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小雛ゆかり、夏の同人即売会に参戦決定!!

「あの……本当にいいんですか?」


 カノンさんが心配そうな顔で私を見つめる。


「大丈夫大丈夫。ただの買い物でしょ? 私に任せておいて」


 妊娠してるカノンさん達が買いたい本があるっていうから、偶然にも暇だった私が手を上げた。

 みんなには普段からお世話になってるし、私は家事ができない分、協力できる事は協力しないとね。

 カノンさんは隣にいる琴乃さんと顔を見合わせると、なんとも言えない顔になる。


「あの……あんまり無理しなくていいですからね」

「やばそうだったら即撤退で」


 もー、2人してどうしたの?

 ただ本を買いに行くだけなのに、そんな悲痛な顔をして何かのネタ?


「小雛先輩、これ、どうぞ。熱中症対策もろもろとキャリーケースです。キャリーケースはレイヤーの人達に聞いて臨時クロークやってる場所に預けてください。それと私は別件の用事があって行けないので、助かります!!」

「あ、うん。ありがとう、えみりちゃん」


 私はえみりちゃんからキャリーケースを受け取る。

 え? 私ってもしかして今から旅行に行くのかな?

 ただみんなの本を買うだけなのにキャリーケースはいらないと思うけど……。


「これ、お金です」

「おっも」


 カノンさんからパンパンに膨らんだ紙封筒を受け取る。

 ちょっと待って、私ってもしかして今から何かのヤバい取引現場に向かわされるの?

 ただ本を売って買うだけって聞いたけど、もしかして本って何かの隠語だったりしないわよね。


「一応これが購入リストです」

「うん」


 私は琴乃さんからメモ帳を受け取る。

 試しに中に書かれたものを確認しようと表紙を捲ると字がびっしりと書かれていた。


「は? 何これ、呪文?」

「本のタイトルとサークル名、大体の場所と購入冊数が書かれてます」


 これはメガネを持って行った方が良さそうね。

 私は楓に部屋からメガネを持ってきてもらう。


「ゆかり……頑張れよ!」


 楓がキリッとした顔で私に敬礼すると、それに合わせて他の3人も私に向かって敬礼する。

 ちょっと! 何よそれ、この前、くくりちゃんがいいですともに出た時のモノマネかなんか!?

 全くもう。戦場に行くわけでもないのに大袈裟すぎよ。ていうか、その手振りの日本国旗はどこから持ってきたのよ!


「はぁ、家を出るだけで疲れたわ」


 エレベーターで下に降りた私は駐車場で知り合いに遭遇する。


「あれ? インコ、どうしたの?」

「乙女ゲーに疲れて逃げ出してきた」


 はあ? あんた、まだそのクソゲーやってんの?

 製品版の乙女ゲーの方は追加コンテンツまで出て、クリスマスにはバージョン2に大規模アップデートするって言ってるのに、いまだにデモ版のあのクソゲーの方をやってるのなんて日本じゃあんたくらいしかいないわよ。

 私がインコと話していると、らぴすちゃんやくくりちゃん達がお友達のスバルちゃんを連れて戻ってきた。

 そういえばくくりちゃんのいいですとも回を見て、らぴすちゃんがミルクディッパーのみんなで合宿名目のお泊まり会をやるって言ってたっけ。

 ふふん。のほほんとしてるところがらぴすちゃんのいいところでもあるけど、よーやく少しはセンターとしての自覚が出てきたみたいね。

 大抵の事は参考にしなくてもいいけど、そういうところはあんたの兄貴を参考にした方がいいわよ。アイドルはみんなを引っ張っていくセンターがしゃんとしてたらグループの結束は固くなるってのを、誰よりもあんたの兄貴が証明してるんだから。


「あれ? こんなに早くに今から旅行に行くんですか?」

「ううん。頼まれて本を買いに行くだけよ」


 私は手に持っていたメモをみんなに見せる。


「こんな量を1人で買うのは無理なのじゃ……」

「うん、だから。買えるのだけ買ってって言われたんだよね」


 なんなら買わなくてもいい。空気だけでも吸って帰ってもいいって言ってたんだよね。

 意味わかんなすぎでしょ。わざわざ行ったのに、空気だけ吸って帰って何が楽しいのよ。


「よっしゃ! そういう事なら、このインコさんが手伝ってやるで!」

「普通に助かるわ。ありがとう、インコ」


 後、ここならもうみんな知ってるからいいけど、お外でインコって言うのやめなさいよ。

 あんたには樋町スミレって名前があるんだから、そっち使いなさい。そうじゃないとバレるわよ?

