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白銀あくあ、俺の事が好きすぎる人達。

 夏休みを満喫していた俺は、とある仕事で千葉県幕張の大きなイベントホールに来ていた。

 というのもベリルはこの8月いっぱい、ここでベリルフェス、脅威の31DAYSを開催するからである。

 1ヶ月にわたってフェスをやるなんて聞いた事ないけど、週末以外は基本的に展示物みたいなのを展示しているだけらしい。

 その31日間の中で、今日は俺が一番楽しみにしているイベント【白銀あくあが好きすぎる人達の会】が開催される日だ。

 よーし、今日は1日、みんなからチヤホヤされるぞ〜!


「来たぞ! 幕張〜!」


 俺がステージの上に出ると会場に詰めかけた大勢のファンから大歓声が飛んでくる。

 すごい人だ。こんなにも俺の事が好きな人がいるだなんて嬉しくなるね。


「みんな、今日は来てくれてありがとな〜!」


 俺は笑顔で手を振りつつ、遠くで違う方向に行こうとしている一団を見掛ける。


「おい、そこ! 藤百貨店のコーナー行くな! こっちだこっち!! 藤百貨店のコーナーは後からでもみれるけど、生の白銀あくあが見れるのは今だけだぞ!!」


 ファンの人達から笑い声が漏れる。

 よし、つかみはOKだな。

 ある程度、歓声が落ち着いたところで舞台袖から楓が出てくる。


「どーもどーも。今日の司会を務める森川楓です」


 楓が登場すると、観客席から笑い声が聞こえてきた。

 やっぱり楓はものが違うな。出てきただけでみんなが笑顔になる。

 俺も負けてられないな。


「皆さん、今日のイベントは何か知ってますか?」

「「「「「白銀あくあが好きすぎる人達の会〜!!」」」」」

「はい、正解です! というわけでね。早速ですが、我こそは三度の飯より白銀あくあの事が好きだという人達に今日はいっぱい集まっていただきました」


 うおおおおおおおお!

 誰だ!? 誰がくるんだ!?

 別室の楽屋に案内され、誰がくるか聞かされてない俺はすごくワクワクした気持ちになる。


「それでは、トップバッターはこの人、白銀あくあの事が大好きと言えばこの人は絶対に外せないでしょう!!」


 会場のボルテージがマックスになる。

 俺の事が大好きだなんて、完全にカノンだな。うん、カノンしかいない!! 俺はキラキラした目で舞台袖へと視線を向ける。


「小雛ゆかりさんです!!」


 俺はその場に滑ってこける。

 ずっこけるフリとかじゃない。本当にずっこけた。

 観客席からは悲鳴と笑い声が混じった声が聞こえてくる。


「ちょっと! せっかくきてやったのに、少しは嬉しそうにしなさいよ!!」

「いやいやいやいや! 小雛先輩、来るところ間違ってますって」

「はあ?」

「ほら、看板のところよくみてくださいよ!」


 俺は小雛先輩と共に、白銀あくあが好きすぎる人達の会って書いてある事を確認する。

 一瞬だけ、白銀あくあを弄って楽しむ会かと思ったが、やっぱり違うよな。


「別に間違ってないじゃない!! こっちはあんたのために朝の8時から会場入りしてんのよ! イベントは14時からなのに!! それなのにあんただけ集合時間が違うくて、11時にきたっていうじゃない! ふざけんな!!」

「ちょ、ちょ、ちょ。今日は俺がチヤホヤされるイベントでしょ!? なんで最初から怒られてるの!?」


 会場にいるファン達から爆笑する声が聞こえてくる。

 俺、いつか小雛先輩と脚本なしのアドリブだけで、漫才やコントの大会で優勝するんだ。

 アイドルとして失敗したら、それもありかもなと思った。


「まぁまぁまぁまぁ」


 すぐに俺と小雛先輩の間に楓が入ってくる。

 さすがは楓だ。割り込んでくるタイミングがわかっている。

 アナウンサーなのに、お笑い芸人の格付けランキングでSランクに入ってる楓はやっぱりものが違う。

 楓、心配しなくても、漫才やコントの大会に出る時に楓だけ置いて行ったりしないよ。

 ちゃんと俺達3人で大会に出ような。俺たち、小雛ゆかりの部屋トリオの結束は永遠だ!!


