白銀あくあ、悪夢の世代を舐めていました。
白銀キングダムに帰宅した俺とまろんさんを、みんながニヤニヤした顔で出向かえてくれた。
「いよっ、流石は悪夢の世代!」
インコさんの言葉でまろんさんは顔を真っ赤にする。
あれ? インコさん、昨日、マネージャーさんに引きずられていってなかったっけ?
えっ? こっちに配信部屋を移した? うそでしょ……。
「さすがはまろんね。アヤナちゃんが結ばれたその日にいくなんていくらなんでも早すぎでしょ」
小雛先輩が多少呆れた顔をしつつ手を叩いて祝福してくれた。
茶化してこない小雛先輩に俺もなんとも言えない顔になる。
それを見てニヤついた小雛先輩を見て、この人わざとそうしてきやがったなと俺は悟った。
「あまりの速さに私じゃなきゃ見逃していたかもしれない。おめでとう、まろん。同じ悪夢の世代として誇らしいわ」
イリアさんはふざけてるわけでもなく真顔で手を叩く。
羞恥心に殺されたまろんさんが両手で顔を隠す。
くっ、反応が可愛すぎて昨晩のまろんさんは幻だったのじゃないかと思うくらいだ。
「マロン、オマエ、スゲエヨ……」
ポカンと口を開いたシンプルな顔になったスゲエナBOTの楓が可愛すぎてちょっとクスッときた。
隣に居たえみりが楓の肩をポンポンと叩いて「わかる。わかりますよ。楓パイセン、私達が苦戦したのはなんだったんだろうって気になってきました」と呟き真顔になる。
「感動した!」
羽生総理は涙を流しながら手を叩くと、ゆっくりとこちらに近づいてくる。
すでに嫌な予感がしているのは俺だけだろうか?
「ところでまろんさん、次の少子化対策キャンペーンのポスターとかどうですか? なんならまろんさんのために、政府の少子化対策PRキャラクターとか、少子化対策大使のポストも作りますよ!!」
羽生総理の言葉に珍しく揚羽さんが頷く。
「まろん先輩やるぅ! まさかアヤナ先輩が結ばれてすぐにいくなんて、ふらんは感動しちゃいました!!」
純粋に目をキラキラと輝かせるふらんちゃんを見て俺の心臓が痛くなる。
俺ですらそうなのだから、まろんさんはもっとだろう。
限界を超えたまろんさんが俺の隣で可愛く悶えた。
「みんな、まろん先輩も恥ずかしがってるので、これくらいにしておいてくれませんか?」
あ、アヤナぁ〜!
あやなの優しさに俺とまろんさんが救われる。
そもそもみんなだって祝福する気持ちの方が強くてやってた事だったから、アヤナの言葉を聞いてみんなが散っていく。
「あ、アヤナちゃん、ありがとう。その……ごめんね」
まろんさんが申し訳なさそうな顔をする。
やっぱり同じアイドルグループ内は気まずかったのか。こうなったら俺が総理直伝の本当にヤバい時にする土下座を披露するしかない。そう思った瞬間、アヤナはクスリと笑みを溢す。
「もー、なんで謝るんですか? 私は普通にまろん先輩が幸せならそれで嬉しいですよ」
「アヤナちゃん……」
アヤナはまろんさんの体をギュッと優しく抱きしめる。
「あの時、私を救ってくれたのは、誰よりも最初に手を伸ばしてくれたのは他でもないまろん先輩なんですよ。まろん先輩があの時、私をアイドルに誘ってくれてなかったら、役者として復活する事だってなかったし、あくあと結ばれたり、みんなと知り合える事だってなかったんです。だから、私は誰よりもまろん先輩には幸せになって欲しかった。だから私は、今、すごく嬉しいんです。私が、あくあと結ばれた時よりも」
「アヤナちゃん!」
なんていい話なんだ。
隣で貰い泣きした俺は、どさくさに紛れてまろんさんと一緒にアヤナに抱きつく。
「まろん先輩。改めておめでとうございます」
「ありがとう。アヤナちゃん。一緒に幸せになろうね」
なんて美しいんだ。
カノンやえみり達を見ていても思うけど、女の子同士の友情はプライスレスな輝きがあると思う。
俺は2人の肩を掴むと自分の方に抱き寄せる。
「今度、3人でデートしような。みんなで仲良くしよう」
「あくあ君……」
これは決して百合の間に挟まるなどという不埒な感情から出た言葉ではない。
俺自身の純粋な感情、百合を輝かせるためのオプションになりたいと思ったからだ!
「そう言ってあくあがただ私とまろん先輩の3人でデートしたいだけでしょ?」
「なぜ、バレた!?」
って、あれ? アヤナさん、もしかして今、俺の心を読みましたか?
俺のびっくりした顔を見たアヤナは、後ろを指さす。
すると後ろでカンペを出している小雛先輩が立っていた。
「あんたの考えてる事なんてバレバレなのよ」
くっそー。そうやって笑ってられるのも今のうちだけだからな!!
いつか……そう、いつの日か、何らかの事で小雛先輩をギャフンと言わせてやるんだから!!
俺は心の中で三下が逃げる時のようなセリフを吐き捨てる。
「あくあって懲りないよね。どうせゆかり先輩に勝てるわけないのに」
「ふふっ、やっぱりあくあ君って可愛いなぁ」
俺の姿を後ろで見ていたアヤナとまろんさんは顔を見合わせて笑い合う。
それを見た俺は、女の子の笑顔にためになら笑われるのも良い事だなと思った。
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