皇くくり、喫茶トマリギにて。
お見せできない内容なので、こちらを載せておきます。
雨が降る中、私とメアリーの2人は都内の喫茶店、トマリギが閉店した後の時間帯を借り切った。
ここは、私とメアリーの2人が初めてあくあ様に会った場所でもある。
「やはり婦人互助会が絡んでいるようね」
婦人互助会は世界各地に根を張っている組織だ。
彼女達は各国に兵器を下ろしている死の商人でもある。
婦人互助会が支配しているのは、経済や政治だけじゃない。
この長い歴史で国や戦争すらも彼女達がコントロールしている。
それなのに婦人互助会の構成員は、みことを使ってもわからなかった。
「ふふっ、くくりさん。盗み聞きは良くありませんよ」
えみりお姉ちゃんに渡したブローチに隠した盗聴器を介して、あくあ様達の会話を盗み聞きしている事をメアリーが嗜める。
「そういう貴女だって私と一緒に盗み聞きしてるじゃない」
「あら、でも盗聴器を仕掛けたのは私じゃありませんよ」
白々しい。私がしなかったら、メアリーは私に内緒で同じ事をしたはずだ。
あくあ様もえみりお姉ちゃんも気を抜いてるけど、私はメアリーをまだそこまで信頼し切ってはいない。
なぜならこの有能すぎる女が、スターズとスターズ正教の中に居た過激派を見逃していたとは思えないからだ。
「一つだけ確認させて欲しいわ。あなたは……」
「私はあくあ様の味方ですよ。そう、最初から最後まで、ずっとね。そこだけは約束するわ」
……自分の孫娘でもあるカノンさんのって言わないところが彼女らしいわ。
私にとって、そこの部分がメアリーを完全に信頼できないところでもある。
えみりお姉ちゃんはお母さんからすごく愛されてた。私だってそう。
でも……メアリーはそうじゃない。自分の血を分けた娘ですら見捨てていたメアリーを私が完全に信用できない理由はそこだ。
「それじゃあ、私はお先に失礼するわ」
メアリーはコーヒーを飲み切ると先に外に出て、待たせていた黒のセダンに乗り込む。
少しは尻尾を掴めるかと思ったけど、婦人互助会の事について話が出ても表情に全く出なかった。
「はぁ……」
私は大きくため息を吐くと、トマリギを出る。
ここは、始まりの616として、初めてあくあ様に出会った思い出の場所。
だから取り壊される前に私が手を回して出資した。
それもあってこうやって貸切にする事ができる。
「待たせたわね」
私が黒いセダンに乗り込むと、黒服を着た女性が近づいてくる。
彼女は私専属の御庭番だ。元々はお母さんの部下だったけど、私が皇の当主になってからはそれを引き継いでいる。
「くくり様……」
「何かわかった?」
私が車の窓を下げると、黒服は首を左右に振る。
「何も……でも、メアリー様は先日、落ちてきた隕石の欠片の事について少し調べていました」
ああ、そういえば、あったわね。そんな事件。
確か加藤イリアさんが手で掴んで番組に出られなかったから、急遽あくあ様が出たのよね。
「そう、わかったわ。一応、そっちも調べておいてくれる?」
「わかりました」
私は黒服に隕石の事について捜査を命じると車の窓を閉める。
はぁ、大変だけど、あくあ様達のためにも私がやるしかないわよね。
私は窓から空を見つめると、この雨が早くやめばいいのにと思った。
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