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白銀あくあ、ここから先は有料チャンネル!?

 神社に到着した俺は2人の嫁と遭遇する。


「結、アイ。2人ともここにきてたのか」

「あー様」

「あくあ君」


 俺は2人に手を振りながら近づく。

 どうやら結とアイは、妊娠してるカノン達の安産祈願のために来てくれたみたいだ。

 2人とも優しいなあ。そんな2人の事が俺は大好きだぜ。


「アイ、一緒に妊活頑張ろうな」

「う、うん」


 今までは仕事で忙しかったアイもこれからは落ち着いて妊活ができる。

 そう考えるとこの夏休みはいい機会だ。

 アイのために、俺もたくさん頑張っちゃうぞ!!


「結はどう?」

「……私はまだ自分が育児をする事に自信が持てません。でも……あー様のお子様を孕んだ皆さんの幸せな顔を見ていたら、少しだけ自分もと思ってしまいました」


 カノン達からも聞いていたが、どうやら結の中でも少しずつ心情の変化が見られるようだ。

 どういう選択をするかは結自身に委ねるけど、もし、結が妊娠する事を選ぶなら全力で支えたい。


「せっかくだからみんなで家内安全も祈願しておこうぜ」

「はい!」

「うん、そうだね」


 俺達は3人で白銀家の家内安全を祈願する。

 そのついでに猫山家、黛家、天我家などみんなの家内安全も願っておく。

 神社でのお参りを終えた俺達は、ホテルへと帰る。


「あ、おかえりー」


 部屋でゆったりしているカノン、えみり、楓、琴乃、ペゴニアさんが俺達の帰りを出迎えてくれた。


「ただいま」


 俺は大きくなったカノンのお腹を優しく撫でる。

 侍従医である宮餅先生から旅行の許可は出たものの、カノンとペゴニアさんの2人は基本的にホテルで待機だ。

 楓やえみり、琴乃は大丈夫だけど、3人は2人との旅行を一緒に過ごすためにホテルに残っている。


「体調はどう?」

「大丈夫。夕方には宮餅先生もこっちに来るし、今はそれよりも夕食とか花火が楽しみ!」


 花火か、俺も楽しみだな。

 露天風呂が隣接されているこの部屋は、どちらからも花火が見えるすごくいい部屋だ。


「さてと、俺もご飯前にちょっとお風呂入ってくるわ」

「うん」


 俺はちゃんと体を洗った後に、部屋に備え付けられてる露天風呂に入る。

 いい景色だ。夕暮れ時の諏訪湖とボッチ山を見ながら、俺は露天風呂を堪能する。


「ぐへへ。あくあ様、お背中流しまぁす」

「私たちに任せてくださーい」


 すけべな顔をしたえみりと楓の2人が浴姿で入ってくる。

 せっかくだから2人に背中を流してもらおうかな?

 心なしか2人の顔がぐへってたような気がしたのは、きっと俺の心が汚れているからだろう。

 よく見ると2人の顔が赤くなっていた。


「うーん、うーん」

「2人とも大丈夫? のぼせてない?」


 お風呂に入ってないのにどうしてのぼせたんだ?

 ダウンしたえみりと楓をカノンが介抱する。


「2人とも何やってんの」

「お嬢様、どうせ2人ともバカなことでも考えてたんですよ」


 えみりはダウンしたふりをしつつカノンにイタズラしようとしてジト目で睨まれる。

 いいな。今度、俺も同じ手でやってみよう。

 部屋でまったりしていると、下に行っていた琴乃が戻ってくる。


「そろそろ部屋に食事を持ってきてくれるそうです。って、2人ともどうしたんですか?」


 なぜか全てを察している琴乃が呆れた顔でえみりと楓を見つめる。

 夕食はお野菜とお肉、魚介がふんだんに使われた和食のフルコースだ。


「ラズリーちゃん、お野菜はちゃんと食べなきゃダメよ。世の中には食べる事にも苦労している人だっているんだから。それに作ってくれた人達のためにも、せめて一口は食べなさい」

「は、はひぃ」


 妹に対して超がつくほど甘々な俺が入り込む隙がないくらいカノンは厳しかった。

 まぁまぁの、ま、の段階でカノンに睨まれた俺は急に静かになる。

 なるほど、これが正妻の本気か……。

 俺は隣にいるえみりの言葉に頷いた。


「た、食べました」

「ん。ラズリーちゃん。苦手なものでもちゃんと食べられてえらいね」


 カノンはラズリーに向かって優しい笑みを浮かべる。

 それを見たえみりと楓がボソリとつぶやく。


「もしかして、カノンってママとして一番しっかりしてるのでは?」

「マジかよ……。もうカノポンって呼べないじゃん……」


 俺は2人の隣で無言で頷く。

 もしかして俺も将来、カノンの尻に敷かれたりするのだろうか?