 まぁ、あんたの声と喋りと見た目でモロバレだろうけどね。まるで隠れてない森川なんとかソムリエってのと一緒よ。


「私たちも手伝います!」

「いいの?」

「はい!!」


 まぁ、人数が多い方が楽よね。

 私はらぴすちゃん達にもお願いして手伝ってもらう。

 みんなは一旦上に行って荷物を置いてくると、大きなトートバックを持って降りてきた。


「大人数で行けるのならキャリーケースは邪魔になるので回収します」

「う、うん」


 ペゴニアさんが手慣れた手つきで中に入ってたものを入れ替えると、私に大きなトートバッグを手渡した。


「それじゃあ、みんなで行くわよー!」

「「「「「「「おーっ!」」」」」」」


 私、インコ、らぴすちゃん、くくりちゃん、スバルちゃん、フィーちゃん、ハーちゃん、みやこちゃんの8人は手を上げて気合いを入れる。

 えーっと、確か移動は電車の方がいいんだっけ? とりあえず車で駅まで送迎してもらいましょう。


「えっ? あれに乗るんですか?」

「人が押し寿司みたいになってる……」


 大量の人間が乗った電車を見たスバルちゃんとハーちゃんがドン引きする。

 なるほど、電車でこれなら現場に車で行けない理由がよくわかったわ。


「行くわよみんな!」


 人間がぎゅうぎゅう詰めになった電車に無理やり乗り込む。


「はわわわ!」


 体のちっちゃならぴすちゃんが、大きなお姉さん達2人に挟まれて体が浮く。


「くっ、デカさなら負けへんで!」


 ナイスプレイよインコ!

 インコが自慢の大きな膨らみでスペースを確保すると、要領の良いハーちゃんがスッとインコの空けたスペースに入り込む。なるほど、こうやってスペースを確保するわけね。

 なんでこいつら、さっきから女同士でぶつけ合ってるのよ。もしかしてチジョー? だなんて思ってたけど、そういう理由だったのかと納得する。


「みやこちゃん、私たちもこの方法でスペースを確保するわよ!」

「は、はい!」


 私はインコやみやこちゃんと比べるとデカくないけど、他のメンバーの事を思えば私が頑張るしかない。

 フィーちゃんを抱き寄せた私は、みやこちゃんの方へと視線を向ける。あっちは大丈夫かしら?


「み、みんな、どうしたの?」


 目からハイライトが消えたらぴすちゃん、スバルちゃん、くくりちゃんの3人がみやこちゃんの大きな膨らみをガン見する。


「兄様、これが格差社会なんですね」

「ううっ……」

「ふーん。ありがとう、みやこ」


 あれ? さっきまで合宿終わりでみんなの距離感が更に縮まってたように見えたのに、私の気のせいだったのかしら……。あの一角だけやたらと不穏な空気感が流れる。


『次は有明〜、有明〜』


 目的地に近づくたびに人が増えていく。

 スペースを確保しようと私がお姉さん達に挟まれる。

 くっ! みんな耐えるのよ!! 後少しの辛抱だから!!

 私達は体をぶつけ合いながら、女の濃厚な匂いが入り混じった電車に揺られる。


「ありがとうございますありがとうざいます」


 ん? 今、あくあの声が聞こえてきたような気がするけど、私の気のせいよね?

 流石にあのアホだって、この中に詰め込まれて喜んだりなんてしないでしょ。


「ドアが開きます!」

「走らないでくださーい!」


 うわあああああああああ!

 私達は人の波に流されて電車から外に出る。


「はぁはぁ、はぁはぁ……」


 なんとか横にそれた私達は両膝に手を置いて息を荒げる。

 どうなってるのよ、これ。通勤電車だってこんなに混んでないでしょ!!


「あれ? みやこちゃんは?」


 気がついたらみやこちゃんが居ない。

 どこにいったのかしら……。


「あの、みやこちゃん、電車から降りられなかったそうです……」

「あっ……」


 らぴすちゃんが手に持っていたスマホ画面を見ると、先に行っててくださいと書かれていた。

 みやこ……あんたの死は無駄にしないわ!!

 生き残ったみんなで再度円陣を組んで気合いを入れる。


「みやこちゃんの分まで頑張るわよ!」

「「「「「お、おーっ!」」」」」

「別にみやこちゃん死んでへんって!」


 インコ、そういうツッコミはいらないから、さっさと行くわよ!

