください

 私はただのどこにでもいる掲示板民だ。

 普段は平凡でなんの取り柄もない私だけど、ラストサバイバーでは白銀キングダムに所属する一般兵の山の民として本部と最前線をつなぐ重要な役割を担っている。


「諸君に与えられた命令は至って明快だ! 敵の本陣に突撃して死ね! 以上である!!」


 通称パワーレイド、またの名をゾンビアタック。いわゆる脳死特攻だ。

 はっきり言って究極に頭の悪い戦術だけど、やる事が単純なので子供からお年寄りまで、ゲームが下手な人でもゲームを楽しむ事ができる。とは言え、このゲーム、死ぬと普通にハエがブンブン飛んだりするから、絵面的にはあまり子供やお年寄りにはお勧めしない。


「それでは全軍突撃ーーーーー!!」

「「「「「おお〜!」」」」」


 崖上に立ったラーメン捗ること、掲示板民の捗るが山の民の代表として夜明けと共に大号令をかける。

 あ、あれ? 山の民の代表って羽生総理じゃなかったっけ? って、総理どこ?


「みんな私に続けーーー!!」


 あ、竹槍を持って先頭を突っ走っていました。

 流石は総理。国民を導くために誰よりも先に走る。その後ろ姿に頼もしさを感じます。


「うぎゃああああ」


 あ……あっという間に総理が蜂の巣にされた。


「総理の屍を超えていけー!」

「うおおおおおおおおお!」

「総理、貴方の事は忘れません!!」

「なむー!」


 それでも山の民が止まる事はありません。

 竹槍を持って只管敵陣に突撃していく。

 うーん、流石に敵の数が多いな。

 どこか突破口があれば良いのですが……あ! 山の民の1人、光速の谷川が敵の防衛網が緩んだ箇所へと一気に寄せていく。


「こいつ!!」

「突破させるな!!」

「無駄だ!」

「ふっ、無駄かどうかは他人が決める事じゃない。自分ができるかどうかだ!! さぁ、突破口は開いたぞ!!」


 山の民谷川が倒れると同時に山の民佐藤が丸太を持って敵陣に突っ込む。

 佐藤は手に持った巨大な丸太を使いみんなの盾となる。


「くそっ、こいつ中々倒れないぞ!!」

「しぶといやつめ!!」

「諦めろ。もう緩んだ防衛ラインは締めたぞ!!」

「どんな状況でもあっても自分にできるベストを尽くすだけだ! 私と山の民の谷川が君をここまで連れてきたのだから、後は頼んだぞ!!」


 倒れる山の民佐藤を飛び越え、一つの影が敵陣の中へ突っ込む。


「たった1人で何ができ……ぐぇっ!」

「よいしょー!!」


 敵兵の中に突っ込んだ山の民森川こと掲示板民のソムリエは、掴んだ敵兵を味方のいるところへと放り投げる。

 なんか知らないけど、あいつのキャラだけパワーの値おかしくない? とてもじゃないけど、あいつがチートを使う頭脳があるとは思えないし、あれ、完全にバグだよね。それともゲームが人間じゃなくてゴリラキャラとして認識してしまったのだろうか……。ありえる。


「良くやった。ティ……森川!!」

「でかしたぞ。ティ……森川!!」

「くっそ、あいつなんでリアルネームなんだよ。普通にティ……んんっ、にしとけよ!!」


 こちらへと放り込まれた敵兵を山の民が取り囲む。


「ヒャッハー!」

「いいぞ全員で囲んでタコ殴りにしろ!!」

「喧嘩を売った事を後悔させてやる!」

「ぐへへ! 身ぐるみを剥がせ!!」


 さすがは捗るだ。みんなが棍棒でタコ殴りにしている一方で1人、延々と敵兵の身ぐるみを剥いでいる。

 あいつ、ゲームの中でもやってる事がせこいというか小狡いな。


「うぎゃああああああ」

「総理ー!」

「みんな、総理に続けー!!」


 なんか、総理ずっとやられてない?

 ていうか、みんなが総理を盾にして突っ込んでないかな?

 私の気のせいだよね? うん、気のせいって事にしておこう。


「くそっ! なんだアレは!?」

「人間か!?」

「いや……違う! あれは人間の皮を被ったゴリラだ!」

「ゴリラ……? ま、まさか! あれが日本の誇るリーサルウェポン・モリカワか!!」

「リーサルウェポン・モリカワだって!? あのリーサルウェポン・シロガネと並んで核ミサイルより遥かに恐ろしいとされている日本の二大兵器の事か!!」


 森川の襲撃に敵軍の兵士達は慌てたそぶりを見せる。

 何言ってるのかわからないけど、森川の事を大分恐れているようだ。


「森川を囲め!!」

「させるか、コノヤロー!!」


 あ、山の民の加藤イリアだ!! もう1人の物理バカがやってきた!!

