白銀カノン、カードショップえみり。
「何ここ?」
白銀キングダム内に一際怪しげなショップを見つけた私は足を止める。
何々? カードショップえみり!? まーた、えみり先輩が何かやってる……。
私がお店の扉を開けて中に入ると、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「ちょっと! なんでまた楓のバナナなのよ! さっきから、こればっかりじゃない!!」
この声は間違いなく小雛さんの声だ。
「しゃあっ! うららカノンきたーっ! これで勝つる!!」
うららカノンって何!? それに、この声、間違いなくあくあだよね?
全く、2人ともこんな胡散臭い店で何をやってんのよ……。
私が声の方向に近づくと、気配を感じたえみり先輩がこちらに振り向く。
「おっ、カノン。お前もきたのか。それに、ペゴニアさんもちーっす」
「お前もきたのかって……えみり先輩、ここ何?」
私は部屋の中をぐるりと見渡す。
よく見ると知り合いがチラホラ、というか、知り合いしかいない。
みんな、ここで何してるの……。
「この私がオーナーを務めるカードショップえみりだよ。せっかくだから、お前も運試しに1パックどうだ? あっ、今なら新規会員登録でスターターパックプレゼント中だけど、友人のよしみでタダでやろう! あっ、ペゴニアさんもどぞー」
「あ、ありがとうございます」
「えみり様、ありがとうございます」
私はえみり先輩からカードの入った箱を貰う。
【AQUA The Guardians】
略してATG。ふーん、トレーディングカードか。
よく見ると表紙がねねちょさんのあくあだ。
大丈夫? これ、ちゃんとベリルの版権取ってる? 無許可で非公式の闇のカードゲームとかじゃない?
え? 裏を見ろって? あ、すごい。ちゃんとベリルとか越プロとか国営放送とかの許可取ってる。
「あ、開封するなら、あっちのテーブル使っていいぞ。ほら、大きいお友達がいっぱいいるから」
「うん、わかった」
えみり先輩に指示されたテーブルに行くと、知り合いの大きなお友達が一心不乱にカードパックを開封していた。
「BR白馬あくあ、BR白馬あくあ、BR白馬あくあ……」
姐さん怖いって!
あの姐さんが呪詛のように白馬あくあと呟きながら、無心無表情でカードを開封していました。
大丈夫? それ、お腹の子に障ったりとかしない?
私は心配そうな顔で姐さんを見つめる。
「もーっ、なんでBERYLのあくあ君だけこないのよ〜!」
阿古さんはテーブルに顔を突っ伏してドンドンと叩く。
あぁ、BERYLの他全員が揃ってるのに、肝心のあくあのカードだけが出てないんだ……。
うんうん、トレーディングカードを集めてたら、そういう事ってあるよね。
私は隣のテーブルに視線を向ける。
「ふふふ、この私のデッキに慄きなさい! 降臨せよ! 私のブルーアイズ・ホワイトドレス・カノン!」
お姉様!? なんでこんなところにいるんですか!?
それにブルーアイズ・ホワイト・カノンって何!?
カードをよく見ると純白のドレスを着た私が二次元化したイラストが書かれていました。
はわわわわ、私のイラストかわいい。一体、誰が書いたんだろ……。
えっ? 箱の裏側を見ろって?
【illustration by ラーメン捗る】
えみり先輩って、なんでこんなになんでもできるんだろう。
表紙のねねちょさんの絵で釣って、中身はえみり先輩の絵って実質詐欺っぽいけど、えみり先輩の描く絵が可愛すぎてハズレ感が薄い。
「ふっ、それならばこちらは、場に出てるシスター・クレアを供物にして教祖召喚! いでよ、セイジョ・エミリ!!」
くくりちゃん!? うちのお姉様と一緒に何やってるんですか!?
ていうか、セイジョ・エミリって大丈夫?
あ、よくみたら聖女エミリーとは絶妙にルックスが違うんだ。
カードを見ると、セイジョ・ミダラーのコスプレをしたえみり先輩の綺麗なイラストが描かれていました。
えみり先輩って、なんでこんなギリギリを攻めるような事をやるんだろう。
常に限界の瀬戸際で生きていないといけない使命感でもあるのかな?
「あっ、お嬢様、なんかキラキラしたカードが出てきました」
先に座っていたペゴニアがパックから取り出したカードを私に見せる。
わっ! それって、きっとレアってやつじゃない!?
同じテーブルに座った姐さんと阿古さんの目がぎらつく。
2人とも目が血走ってて怖いよ……。
「あー、それは最高レートのベリルレア、通称BRのカードですね。しかもそれは、激レアカードの一つ。オトメ・ノ・タシナミーです」
「ちょっと!!」
えみり先輩が「お客様、どうかしましたか?」って顔をする。
いやいや、流石にそれはアウトでしょ!
