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白銀あくあ、小雛・フリーダム・ゆかり。

すみません。日付をミスってました。

 俺たちは続けていくつかのカードをめくって一つ一つのお題に付き合う。

 その途中で小雛先輩がお腹を抑えてぐったりした。

 もしかして、ぽんぽん痛いんですか? 大丈夫? って声をかける。


「なんかお腹空いてきたわね。出前とっていい?」

「ちょっとぉ!? まだ収録中ですよ!」


 小雛先輩の自由すぎる発言に楓がすかさず突っ込む。

 俺がカノンのために考えたフリーダムって子供の名前は没になったけど、小雛先輩に子供ができた時にはこの名前を譲ってもいいな。小雛フリーダム。うん、我ながら中々いい感じだと思う。


「楓は何がいい? カツ丼? 弁当? 寿司?」

「最近やたらとパワーを腹に持っていかれるので、やっぱりここは肉……って、なんで私も食べる事になってるんですか!?」


 あー、なんか俺も食べたくなってきたな。

 俺は舞台袖にいたアシスタントディレクターさんを手招きする。


「すみません。俺、天ぷらうどんで」

「あくあ君まで!?」

「じゃあ私はきつね!」

「だっ、だったら私は肉うどんで! って、ちがーう!」


 楓……何事にも諦めは肝心だぞ。

 そもそもプロデューサーさんが小雛先輩に代役を頼んだ時点でこうなるのはわかってたはずだ。

 急遽出演する事になって書かされた契約書にも、勝手に好きにしていいって項目を追加してたし。


「お客さんもお腹空いたでしょ。スタッフも、私が奢るから好きなの頼んでいいわよ」

「「「「「「「「「「おおー!!」」」」」」」」」」


 いよっ、太っ腹!

 さすがは小雛先輩だ。

 俺も追加でいなり寿司とか頼んじゃおうかな。

 それを見た楓が固まる。


「嘘でしょ……」

「ほらほら、そんな事よりも出前が届くまでの間に次のお題やっちゃいましょ」


 俺は小雛先輩に促されて、机の上に並べられたお題の書かれたカードを適当に引く。


「なんだった?」

「えー、つい先日、ステイツのサイトで発表された最も美しい人ランキングで日本にゆかりのある人たちが大健闘しましたが、皆さんの周りには美しいと思う人はいますか? だって」

「何それ?」


 俺達3人は顔を見合わせると、プロデューサーさんへと視線を向ける。


「えーと、ですね。美しい人といっても見た目だけじゃなくて、内面とかを含めた多角的な視点で数字をつけてランキングを決めるサイトがあるんですよ」

「ふーん、どうせ、こいつが一位なんじゃないの?」


 隣に座っている小雛先輩が突き立てた親指を俺に向かってクイッとする。

 えっ? 俺が1位なんですか? 照れるなぁ!


「あー、実はあくあ様はですね。日本のネット民から森川砲が発射されて禁止になりました」

「「「森川砲って何!?」」」


 え? プログラムじゃなくて、わざわざ手動で大量に投票する事をネットじゃ森川砲って呼んでるの?

 これがプログラムならただの不正で終わるけど、手動ってところがパワーのゴリ押しすぎてネットで受けたらしい。


「国営放送で今年一番の残念だったアナウンサーを選ぶ投票をした時に、1人で1500票も森川さんに投票した神奈川のYさんって人がきっかけだったそうです」

「神奈川のYさん? なんか引っかかるな……」


 すぐに正解に気がついた俺と小雛先輩が楓の事を残念な顔で見つめる。

 神奈川のYさんと言われてえみりだって気がつかないのは楓とカノンくらいだよ。


「ていうか待って、その投票がなかったら、私、ザンネン・オブ・ザ・アナウンサーに選ばれてなかったんじゃない!?」


 国営放送ってお堅いイメージがあったけど、そんなふざけた賞がある事にも驚いた。

 え? 楓のために作られた賞? 国営放送……意外とノリがいいな。


「いえっ、私が見た限りでは、その1500票がなくても森川さんはダントツの一位でした」

「ガーン!」


 楓は大きく口を開いて絶望した顔を見せる。


「あはははははは!」


 ちょっと! 小雛先輩、そんなにお腹抱えて笑っちゃダメですよ。

 気持ちはわかるけど!! 堪えきれなくなった俺も思わず笑ってしまう。


「ちなみにあくあ様が禁止になったのは、東京都のS.Kさんがバカみたいに1人で何票も投票してたせいらしいです。公式からS.Kは投票するなって名指しで怒られてました」


