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白銀あくあ、バーガーショップ対決。

 カノン達が第一回白銀あくあカップをやりたいというので俺も参加する事になった。

 最初は優勝商品を用意して見てるだけにしようかと思ったけど、せっかくだから俺も参加してみんなと遊びたい。

 何よりも先日、BERYLの3人が俺抜きでゲームをしていたのを見て、俺も3人と一緒にゲームをやりたいと思ったからだ。


「みんな、バーガーショップ経営ゲームのインストールできた?」

「できたよ」

「ああ、こっちもインストール完了だ」

「うむ!」


 よし、どうやら全員が準備できたようだな。

 俺達が今日の大会でやるのはソロや複数人でバーガーショップを経営するゲームだ。

 ゲームを起動した俺は見た目を設定する。

 って、間違えたぁっ!

 説明文のスキップのためにクリックを連打してたせいで、設定をいじらずにそのままスタートしてしまった。

 初期スキンかあ……。そう思っていたら、画面に映った自分のキャラを見て俺はびっくりする。


「やばい! 俺のスキン、装備アイテムがエプロンだけなんだけど!?」

「あくあ……説明スキップしようとしてて設定画面までクリック連打してたでしょ」


 どうしてバレた!?

 察しの良すぎるとあが配信画面で呆れた顔をする。


【なんだって!?】

【REC!】

【流石はあくあ様、最初から攻めてくる】

【配信開始数秒で脱落者を出してくる配信者はあくあ様だけ】

【とあちゃんの制服がショートパンツ……だと?】

【↑エプロンのせいで穿いてないように見えて真顔になってる】

【↑わりぃ。ちょっとだけとあちゃんの配信行くわ】

【ちゃんと説明聞いてた黛君セーフ!】

【マユシン君えらい!】

【天我先輩、みんなとゲームできて楽しそう。よかったね】

【うっ、うっ、うっ、GTHでは見られなかった4人が真面目に働くルートはここにあったのか!】


 よしっ! ちゃんと4人全員揃ったな。

 俺は他のチームが準備できたかどうかを公式配信で確認する。


『えっと、みんな準備できた?』


 いくらゲーム内のキャラとはいえ、カノンがファストフードの制服を着てるとかたまらないな。

 高校生のバイト感が出てて最高にいい……!


『カノポンバーガー、バイトリーダーの雪白えみりです。みんなには悪いけど、今日はうちのチームが勝ちます!!』

『当然! っていうか、えみり先輩、カノポンバーガーってなんですか!?』

『どうやら本気の森川楓を解き放つ時が来たようですね』

『皆さん、結果はどうであれ頑張りましょう! もちろん、本気で勝ちに行きますけどね』


 カノポンバーガーチームはカノン、えみり、楓、琴乃の4人か。

 カノンと琴乃がゲームが上手い上に、竹子でリアルバイトリーダーやってるえみりはかなり手際が良さそうだ。

 これはかなりの強敵チームになるな。


『あんた達、絶対に優勝するわよ!!』

『当然や! 打倒ベリルバーガー!!』

『うん、みんな頑張ろう!』

『私、バイトした事なんてないんだけど……これってどうするの?』


 悪夢のバーガーチームは小雛先輩、インコさん、まろんさん、イリアさんの4人か。

 あそこは足を引っ張る小雛先輩がいるから大丈夫だろ。うん。

 俺は他のチームのスタンドインを確認していく。


[ベリルバーガー:天我アキラ/店長、白銀あくあ/バイトリーダー、黛慎太郎、猫山とあ]

[カノポンバーガー:白銀カノン/店長、雪白えみり/バイトリーダー、森川楓、桐花琴乃]

[悪夢のバーガー:小雛ゆかり/店長、鞘無インコ/バイトリーダー、城まろん、加藤イリア]

[スメラギバーガー:皇くくり/店長、那月紗奈/バイトリーダー、祈ヒスイ、月街アヤナ]

[……]