カードを見ると、真っ暗な部屋の中で、光るパソコンモニターを見つめながらキーボードを打っている、グヘグヘした顔の私が書かれていた。
もーっ! これのどこが最高レートのレアだっていうのよ!!
あと、あくあが引いたうららカノン? といい、私のカード多くない!?
「しゃあっ! おしとやカノンきたぁっ!」
ちょっと! 他にもまだあるの!?
遠くでガッツポーズしてるあくあと、その隣でバナナの絵が描かれたカードを見て、地団駄を踏んでいる小雛さんの姿が見えた。
「私も開けよ」
スターターパックの箱を開けると、基本の構築済みカードデッキに、ゲームに使用するマットとかアイテムのキット一式と遊び方ガイド、それに加えてカードパックが三種類が入っていた。
みんなが開けてるのは、この同梱されていたカードパックの方か……。
私は三種類のカードパックへと視線を落とす。
【拡張ブースターパック、ベリルオールスターズ】
【拡張強化パック、白銀の王子様】
【アルティメットパック、白銀あくあと愉快な仲間たち】
なるほど……。
拡張ブースターパックのベリルオールスターズは、ベリルに所属してる人のカードしか入ってないんだ。
これって結構良心的じゃないかな? だって、他の余計なカードが入ってないってことだよね。
二つ目の拡張強化パック、白銀の王子様はあくあのカードが最低1枚は確定で入ってるのか。
ん、こっちもかなり良心的だと思う。確定であくあなら被ってても嬉しいし、トレードもしやすい気がする。
最後のアルティメットパックは完全ランダムの運試しだけど、レア率が通常のパックよりも高いんだ。
これもこれでいいなって思う。
「最初はベリルオールスターズにしようかな」
カードパックの端っこを綺麗に鋏で切った私は、中に入っていたカードを1枚取り出す。
【ノーマルレア/森川楓のバナナ:このカードを使用すると任意のキャラカードの体力を10ポイント回復する。また、このカードを使用した側はサイコロを転がして、奇数か偶数の目が出た場合、使用された側はバナナの皮に滑って一回お休みしなければいけない。奇数か偶数を指定する権利は、カードを使用された側に与えられる】
小雛さんが引いてたのはこれかぁ……。
私はなんとも言えない顔で、2枚目のカードを取り出す。
【ノーマルレア/森川楓のバナナ:このカードを使用すると任意のキャラカードの体力を10ポイント回復する。また、このカードを使用した側はサイコロを転がして、奇数か偶数の目が出た場合、使用された側はバナナの皮に滑って一回お休みしなければいけない。奇数か偶数を指定する権利は、カードを使用された側に与えられる】
ちょっと!! なんで、2回連続で同じカードが出てくるのよ!!
私は気を取り直して、3枚目のカードを引く。
【ノーマルレア/森川楓が食べたバナナの皮:このカードを使用された側は強制的に1回お休みになる】
さっきのと絶妙に違う……。
もーっ! せっかく新しいカードを引いたのに、すごく微妙な気持ちになった。
ていうか、これも前のも普通にスターターパックの基本デッキに入ってるし、普通に被ってるじゃん!!
私はなんとも言えない顔で、4枚目のカードを引く。
【アルティメットレア/スノー・ホワイト・プリンセス、雪白えみり:体力721、攻撃力1000、防御力0。ほぼ全てのカードをワンパンできるが、体力の割に防御力がないのでワンパンで沈む。それと、体力が微妙に1だけ残るのがちょっとだけうざい】
あっ、えみり先輩のカードだ。
しかもこれ、外行き用のお姫様みたいなモードのえみり先輩じゃん。
あと、これが強いのかどうかよくわかんない。
ていうか体力721に対してバナナで回復できるのが10しかないって、完全にネタカードじゃん。
私は気を取り直して次々とカードを引いていく。
【スーパーレア/ベリル本社の休憩室:自陣に出した全てのキャラカードの体力値を500回復する】
【ノーマルレア/森川楓のバナナ:以下略】
【スーパーレア/ボイストレーニング:自陣に出した歌手カードの攻撃力が次のターンだけ1.5倍される】
【アルティメットレア/敏腕マネジャー、桐花琴乃:自陣に出したBERYLのメンバーの攻撃力と守備力が次のターンだけ9.2倍される。ただし、敵味方関係なく森川楓と雪白えみりのカードの体力値と攻撃力、守備力が半減する】
姐さんのカード強すぎない? 完全にバランスブレイカーじゃん。
でも、これを使うなら楓先輩とえみり先輩のカードはデッキに入れられないかなー。
【ハイパーレア/汚部屋のプリンセス、ラズリー・アウイン・ノーゼライト:体力100、攻撃力300、防御力1。いつもリスナーと戦ってる。攻撃力はそこそこあるが体力と防御力がない。あと、部屋も汚い。場に出して2ターン目以降は攻撃力が倍になる】
【ノーマルレア/森川楓のバナナ:以下略】
ラズ様といいえみり先輩といい、守備力のないカードが多くない? そんなもん?