 へー、S.Kさんか。誰かは知らないけど、そんなに1人でたくさん投票してくれるなんてありがたいなと思った。

 俺はカメラに視線を向けると、改めてS.Kさんにお礼を言う。


「東京都のS.Kさん。俺に投票してくれてありがとな! 君の投票は世界には届かなかったけど、俺には届いたから!」

「「「「「きゃ〜っ!」」」」」


 って、2人ともどうしたの? 楓も小雛先輩も微妙な顔でこっちを見てるけど、俺、変な事でも言ったかな? それともちょっとキザすぎた?

 あれ? 心なしかお客さん達やスタッフさんも残念なものを見る目で俺を見ているような気がする……。

 俺の考えすぎだろうか。


「S.Kなんて1人しかいないじゃない。あんた本当にバカ?」

「あくあ君、本気で言ってる? いや、わからないならわからないで別にいいんだけど……」


 えぇっ!? 2人とも知ってる人なの!?

 やべぇ。誰なのか全然わからない。


「で、実際のランキングはどうだったのよ? もちろん、私も入っているんでしょうね?」

「小雛先輩、入るつもりあるんだ……」


 意外だな。そういうのは興味がないと思ってた。

 それとも何か深い理由でもあるのだろうか?


「何よ、文句ある? 勝負事は負けたくないに決まってるじゃない!」


 ものすごく子供っぽい負けず嫌いな理由だった。

 さすがは小雛ゆかりさん。俺の期待を裏切らない。


「なるほど……これをやるって事は、この私、森川楓が日本を代表してランクインしてるって事ですね!?」

「あんたのそういう超ポジティブなところ好きよ」


 お前もなー!

 と、俺は心の中で小雛先輩に突っ込む。


「えー、ちなみにランクインした日本人は7人です」


 100人の中に7人もいるんだ!?

 すごいな……。


「これは、森川楓、きましたね」

「7人もいるなら私だって入ってるでしょ!」


 スタッフさんの1人が俺にシールの貼られたフリップを手渡す。

 なるほどね。この流れは俺にシールを剥がせって事ですか。


「それじゃあ、えーと……1番上から剥がしていくのね。了解」


 俺は一番上に貼られたシールを剥がす。


【1位:白銀カノン/社会活動従事者】


 俺は立ち上がった瞬間に両手でガッツポーズをした。

 カノンが優勝だなんて、やっぱり世界はわかってる!!

 これはもう俺の完全勝利と言っても過言ではない。


「あんた、喜びすぎでしょ」

「あくあ君、カノンより喜んでる」


 いや、だって、普通に嬉しいもん。

 俺はその下に書かれていた受賞理由を読む。


「えーと、白銀カノンさんは見た目の美しさはもちろんの事、ボランティア活動や寄付などを通じた社会的な貢献と活動が世界中の人から高く評価されました。また、アイドルの白銀あくあさんと結婚し、えー、アイドルの白銀あくあさんと結婚し!!」

「繰り返すな! あと、そこだけ声を大きくするな!」


 いいじゃん。けちー。

 俺だって、俺が夫ですアピールしたっていいでしょ!


「また、アイドルの白銀あくあさんと結婚し、彼の子供を妊娠した事なども多くの女性達から票を集めた要因になりました。だそうです」

「ふーん」

「へー」


 ちょっと!? なんで2人ともそんな興味なさげな顔をしているんですか!?

 うちのカノンが1位を取ったんですよ!!