 全部で20チームくらいあるのか。

 普通に小雛先輩のチームよりくくりちゃんのチームの方が強そう。

 4人とも普通にできそうていうか、そのバーガー屋さん、俺がお客さんとして行きたい。


「それじゃあ、天我店長、最初の掛け声お願いします!」

「うむ!」


 俺達は4人で円陣を組むようにキャラを動かす。


「今日がベリルバーガーの開業日だ。売り上げだけじゃなく、お客様満足度100%を目指してみんな頑張るぞ!!」

「「「おーっ!」」」


 このゲームは分かりやすく勝敗を決める売り上げという数字以外にも、お客様満足度という数字がある。

 お客様満足度は提供のスピード、オーダーの正確性、値段と味のバランスなどが数字に反映されるらしい。

 白銀あくあカップではこの二つの数字を使って勝敗を決める事になっている。

 つまり売り上げが10万円でもお客様満足度が50%、売り上げが8万でお客様満足度が70%の場合、前者は10万を0.5でかけて5万ポイント、後者は8万を0.7でかけて5.6万ポイントで後者の勝ちというルールだ。

 勝負はゲーム内時間で1週間、まず最初にやる事は発注と値札付、取扱商品の設定である。


「天我先輩おなしゃす!」

「うむ、まかせろ!」


 発注ができるパソコンが置いてある席に座った天我先輩が一通りのアイテムをカゴに入れていく。

 このゲームで発注や値札付、メニューを決められるのは店長のキャラだけだ。


「まずはラインナップを絞らないとね」

「原価が安くて利益率の高い飲み物類はフルラインナップでおきたいな」

「サイドメニューはどうする?」

「フライドポテトは鉄板だろ」

「他はどうする? チュロスとかパイとかはお客様満足度が上がりそうだけど、ポテトとかに比べるとそこまで需要はないよね?」

「発注しすぎて在庫を抱えたり、少なめに注文しておいて売り切れになる可能性もある。そうなるとお客様満足度にも影響しそうだし、在庫の管理が難しそうだな」


 慎太郎の発言でみんなが顔を見合わせる。

 そう考えると最初から手広くやりすぎるよりも、初日は俺達がゲームに慣れるためにもオーソドックスなメニューから始めたほうがいいかもしれないな。


「最初はハンバーガー数種類とポテト、飲み物だけはフルにして、そこから始めない? 初日から何か別のメニューを足すか、素材に拘るとしてもそこからプラス1くらいで」

「あくあの意見に賛成。僕もそっちの方がいいと思う。みんなが慣れてから色々やってみよ」

「僕も同じだ。ただし、ポテトもやるならフライドオニオンもやった方がいいと思う。僕みたいにオニオン派のお客さんがリピーターになってくれる可能性がある」

「ふむ……。それなら我らがベリルバーガーは、揚げ物で少し他のチームと差をつけるのはどうだ? 国産ポテトと国産玉ねぎを使ったオーガニックフライドポテトと、オーガニックフライドオニオンを売りにしよう。せっかくだから塩にも拘るか」


 うんうん。だんだんと全員の考えがまとまってきた。

 そうなると次はバーガーの種類だな。


「定番のハンバーガーとチーズバーガーは鉄板だろ」

「チキンとかフィッシュもあるが、最初はハンバーグ系統だけにした方がいいかもしれないな」

「せっかく国産の玉ねぎを仕入れるのなら、我はオニオンを活かしたフレッシュなバーガーを作りたい」

「オニオン入れるなら、僕は醤油だれとか照焼とかの和風のがいいなー」


 和風系のバーガーか……。売りの揚げ物メニューとも合いそうだ。

 それに甘辛系でタレをたっぷりにしたら飲み物も売れそうな気がする。


「じゃあ、それで決まりで」

「うむ、我もそれでいいと思う。それでは発注するぞ! ポチッとな!」


 発注から暫くしてトラックがやってくる。

 俺達は4人で協力して荷物を店舗内に運んでいく。


【っぱBERYLなんだよなー】

【みんなの阿吽の呼吸よ】

【天我先輩、店長できてめちゃくちゃ嬉しそう】

【↑前日の深夜2時まで寝れなくて、我が店長か〜、困っちゃうな〜って言ってたくらいだしね】

【↑そのせいで深夜のSNSのトレンドピックが、早く寝てください天我先輩で埋まった】

【とあちゃんとあくあ君が議題の提示と提案をして、黛君が足りないところを考える。そして天我先輩が決断。完璧すぎる】

【小雛ゆかりチーム、秒で喧嘩してて笑ったw】

【↑あそこはネタチームだから】

【カノン様のところ決めるの早い。もう役割分担始めてる。ていうかえみり様が何故かプロすぎる】

【↑えみり様は何をやらせても優秀だから】

【こういうゲーム、プロアルバイターの捗るとかがすげー得意そう】

【くくり様、初日から高級和牛100%と国産野菜と店内焼き上げの出来立てバンズとオリジナルソースによるプラチナアクアバーガーはまずい。5000円のバーガーとか値段バグりすぎてだれも買わないよ!!】

