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幕間 白銀あくあ、喫茶トマリギ夏祭り出張店。

※あくあとカノンが結婚する前の夏休み前になります。ちょうどヘブンズソードやゆうおにの放送開始前で、それらの撮影してる裏でこんなことをしてました。

「よーし! こんなもんでいいだろ!」


 夏! 夏といえばお祭り!

 俺は過去にバイトしていた喫茶トマリギの夏祭り出張店を、オーナーの八千代さんの代わりに切り盛りする事になった。


「あくあ君、本当にいいの?」

「もちろんです! 俺に任せといてください!!」


 トマリギのオーナー、八千代さんは出店の準備をしていた途中で腰を痛めたそうだ。

 偶然そこに通りかかった俺! 困ってる人がいたら手を差し伸べる。それが白銀あくあだ!!

 俺は後ろに振り返ると、もう1人の助っ人に声をかける。


「えみりさんは本当にいいんですか?」

「あ、うん。今日は竹子がお休みだし……私でよかったら手伝わせて欲しいです」


 くっ、なんて心が清らかで、優しくて、良い人なんだ!

 目の前の大きな膨らみに目が眩んでる自分が恥ずかしくなる。

 えみりさんの放つ清らかなオーラに、俺は邪な心ごと浄化されそうになった。


「ありがとう。それじゃあそろそろ開店しようか!」

「う、うん! それじゃあ外にメニューの看板出しておくね」


 えみりさんが外にメニューの看板を出す。

 するとすぐに最初のお客さんがやってきた。


「わっ、喫茶トマリギの夏祭り出張店だって!」

「何売ってるんだろ?」


 お客さんは外にあったメニューに視線を落とす。


「焼きそばってレアじゃない?」

「確かに……いつもはナポリタンだもんね。じゃあ、それにしよっか?」

「うん! あっ、店員さん!」


 おっ、どうやら注文が決まったみたいだな。

 俺は焼きそばの材料を段ボールから取り出す。


「焼きそば2つと、ラムネ2本お願いします!」

「はい。焼きそば2つと、ラムネ2本ですね」


 お客さんから注文を受けたえみりさんは、笑顔でこちらに振り向く。

 ああ、なんて可愛いんだろう。それなのに大きいし、美人でお姉さんだし、大きいし……こんな人と一緒に働いて時給もらっちゃっていいんですか?

 むしろ俺がお金を払いたいくらいだ。


「焼きそば2つ、お願いしまーす」

「はいよ!!」


 俺は立ち上がると、クーラーボックスから取り出した材料を持って鉄板のあるカウンターの方へと向かう。


「あ、あくあしゃまぁ!?」

「ほへぇ!?」


 ん? 2人ともどうかした?

 俺は火を入れた鉄板で肉を焼く。


「ちょっと待っててね。すぐに作るから!」

「ふぁいぃぃぃ。もう4時間でも5時間でもお好きなだけ待たせてください」

「なんなら永久に待ちますぅ……。むしろ待つのでずっと見させてください」


 いやいや、そんなに時間かからないからね。うん。

 俺は焼いた肉に塩胡椒するとキャベツを炒める。


「2人ともどこかから来たの? 地元の人?」

「えっ、そんな喋りかけてくれるサービスとかあるの……」

「流石は伝説の店トマリギ、神かよ……」


 ん? なんか言った?

 鉄板のじゅうじゅうという音で何も聞こえない。


「えーと、子供の頃からずっとここのお祭りに来てて、その、久しぶりに地元のお祭りに行こうかなって」

「私達、今は関西と東北の大学に行ってて、今日久しぶりに帰省して会ったんです」

「へぇー。そうなんだ。そりゃちょっとサービスしないとな!」


 俺は鉄板に麺を投入して具材と絡める。

 ふぅ。暑くなってきたな。

 俺は汗を拭いシャツの腕を捲る。


「ふぁ〜、すごいサービスが来た……」

「うっ、腕に浮き出た血管を見てるだけで鼻血が出そう」


 俺は近くにあった卵を手に取ると目玉焼きを作る。

 その間にソースを麺に絡めてっと……。


「へぇ。2人とも普段は家庭教師のアルバイトやってるんだ」

「はい。そうなんですよ」

「向こうで中学生の子を教えてます」


 女子大生の家庭教師……。ああ、なんていい響きなんだろう。

 俺も高校生の時に、こんな膨らみが大きい美人お姉さんの女子大生家庭教師が欲しかった。

 ん? 高校生の時に……? いや、待てよ。よく考えたら俺、今まさに高校生じゃないか!!

