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幕間 鯖兎みやこ、アイドルオーディション。

※質問できてたノクターン版となろう版の違いについて後書きに記載しております。

「どうしよう」


 私はらぴすちゃんやスバルちゃんが参加するからって、気軽な気持ちでオーディションに応募してしまった。

 でも、ここには意識の高い人達が沢山いて、直ぐに自分なんかが居ていい場所じゃないと気づく。

 それなのに私はチームDのキャプテンを任されてしまった。


「みやこちゃん、ちょっといいかしら?」

「あっ、はい!」


 スタッフさんの1人から、あくあ様が年末歌合戦に参加する時にサポートに入ってほしいと頼まれた。

 誘われたのはそれぞれのチームのキャプテン、Aの藤林美園さん、Bの天宮ことりさん、Cの祈ヒスイさん、そしてDのキャプテンを務める私の4人です。


「よろしくお願いします!」

「「「「よろしくお願いします!!」」」」


 先に現地入りした私達は、ベリルのみんなが使う控え室の準備を手伝う。

 不審物がないかとか、危険なものがないかの事前チェックはもちろんのこと、みんなが休憩中に飲む物とか軽食を事前に準備してたり、台本の変更やスタッフの人から伝えられたメモ書きを整理して机の上に置いたりとか、本番で使う衣装とかを先に搬入したりとか、思っていた以上に結構やる事が多い。


「そろそろ、あくあさん達が来るから出迎えに行きましょう」

「「「「はい!!」」」」


 現場を指揮する甲斐さんの指示に従い、私達はみなさんを出迎えるために裏口に出向く。

 今年の歌合戦はベリルの皆さんや総理が参加するからなのか、凄まじい数の警備の人がいました。

 私達も事前に身分証明書や住民票のコピーなどの提出を求められたり、国営放送から用意されたスタッフ証には身分証明用の写真と割り振られたID、所属、名前までちゃんと貼られています。

 少しだけ外で待っていると、黒いワンボックスカーが裏口に横付けする。


「おはようございます!」

「「「「「おはようございます!」」」」」


 中から降りてきたのは森川さんでした。

 テレビで見るとわからないけど、こうやって生で見ると顔はちっちゃいしスタイル綺麗だし、黙ってたら本当に綺麗なアナウンサーのお姉さんにしか見えません。


「森川さーーーん! 今日の進行なんですけど、ちょっといいですか?」

「森川さん、ここの台本なんだけど……」

「今日の登場のシーンなんだけどさ」

「歌合戦が終わった後なんだけど、ちょっと時間的にきついかも」

「すみません。少しだけ変更があった場所が……」


 森川さんは5人くらいのスタッフさんに囲まれると、打ち合わせしながら用意された控え室へと歩いて行きました。

 テレビを見てるだけじゃわからないけど、こういう姿を見るとメアリーで特待生だったというのも本当なのだと思います。なんか知的で仕事ができるお姉さんって感じがしました。


「おはようございます」

「「「「「おはようございます!」」」」」


 次に降りてきたのは小雛ゆかりさんだった。

 小雛ゆかりさんはそのまま通り過ぎようとして、私達の目の前で一旦ストップする。


「あくぽんたんは?」

「あ……まだ来てません」

「チッ! ありがとね。今日はよろしく」

「「「「「こちらこそよろしくお願いします!」」」」」


 私たちにされたわけじゃないけど、舌打ち怖い……。

 小雛ゆかりさんはずんずんと通路の真ん中を歩いて控え室へと向かっていった。

 うわぁ……モーゼの海みたいに人が左右に分かれていく。しゅごい……。

 あ、よく見たら、総理も端っこに寄って小雛ゆかりさんに挨拶してる。私達の国の総理なんだから少しは堂々としてほしいと中学生の私でもそう思いました。そんな事を頭の中で考えていたら、あんた総理なんだからもうちょっとしっかりしなさいよ!! という小雛ゆかりさんの声が聞こえてきて、周りに居た人たちと思いっきり吹き出してしまう。


「おはようございます」

「「「「「お、おはようございます……!」」」」」


 うわー、うわー、うわー。eau de Cologneの月街さんだ!!

 相変わらず何度見てもめちゃくちゃ可愛い!!