 これはお赤飯を炊かなきゃな。今日はお赤飯にしようと思った。


「それより早く、次、次!」

「そんな急かさなくても、わかってますって」


 俺は次のシールをぺろりと捲る。


【7位:羽生治世子/政治家】


 おー、すごい。やっぱ総理って世界からも評価されるすごい人なんだなと実感した。

 今日も、揚羽さんを怒らせて説教されてたけど……。


「えー、羽生総理は特に外国人さんからの票数が多く、とにかく強いって理由が大半だったそうです」

「あっちって強い女性の方が評価されるわよね。強いイコール綺麗みたいな感じ」

「そう考えると羽生総理はいかにもだよね」


 なるほど、納得した。

 俺は続けてどんどんシールを剥がしていく。


【12位:雪白美洲/女優】


 おっ、美洲お母さんだ。

 あとでおめでとうって言っておこう。

 本人はこういうのあんまり興味なさそうだから知らなさそうだけど……。


「美洲はステイツの人気が高いから、むしろ12位は意外かも。トップ10には入ってると思ってた」


 そうなんだ。改めて美洲お母さんってすごいんだなと実感する。

 理由を見るとずっと綺麗とか永遠のスター、私の憧れって書かれていた。

 外国人の女性からもここまで言われるってすごいなと思った。

 俺は次のシールを捲る。


【21位:玖珂レイラ/女優】


 あぁ、レイラさんか。これも納得だ。


「レイラもね。本場のアクションスターだから。当然入ってるわよね。となると、やっぱり2人に勝った私も入ってるんじゃない!?」


 はいはい。

 レイラさんが支持された理由はまさしく小雛先輩が言った通りだった。

 手足が長くて綺麗。スタイルの良さに憧れる。美人の中の美人と書かれていた。

 俺はさらに次のシールを捲る。


【44位:皇くくり/元華族】


 うぉっ!?

 いきなりくくりちゃんが出てきてびっくりした。

 俺はくくりちゃんが選ばれた理由を読み上げる。


「神秘的。外国人だけど、生で見たら手を合わせたくなった。日本の美の極地。立ち居振る舞いや所作の美しさが別格。もはや芸術品」


 すごいな。大絶賛じゃん。ていうか、これで1位にならなかったのか……。


「多分、知名度の関係じゃないかなあ。外国人からすると、くくりちゃんの事とかあんまり知られてないかも」

「日本からも投票できたらしいけど、そもそもこういうのに投票する事について烏滸がましいかもと思って投票しなかった日本人いるんじゃない? うちのおばあちゃんとかそんな感じ」


 あっ、本当だ。この順位の理由にもそう書いてある。

 逆に日本人が投票しなくて、この順位は高いんじゃないかなと思った。

 俺は次のシールを捲る。


【72位:雪白えみり/女優】


 おっ、えみりだ!

 すごいな。でも、えみりならもうちょっと、っていうか、もっと順位が高くてもおかしくないと思うんだけどな。


「えみりちゃんはまだ表舞台に出てきたばかりだから知名度が足りないでしょ。そもそも外国じゃあんまり活動してないんだし。若い時の美洲を彷彿とさせる時点で、放っておいてもそのうち順位が上がっていくわよ」

「ああ、確かに」


 なるほど、俺は小雛先輩の理由に納得する。


「さて、残すところあと1名になりました」


 さっきまで興味なさげな顔で退屈そうにしていた小雛先輩と楓の2人が急にストレッチを始める。


「最初から狙ってたのはここだから」

「ですね」


 俺は2人の準備が整った事を確認してから、ゆっくりと焦らしてから一気にシールを捲る。


【98位:森川楓/アナウンサー】

「やったあああああああああああ!」


 楓が立ち上がって大喜びする。

 それを見た小雛先輩が慌てて止めに入った。


「ちょ! あんた子供。お腹に子供がいるんだから、飛び跳ねようとするな。バカ!!」

「あっ、ごめん。嬉しくてつい……」


 ナイスプレイです。小雛先輩。

 俺は下に書かれていた受賞理由を読み上げある。


「投票理由は、面白そうだから。森川砲発射! ネタです。世界よ、これが日本の秘密兵器だ。ランクインしたら面白そうだから。以上が日本からの投票の主な理由です」

「ちょっと!! なんで私だけ、面白そうとか、ネタとか、他の人と選ばれた理由が違うの!?」


 楓、落ち着いて!