「スタッフさーん! このままじゃこの2人が永遠に喋りすぎちゃうから、ストッパー役のあの人、お願いします!!」


 ストッパー役? 誰だろう?

 しばらくすると舞台袖から俺のよく知っている人物が現れた。


「きゃー!」

「アヤナちゃーん!」

「かわい〜!」

「っぱ、アヤナちゃんなんだよ」

「小雛ゆかりは前座。やっぱベリルはわかってる」


 アヤナは少し恥ずかしそうに観客席に手を振る。

 これだよこれ! 俺が待ってたのはこれなんですよ!!


「アヤナ……」


 俺は小雛先輩を横に退けると、アヤナの方へと向かう。

 あっ、小雛先輩の出番はもう終わったんで、その端っこの席で大人しくしておいてください。


「あくあ?」


 俺の様子がいつもと違っていたのか、アヤナは、どうしたの? って感じの雰囲気を出しつつ首を傾ける。


「俺の事が好きすぎるってのは、そういう事でいいんだよな?」

「「「「「「「「「「きゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」」」」」」」」」」


 今日一かっこいい顔をした俺の言葉を聞いた会場が大きな悲鳴に包まれる。

 自分でも完全に決まったと思った。


「あ、え……あ」


 アヤナにとっても完全な不意打ちだったのか、ステージの上ならいつもはうまく対処できるアヤナも顔を真っ赤にして戸惑った仕草を見せる。このまま、抱き締めちゃってもいいかな?

 次の瞬間、俺の背中を誰かがぽかぽかと叩く。


「ちょっと! 何やってんのよ、このおバカ! 夏休みだからって、幾ら何でもホゲりすぎでしょ! そういうのは裏でやりなさい! 裏で!」

「わかりましたって」


 流石にやりすぎだったか。やっぱ少しでも仕事を休むとダメだな。

 止めてくれた小雛先輩に感謝しつつ、俺はアヤナに小声で「ごめんな」と囁く。


「それでは次の方、どうぞ〜!!」


 次は誰だろう?

 舞台袖へと視線を向けると、タブレットの画面をこちらに向けた状態で両手で抱えたえみりが出てきた。

 観客席はえみりを見た瞬間、大きく湧いた後にタブレットの画面を見て噴き出す。


「ちょ! おま、それ、カノンが遺影みたいになってるじゃねーか!」

『遺影!? えみり先輩、タブレットをどういう持ち方してるんですか!?』


 タブレットに映ったカノンが喋り出す。

 え? もしかして、それ、オンラインで繋がってるの!?

 俺は画面に映ったカノンに手を振る。するとカノンも手を振り返してくれた。

 おぉ、どうやらこちらの様子も見えているようだ。


「というわけで、大事をとって会場に来なかったカノンの代わりに、友人のえみりがタブレットを持ってきてくれました!!」

『ちょっと! えみり先輩、今、本配信見たら完全に遺影の持ち方じゃないですか! も〜っ!』


 観客席から大きな笑い声が聞こえてくる。

 小雛先輩、楓、俺たちのトリオ漫才に強力なライバルが現れたぞ!!


「死因はさっきアヤナちゃんに迫ってた時のあくあ様がカッコ良すぎて悶絶した事です」

「俺!?」

『ちょっと! 勝手にバラさないでよ! もう!!』


 顔を真っ赤にしたカノンに対して、観客席のファン達から口笛が吹かれる。

 カノン……そんなにも俺の事が好きなんだな。

 安心しろ。帰ったら、ちゃんとカノンにも同じ事してあげるからな!!


「えー、それでは次の方、どうぞー」


 次は誰だろう? 舞台袖から現れたとあを見てファンの間から大きな歓声が沸く。


「来たよー! 幕張! なんちゃって。あくあの真似してみた」


 観客席にいたファンの数人が倒れそうになる。

 みんな、大丈夫か?