 月街さんの事が大好きなBチームの天宮ことりさんは目をキラキラさせていた。

 歌合戦を前にしても月街さんは落ち着いていて、私のような中学生から見たらすごくお姉さんに見える。

 それこそ、さっき見た総理より落ち着きがあるように見えるけど、きっと私の気のせいだよね? うん……。

 それから少しして、立て続けに車がやってくる。あ、これだ!


「おはようございます」

「よろしくお願いします」


 先にマネージャー達が降りると、それに続いてベリルのみんなと天鳥社長が降りてくる。

 その中でも最後に降りてきたのはあくあ様だ。

 カジュアルな服装で、降りてきた時は誰かと電話してたけど、すぐに中断して周りの人達に挨拶をする。


「すみません。こっちもう着いたんで一旦電話切りますね。それじゃあ、また」


 最初はカノン様と電話してるのかなと思ったけど、喋り方からしてそうじゃないみたい。一体、誰と電話してたんだろう。


「おっ、みんな来てたのか!」


 あくあ様は私たちの目の前で立ち止まるとニコッと微笑んだ。


「大変だと思うけど、キャプテンとして全体の流れは知っておいた方がいいよ。今日はたくさん学ぶ事があると思うけど、頑張って!!」

「「「「はい!」」」」


 私達は4人の後ろに続いて控え室へと向かう。

 それからはちょっとした用事を手伝ったり、買い出しに行ったりもしたけど、基本的には見ている時間が長かった。

 まず最初に気がついたのは、舞台裏でのあくあ様は基本的にすごくリラックスしてる。

 自然体というか、結構ベリルのメンバーにちょっかいをかけたりもするし、他の出演者さんにも自分からガンガン声をかけて絡みに行っていた。

 中でも1番面白かったのは、大部屋で小雛ゆかりさんと森川さんの3人で喋ってた時です。


「かっっった! 何よ! この煎餅、私に喧嘩売ってるんじゃないの!!」

「先輩、いくら友達がいないからって煎餅に喧嘩売るのはやめてください。せめて人間と喧嘩しましょう!」

「いやいや、あくあ君、人間より煎餅と喧嘩してる方がまだマシじゃないの?」

「あっ……確かに」

「ちょっと! 今さりげに私に友達がいないってディスったでしょ! ふふーん、私の電話帳だって、もう下にスクロールできるようになったんだから! ほら、みなさいよ!!」

「先輩……」

「え? もしかしてゆかりって携帯紛失して、電話帳が消えちゃったりした……?」

「ちょっと! あんた、私に喧嘩売ってんの!? あっ、そういえばあんたまだ電話番号交換してないじゃない! ほら、携帯電話出しなさいよ!!」

「えー……」

「何よ! この小雛ゆかりさんの携帯電話番号をタダでゲットできるのよ。ほら、貸しなさい!! はい、登録っと……言っておくけど、3コール以内に出なさいよね」

「……着拒にしておこうかな」

「それがいいですよ。俺も夜は邪魔されたくないので着拒にしてます」

「ちょっとぉ!? あくぽんたん、今の言葉、聞き捨てがならないんだけど!?」

「気のせいですって。ほら、このクッキーでも食って落ち着いてください」

「わかったわよ……。って、このクッキーもかっっった!! 誰よ今日のお菓子調達した子! おまけにどれも全部、口の中の水分持っていく系じゃないの! もうちょっとこう、食べやすさとか、種類とかを重視しなさいよね!」

「ほらほら、俺のお茶あげますから」

「ごくごくごく……ぷはぁ! 生き返ったわ。ありがと……って、そもそもあんたが渡してきたんじゃない。このすごくモソモソしたデカクッキー!」

「チッ、バレたか。ちなみにこのクッキーを持ってきてくれたのは森川さんです」

「ついでに言うと煎餅を持ってきたのはあくあ君だよ」

「よし、わかった。お前ら、今から表にでろ!!」


 こんな感じでもうずっと3人でお喋りしてて、周りに居た歌手の人達もみんな聞き耳を立ててるし、スタッフさんも仕事してるフリをして3人の会話をめちゃくちゃ聴いてました。