 小雛先輩が楓を落ち着かせる。

 て、よく見たら隅っこに小文字でいい理由も書かれてるじゃん!

 それなのにこの理由をピックするあたりがこの番組って感じがする。


「えーと、その一方で外国からは、足が綺麗なのがグッド。パワフルガール。知的な職業なのに強いなんて素敵。常に笑顔でハッピーなところがいい。などの投票理由が集まったそうです」

「私、もう海外の局に出向しようかな」

「やめなさいよ。あんたとあくあが日本から動くと、現地の人から戦争に来たのかと思われるでしょ。国際問題になるわよ」


 俺も!?

 おかしいな。俺なんて小雛先輩と違って人畜無害で何もしてないのに……。


「ほら、楓。これ見て、よく見たら隅っこに日本からもこういう理由で投票されたって書いてあるから」

「あっ、本当だ。みんな、ありがとー!」


 良かったな。俺は楓の頭を優しく撫でる。


「えへっ、えへへっ」


 って、あれ? よく見たら、何故かもう一枚シールが貼ってあった。

 俺はゆっくりとシールを剥がしていく。


「なお、サイトには300位まで載ってあったけど、小雛先輩の名前はなかったそうです」

「よし。ステイツを滅ぼそう。楓、あくあ、ステイツに行って好きに暴れてきなさい!!」


 小雛先輩、さっきと言ってる事が違いすぎます。


「まぁ、いいわ。そこからわからせるのがたまんないのよね」


 こっわ……。関わらんとこ。

 俺は小雛先輩からスッと目を逸らして他人のフリをする。


「というわけで、改めて森川楓さん。おめでとうございます!!」


 おおー。スタッフの1人が花束を持って出てきた。

 それに合わせて俺と小雛先輩、観客席にいたみんなやスタッフさんから温かい拍手が送られる。

 良かったな。楓。


「みんなありがとー!」


 さてと、これで終わりかな?

 え? まだもっと喋れって?

 今、いい感じに終わったでしょ。

 もっと見たい? 仕方ないなぁ。


「小雛先輩、次のカード引いてくださいだって」

「ん」


 小雛先輩がカードを引くと俺に手渡す。

 もー、ちゃんと自分で読んでくださいよ。


「えーと、最近、白銀あくあさんがとあるお酒を集めているという噂を聞きました。本当ですか? だって」


 あれ? 小雛先輩も楓も、珍しく真剣な顔をしてどうしたの? 


「ちょっとあんた、そこに座りなさい! 説教よ説教!」

「あくあ君が非行に走っちゃった。あわわわわ。姐さんに連絡しなきゃ……」


 ああ、なるほどね。

 俺はそうじゃないよと手を横に振る。


「聞いてくださいよ。そうじゃないんです」

「言い訳はいいからそこに座りなさい!」


 いやいや、とりあえず面白いから座るけど、2人が思ってるような理由じゃないからね。


「で、何を飲んだの?」

「飲んでないです。ワインは買ったけど」


 嘘はついてない。本当のことだ。

 実際にワインは買ったけど、一滴たりとも飲んではいない。


「なんのワインを買ったのよ?」

「2015年製のスターズで作られたスターズ王室御用達のワインです」

「あっ」


 何かを察した楓がなんともいえない顔をする。


「なんでそのワインを買ったわけ? どーせまたしょうもない理由なんでしょ!」

「しょうもなくなんかないですよ! 9歳のカノンの足に踏まれたワインですよ!!」


 あれ? 小雛先輩、どうかしましたか?


「えっ、きも……」

「いやいや、愛する人が足で踏んで作ってくれたワインですよ! 絶対に確保しなきゃダメでしょ!!」


 全く。小雛先輩はこのワインの希少さがわかってなさすぎるにも程がある。

 9歳のカノンが足でふみふみしたワインですよ? 国宝レベルと言っても過言じゃない。

 それに、俺だけじゃなくてえみりもこっそり買ったって言ってたもん。


「え? もしかしてあんたって、全部買い占めるつもりだったりとか?」

「当然でしょ」


 何を当たり前の事を言ってるんですか?