 これで勝つる!!


「ダウンしてる人はいませんかー?」


 あ! 衛生兵のアヤナちゃんだ! 可愛い!!

 みんながデレデレした顔でダウンを治してもらう。

 ちょっとそこの捗ると総理! サーセンとか言ってるけど、あんたら別にダウンしてないでしょ! さっさと素っ裸で敵陣に突っ込め!


「うーん、外の敵兵は大分蹴散らせたけど、問題はあの防護柵よね」


 小雛ゆかりさんは双眼鏡を使って少し離れた位置から戦況をじっと見つめる。


「あ……! 良い方法を思いついたわ」


 良い方法? 小雛ゆかりさんの良い方法に若干……いえ、かなり不安な気持ちになる。

 小雛ゆかりさんはのほほんとした顔をしている総理に近づく。


「総理これ持って」

「小雛さん……コレナニ?」

「総理さ、ちょっとこの爆弾持って、敵の防護柵に突撃してきて」


 ちょっと、小雛ゆかりさん!?

 その人、うちの総理! 総理に自爆テロさせるとか国際的な問題になりそうな事やめて!!


「はい……」


 総理、立場よわ!! え? あなたが一応軍のトップですよね?

 敵の皆さんもまさかうちの大将が最前線で自ら突貫してるなんて思わないよ。

 はー……私は本部の状況を確認するために通信機を開く。


『こちら乙女の嗜み。ロケットランチャー準備完了。いつでも木っ端微塵にできます』

『こちらイレイサー。同じくロケットランチャー準備完了。更地にして良いんですよね?』

『よろしい。防衛部隊代表、616、本部の守りはどうなっていますか?』

『こちら616。本部に敵影なし。防衛の人数を最小限にして、そちらに向かわせます』

『わかりました。後方支援部隊代表、石油女王、物資はどうなっていますか?』

『こちら石油女王。現在、後方部隊は追加でロケットランチャーの弾を製作しています。追加の装備と物資も含めて列車に乗せて最前線に運搬したいので防衛部隊の手配をお願いできませんか?』