【↑現実であくあ様が宣伝したら、飛ぶように売れそう……】

【↑それな!】

【アヤナちゃん笑ってないで止めて〜】

【↑アヤナちゃんは破天荒な2人に慣れすぎて、多少の事じゃ止めてくれなくなったよな】

【ラズ様、お野菜苦手だからって、メニューからお野菜を省こうとしてて草】

【↑ラズ様、脂の塊バーガー提供しようとしてて草】

【↑ラズ様、お胸に脂肪がないからって、それはちょっと】


 荷物の搬入と荷解きが終わった俺達は開店後の役割を決める。


「はいはい! 僕、レジやりたーい!」


 とあのキャラがぴょんぴょんと跳ねながら元気よく手をあげる。

 手際と要領のいいとあがレジを担当するのは俺も賛成だ。


「揚げ物と焼きは職人の我に任せろ!!」


 天我先輩、ヘブンズソードでもめちゃくちゃ練習してましたもんね。

 業務時間中に天我先輩が発注しなきゃいけない事態に陥った時は、俺が焼きと揚げ物のヘルプに入る旨を伝える。


「それなら僕がバーガー作りを担当しよう」


 慎太郎はキャラの眼鏡をクイッとあげる。

 このゲーム、そんな余計な機能までついてるのか。


「じゃあ俺は全体をサポートしつつ、お客さんにトレーを配膳したり、店内の片付けや清掃をしたりするわ」


 これで全員の役割が決まった。


「それでは開店するぞ!」

「お願いします!」

「うん!」

「はい!」


 他のチームはどうなっているかな?

 カノンのチームはえみりがいるからワンチャンスタートしてそうだけど、俺達のチームもかなり早い方だと思う。


【キタキタキター!】

【ベリルチーム早い!】

【やっぱり予測した2チームがダントツで早かったな】

【逆に一番遅いのどこよ?】

【↑悪夢バーガー店に決まってるだろ。まだ喧嘩してるぞ】

【悪夢の世代見てないけど、何やってるんだよw】

【↑店長の小雛ゆかりが間違えてバンズ1000個発注したせいで中に挟む具材がないんだよ】

【↑草www】

【小雛ゆかりに女優の才能があって良かった。この人に一般社会人は無理だ……】

【悪夢バーガー店のラインナップ、肉無しケチャップバーガー、肉無しマスタードバーガー、ただのパンwwwww】

【↑おわたwww】

【ただのパンやめてwじわるwwwww】

【1チーム脱落、早かったな】

【あのチーム、ある意味でこのゲームを1番楽しんでるなw】


 おっ、最初のお客様が来た!

 俺はお店の入り口までキャラを移動させると、タイミングよく扉を開ける。


「いらっしゃいませー!」

「おはようございます!」

「どうぞ、ごゆっくり」

「1番様ご案内よろしくお願いします!」


 ゲームの中だから意味ないかもしれないけど、これは気持ちの問題だ。

 俺達はこれでいく。


【こんなバーガー屋さんがあったら初日からパンクするぞw】

【↑予約制にしなきゃ無理そう】

【この4人なら普通にバーガー屋さんやれそう】

【↑どっかの店舗でコラボイベントやってくれたら絶対に行く】


 最初のお客様が注文をオーダーして8番席へと向かう。

 なるほど、座る座席は1番から順じゃなくてランダムなのね。ちゃんとそこも覚えておかなきゃいけないと思った。


「オーダー入ります。ポテ1、バーガー1。それとコーク入りました」

「ありがとうございます! 焼き上げた肉はここに置いておくぞ。我はポテ〜トゥを揚げる」

「はい! えっと、ノーマルバーガーは焼いたバンズの上にレタス1枚、パティ1枚、ケチャップ1かけしてピクルスを乗せてバンズで挟むと、これでいいのか?」


 慎太郎がバーガーをトレーの上に置くと、天我先輩が続けてポテトが入った容器をトレーの上に置く。

 そこにコーラを乗せたとあが、カウンターで商品が載ったトレーを俺に手渡す。

 俺はそれを8番席まで運ぶ。


「お待たせしましたー。バーガー1、ポテト1、コーク1ですね。ごゆっくりお過ごしくださいませ」


 おおー。満足度100%きた!!