 だってリアル小雛ゆかりの……じゃなかった、森川楓の部屋なんだもん。もう、この映像を配信をするだけでお金を稼げるんじゃないかなって思います。

 あと、最後のって間接キスだよね? この世界に、あくあ様と間接キスして平然としていられる女の人っているんだ……。私は時空が歪みそうなほどの強い衝撃を受ける。

 それから暫くして、本番がだんだんと近づいてきました。


「本番まであと10分でーす!」


 舞台裏には、もう多くの出演者達が集まっています。

 あ……とあ君が私に気がついてウィンクしてくれた。とあ君の元気そうな姿を見ると私も嬉しくなります。

 頑張ってねと私が口をパクパクさせると、向こうも、そっちもねと口をパクパクさせる。


「白銀あくあさんが入られまーす!」


 みんながあくあ君の方を見る。

 か、かっこいい……! さっきまでのカジュアルな衣装と違って、本番用の衣装になってかっこよさが溢れていました。


「源軍のみんな、もう準備はできてるかー!」

「もちろん!」

「いつでも行けるよ!」

「任せて!!」


 あくあ様の呼びかけに対して、源軍の人たちが声を上げて応える。

 笑顔を見せたあくあ様は、そのまま1人ずつ手をタッチしてベリルのみんな所へと向かった。


「みんな準備はできてるか?」

「当然! あくあの方こそ、司会でへばりすぎないでよね!」

「ああ! 僕も今日のためにコンディションは万全だ!」

「もちろんだとも! 何かあったら我に任せろよ、後輩達!!」


 3人から返ってきた言葉に嬉しくなったのか、あくあ様はとあ君、黛さん、天我さんの順番でハグしていく。


「先輩、俺は今日、司会がメインだから、ベリルの方は任せます」

「ああ、任せておけ!」


 天我さんは1人だけ年上だからかもしれないけど、天我さんとあくあ様の間に流れる空気感は良い意味で、とあ君や黛君とは違う気がします。本当に心から天我さんを信頼して任せているような、そんな気がしました。

 あくあ様は天我さんのところから離れると、小雛さんや森川さんの居るところへと向かう。


「小雛先輩にだけは絶対に負けたくねー」

「はっ! かかってきなさいよ!! 全力で叩き潰してやるわ!!」


 笑顔で喧嘩を売り合う2人に周りからも笑みが溢れる。

 敵味方、スタッフ演者関係なく、2人は周囲の人たち全部を巻き込んで一体感のようなものを作り出していく。

 改めてこの2人はすごいなって思いました。


「アヤナ、頼むぞ!」

「もちろん、任せておいて!」


 あくあ様はトップバッターを務める月街さんとハイタッチする。

 その後、城まろんさんや、来島ふらんさんにも声をかけていく。


「そろそろ本番始まります!!」


 スタッフの掛け声と共に空気感がまた一変する。


「皆さん、気合を入れていきましょう!」

「おう!」


 森川さんの掛け声にあくあ様が真っ先に応える。それに続くように、至るところから声が上がった。

 そこからは怒涛の展開です。慌ただしく人が動き、目まぐるしく状況が変わっていく。

 その中で、みんながそれぞれに自分の仕事に集中して、よりよい物を見せようと努力していました。


「凄かったね」

「う、うん」


 帰りに乗ったバンの中で、他のチームのリーダーの人達と話す。

 私だけじゃなくて、みんながそれぞれに思うところがあったようでした。

 クリスマスの時はただただ憧れというか、お客さんのような感じが抜けてなかったけど、2回目の現場見学だった事、本番の審査が近づいていた事もあって、その時よりも、より現実的な目線でみんなが目の前で繰り広げられる光景を見られるようになったからだと思います。


 私が、本当にやりたい事……。


 ステージの上に立ったあくあ様は誰よりも輝いていました。

 本当に自分がやりたい事をやってるんだってわかるくらい。喜びが体の中から溢れているように見えました。

 それじゃあ、私がやりたい事ってなんだろう?

 私がそもそもオーディションに応募した理由。私はらぴすちゃんや、スバルちゃんにアイドルになって欲しかった。

 スバルちゃんは1人で先に応募してたけど、私は迷ってるらぴすちゃんの背中を押すために、一緒に応募したのがきっかけだったんだよね。

 クリスマスと大晦日、2つの舞台裏を見学させて貰った事で、私は自分が何をやりたいか気がつく事ができました。


「あの……話があるんですけど、いいですか?」

「いいよ」


 私はたまたま合宿所に顔を出したあくあ様を見つけて声をかけた。


「私、チームDのプロデュースがしてみたいです」


 私の提案に、あくあ様は優しげな笑顔で問いかける。


「どうして?」

「このままじゃ、チームD、みんなの能力を100%引き出してあげられないからです!!」


 私はカバンの中からノートを出して、あくあ様の目の前で広げて中を見せる。

 このノートには、チームDをどうしたいか。どうすればいいかを書いてあります。

 あくあ様やプロの人からすれば落書きみたいなものかもしれないけど、私なりにどうすればみんなの魅力を引き出せるかとか、チームとしていいパフォーマンスができるとかをたくさん考えた。


