雪白えみり、最後の最後にご褒美きたー!
「それでは最後の問題です。なんと最後の問題は最大で1億ポイントが加算されます!!」
「ふざけるなー!」
「今までのは全て茶番だったのかー!」
「金返せー!」
楓パイセンの言葉に、私と小雛パイセンとペゴニアさんがすかさずツッコミを入れる。
もちろんみんなわかってた事なのでブーイングしてても表情は笑顔だ。
あくまでもこれはレクリエーション、食事会中のイベントの一つだからね。
「それでは、最後の1名は前に出てください!」
うちのチームの代表はくくりか。
ふっ、本当は私がくくりのサポートをしたかったけど、ここは大人しくクレアに譲るよ。
そんな雰囲気を表情で醸し出してると、くくりに首を掴まれて引きずられる。
「さぁ、一緒にいきましょうか」
「う、うぃ〜」
どうやら嫁ーずの中でも最下層の私には拒否権すらもないようだ。
私はくくりと一緒にステージに上がる。
姐さんのチームからはココナちゃん、小雛パイセンのチームからはリサちゃん、らぴすちゃんのチームからはうるはちゃんが代表としてステージに上がってきた。
「2人とも、今回だけは負けないんだから!」
「私だって!」
「ふふっ、それじゃあ私も負けないように頑張ろうかな」
相変わらずあの3人は同級生という事もあって仲がいいな。
外野から見てる私達もほっこりした気持ちになった。
そうして全てのチームの代表者がステージに登ったのを楓パイセンが確認する。
「えー、まず皆さんには、あくあ君と一緒にこのソファに座ってもらいます。その状態で見つめあった秒数がポイントとして加算されるので頑張ってください! なお、あくあ君が目を逸らした場合は1億ポイントが加算されます! そのために、あの手、この手を使ってくださいね!」
なるほど、そうきたか。
問題を聞いた小雛パイセンと姐さんが悔しがる。
「くっ、こいつに耐性のある私なら何秒だって見つめ合えたのに!!」
「揚羽さんか結さんを残しておけば、放り出すだけで一発ノックアウトだったのに!」
「こ、琴乃さん!?」
「そんな事をしたのが羽生総理達にバレたら、絶対にニヤニヤした顔で国会で追及されるじゃないですか!」
なるほど、その手があったか!
それと赤面する揚羽お姉ちゃんが、ニヤけ顔の羽生総理に追及されるシーンは見たかった。
羽生総理に真剣な顔で「黒蝶議員はどうして放り出したんですか? 本当はやらしい気持ちがあって、たまってたんじゃないですか!? 素直にその時の気持ちを教えてください」と言われ、議長から「黒蝶揚羽君、前に出て質問に答えてください!!」って呼び出される揚羽お姉ちゃんを想像するだけでたまらないね。
確実に録画決定の神回。伝説の国会放送になる。
「ちなみにそういうのを見せたりするのは反則負けです。でも、谷間や膨らみを見せつけるのはOKなので、皆さんギリギリのラインを攻めてくださいね」
うーむ、流石にダメだったか。
淑女たるものモロはやっぱダメだよな。
まぁ、私達はみんな淑女の皮を被ったチジョーなんですけどね。ぐへへ!
「それでは最初にカノン。手本を見せてくれ」
「ふふーん。任せておいて」
ドヤ顔の嗜みが意気揚々とソファに座る。
私、この展開の結末を知ってます。
「カノン」
「へっ!?」
カノンは喋りかけてきたあくあ様に驚く。
そうか、相手から仕掛けてくるのもOKなんだ。
グッパイ、嗜み。この時点でもう結果は見えたけど、骨くらいは拾ってやるよ。
「ほら、もっと俺を見て」
「あ、う……」
至近距離からあくあ様に見つめられて、赤面したカノンの瞳孔が揺れる。
このカノンを是非ともこの世界にいる全ての人に見てほしい。
彼女、もう既に結婚してて、赤ちゃんができて、そろそろママになるんですよ。
なのに、まだこの段階って信じられますか!?
これだからカノンはたまんねぇぜ。私は心の中で1人そう叫んだ。
「はい、あくあ君の勝ちー。カノンの記録は4.73秒と……お前、ざっこ」
「だって、向こうから来るなんて聞いてないもん!!」
例えそうだとしてもお前は正妻だろ!
もうちょっと粘れよ!!
くっそ〜。やっぱりいつまでも変わらずにあくあ様からお姫様扱いしてもらえるのはあれが原因か。
私も真似してみようかな。
「はーい。それじゃあ次の人、リサちゃん行ってみようか!」
「が、頑張りますわ!」
リサちゃんはソファに座ると、あくあ様の事をジッと見つめる。
あくあ様はそんなリサちゃんの手を取って耳元で何かを囁く。
「リサ、この前の旅行で言ってた話って何? ほら、素直に言ってごらん」
「あ、えっと……それはその」
くっ、今日のあくあ様は攻め攻めだ。
あくあ様に何かを囁かれたリサちゃんは普通に目を逸らしてしまう。
「残念でしたね。それでも12秒は耐えたので、カノンよりは頑張ったよ」
さっきので12秒か。そう考えるとやっぱカノポンはすごいな。
5秒切ってるとかいくらなんでも早すぎだろ。
「それじゃあ、次はうるはちゃん行ってみようか」
「は、はい」
勝負は一瞬だった。
うるはちゃんはソファに座る時に少し足を滑らせてしまう。
咄嗟に下から体を支えようとしたあくあ様が、そのまま上から来たうるはちゃんの大きな膨らみの餌食になってしまった。
「俺は白銀あくあ、素直に負けを認められる男。これは俺の負けでいいです」
なんて潔がいいんだ。私達はキリッとした顔をしたあくあ様に大きな拍手を送る。
「あ……う……」
うるはちゃんは顔を赤くしながらステージから降りていく。
ステージの下で待っていたらぴすちゃんやしとりさんがうるはちゃんを慰める。
「じゃあ、次はココナちゃんの番ね。頑張って!」
「うん!」
続いてココナちゃんがソファに座る。
「ココナ、好きだよ」
「うん! 私もあくあ君の事が好き!!」
嘘……だろ?