 じゃ、じゃあ、俺も大きな魔性の女子大生家庭教師のお姉さんと楽しい夏の思い出が作れちゃったりとかするんですか!?

 俺はえみりさんへと視線を向ける。


『白銀君、保健体育の点数が低いみたいだけど大丈夫かな? 先生と一緒に深夜のお勉強会する?』


 ふぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!

 最高じゃねぇか!!

 なんならついでにおしべとめしべの受粉の仕方とか、身体の神秘についてもお勉強させてもらいたい。

 っと、今はそれどころじゃない。焼きそばが焼けたから早くパックに詰めないと。


「マヨネーズいる?」

「はい!」

「私も!」


 俺は焼きそばの上に目玉焼きを乗せるとえみりさんに手渡す。

 久しぶりに再会したお姉さん達へのサービスとして目玉焼きをダブルにした。


「マヨと青のりとカツオ、それと紅生姜のトッピングをお願いできますか?」

「はい!」


 流石はラーメン竹子でバイトリーダーを任され、免許皆伝まで行ったえみりさんだけの事はある。手際がいい。

 俺はその間にキンキンに冷えたラムネを取り出す。


「開け方わかる? なんなら開けようか?」

「「はい! お願いします!!」」


 うぉっ! 前のめりになった2人のお姉さんの膨らみアップになる。

 そんなサービスいいんですか!?


「ホイっ! はい、どうぞ!」


 俺はラムネを開けるとお姉さん達に手渡す。

 さっきの様子だと、2人ともよっぽどラムネが飲みたかったんだな。


「はい、こちら焼きそば2つになります。焼きそば1つ400円、ラムネ1本100円で合わせて1000円ですね」

「やっっっっっっっす!」

「あくあ様の汗が落ちたかもしれない焼きそばが400円で、あくあ様が開けてくれたラムネが100円だって!? おまけにさっきの会話と笑顔がプライスレス……。トマリギ、やば……」


 ん? 次の準備をしていてよく聞こえなかったけど、2人とも嬉しそうにしてるからよしっ!