 お客様の頭の上に吹き出しで[美味しかったよ]ってコメントが出る。

 いい滑り出しだ。続けてお客さんが入ってくる。

 おっ、今度は家族連れか?


「バーガー2、ピクルス抜きが1、ケチャップマシ1、チーズ1、ポテ2、うち塩多め1、オニ1でお願いします」


 なんか、とあ手慣れてない? 俺の気のせいか?

 ゲームが始まったばかりでまだ暇な役割の俺はジューススタンドに入って注文を確認する。


「ホットコーヒー準備するから残りの二つよろしく」

「OK!」


 えーと、氷抜きのサイダーが1と普通のオレンジジュースね。

 俺はすぐにコップをセットして飲み物を入れてトレーの上に置く。

 すると流れるような作業で他の3人も調理した商品を次々とトレーの上に置いていった。


「あくあ、5番席ね」

「了解!」


 俺は5番席にトレーを持っていく。

 その後ろを最初に注文したお客さんが通り過ぎていった。


「ありがとうございましたー!」

「「ありがとうございましたー!」」

「またのご来店お待ちしております!」


 俺は5番席にトレーを置くと、8番席に行って代金を回収してテーブルを清掃する。

 このゲームの代金は後払いシステムだ。料理の提供が遅れるとお格様が怒って帰る事があるから、そういうシステムになっているらしい。

 それと最初のお客さんはあまりテーブルを汚さなかったし、トレーとゴミも自分で片付けてくれたけど、汚れてたら掃除しなきゃいけないし、トレーやゴミも片付けなきゃいけないと最初の説明に書いてあった。


「なんといけそうだな」

「だね!」


 多少のミスはあったものの4人で協力して順調に初日の業務を終える。

 俺達、ベリルバーガーの初日の売り上げは12万4800円、顧客満足度は92%だった。


「この分ならメニュー増やしてもいけそうじゃない?」


 俺は自分がカウンター業務のサポートに入って、カウンターのとあがキッチンのサポートに入る事を提案する。


「僕も賛成。思ったよりレジ業務楽だし、もう少しメニュー増やしてもどうにかなりそう」


 問題はどのメニューを追加するかだよな。

 俺は商品を渡した後のお客様の吹き出しをみんなに伝える。


「えーっと、俺が何度か見たのは、ポテトやオニオンが美味しいから、もう少しフレッシュな野菜をたくさん使ったバーガーが欲しいっていうのと、和風バーガーに後一工夫欲しいって意見と、ソフトクリームやシェイクが欲しいって事くらいかな」