『こちら司令部。了解した。616、前線に送る部隊は移動をする前に追加の物資を受け取ってから移動してください』

『こちら616。司令部了解しました。石油女王さんありがとうございます』


 ちゃんとしてるー! あー、私もやっぱりこっちが良かったなー……。

 私はチラリと山の民の方に視線を向ける。


「ヘリが来たぞ!!」

「岩を投げろ!!」

「おい! ティ……森川が竹槍を投げてヘリを落としたぞ!!」

「嘘だろ!?」

「人間業じゃねぇ!!」

「さすがティ……森川だ!!」

「うおー! 丸太の佐藤も行ったぞー!」

「すげぇ!」

「戦車だ! みんな飛び乗れ!!」

「しがみついて岩を装甲に叩きつけろ!」

「どうだ見たか。これが山の民の実力だ!!」

「最新兵器なんて原始の力の前では無駄無駄無駄ァ!」

「やはりパワー! ゴリ押しは全てを解決する!!」

「文明の利器なんて壊せばただの鉄クズだ!!」

「ウホッ! ウホッ!」

「ウキーッ!」


 なんかだんだん敵が可哀想になってきた……。

 墜落したヘリコプターから火事場泥棒をしている山の民もいれば、そこらへんで拾ってきた少し大きな岩を何度も叩きつけて戦車の装甲を壊そうとしている山の民達もいる。

 最新の兵器とは……? やはりこの世にパワーを勝るものはないのかもしれない。

 私は目の前にいる自分の仲間と現実からスッと視線を背けた。


『こちら司令部。山の民の通信兵、聞こえてますか?』


 あっ! 司令官からの通信だ。私は慌てて呼びかけに応える。


『は、はい!』

『只今より敵陣砦の反対側からロケットランチャーによる攻撃を行います。貴女達はそのまま敵を引きつけつつ外壁の破壊と拠点の侵入を目指してください』

『わかりました!!』


 私は近くに居た小雛ゆかりさんにその事を使える。


「ゆかり先輩、山の民の皆さんは引かせなくて良いんですか?」

「大丈夫大丈夫。どうせ15秒でリスポーンするんでしょ? だったら突っ込んで死んだ方が効率的でしょ」

「はは……」


 アヤナちゃん、その気持ち、よーーーーーーく、わかります。

 この人達はゲームだからと言って人の命をなんだと思ってるんですか。


『山の民本部、聞こえますか?』


 あっ、また通信だ。


『はい!』

『こちら最前線!! 敵陣の壁に張りつきました。どうぞ!』


 周囲を確認したけど羽生総理の姿が見えない。あっ、そういえば爆弾を持って最前線に特攻して行ったんだった。

 捗るもどこかに行ったみたいだし、どうしようかな。

 私はとりあえず総理より偉そうにしてる小雛ゆかりさんに声をかける。


「山の民最前線より入電! 現在、敵陣壁面に張り付いているそうです!」

「よーしよしよし! そのまま壁をタコ殴りにして破壊するのよ!」

「了解!」


 人数ゴリ押しによる壁なぐり。壁の耐久値は999なので、1ダメージ与える事ができる素手で999回殴る事で破壊できる。あまりにも非効率的だけど、山の民にそんな事を考える頭脳はない。

 もちろん途中で敵も修復して耐久値を回復させたり、壊れたところを再建築したりするけど、それでも山の民は何時間も何十時間も、それこそ何日も一心不乱に壁を殴り続けるのだ。


『こちら山の民本部、そのまま壁を殴り倒してください!!』

『了解! 任せろ!!』


 通信を切るとパラパラパラと上空からプロペラの音が聞こえてきた。

 敵のヘリが飛んできたのだろうか? 私は音がする方へとを視線を向ける。


「おーーーーい!」


 あ、捗るだ! そのかっこいいヘリどうしたの?

 捗るはヘリを着地させると操縦席から降りてくる。


「敵の乗ってた奴を撃墜してパクって修復してきた」

「やるじゃない!!」


 さすが山の民の中でも悪知恵が働く捗るである。

 やってる事は盗賊並に野蛮だけど、地味に頭がいい。


「よーし、これで敵の砦に特攻するわよ!!」

「それなら途中で姐さんと嗜みを拾っていきましょう。あいつらなら戦力になりますよ!」

「OK! あ、そこの通信兵! あんたも乗りなさい!!」

「あっ、はい!!」


 うわー、ドキドキしてきた。

 ヘリに乗るとすでに前線で死んでリスポーンしてきた羽生総理と森川さんが乗り込んでいた。


「いやー、緊張するぜ」

「うんうん! って、あれ? なんで捗るが後ろにいるの?」

「えっ?」


 捗るが操縦するんじゃないの?

 嫌な予感がして前の座席をすると助手席にアヤナちゃん、そして操縦席に小雛ゆかりさんが座ってた。

 えっ? ちょっと、待っ……。


「しゅっぱーつ!!」


 ヘリがフラフラとした姿勢で地面にぶつかりながら急浮上していく。


「うぎゃあああああああ!」

「おっ、おっ、おっ」

「落ちる〜〜〜!」


 もはや後ろは軽くパニパニパニックである。


「うっさいわね! 大丈夫よ!! 運転するの今日が初めてだけど……」


 いやいや、今、必死に後ろで捗るが損傷箇所を修復してるし、さっきまで煙出てたし、なんならパーツが下に落下していったのを直にスローモーションで見たし、全然大丈夫じゃなかったって!! え? はじ……めて? お前、ふざけんな!! おろせー! いや、おろしてくださいー!!


「司令部に連絡して、今から迎えにいくからって」

「りょ、了解」


 大丈夫かな? 着陸と同時に爆発したりしない?

 飛ぶのも地獄、降りるのも地獄とはこの事だ。


『こちら山の民本部、司令部聞こえますか?』

『こちら司令部、どうかしましたか?』

『山の民捗るが敵のヘリを奪取したので、このまま上空から敵陣に突っ込もうと思います。そこで姐さんと嗜みを貸してくれませんか?』

『OK! サポートは任せておきなさい』

『ありがとうございます!』


 私は通信を切ると、小雛ゆかりさんに許可が出た事を伝える。

 おっ、そうこうしている間に、ロケットランチャーを発射する塔についたようだ。


「よーし、それじゃあ降りるわよ」

「なもなも」


 ちょっと捗る! 私の目の前で拝まないでよ!!


「あっ、これちょっと難しいかも」

「あわあわあわあわ」


 案の定、ヘリの着陸がうまくいかずに機体がふらつく。

 しかし姐さんと嗜みは一瞬だけ機体が近づいたタイミングを見計らって、ヘリの後ろに飛び乗った。

 さすが廃人!! 山の民と違ってゲームに慣れてる!! って、司令官!? 司令官も前線に行くの!?