「ちょっと見ていい?」

「はい!」


 あくあ様はノートに書かれた事を1ページ1ページゆっくりと、真剣な顔で見てくれた。


「みやこちゃん、すごいね。ちゃんとキャプテンとして、いっぱいみんなの事を見て、考えてくれて、本当にありがとう。やっぱりみやこちゃんをキャプテンにして良かった」


 あくあ様の言葉に泣きそうになる。

 私がこれまでやってきた事が無駄じゃないって、あくあ様が肯定してくれた。

 あくあ様はノートに書かれた事を読み終わると、そっと閉じて私の顔を真剣な表情で見つめる。


「最終確認だけど、みやこちゃんは本当にそれでもいいの? 俺はみやこちゃんにもアイドルとしての魅力があると思ってる。だから選んだし、俺や他の先生達、スタッフさん達のサポートが足りなかったのなら、今よりも、もっともっとサポートができるように努力します。それでも意思は変わらない?」

「はい! 私が本当にやりたい事はアイドルじゃなくて、アイドルになる人たちをもっと輝かせる事です!! そして出来る事なら、このまま私にチームDのみんなをプロデュースさせてください!! まだ私は中学生で至らないところもあると思うけど、チームDに関しては、誰よりも見てきました!! だから自信があるんです。みんなをアイドルにしたいんです!! だからよろしくお願いします!!」


 私は握り拳に力を込めと、あくあ様に向かって頭を下げた。

 こんなのただの我儘でルール違反かもしれないってわかってるけど、短い期間だけど、ここまで寝食を共にして頑張ってきたみんながこのまま不合格になるのを見ているだけなんて私には耐えられない。みんなすごく魅力的だし、誰1人として、ここで不合格になっていい人達じゃないもん!


「ごめんなさい。今までたくさん指導してくれて、私のために枠を使ったり時間も使わせて、おまけにこんな我儘まで言っちゃって……」

「そんな事ないよ」


 あくあ様は私の肩にそっと触れる。


「みやこちゃんは自分が本当にやりたい事を見つけたんだから、もっと胸を張って誇りなよ! むしろ俺の方こそ気がついてあげられなくてごめん。それと、俺はみやこちゃんの想いを尊重してあげたいけど、これは俺だけが決めていい話じゃないから、今日中に俺の方から阿古さんや番組の方にも掛け合ってみる。その代わり、チームのみんなには自分から説明するんだよ」

「はい! もちろんです!!」


 私はあくあ様と別れると、チームのみんなにも自分が本当にやりたい事と経緯、自分が本気だって事を伝える。

 スバルちゃんからは本気なのって言われたから、本気って言ったら、わかった、応援すると言ってくれてすごく嬉しかった。

 それから少しして、あくあ様から、そのままチームDのまとめ役として残っていいと言われる。

 嬉しかった。それと同時に、やらなきゃって責任感が両肩に重くのしかかってくる。

 でもそれ以上に私の心はワクワクしていた。


「みんな聞いて、私に考えがあるの」


 チームDのみんなに合格してもらうために、私は覚悟を決めて動き始めた。

ノクターン版となろう版の違いです。


・ノクターンなシーンはもちろんな事、そういう単語を使った全てのシーンをカット。

・引っかかりそうな表現やセリフは大丈夫そうなラインでも念を押して変更。

・変更で対応できないシーンは、大丈夫な部分があっても前後が繋がらなければ全カット。

※1000文字〜多いのだと5000文字近くカットしてる話もあります。


単純にノクターンの話だけじゃなくて、掲示板でのレスバや役者モードやライブの話でも引っかかりそうなシーンは変えてるので、対象年齢であればノクターン版をお勧めします。ノクターンシーンも、その前後で会話とかも結構してるので、間だけ飛ばして読んでも大丈夫です。


Twitterアカウントです。作品に関すること呟いたり投票したりしてます。


https://x.com/yuuritohoney

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