 カノンさんが言ってたけど、確かみんなが行ってる方向についていけば良いのよね。

 列に上手く紛れた私達は目的地に向かって歩き出す。


「あれ? 止まった?」

「みたいですね」


 え? 会場の中に入れるのって11時くらいなの?

 それなのに、こんなに早くに来て意味がわからないんですけど!?

 なるほど、これが熱中症対策をしなきゃいけない理由だったのね。


「どいてくださーい!」

「車椅子通ります!!」


 ここって野戦病棟か何か?

 車椅子や担架に乗せられた人が次々と列から運び出されていく。


「水が欲しい人や、冷却シートが欲しい人は言ってくださーい!」


 ボランティアの人かしら?

 何人かのお姉さん達が水や冷却シートなどを無料で配っていた。


「水のボトルにSAINT AQUA WATERって書いてる」

「冷却シートの裏に聖白新聞の文字が……」


 ちょっと! 聖あくあ教のフロント企業じゃないの!!

 あいつら、こんなところにも進出してきてるわけ?

 よく見たら、外に置かれている業務用冷風機やバッテリーもそうだし、途中で休憩できる用の日差しよけテントにもそっち系の企業の名前が書いてある。


「シスター服の人が打ち水までしてる」

「ちょっと、ううん、結構涼しくなったかも」


 くっ、やってる事が助かってるから、誰も何も言えない。

 そんなバカみたいな宗教やめときなさい! って言いたいけど、活動自体は悪くないよね。

 ただ、その馬鹿げた神だけは信仰するのを止めておきなさい。もっと他にもいるでしょ!!


「あ、列が動き出しました」

「本当だ」


 私達は列の動きに合わせて会場の中に入る。

 さてと、ここからは別行動ね。

 私達は列に並んでる間に、ハーちゃんの主導で効率的に役割分担を決めていた。


「大阪のおばちゃん達とタイムセール品を競ってきたうちにまかしとき!」


 インコ。人は多いけど、ここはそんなに無秩序じゃないわ。

 ほら、あんたはそっちに並んで。私はこっちに並ぶから。

 私はスバルちゃんの隣のレーンに並ぶ。

 スバルちゃんは確認のために紙に書かれた商品名を確認する。


「えーと、私が買うのは……とあにゃんとあくにゃんのにゃんにゃん生活ぅ!?」


 どうやらスバルちゃんが購入するのは、とあちゃんとあくあが主体になったお話みたいだ。

 どんな内容なのかは知らないけど、2人が猫を飼う話とかそんなのかしら?

 あいつの漫画っていうのは気に入らないけど、私、猫漫画とか好きだから、後から借りようかな。


「で、私が買うのは……俺の生意気な先輩をわからせる方法?」


 ふーん。どんな内容の作品なのか知らないけど、どの業界にも生意気な先輩っているのよね。

 あー、やだやだ。私は今、生意気な後輩のあくあに悩まされてるけど、もしかしたら共感できる話かもしれないわね。

 列に並んでいると、この漫画の作者と思わしき人物が自分の書いた作品を手売りしていた。


「ありがとうございます。って、小雛ゆかりさん!?」


 あ……流石にじっくりと顔を見られるとわかっちゃうわよね。

 私は笑顔で対応する。


「はわわわ、ごめんなさいごめんなさい!」


 なんで謝ってるのかしら、って! あんた、今、どっかの白龍先生や羽生総理みたいに土下座しようとしたでしょ!

 あんた、こんなところでそんな事をしたらますます私のイメージが悪くなっちゃうじゃない!


「何を謝ってるのかわからないけど、ほら、立ちなさい」


 私は受け取った本を見る。

 ふーん。この表紙に描かれてる女の子、なんかちょっと私に似てるんじゃない?

 もしかして、私を題材に書いてくれたのかしら。あんた、わかってるじゃない!!

 気分が良くなった私は作者の背中をバンバンと叩く。


「私の事、可愛く書いてくれてありがとね! なんなら、こっちのあくぽんたんに似たキャラじゃなくて、次は私を主人公にしてくれたっていいんだから!!」


 そうそう、あいつより私が異世界転生して勇者になる話とかの方が良くない?

 絶対にそっちの方が面白いでしょ!


「お、おい。あのサークル、公式から認定されたぞ」

「なん……だと?」

「ネタになってる人が買いにくるのもヤベェけど、認められてるのもヤベェ……」

「非公式の公認サークルってこと!?」

「あそこ、ならぼうぜ!」


 うわっ! 後ろを振り返るとすごい列ができていた。

 カノンさんが人気サークルは列ができるって言ってたけど、こういう事なのね。

 私は次のサークルに並ぶ。


「はわわわわわ」


 隣のサークルに並んでいたらぴすちゃんが顔を真っ赤にして固まっていた。

 おーい。大丈夫ー?