あのあくあ様に正面から見つめられて好きだよと言われて顔を逸らさないどころか、自分から上目遣いで好きだって言える女子がいるのか!?
まさかの強キャラ出現に、会場のボルテージもマックスだ。
「ふふっ、ココナ。あくあ君とならずっと見つめられるかも」
ココナちゃんはあくあ様の太ももに手を置く。
ようやくいやらしい雰囲気になってきたああああああああ!
5秒前の雰囲気を醸し出すココナちゃんを見た私達の目がギンギンになる。
「えーと。1分を超えたので、ココナちゃんの勝利! この場合も1億ポイント加算とします!」
「やったー!」
ココナちゃんがあくあ様に抱きつく。
その後に続いた後宮のお姫様達が、あの手この手でなんとかクリアしようとするものの、あくあ様に勝てる人たちはいなかった。
「それでは最後にくくりちゃん。行ってみようか!」
「はい!」
頼むぞくくり!
ソファに座ったくくりは、あくあ様の目をじっと見つめる。
「ふぅ。なんか暑いな〜」
私はさりげなくメイド服の首元のリボンを解くとシャツのボタンを一つ外す。
さぁ、あくあ様。こっちを見てください。あくあ様の大好きなものがここにありますよ!!
私はあくあ様の視界の端っこで無駄に寄せたりあげたりする。
「くっ!」
あくあ様の苦しむような声が聞こえてくる。
ごめんなさい、あくあ様。これもみんなを勝たせるためなんですよ!!
私は心を鬼にして同じ事を繰り返す。
「ふふふ、あくあ様。うちの侍女が気になるでしょ?」
「くっ!」
必死に耐えるあくあ様を見たくくりはほくそ笑む。
やっぱりくくりだ。まだ隠し玉を用意してやがったな。
「ナタリアさん! クレア先輩!」
くくりに名前を呼ばれた2人は、私と同じようにあくあ様の視界の端っこで膨らみをアピールする。
この凶悪な三連攻撃。名付けてジェットストリームオーパイには、あくあ様もギリで耐えているようだった。
ほらほら、あくあ様。よく見てください。今日のために私達は3人とも黒いのをつけてるんですよ。
気になるでしょ。
「ぐぬぬぬぬ!」
あくあ様は歯を食いしばって必死に耐える。
そこにくくりがとどめを指した。
「あくあ先輩。実はくくり、今日はつけるの忘れてきたんです。あくあ先輩が代わりに隠してくれませんか?」
「隠しまぁす!」
あくあ様は秒でくくりちゃんの顔から違う場所へと視線を動かせる。
こいつ……私達を踏み台にしやがっただと!?
「はい。というわけでくくりちゃんの勝ちです。完勝でしたね」
くくりの狡猾すぎる完璧な作戦に、周りから大きな拍手が送られる。
このポイントが加算された事により、最終的に勝負に勝ったのは私達、後宮チームAになった。
「後宮チームが勝ったので後宮チーム全員にあくあ様からプレゼントが贈られます! そして、優勝したAチームには、あくあ様と1日を過ごす権利が与えられまーす!」
やったー!!
後宮チームが勝てば、後宮チーム全体にご褒美が与えられるのはわかってたから、本当に頑張って良かった。
カノンや姐さん、小雛パイセン達も私たちに拍手を送る。
「えー、それでは最後に、参加賞としてこのイベントに参加した全員、並びに今日のイベントを手伝ってくれたスタッフの皆さんとの白銀あくあタッチ会を始めたいと思います!」
白銀あくあタッチ会!?
急遽始まったサプライズイベントに大きな歓声が沸く。
ぐへへ。タッチ会ってどこをタッチするんですかね?
「えー、タッチ会では、自分からタッチする場所を選べます。普通に手と手を握り合う握手でも大丈夫だけど、よく考えてタッチしてもらう場所とタッチしてもらう部分を選んでくださいね!」
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
なんてすごいご褒美だ。さすがはあくあ様、やる事が大胆すぎる。
「また、あくあ様からタッチされるのもヨシ、あくあ様に自分からタッチするのもヨシなので、この意味を深く考えてください」
な、なんだってぇ〜!?
それって、自分からキスできるパターンでも、あくあ様からキスしてもらう展開でも可能って事だ。
待てよ……そ、それじゃあ、あくあ様ので……!
「あ、ちなみに健全じゃないのは無しです。流石にここでやるのは違うかなって……」
チッ! 流石にダメだったか。
あくあ様はうちのカノンと同じくらいロマンチストだからな。
雑に後宮のお姫様達を扱いたくなかったというところだろう。
私は周囲の混乱に乗じて楓パイセンに近づく。
「これ、ハニーナとして並んだ後に雪白えみりとして2回並ぶのありですか!?」
「なしです。お前はふざけてないで、さっさと着替えてこい」
ちぇっ! 楓パイセンのケチー!
私はブーブーと文句を垂れながらも再び雪白えみりに戻るために物陰へと隠れる。
さーてと、どこにタッチしてもらおうかなぁー! ぐへへ!
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