 まさか俺と一緒で今日のイベントが楽しみで寝られなかったとかじゃないだろうな?

 とにかく、あんまり無理するなよ!!


「えーと、本来のゲストはこの4人なんですが、今日は事務所のベリルエンターテイメントさんから、この人も加えてくださいとお願いされまして……どう? 出られるかな? 緊張すると思うけど、上がっておいで」


 スーツを着たちんまりとした子が、緊張した面持ちで舞台袖からステージに上がってくる。

 え? 待って!? なんで彼女が出てくるの!?

 観客席のファン達も、急に知らない人が出てきてどう反応していいのかわからないみたいだ。


「えー、知らない人のために自己紹介をお願いできますか?」

「あ、はい……。えっと、この4月からベリルに入社した中野小町です。すみません。私も緊張してるけど、皆さんもすごくびっくりしてますよね。えっと、今はあくあ様……じゃなくって、弊社所属タレントの白銀あくあと、雪白えみりのサポートマネージャーを務めさせてもらっています」


 観客席からは驚きの声と共に、こまっちゃんにあたたかい拍手が送られる。

 流石にこれは俺も予想外だった。楓がサプライズと言うだけの事はある。

 こまっちゃんは、間違えて面接室に入ってしまった俺がファーストインプレッションで入社を決めた子だ。

 体も小さいし、おっぱいも小さいけど、俺としてはなんかこう、この子はベリルに必要だなって思っちゃったんだよね。


「えーと、本当は姐さんと阿古さんが候補だったんですが、私とゆかりの方からですね。小町さんの方が面白くなりそうっていうので、彼女に無理言って出てもらいました。ありがとうございます!」


 面白くなりそうってどんな理由だよ……。

 そもそも俺をチヤホヤするだけの会に面白さは必要ないだろという事に気がつく。


「そういうわけでね。あくあ君、改めてどうですか?」

「いやー、嬉しいですね。でも、小雛先輩の席は慎太郎か天我先輩でよかったでしょ。なんなら、さっきらぴすとすれ違ったから、今から交代してもいいんじゃないかと思います!!」

「ちょっと!!」


 すぐに小雛先輩が前に出てくると、それに合わせて楓も止めようと前に出てくる。

 さすがは小雛先輩と楓だ。お笑いのイロハがわかってる。

 俺が世の中に出てくるまで、この2人がバラエティに出てなかったなんて嘘だろって思いたい。


「じゃあ聞くけど、小雛先輩は俺のどこが好きなんですか?」

「はあ!?」

「いやいや、それはこっちのセリフですよ。ステージの看板にも【白銀あくあが好きすぎる人の会】って書いてあるんだから、小雛先輩だって俺の事が本当は好きなんでしょ!? それなら、こう……一個くらいは、あるんじゃないですか!?」


 俺の言葉を受けて、小雛先輩は両手を組んで深く考え込む。


「うーーーー〜ん」

「ちょっと! そんなに悩むのに、どうして出てきたんですか!? 俺の事が好きすぎるなら、普通はぽんぽん出てくるでしょ! ほら、ご飯を美味しそうに食べるとか、優しいとか、かっこいいとか」


 自分で言って悲しいを通り越えて恥ずかしくなったわ!!

 これ、一体なんのプレイだよ!! ちょっと、小雛先輩を呼ぼうとした責任者の人、出てきて!!