それに、カードパックって全部で10枚かと思ったら、11枚入ってるんだ。
よく見たらまだ一枚残ってる。
「ほら、ガチャとかでも10連したらオマケの11個目があるのとかあるじゃないですか。それと同じですよ同じ」
ふーん。えみり先輩にして、最近のガチャでよくある確率詐欺よりも全然良心的じゃん。
私は意気揚々と最後のカードを捲る。
【ノーマルレア/森川楓のバナナ】
もうこのカードはいいって!
「お客さん、最後まで見てください。そのカード、本当に森川楓のバナナですか?」
「えっ?」
私はもう一度カードを見直す。
【ノーマルレア/森川楓のバナナの食べ残し:あとで食べようと残しておいたのに、本人がホゲっと忘れて冷蔵庫の中に半年間放置されていたバナナ。相手のキャラカード一枚を指定して、その体力値を半分まで削る事ができる】
地味に違う。そして地味に強い……。
でも、なんかすごいハズレを引いた気分です。
私は気を取り直して、次の拡張強化パック、白銀の王子様を開封する。
【ノーマルレア/森川楓のバナナ:このカードを使用すると任意のキャラカードの体力を10ポイント回復する。また、このカードを使用した側はサイコロを転がして、奇数か偶数の目が出た場合、使用された側はバナナの皮に滑って一回お休みしなければいけない。奇数か偶数を指定する権利は、カードを使用された側に与えられる】
だからもうこれはいいって!!
私はカードをテーブルの上に叩きつける。
「お嬢様、お腹の子に障りますよ」
「お客様〜、あまりカードをテーブルに叩きつけないでくださいね〜。あっ、森川楓のバナナカードでメンコをしたくなった時は、あっちのテーブルでどうぞー」
えみり先輩が指差したテーブルを見ると、一心不乱にメンコをしているまろんさんとイリアさんがいた。
2人ともトップアイドルとは程遠い鬼の形相をしていたので、見なかった事にしておきます。
私は無心で次のカードを捲る。
【ノーマルレア/野良の小雛ゆかり:だる絡みされた両チームが一回お休みになる。また、敵味方関係なく白銀あくあのカードが退場になります】
【ノーマルレア/野生の森川楓:場に出ているカード全てをパワーで外に弾き飛ばす。ただし敵味方両方とも】
うーん、なんとも言えない性能だ。
バフとデバフ、両面あるけど、ちゃんと有効活用すれば結構強そう。
【スーパーレア/ホゲラー波:ホゲラー波の影響で全てが最初からやり直しになる。ただし、使用できるのは1枚につき1回限り。やり直しマッチでは、そのカードを除いた枚数からのスタートになる】
これも、初手の引きが悪くて、最初にこれ持ってた時にはアリかなって感じがするけど、自分が優勢の時にはお荷物カードでしかないよね。
【ウルトラレア/囚われの妖精、鞘無インコ:体力800、攻撃力500、防御力100。ホロスプレー本社に軟禁されている妖精族のお姫様。即死攻撃を一度だけ耐えられるしぶとさがある。その場合、体力ゲージが半分だけ残る代わりに1ターン行動できない】
【ハイパーレア/乙女ゲー:女性キャラは強制的に1ターン行動不能になる。また、相手チームの鞘無インコの踏ん張りを無効化し、体力値を強制的に残り1に減らす。逆に自陣に出された鞘無インコの体力値を全快させ、使用済みの踏ん張り効果を復活、攻撃力と守備力が1.5倍化する】
この2枚は普通に強い気がする。
たった2枚のカードだけで構成が完結してるのも大きい。
【ハイパーレア/乙女ゲー:本物の乙女ゲーム。女性キャラの体力値をマックスまで回復できる。似たような名前の公式パチモンカードが存在しているが、こちらが本物です。ただし、クソゲーと乙女ゲーは同じデッキ内にどちらか片方だけしか入れられません】
ま、紛らわしい……。
こっちもこっちで強力だけど、さっき引いたインコさん関係特化系の乙女ゲーの方もいいから、甲乙がつけ難いな〜。
インコさん環境なら前者だけど、そうじゃないなら汎用性が高いこっちかなと思った。
【アルティメットレア/パワー系アナウンサー、森川楓:体力1000、攻撃力1000、防御力500。最強のカードだが、バナナカードがないと行動ができない。また、3ターン目にはホゲラー波が強制的に到達してフィールドから消える。そして、桐花琴乃か鬼塚響子のカードが場に出ている時、すべてのステータスが半減される上に、カードを提示されたターンは行動不能になります】