 俺は改めてカメラへと視線を向ける。


「えー、小雛ゆかじゃなくって、森川楓の部屋をご覧になってるみなさんで、2015年製のスターズ王室御用達のお店から出ているワインを持っている方が居たら買い取らせてくれませんでしょうか? もちろんお金じゃなくて、他のものでお支払いする事も可能です。国籍を変えろとか離婚しろとかは絶対に無理だけど、そういう系の無理なやつじゃなかったらなんでも言ってください!!」

「「「「「「「「「「なんでも!?」」」」」」」」」」


 うわっ、びっくりしたあ……。

 さっきまで少し引いていたスタッフさんとお客さんが急に前のめりになって大きな声を出した。

 プロデューサーが前に出てくると俺に声をかける。


「あくあさん、なんでもって本当ですか?」

「もちろんです」

「じゃ、じゃあ、あくあさんとデートがしたいって言ったら……?」

「俺の辞書にノーという言葉はありません」


 むしろそんな事でいいんですか?

 この世界に俺がデートできない女性なんていませんよ。


「こーれ、ワインの争奪で世界戦争が起きます」

「私、しーらないっと。カノンさんとか結さんとか羽生総理に丸投げしよ」


 何人かのお客さん達が慌てて帰る準備を始める。

 って、スタッフさんも急に撤収する感じになってるけど、どうかしましたか?


「あっ、2人とも、スタッフさんがうどん届けてくれましたよ。

「私、きつねうどんね」

「おっにく〜おっにく〜!」


 俺たちは席に座ったままの状態で注文した出前のうどんを食べる。

 ほらほら、みんなも帰る前にうどん食べて帰ってね。


「って、本番中にうどん食べるとかフリーダムすぎでしょ!」

「いや、だからお腹空いてるんだって」


 うんうん。そもそも、スタッフさんもうどん食べながら撤収の準備してるし、何故か観客席のお客さん達もみんなでおうどん食べてるもんな。しかもそれをおうどん食べてるカメラさんが撮影してるんだもん。

 さすがは楓がメインのMCを務めている番組だよ。ベリルアンドベリルだってここまで自由じゃない。


「は〜。うま、やっぱ暑い時にこそ熱いうどんよね。おあげの出汁が沁みるわ〜」

「俺もきつねにしたら良かったかな」

「じゃあ、あんたの天ぷら少しよこしなさいよ。ほら、私が半分齧ったおあげあげるから」

「しゃっす」


 俺と小雛先輩がおかずを交換していると、楓が悲しそうな目でコチラを見る。


「番組の最初からずっと思ってたんだけど、なんか結婚してる私よりそっちの方がいちゃついてない?」

「私とこいつが?」

「ないない!」


 あれ? 楓って確か頭がよく見えそうだからって理由だけでプライベートはメガネかけてるけど、視力は抜群に良かったはずだよな?

 もしかして、目が悪くなったんじゃないか? 俺は心配そうな顔で楓を見つめる。


「あれー? おかしいな……。私の気のせい?」

「気のせいでしょ」

「うんうん」


 俺は相槌を打ちつつうどんを啜る。

 今、思ったけど、テレビの前にいる人達は視聴者を放置して出演者がおうどんを食べてるこのシーンを見て、どんな顔をしてるんだろう。流石にカットするよな。


「ここのスタッフなら、絶対にカットしないわよ」

「嘘でしょ……」


 ていうか、小雛先輩、人の思ってた事を読まないでくださいよ。


 後日。


 テレビで確認したら本当にうどん啜ってるだけの謎シーンもちゃんとオンエアされていた。

 他にもっと映すシーンあったでしょ……。


「ううっ、あくあのばーか! ついでにえみり先輩もばーか!」


 あと、顔を真っ赤にしたカノンが拗ねたのでえみりと2人で本気で謝った。

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