「2人ともありがとね! 夏祭り楽しんで!!」

「はい! ありがとうございました!」

「もうすでに一生の思い出になりました。ありがとうございます!」


 俺はお姉さん達に手を振って別れると、一緒に作った他の焼きそばをパックに詰める。

 トマリギはメニューが多いからな。できる時に先に作り置きしておかないと間に合わない。


「あのー、チョコバナナとフランクフルトありますか?」


 おっ、どうやら新しいお客さんが来たようだ。


「はいよ! ちょっと待ってね!」


 俺はケースから串付きのフランクフルトを取り出す。


「あくあ君んんんんん!?」

「うぇっ!? にゃ、にゃんでこんにゃところに……」


 俺はお姉さん達に今日は臨時で手伝ってるんですよと伝える。

 もちろんその間にフランクフルトを鉄板に並べて焼く、


「えっ? あくあ様!?」

「あくあ様マジ!?」

「ガチであー様いるじゃん!」

「しかもフランクフルトにチョコバナナァ!?」

「やべぇ。よそのフランクフルト食ってる場合じゃねぇぞ!」

「あくあ様のチョコバナナだ! 急げ!!」


 うわぉ! あっという間に列ができた。

 うんうん、夏祭りだもんな。しかもトマリギはメニューが豊富だし、人気なのも頷ける。


「ごめん。ちょっと待ってね」

「はい!」


 俺はさっきのお姉さん達と同様に世間話に花を咲かせる。

 2人は都内の会社に勤務してるらしく、毎年このお祭りに参加しているそうだ。


「ちょっと列の人が多いのでさっきの焼きそばのパック、売り捌いてきます!」

「はいよ!」


 さすがえみりさんだ。竹子でやってるだけあって本当にやりやすい。

 長年連れ添った夫婦のような阿吽の呼吸がある。


「あくあ様の汗が染み込んだかもしれない手作りの焼きそばだよ〜。なんとそれが1パック400円〜。持ってけドロボー、早い者勝ちですよ〜!」

「こっち買います!」

「私も!!」

「2人いるんで2パックお願いします!!」

「まいど! 順番に行くから待っててね」


 おっ、フランクフルトが焼けたぞ。

 俺は一本手に取るとマスタードとケチャップをたくさんかけて、お姉さんの方へと向ける。


「あくあ君のフランクフルト、すごくおっきい……」


 お姉さんは何を思ったのか、フランクフルトにそのままパクリとかぶりつく。

 ごめんな。お腹空いてたのに待たせちゃって。


「んんっ」


 おっふ……。いくらなんでもそれはちょっと……。

 会社にこんな先輩がいたら、俺なんか下心全開でいくらでも残業しちゃうぞ。


「あっ、ごめんなさい。つい……」

「あはは、大丈夫ですよ」


 俺は冷凍庫の中からチョコバナナを取り出すと、もう1人のお姉さんの方に向ける。

 するともう1人のお姉さんもそのままチョコバナナに被りついた。


「んぐっ、んぐっ」


 だから、俺みたいな健全で純粋な男子高校生が、綺麗なお姉さんがチョコバナナを食べてる姿を目の前で見せられたら夜に悶々としちゃうじゃないですか!