「フレッシュな野菜……トマトとベーコン追加して、ベーコンレタストマトサンドにする?」

「少しボリューム不足じゃないか? 見た目の厚みを少し出すために目玉焼きを入れるのはどうだ?」

「うむ。いいかもしれないな。最初に掴んだお客さんがリピーターになるから、そこをターゲットにして幅を広げていく方がいいだろう」


 せっかくだからレタスやトマトも国産にしようと決めた。

 ソフトクリームやシェイクもミルクに拘ることにして、問題は和風バーガーのひと工夫をどうするかだな。


「その事だけど、天我先輩がオーダーを見ていた時にゴマの乗ったバンズがあった、ゴマの風味が和風バーガーの旨みを引き出してくれるんじゃないだろうか?」

「それ、あり!」

「採用で!」

「うむ。一工夫だから、変えるとしてもそれくらいだろう。では、発注するぞ!」


 俺達は天我先輩の言葉に頷く。

 ゲーム内時間で翌日、俺達は早朝に昨晩発注したものを冷蔵庫等に補充する。


【小雛ゆかりのチーム、初日喧嘩してるだけで終わったぞ】

【↑店開いてなくて草w】

【ただのパンじゃ売れないから仕方ないんだけど、2日目から借金とかあのチーム終わってるよ】

【えみり様無双、カノン様無双、姐さん無双】

【↑私達の森川は?】

【↑あいつはこういうゲームだと活躍しない方がいいんだ】

【くくり様が開発した高級バーガー、謎に6つも売れてて草w】

【↑多分あのバーガーショップだけ港区六本木とかにある】

【5000円のバーガーを売ってるところもあれば、具なしのただのパンを売ってるところもある】

【↑落差ひどすぎワロタ】

【やっぱりBERYLチームが一番落ち着くわ】

【↑喧嘩しないし、みんなゲーム楽しんでるしな】


 2日目、3日目の業務も順調だった。

 しかし、4日目にトラブルが起こる。


「オーダー入ります! ポテ6、オニ8、和風6、バーガー2、チーズ3、チキン1、チキチー2、フィッシュ1、バニラソフト3、バニラシェイク2、オレンジ1、コーク3、ホット4、アイス3、アイスティー1、ウーロン2」

「和風タレマシ、バーガーレタス抜きピクルスマシ、チーズプラスチーズ、フィッシュダブルタルタル入ります!」

「ただいま、ポテートゥ焼き上がりまで5分いただいております。追加発注するので誰か焼きを頼む!」

「俺が入ります! とあ、トレー追加しておくからよろしく」


 俺はこのゲームを少し舐めてたわ。

 チキンやフィッシュを追加したというのもあるけど、高いお客様満足でリピーターが増える一方で、新規顧客も増えていくという嬉しい悲鳴で完全に仕事がパンクした。

 業務を終えた俺達は反省会を開く。


「今日のお客様満足度は88%です。開店以来初めて90%を切りました。俺はここがターニングポイントだと思っています」


 さっき運営から、次の5日目からドライブスルーとNPCの雇用が最大2名まで解禁されるとの告知があった。

 ただでさえ限界がきているのに、これ以上となるとやりくりを考えなきゃいけない。


「どうする? 単純にNPCを追加する手もあるが、その分、NPCにお金を払わないといけない」

「僕はそれよりも業務の割り振りを見直すべきだと思う。あくあをフロアーで遊ばせておくよりも、たまにキッチンのサポートに入ってる僕がフロアーを兼任して、あくあをキッチンに入らして全体をカバーさせた方がいい気がする」

「僕もその意見に賛成だ」

「慎太郎、いいのか?」


 俺はキッチンを頑張っていた慎太郎へと視線を向ける。


「ドライブスルーの窓口はキッチンが近い。僕がドライブスルーの窓口を担当しつつ、あくあが天我先輩のサポートに入った時は僕がキッチンをサポートできる。そっちの方がいいと思う」

「わかった。なら、キッチンは俺に任せてくれ」


 キッチンじゃ負けたことがないと言っていたアキオ先輩の言葉を思い出す。

 アキオさん、俺はキッチンを譲ってくれた慎太郎のためにもやるよ!!


「後もう一個何かが欲しいな」


 勝負をかける一手。

 新メニューとか割引以外に何かが欲しいとおもた


「土日だし、売れ筋メニューになったフライドオニオン1個増量キャンペーとかどうだろう?」

「「「天我先輩、それあり!!」」」


 天我先輩の提案に俺と慎太郎、とあの言葉が重なる。

 商品を追加発注した俺達はもう一度円陣を組んだ。


「それじゃあ土日のラストスパート頑張ろう!」

「「「おーっ!」」」


 配置転換が功を奏して土曜日には顧客満足度が再び90%を超えて回復する。

 そして運命の最終日ではフライドオニオン増量キャンペーンのおかげで売り上げが最高記録を達成した。


【朗報、悪夢のバーガー店、最終日に倒産】

【↑あいつらずっとただのパン売ってただけだったな】

【↑意外と最後は楽しそうだった】

【悪夢のバーガーショップ、やばかったな。ただのパンじゃ売れないからって、メニューに普通のハンバーガーとかフィッシュバーガーとかチキンバーガー乗せておいて、実際は具なしのパンを提供するんだもん。店内に肉はおろかレタスすらないのに】

【言っておくけど、中身を忘れてるだけで虚偽のメニューを載せてるわけではないwwwww】

【↑これが異次元の対応力ってやつかwww】

【顧客満足度驚異の0%に、解説してたゲーム会社の人も初めて見たって言ってたなw】

【カノン様とえみり様のチームやばかったな。途中、森川が滑って壊したりとかしたけど、森川がいなきゃ圧勝してたかもしれない】

【↑ゲームを面白くするという意味では森川は最も重要な役割を果たしてくれた。いなかったらマジで圧勝だったもん。森川がソフトクリーム機のレバーを折って入れ替えとかしてくれて本当によかった】