 私は首を突き出すと、展示されたポスターを見てらぴすちゃんが購入する予定の作品を確認する。


【兄ですが、妹溺愛中のために他はご遠慮ください】


 ちょっと、確かにあいつは顔だけはクソほどかっこいいけど、あんなにキラキラしてないでしょ!

 他人様の描いた絵に文句は言わないけど、これが解釈違いってやつなのかしら。

 それとも私以外の女子には、みんなアイツがあんな感じに見えてるわけなの?

 うーん……まぁ、いっか。人それぞ好みは違うものね。尊重するわ。

 らぴすちゃんとかカノンさんとか、琴乃さんとかはああいうあくあが好きだろうなと思った。


「げっ、小雛パイセンがどうしてこのサークルに……」

「ん?」


 今、あんた何か言った?

 私は顔を隠すコスプレをした作者の顔を覗き込む。


「イエ、ナンデモアリマセン」


 チジョーのコスプレしてるからって、声までチジョーっぽくしてるのってあんた中々器用じゃない。


「カノンのやつがこっそりとリストに入れやがったのか……新人サークルにまで目をつけるとか、アイツヤベエナ……」


 作者の人はブツブツと何か独り言を呟きながら、私に自分の描いた作品を手渡す。


【只の通りすがりのチジョーですが、何か?】


 なんの作品よこれ。未成年が読んでも大丈夫なやつでしょうね?

 私は作者に疑いの目を向けつつ、一応は保護者として中身をチェックする。

 ふーん、ロ・シュツ・マーとクンカ・クンカーの2人がED後に活躍する話か。

 決して勧善懲悪じゃない話だけど、人情味溢れるクンカ・クンカーの暖かさと、ちょっとクールだけど実は優しいロ・シュツ・マーのコンビが人助けをする様が描かれていてなんとも憎い。


「あんた、これ面白いじゃない!」

「あ、アザース……あ、これ、オマケのブックカバーです」


 へー。ブックカバーがロ・シュツ・マーのコートになってるんだ。

 芸が細かいを通り越えてセンスがすごいわね。

 私はさっきのサークルと同様に自分用にもう一冊購入する。

 これは帰ってじっくり読もう。

 私が場所を移動していると、くくりちゃんがドス黒いオーラを出しながらサークルの列に並んでた


「ふふっ、ふふふ……禁書指定か焚書指定したいけど、我慢我慢。爆にゅ……じゃなくて、言論弾圧なんてもってのほかですもの」


 一体なんの本よ。

 私はサークルに貼られていたポスターへと視線を向ける。


【俺と大きなお姉さん達の熱い夏休み】


 あっ……。全てを察した私はくくりちゃんからスッと視線を逸らす。

 ハーちゃんは効率重視で振り分けたんだろうけど、次からはその人を見て振り分けた方がいいわよ!

 私は全てを見なかったことにして、一番列ができてるところに並ぶ。


「あれ? 小雛先輩、こんなところで何してるんですか?」

「そういうあんたこそ、何してんのよ!!」


 列の先頭に出るとあくあが売り場に立っていた。


「ねねちょさんと一緒に作った作品を夏に出すって言ってたじゃないですか」

「そういえば、そんな事を言ってたわね」


 私はアイツがねねちょさんと一緒に作った本に視線を落とす。


【大怪獣ゆかりゴンの夏休み】


 あら、スイカを食べてる私が表紙に描かれてるじゃない!

 かわい〜! あんたが大人の本でも描いてたら説教しようかと思ったけど、こういうのならいいじゃない。

 私もこれ一冊買うわ。


「あと、これも」


 何? あんた2冊も出してるの?

 私はもう一冊の本へと視線を落とす。


【アイドル、俺】


 ふーん。女の子とイチャイチャする作品かと思ったけど、そういうのじゃないんだ。

 表紙を見ると、キラキラはしてないけどかっこいいあくあの絵が描かれている。

 いつも可愛い絵やデフォルメキャラのデザインが多いねねちょさんって、こういうタッチの絵も描けるんだ。って、違う? えっ? 作者をよくみろって?


【作者:メリーさん/茶々まる、原作:白銀あくあ】


 あっ、よく見たらメリーさんが手売りしてる!