「あっ……。我慢できなくて、つい……」

「大丈夫大丈夫。えっと、フランクフルトもチョコバナナも一本200円だったかな」

「えっ、やす……」

「なんでこんなボランティア価格みたいな値段で売ってるの……」


 うんうん、わかるよ。普通300円以上はするよな。

 もしかして八千代さんの値段の感覚が、数10年前で止まってるんじゃないかと不安になる。


「はい、合わせて400円ね。ありがとうございます」


 俺は2人にお祭り楽しんでねと声をかけて手を振った。


「あのー、かき氷、三つお願いできますか?」

「あいよ! 味はどうします? イチゴ、レモン、メロン、ブルーハワイ、練乳のトッピングもできますよ!」


 年齢的に小学生から中学生くらいの女の子3人組か。

 妹のらぴすのことを思い出して微笑ましい気持ちになる。

 俺は女の子達が味を選んでる間に氷を削ってかき氷を作った。


「あっ、じゃあ私、イチゴで」

「了解」


 俺はいちごのシロップをたくさんかけてあげる。


「お兄さん、みーのイチゴ味のかき氷に練乳いっぱいかけてくれませんか?」

「OK、お兄さんの練乳、沢山サービスしちゃうね」


 俺はらぴすより年下っぽいみーちゃんのかき氷にドロドロの練乳をドパドパかけた。


「お兄さん、ミーのかき氷に練乳たくさんかけてありがとう」

「じゃあ私はレモンシロップで! お兄ちゃん。ゆかのレモンシロップのかき氷に練乳いっぱいピュッピュッしてね」

「任せといて、お兄さん、ゆかちゃんのかき氷にいっぱい練乳かけちゃうよー」


 ゆかちゃんは中学2年生くらいかな。

 子供らしい笑顔にこっちも元気になる。


「ゆかのレモンシロップかき氷、お兄さんの練乳でドロドロじゃん。こんなにかけてくれて、ありがと!」

「えっとえっと、それじゃあ、なつは、ブルーハワイ味がいいな。お兄たん、なつ、甘いのが好きだから、なつのかき氷にもお兄たんの練乳、いっぱいかけてほしいな」

「もちろん! なっちゃんのかき氷には念入りにいっぱい練乳かけとくね」


 なっちゃんは小学生、低学年くらいか。

 かわいいなぁ。三姉妹だろうか。よーし、いっぱい練乳かけちゃうぞー。


「お兄たん、なつのにお兄たんの白くてドロドロしたのいっぱいかけてくれてありがとう!」

「はい、どういたしまして! 3つで600円ね、練乳はお兄ちゃんがサービスしちゃう!」

「「「わーい! ありがとうございます!!」」」


 俺は3姉妹に手を振る。

 いやあ、純粋な子供達だったな。

 さっきまでの自分が恥ずかしくなるぜ。


「子供、すげぇ……」

「くっ、絶対に長女っぽい女の子はわかっててやってるだろ」

「いや、3人とも確信犯に決まってる」

「三女のなっちゃんだけわかってて、実は長女も次女もわかってない説、あると思います!」

「お前らー、間違っても将来、捗るとかソムリエになるなよ〜」

「あくあ様が意味わかってたらこれ犯罪だぞ」

「こうやってみるとあー様ってやっぱり純粋なんだなぁ」

「意味分かってないあくあ君、かわいー」


 おっと、ぼーっとしてる暇なんてないぞ。

 俺は次のお客さんのために、どんどん注文を受けて作っていく。


「このフランクフルトとか、チョコバナナも売り捌いて来ますね」

「あ、うん。お願い」


 えみりさんは発砲スチロールの板に串を刺してお客さんの列へと向かう。


「あくあ様のフランクフルトと、あくあ様のチョコバナナだよー。もう2度とこんな機会ないよー、一本200円だよー」

「こっちにください!」

「こっちも!!」

「お姉さん、こっちお願いします!」

「はいはい、順番に行きますねー」


 焼きそばがなくなったらすぐに焼きそばを焼いて、間でかき氷作って……え? クレープ? もちろんできますよ! あー、フランクフルトも焼いとかなきゃ。って、人が足りない! それどころか材料も足りない!!

 こうなったら奥の手を使うしかない。


「ごめん。少し待っててくれる?」

「はい、もう一年でも待ってます!」


 それは流石に待ちすぎだろって思ったけど、今はつっこんでる余裕もなかった。

 俺は周りの店へと視線を向ける。あ、あれ? なんでここだけ渋滞してるの!?


「あ、あのー……」

「は、はい!」


 俺は隣の屋台を出してるお姉さんに声をかけた。


「材料とか余ってませんか? よかったら買い取らせていただきたいんですけど……」

「大丈夫ですよ。あっ、なんならお手伝いしましょうか?」

「いいんですか!?」

「はい。どの道、暇だし、多分、周りのみなさんも手伝ってくれると思いますよ」


 お姉さんは周りの屋台を出している人達に声掛けしてくれた。

 じーん、なんていい人なんだ!!

 お姉さんが物資と人を集めてくれたおかげで列が回り出す。


「俺も接客に入ります!」


 屋台の前に回った俺は、出来上がった商品をどんどんお客さんに手渡していく。


「本店にも来てね!」

「はい。行きます!」

「今日は来てくれてありがとう!」

「こちらこそありがとうございました!」

「夏祭り楽しんでね!」

「もうすでに最高の夏祭りです!!」


 それからどれくらいの時間が経ったのだろうか。

 最後には商品がなくなって、並んでいたお客さん達と握手して終わった。


「みなさんありがとうございました!」


 俺は協力してくれたお姉さん達に、お礼を言って一緒に写真を撮る。

 その後は、撤収に来てくれた八千代さんの娘さんが運転する車に持ってきたものを搬入した。


「あくあ君、それにえみりさん、今日は本当にありがとう!」


 俺とえみりさんは八千代さんから今日のバイト代をもらう。

 こんなにもらっていいのかな……。

 俺達は、八千代さんにありがとうございましたとお礼を言って別れる。


「えみりさん、俺のバイクで帰り送ろうか?」

「あ、うん。ありがとう」


 俺はえみりさんを後ろに乗せて走り出す。


「すごーい、竹子のバイクよりはやーーーい!」


 俺はそのままえみりさんを乗せてバイクを走らせる。

 浴衣を着たお姉さん達、川辺でお母さんと一緒に花火を楽しむ子供達。

 途中、どこか遠くから花火が打ち上がる音が聞こえてくる。

 バイクのミラーに映ったえみりさんの横顔に、すごくドキッとした。


「何を見てるの?」


 俺はハッとする。どうやらアルバムの写真を見ている途中に過去にトリップしていたようだ。

 アルバムを閉じた俺は、後ろに振り向くとえみりに笑顔を見せる。


「いや、去年の夏祭りの写真見ててさ」

「あー、あくあ様がカノンと結婚する前だよね。懐かしい」


 俺は隣に座ったえみりを抱き寄せる。


「なぁ。みんなで俺の実家に行って夏祭りしないか? あの時みたいに俺とえみりで屋台やってさ」

「あ、いいかも。それならカノンも一緒に楽しめるだろうし」

「よし、それじゃあ2人でサプライズ夏祭りやっちゃいますか!」

「うん! それじゃあ、なんか使えそうなものないか見てくるね」

「OK!」


 俺はアルバムを元の場所に返すと、えみりの後を追ってリビングへと戻った。


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あっ、きれいなえみりwwwだ。
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