【ごめん。レジ業務の担当してるアヤナちゃんをニヤニヤしながら見てたらいつの間にかゲームが終わってた】

【↑らぴすちゃん達も可愛かった!!】

【ヒスイちゃんとなつキングは即戦力、普通に店舗でやれる。ていうかバイト来てくださいおなしゃす!】

【まろんさんがバケツの水かぶって透け透けになったってマジ!?】


 俺達は画面を公式チャンネルに切り替えると結果発表を待つ。

 まずはゲーム内評価値によるMVPの選定だ。

 司会の鬼塚アナによって上位10名が発表される。


 10位 天我アキラ、88点。

 9位 黛慎太郎、90点。

 8位 祈ヒスイ、91点。

 7位 桐花琴乃、92点。

 6位 那月紗奈、94点

 5位 白銀あくあ、96点。

 4位 猫山とあ、97点。

 2位 メアリー、100点。

 2位 白銀カノン、100点。

 1位 雪白えみり、102点。


 このゲーム、評価値のマックスが100らしいけど、えみりはどうやって100を超えたんだ……。

 解説の開発スタッフさんが意味がわからないという顔をしていた。


「って、俺達4人ともランキングに入ってるしいけるんじゃね!?」

「いや、森川さんがどれだけマイナス出してるわからないけど、カノンさん達もかなりやばいよ」

「ああ、それにこの数字はあくまでも個人の仕事量データであって、利益や満足度とは関係ないからな」

「うむ、勝負は最後までなにがあるかわからないからな」


 そしてワーストランキングはぶっちぎりで小雛先輩だった。

 評価値がプラスマイナス0やマイナスがいるのも驚きだが、開発スタッフが予期せぬエラーとかもう動かない方がマシレベルである。


【そらそうだよ】

【掃除しないからゴキブリ出てきて消火器で店内ぐちゃぐちゃになって一日中掃除してた日とかあったしな】

【後は運搬してたトラックの後ろの扉を閉め忘れて、大事故とかで賠償金の支払いとかもあったな】

【初日のバンズ1000個発注とか可愛いもんだったよ】

【あのチームは初日に店長を首にするべきだった】

【インコもまろんさんもイリアも本当によく頑張った。涙出たもん】


 小雛先輩、ゲームの中でもそうなんですか……。

 真顔になった俺は、面倒を見てあげないといけないという使命感に何故か駆られる。


『それでは結果発表します』


 上位5チームのうち、5位と4位のチームが発表される。

 残りは3つ。頼んだぞ!!


『第3位、カノポンバーガー!』


 は!? えっ? カノン達のチームが3位?

 てっきりカノンのチームは優勝か2位だと思ってたから普通に驚いた。


『第2位、ベリルバーガー!!』


 俺達が2位!? えっ? ベリルバーガーとカノポンバーガーに勝てるチームがいたの!?


『優勝はスメラギバーガーの皆さんです!!』


 ええっ!? どういう事!?

 スメラギバーガーは途中の売上では上位5チームにも入ってなかったはずだ。

 俺達は画面上で顔を見合わせる。


【スメラギバーガー強かったな】

【5000円のバーガーがそんなポンポン売れるとか誰も思わないでしょ】

【最後、ポテトに金箔つけて1万円以上で売ってたしな】

【あのバーガーショップだけ立地が違った】

【ただのホットコーヒー1杯が3000円とか銀座かよw】

【ゲーム開発者ですらびっくりしてたな】

【やはりくくり様が最強と】


 なるほど、くくりちゃん達は高級路線で成功したのかー。

 やられたー! でも、俺達はよく頑張った方だと思う。


「みんな、ありがとう。最後は勝てなかったけど、楽しかったよ」

「うん。みんなとゲームできて僕も楽しかったよ」

「ああ、実際の世界じゃバイトなんてした事ないから楽しかった」

「うむ! 今なら我も完璧なポテートゥを揚げる事ができそうだ」


 こうして第一回白銀あくあカップは、くくりちゃん、ヒスイちゃん、なつきんぐ、アヤナのチームが優勝して幕を閉じた。

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