 ……ありだな。女の子の尻になら、いくら敷かれたっていい。これは白銀あくあ名言集の一つである。


「おおー!」

「たーまやー!」


 食事の後はみんなでテラスに出て花火を楽しむ。

 周りが気を利かせてくれたのか、花火の途中でカノンと2人きりになった。


「花火、綺麗だな」

「うん」


 俺はカノンの横顔を見る。

 今から1年前、初めてのカノンとのデートを思い出す。

 あの時もこうやって2人で花火を見たっけ。


「カノン、嫌だったら突き飛ばしていいから」

「ふふっ、私が突き飛ばさない事をもう知ってるくせに」


 俺はあの時と同じやり取りから同じようにカノンとキスをする。

 何も変わらない。あの時も、そして今も、俺はカノンに対してすごくドキドキしている。


「初めてカノンとキスした時、実は俺がちょっとだけ震えてたの知ってる?」

「知ってる。私は逆に緊張して固まってたから」


 俺達はお互いの当時の心境を聞いて笑い合う。

 そうか、緊張してたのは俺だけじゃなかったのか。

 俺はカノンの手をギュッと握ると、そのままカノンの耳元に顔を近づける。


「カノン、綺麗だよ。あの時も今も、俺の前にいる君はいつだってこの花火よりもキラキラと輝いてる」

「あくあ……。私だってそうだよ。あの時から、ううん。初めて会った時から、ずっと好き」


 2人の空間に入った俺達は、お互いに見つめ合う。


「こ、これは有料チャンネルなのでは!?」

「はーい。ここから先を視聴したい人は、通路で1000円のテレビカードを購入してくださいねー」


 楓とえみりのやりとりに俺とカノンはハッとする。

 後ろを振り返ると、全員が目を血走らせながらこっちを見ていた。


「2人ともバカ言ってないで座りなさい。興奮しすぎるとまた倒れますよ」


 琴乃のいう通りだよ。

 2人ともさっきまでのぼせてたんだから少しは落ち着いて。


「あー様、素敵です」


 素敵なのは俺じゃなくて結だよ。

 あの時、俺がカノンとキスできたのは結のおかげだ。

 結が俺の中にあった葛藤を指摘してくれなかったら、俺はカノンとキスしなかったかもしれない。


「はわわわ、兄様とカノン義姉様から大人のいけない雰囲気が出てます……」

「も、もしかしてこれが噂の……」


 らぴすとラズリーは一旦落ち着け。


「拙者までドキドキしてきたで候」

「ん。寝ようとしたけど、目が覚めちゃった」

「警備担当して守りたいこの笑顔を」

「REC……じーっ」


 あまり感情の起伏がないるーな先輩やりんちゃん、りのんさんが顔を赤くしてこちらをチラチラと見る。

 それと、みことちゃんは瞬きして。さっきからフリーズしたみたいに固まってるから、見てるこっちがすごく心配になっちゃうよ。


「流石はあーちゃんね」

「あくあちゃん、やるぅ」


 やべぇ。母さんとしとりお姉ちゃんに見られるのは、俺が一番恥ずかしいかも。

 カノンじゃないけど、もーっ! 2人は見てても見てなかった事にして、そういうのスルーしてよ!!

 家族に隠してた本が見つかるのと同じくらい恥ずかしい気持ちになった。


「カノンさんすごい! いつもと全然違う!!」

「2人きりの時ってそんな感じなんだ」

「すごいですわ。これが正妻なのですね」


 ココナとうるは、リサの3人は顔を真っ赤にしながら目を輝かせる。

 同級生に見られて恥ずかしかったのか、カノンはそれ以上に赤くした顔を俺の胸元に埋めて隠す。


「すごいな。どの恋愛ドラマのラブシーンもこれには勝てない」

「まーた、リアルに負けた」


 冷静に分析しようとする美洲お母さんの隣で、アイが現実逃避したかのようにホゲっていた。

 おーい。大丈夫かー! リアルに負けるな。がんばれ! がんばれ!


「さすがはお嬢様です。妊娠していなければ、今のは確実にヤル流れでしたね。このペゴニア。やはり私の主人はお嬢様しかいないと確信いたしました!!」

「ペゴニアのバカー!」


 ははは、みんな、少しくらい揶揄うのはいいけど、カノンの事をあまりいじめないでやってくれよ。

 せっかくなので、俺は1人ずつテラスや露天風呂に呼んで2人きりの時間を楽しむ。

 そのせいで今度は俺がのぼせてしまった。


「あーちゃん、大丈夫?」

「あくあちゃん、お水買ってきたよ」

「あー様、お顔を仰ぎますね」


 俺はみんなに囲まれながら優しく介抱される。

 みんなと旅行に来て本当によかった。

 朝から張り切ってた事もあって疲れていたのだろう。

 俺はいつの間にか、眠りについてしまった。

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