「よし! 全員揃ったわね! 行くわよ!!」


 小雛ゆかりさんは操縦桿を敵陣ど真ん中にある1番大きな砦の上空に向ける。

 うわー、反対側ってこうなってたんだ。もうロケランで焼け野原になってるじゃん。

 って! い、今、私の窓の向こうに銃弾がががが!


「ちょっと! 何、撃ってきてんのよ!!」


 いやいや、向こうさんが撃ってくるのは当然ですからね!?

 私は銃弾が放たれた方向へと視線を向ける。

 すると壁の隙間から顔を出していた敵兵のスナイパーの頭が射抜かれた。

 え? 誰?


『こちらシークレット・ストーカー。援護は任せて』


 え? うっま! キルのログ見たら、この人1人で一体何人キルしてるのよ……。

 とんでもないスナイパーの名手がいました。


『山の民本部聞こえますか?』

『あっ、はい。こちら山の民本部です。どうしましたか?』

『こちらワーカー・ホリック。私達聖女教団も同時に上空からの攻撃を開始します』


 キター! 白銀キングダム最強の勢力、聖女教団のワーカー・ホリックさんだ! これで勝つる!!

 周りを見るとお揃いのシスター服を着た聖女教団の人達が乗っているヘリがこのヘリを中心にして編隊を組んでいました。わー! すごいなー。まるでこのヘリに聖女教団のトップが乗っているかのようです。


『ヒャッハー! 神の裁きだ!!』

『聖女教団ばんざーい!!』

『持ってるロケラン全部ぶち込め!!』

『私達の神に喧嘩を売ったこと後悔させてやる!!』

『更地だ更地!!』


 あっ、レート帯は山の民と一緒なんだ……。うん。

 って、なんかプスプスって音しない? この音、何?


「なんかプロペラから煙出てるぞ!」

「うぎゃー! 落ちる!!」

「小雛さんがぶつけすぎるから!!」

「うっさいわね!! こんなの相手のところに辿り着けさえすればいいのよ! わかったら、あんたたち飛び降りる準備しておきなさい!!」


 ひーっ!


「私達が先に飛び降りて、上空を制圧するわよ!」

「「承知!!」」


 手慣れた手つきで司令官と嗜み、姐さんが敵本陣の建物の上に飛び降りると屋上にいた敵を殲滅していく。ツッよ!! え? 私達必要? もうあの3人だけで良くない?

 3人に続いてパワーの森川と総理が同じ場所に飛び降りる。

 あ、アヤナちゃんも飛び降りた。

 怖いけど、そろそろ私も……って、捗る何してるの?


「ふひひ、これでよし……と!」


 なんかまた悪い事考えてない?

 まぁ、いいか。何かあっても被害を被るのは相手だ。私の知ったこっちゃじゃない。


「飛び降りるわよ!」

「は、はい!」

「了解!!」


 小雛ゆかりさん、私、捗るの順番でヘリから飛び降りて屋上に着地して転がる。

 よ、よかった。私生きてる! って、何!? なんか爆発した!!


「あ……」


 音がした方向を見ると、私達が乗ってきたヘリが敵の監視塔に突き刺さって爆発炎上していた。

 わわ! また爆発した! その衝撃と破壊で監視塔がポッキリと根本から折れる。


「ふひひ、飛び降りる前に爆弾を大量に貼り付けておいた甲斐があったぜ」


 捗るがなんかゴソゴソしてると思ってたら、そんな事をしてたんだ。

 やってる事えげつな!!


『こちらワーカー・ホリック、敵陣上空制圧完了!!』


 あー……もうここまできたら一方的だ。

 司令官と嗜みと姐さん、総理と最終兵器森川による蹂躙が始まる。

 あれ? 捗るは?


「ぐへへ。お姉さん、いい体をしてますね」


 あ……倒した敵の身包みを剥いでいた。

 隣に居たアヤナちゃんも捗るを見てドン引きしてるし、他人のふりしておこ……。

 あれ? そういえば、小雛ゆかりさんは?

 珍しく大人しいけど、いつの間にか死んだ?

 って、フリーズしてる。落ちた? え? アヤナちゃん、何? 全体チャット?

 私はアヤナちゃんに言われたように全体チャットを開く。


[日本人はなんて野蛮な民族なんだ!]

【小雛ゆかり:ああん? なんか文句あるわけ?】

[お前達がやってる事は無茶苦茶だ!!]