 もー、それならあんたじゃなくて、あっちの列に並んだのに!!

 帯には同じボッチ会の一員でゆうおにの原作者でもある圭の絶賛コメントが書かれていた。

 ふーん、アイツがいうならこっちも買ってみようかな。

 って、よく見たらメモ帳にこっち買えって太マジックで書かれてた。はいはい。わかりましたよっと。


「小雛先輩、ありがとうございます。多分、カノン達のためなんですよね。今年の夏は行けないなって残念がってたから。俺やえみりがサークル参加してなかったら、行けたんですけど……」

「気にしない気にしない。それこそ、あんたこそ頑張りなさいよ! 今晩はカレーだって言ってたわよ!」

「やったー! カレーだー!!」


 全く、調子がいいんだから。ま、カレーで喜んでるあんたは可愛いと思うけどね。

 私はあくあのサークルから離れると、みんなとの集合場所に向かう。

 あ、あそこに売ってるの、カノンさんが好きそう。それにあっちのは結さんが好きそう。

 リストにはないけど、せっかくだからみんなが好きそうなものをお土産で買っていこうかな。

 私は集合時間まで時間があったので、その時間を潰すように色んなサークルでお買い物をする。


「何やってんのよ」


 真っ白に燃え尽きたインコがベンチで項垂れていた。

 どうやら、インコが並んでたサークルは激戦区だったみたいね。

 仕方ないので頑張ったインコを褒めてあげる。


「ふぅ」


 両手にバッグを四つ抱えて戻ってきたハーちゃんが荷物を下ろす。

 いやいやいや! その量どうしたの!?

 えっ? お姉さん達は無能だから、私が半分以上買ってきたって!?


「無能なんて一言も言ってない。そっちの方が効率が良さそうだったから」

「あ、うん。ごめん。私の幻聴だから」


 私の持ってる袋と違って、どれも中が綺麗に整理整頓されてる。

 すご……。って、あれ? フィーちゃんは?


「みんなー! 落とし物を見つけたのじゃ!」


 戻ってきたフィーちゃんは手に持っていた本をみんなに見せる。


【お前、今晩、XXXX確定な?】


 うぎゃあああああああああああああああああああ!

 何よその本! って、子供がこんな本を読んじゃダメでしょ!!

 私は秒でフィーちゃんから本を奪い取る。


「これは、私が返してくるから。みんな自由にしてて。先にご飯食べに行っててもいいから」

「わかったのじゃ!」


 私はみんなから離れて落とし物を本部に持っていく。

 あ……みやこちゃん、らぴすちゃん達と合流できたのね。

 私は本部に落とし物を届けると、ショートカットしてみんなに合流しようとする。


「あれ、ここどこ?」


 道に迷ったのかしら?

 コスプレをしている人達がいっぱいいる。


「あっ! 小雛ゆかりのコスプレだ!」

「ボッチ・ザ・ワールド!?」

「そっくり!」

「写真撮らせてください!」


 そっくりも何も本人よ!!

 私はコスプレエリアでもみくちゃにされる。

 ちょっと! あんた達、私が本物だってわかってるのにわざとやってるでしょ!!


「酷い目にあったわ」


 これだからこの国の女はすぐに悪ノリする!

 まぁ、私もコスプレイヤーの子達と一緒に記念撮影できて楽しかったわ。

 入れ替わるようにして、インコ達が迷子になった私を探すためにコスプレエリアにやってきた。

 私はみんながコスプレエリアで楽しんでる間に、買ってきてもらったホットドッグを聖あくあ教が作った飲食スペースで食べる。


「ただいまー」

「お帰りなさい!」


 私達が帰宅すると、カノンさん達が笑顔で出迎えてくれた。

 疲れたけど、結構楽しかったな。


「え? ゆかりがこれ買ってくれたの?」

「どーよ。楓、こういうの好きでしょ」

「うん、好き好き!」


 ふふん。どうやらみんな私が買ってきたものも喜んでくれてるみたいね。

 良かった良かった。

 私たちはみんなで買ってきた戦利品の本を回し読みしたり、グッズを見たりして楽しむ。


「ただいまー。腹減ったー!」

「ごっ・は・ん! ごっ・は・ん!」


 あっ、あくあが帰ってきた! って、えみりちゃんも?

 そういえばどこかに出かけるって言ってたけど、2人同時に帰ってくるなんてタイミングいいじゃない。

 私達は2人を出迎えると、イベントの話で盛り上がりつつみんなで楽しくカレーを食べた。

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