 俺たちのやりとりを見たファンから笑い声が起きる。


「カノンはすぐに出るよね!?」


 俺は次の席に座ったカノンに話を振る。


『う、うん。まず、すぐに気がついてくれるところでしょ。誰にも分け隔てなく接してくれるところとか。1人でいる子を見かけたら、絶対に話しに行くところとか……あっ、小さい子とか、お年寄りに対して優しいところも好き。もちろん、女の子に優しいところも。見た目もかっこいいけど、中身もちゃんとかっこいいし、決めるところは絶対に決めてくれるところも好きです。あっ、それに仕事に真面目なところも好きだけど、家族を大切にしてくれるところも好き。そういえば、この前、2人で一緒に料理作ってたんだけど、料理が上手なところも好きだけど、ちょっとした事で、カノン、上手だよって褒めてくれたりとか、きゃ〜っ! 思い出しただけで顔が赤くなっちゃう!! あとね、その時の横顔とか、首筋がすごく良くて、あっ、あくあが料理してる時の手とか腕とかもいいんだよね。見てるだけでお腹いっぱいになっちゃうの。そういえば包丁を持ってた手で思い出したんだけど、この前、ゲーム配信中にワイヤレスマウスがすっぽ抜けた時の反応が可愛くて好き。わかる? わかるよね? あの配信は神でした!! 配信といえば、あくあって声いいよね。わざと作ったイケボも悪くないけど、やっぱり、素の状態で不意に見せてくるガチのイケボはちょっとね〜、もうあれは犯罪級と言っても過言ではありません!! 私なんかもう妊娠してるのに、耳まで孕みそうになっちゃったもん。かと思えば〜……』


 ……。


 …………。


 ………………えっ!? 終わった?


「ごめん、カノン。何故か途中から強烈な眠気が襲ってきて、何も頭に入ってこなかったわ。でも、ありがとな! 俺もすごく嬉しいよ! 俺も同じくらいカノンの事が好きだからな!!」

「う、うん!」


 よく見たら俺だけじゃなくてえみりも寝ていた。

 起きろ、えみり! ステージの上だぞ!!


「呪詛終わった?」

『呪詛って何!?』


 って、司会の楓も寝るな! 司会の楓がしっかりしないで、誰がしっかりするんだ!!


「はっ!? ホゲラー波か!?」


 おーい、みんなも起きろー!

 小雛先輩も腕組みながら寝ないで!!

 ちゃんと俺の好きなところを考えて!!


「今、一個思い浮かんだわ」

「マジ!?」


 小雛先輩は、今のカノンの言葉で一体、何を思い浮かんだというのだろう。


「この世に存在している面倒くさそうな女を上から順に大体引き取ってくれるところ」

『え? もしかして、私、小雛ゆかりさんからも面倒臭いって思われてる?』


 ファンだけじゃなくて、スタッフの人達まで笑いを堪え切れなくなって吹き出す。


「いやいや、そんな事ないですから! みんな良い子達ばかりですよ! それに俺だって引き取ってはないですからね!!」

「そうか、むしろあんたが引き取られてる側か。みんな、こいつを引き取ってくれってありがとう」


 会場から大きな拍手が沸き起こる。

 あれ? なんか一周回って俺が一番めんどくさいって事になってない?

 解せぬ……。俺はすぐに隣に居たアヤナに迫る。


「アヤナはどう!? アヤナも俺の好きなところいっぱいあるよね!?」

「え、えっと……」


 アヤナは俺の事を面倒臭いなんて思ってないよな!?

 頼む。アヤナが、アヤナだけが俺の最後の砦なんだ!!

 少しでいいから俺を甘やかしてくれ!!


「何に対してもいつも本気なところとか……好き、っていうか人として尊敬してます」

「ほらほらほら! これですよこれ! 今の聞きましたか!?」


 っぱ、アヤナなんだよ。俺は最初からわかってましたから。


「それって、ただ単にこいつがしょうもない事するせいで必死なだけじゃない?」

「ちょっと! 小雛先輩、そういう余計なツッコミはいりませんから! もう少し、こう、噛み締めるように浸らせてくださいよ!! あ、そこの警備員さーん。ここに関係ない人が紛れ込んでまーす!!」

「関係なくないじゃない!!」


 こうなったら、次はとあだ。

 とあならきっと俺の事をチヤホヤしてくれるはず!!


「とあも俺の事好きだよな!?」

「えー? ふざけてる時のあくあは好きじゃなーい」


 俺は綺麗に膝から崩れ落ちる。

 その時の表情も含めて、我ながら100点を付けたくなるほどの綺麗な崩れ落ち方だった。


「ほら、そういう反応してる時とか、絶対にふざけてるでしょ。あくあって、意外と周りからいじってもらうの好きだよね」

「確かにいじられるのは好きだけど……いやいや、そうじゃないだろ。俺が好きとかじゃなくて、とあが俺のどこが好きか聞きたいんだが!?」

「えー?」


 椅子に座ったとあは組んだ手の上に自分の顎を乗せると、その大きな目で俺の事を見定めるようにジッと見つめる。

 おい……急にそんなじっくりと見つめるなよ。は、恥ずかしいだろ!