【小雛ゆかり:うっさいわね! 何言ってんのかわかんないけど、この私に文句あるなら日本語喋りなさいよ!!】

[降参するから許してくれ!!]

【小雛ゆかり:そもそも喧嘩売ってきたのはあんた達でしょ! その結果を受け止めなさい!!】

【小雛ゆかり:わかったら私の国に2度と喧嘩売ってくんな!!】


 すごいな。外国語がわかってないのに普通に外国人とレスバしてる。

 って、あれ? いつから白銀キングダムは小雛ゆかりさんの王国になったんですか?

 小雛ゆかりさんのコメントを翻訳したのか、敵兵達がさらにギャーギャーと騒ぎ始める。


【小雛ゆかり:XXX-XXX-XXXX。文句があるなら直接私に言ってこい!!】

【月街アヤナ:小雛先輩!?】

【小雛ゆかり:まだ?】

【小雛ゆかり:早く電話かけてきなさいよ】

【小雛ゆかり:日本人に電話かけるのに日本語も喋れないとか、あんたの親はどういう教育してるわけ?】

【小雛ゆかり:私と交渉したいなら日本語喋れバカ】

【小雛ゆかり:おい! 逃げるな!!】

【小雛ゆかり:東京都港区六本木……】

【月待アヤナ:小雛先輩ストップ!!】


 あはは……だめだ。この人に勝てる人なんて誰もいない。

 全世界に向けて自分の住所と電話番号公開して喧嘩を売るとか頭がおかしいにも程がある……。

 普通ならやばい事だけど、実はだいぶ前から小雛ゆかりさんは住所と電話番号を公開している。

 でもみんな小雛ゆかりさんと直接関わりたいと思ってないから、誰も電話をかけないし訪ねて行ったりなんてしない。

 調子に乗って喧嘩を売ろうものなら、PTSDを発症して一生物のトラウマを背負わされるのだ。そんな人が何人もいたことから、小雛先輩は関わってはいけない人だとネットで認識されている。


[日本人おかしいよ……銃で撃って殺しても数十秒後には笑顔で突撃してくるもん]

[うっ……倒された山の民の山を見て気分が悪くなった]

[これ、どう足掻いても私達がトラウマになるやつじゃん]

[あいつら倒れた味方の装備からも武器をぶんどったりして戦ってたからな。異常だよ]

[たとえ私達が勝ったとしても、どのみちトラウマ植え付けた時点で日本人の勝ちだわ]

[もう銃なんか撃ちたくない……]

[だから言ったのに、あの国はあたおかだからそっとしとかなきゃって]

[これだから戦争を知らない世代は……日本にだけは喧嘩を売るなと言ったじゃろ?]

[日本だけはガチ。頭のネジが飛んでる]

[竹槍でヘリを墜落させる化け物にどうやって勝てと!?]

[もうこのゲーム引退します]

[私も無理、山の民がトラウマになる]

[ステイツもスターズも更地にされてるのに他の国が日本に勝てるわけないだろ]

[山の民やばすぎ]

[リアルでもこの国にだけは喧嘩売らないようにします]


 あはは……チャット欄でドン引きする外国人を見て、私はそっと画面を閉じる。


「蹂躙だー!」

「ヒャッハー、強奪だ強奪!!」

「敵の持っているものは全部奪い尽くせ!!」

「破壊だ破壊!」

「2度と戦争しようだなんて思わないように恐怖でわからせておけ!!」

「みなさんいいですか? 戦争をするとこうなるんです」

「平和の国、日本を代表して、私達が平和の心地よさを身をもって教えてあげなきゃ!!」

「そうそう、戦争したらこうなるんだよね。あ、そこの敵兵の人、ほら、着てるもの脱いで。君に服なんかいらないでしょ?」


 散々強奪した後、私達は捕虜を連れて敵の本陣から撤収する。

 その後に聖女教団が誰も居ない敵の本陣に絨毯爆撃を開始して綺麗に更地にしていた。

 私はそれを見た後に、そっとゲームをログアウトする。


 うん、やっぱり戦争は良くないな!!


 ラストサバイバーは平和教育だなんて言ってた人がいたけど正解だと思う。

 だからみんな戦争なんてくだらないことはやめよう。それよりも私はあくあ君が歌ったりしているのを見てキャーキャーしたい。


「さてと、もう流石にこの後は何もないだろうし、大好きなお風呂にでも入りますか!!」


 私は立ち上がると、お湯を入れるためにお風呂場へと向かった。

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こいつらと戦争しようってテロリストがいるってマ?(゜д゜)
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