「んー、一個、思いついたけど〜」

「「「「「きゃ〜っ!」」」」」


 とあはお客さんの反応を楽しむようにぐるりと会場を見渡すと、もう一度俺の方へと視線を戻して笑顔を見せる。


「それは、これが終わった後に、楽屋で2人きりになった時に言うね」

「「「「「「「「「「きゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」」」」」」」」」」


 今日一番の大きな悲鳴に俺もびっくりする。

 おい! 何人かぐったりしてる人がいるけど大丈夫か!?

 そこの人とか死んでないよな!?

 医療班のスタッフが急いで観客席に向かう。みんな、大丈夫か……。


「小町さんはどう? 一緒に働いてみてあくあ君のここが好きだなーってところある?」

「あ、はい。さっき、カノンさんも言ってましたが、仕事に真面目なところがすごく尊敬できるなと思いました」


 こまっちゃん、さっきのカノンの言葉、ちゃんと全部聞いてたんだ……。みんな寝てたのに、すごいな。


「あとは、それ以上にファンに対して楽しんでもらおうと頑張る姿勢が、異性とかじゃなくて人として好きです。マネージャーとして、そういうところをお手伝いできたらなと思いました」


 やっぱり、こまっちゃんなんだよ!

 俺が第一印象だけで採用を決めただけの事はある!!

 これからも俺の事をたくさん甘やかしてください!!


「小町さん、あんまりこいつに水やりしない方がいいわよ。すぐに調子に乗るんだから。ほら、それよりも他にもっとあるでしょ! こいつにセクハラされたりしてたら、今が絶好の告発チャンスよ!」

「ちょっと!?」


 やっぱり小雛先輩は危険だ。

 ベリルフェスの31DAYSをたった1DAYSで終わらせにこようとしている。

 ほら、楓もぼーっとしてないで、あそこの大怪獣を止めてよ!


「小雛ゆかりさん、今、なんて言いました?」


 楓がキリッとした顔をする。

 流石だよ。楓、俺は最初からホゲラー波が悪いだけで、楓はできる女だってわかってたぞ!!


「水やりしないほうがいいって?」

「そこじゃないです。もうちょっと後です」

「じゃあ、セクハラされたりしてたら?」

「惜しい。その後です」

「今が絶好の告発チャンス?」

「はい、正解です!!」


 楓は手をたたきながら立ち上がると後ろにかけてある看板の前に行く。

 って、その手に持った紐は何!? 楓が紐を軽く引っ張ると、看板に貼られた【白銀あくあが好きすぎる人達の会】の文字が書かれた紙が剥がれようとしている。


「はい。そういうわけで、改めて今日のイベントを紹介したいと思います!!」

「は?」


 改めて今日のイベントを紹介?

 白銀あくあが好きすぎる人達による、白銀あくあをチヤホヤする会じゃないの!?

 俺はそうだって聞いてここに来たんだけど!?

 楓が紐を強く引っ張ると、看板に貼られた紙が剥がれ落ちる。


【白銀あくあ、被害者の会】


 え? 被害者の会!?

 俺が固まっていると、小雛先輩が大笑いしながら手を叩く。


「えー、実はですね。当初はちゃんと【白銀あくあが好きすぎる人達の会】をやろうとしたんです! でもね……あくあ君の身近にいる人達から調書をとっていくとですね。これは被害者の会の方が面白いんじゃないかと、偶然通りかかったベリベリのスタッフさん達から提案がありまして、私とゆかりが協議した結果、こちらが採用されました! 関係者の皆様、ありがとうございます!!」


 また、ベリベリのスタッフかよ!

 俺はネタのわざとじゃなくて本気でずっこけた。

 こうして、俺の被害者達による数々の告発が始まったのである。

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