つっよ。強いけど、対策立てたら完全に終わりじゃん。
3ターン目にホゲラー波が来るなら、姐さんと鬼塚アナのカードで1回ずつお休みさせたらいいだけだし、どっちか片方出したら、体力500で防御250なら、750以上の攻撃力があればワンパンできる。
そう考えると、よっわ……。
【ノーマルレア/森川楓のバナナ:以下略】
なんだろう。さっきのカード引いたあとだと、このカードにもロマンを感じてしまいます。
でもロマン構成とか、理論値構成って絶対に刺さらないんだよね。私、よく知ってます。
【プラチナベリルレア/プラチナ・プリンス、白銀あくあ:体力1000、攻撃力1000、防御力100。強力なカードだが、自陣に白銀カノンがいないと召喚できない特殊なキャラカード。また、ブルーアイズ・ホワイトドレス・カノンと並ぶ最高レートのカードで、この二つを自陣に揃えると約束された乙女の大勝利が発動し、無条件で勝利が確定する。その威力は強力で、かの大国すらも滅亡させるらしい】
「やったあああああああああああ!」
私は立ち上がって両手を上げる。
あくあがここに居なかったら、嗜みちゃん大勝利って叫んでたかもしれない。
こうなると俄然、私のカード、お姉様が持ってたブルーアイズ・ホワイトドレス・カノンが欲しくなります。
「お嬢様、おめでとうございます」
「ペゴニア、ありがと」
ふっふっふ〜、私、このカードを中心にしてデッキ組むんだ。
インコさん、楓先輩、ごめんね。短い期間だったけど、本当にありがとう。
「いいなぁ」
「ああ……」
あくあがまだ引けてない姐さんと阿古さんがテーブルに突っ伏す。
2人とも大丈夫? テーブルの上にやばい数のパックが空いてるけど、そろそろ撤退しないと今月のお給料が無くなっちゃうよ……。
「すみませーん。メス臭が濃くなって来たので、消臭スプレー入りまぁす」
ちょっと! えみり先輩、お客さんに向かって消臭スプレーぶっかけないでよ!
ちゃ、ちゃんと、今朝だってお風呂に入ってるから、臭くないもん!!
消臭スプレーをぶっかけられた阿古さんと姐さんは、無表情で新しいカードパックへと手を伸ばす。
だから、怖いって!!
私は最後に残ってたカードを捲る。
【スーパーレア/ホゲウェーブ研究所:サイコロを振って指定した奇数か偶数、どちらかが出た場合は敵味方関係なくすべての森川楓の能力が1.5倍化されます。しかし、外れた場合はすべての数値が半分になる。出された方が偶数か奇数を指定できます】
あ、うん。別にいらないかな。
私はカードを横に置くと、最後のパック、アルティメットパック、白銀あくあと愉快な仲間達を開ける。
【アルティメットレア/孤高の大女優、小雛ゆかり:体力500、攻撃力800、防御力300。バランスが取れた強力なカードだが、自陣に白銀あくあ、天鳥阿古、月街アヤナ、悪夢の世代以外の味方がいると1人につきすべての能力値が100ずつ下がる。場に出ているのが自分1人であれば全ての能力値が追加プラス100される上に、プレイラウンドに出ている味方のキャラカードが相手のキャラカードより少ない逆境状態であれば、さらにプラス100される。理論最大値、体力700、攻撃力1000、防御力500】
【ウルトラレア/先輩:小雛ゆかり、天我アキラ、城まろん、鬼塚響子等の先輩キャラカード限定で使用できる特殊なカード。小雛ゆかりであれば白銀あくあと月街アヤナ、天我アキラであれば白銀あくあ、黛慎太郎、猫山とあ、山田丸男、黒蝶孔雀、赤海はじめ、城まろんであれば月街アヤナと来島ふらん、鬼塚響子であれば森川楓に対して、後輩キャラカードに即死攻撃が飛んできた場合。後輩を庇って自分が退場する事ができる】
はい、この2枚は無条件で私のプラチナプリンスデッキ行きでーす。
あと、2枚目は鬼塚アナのカードがあるなら楓先輩デッキで結構強力かも。
【ウルトラレア/悪夢の世代:小雛ゆかり、森川楓、城まろん、加藤イリア、鞘無インコのキャラカードの能力値を1ターンだけ2倍にできる。相手は1ターンお休み。ただし、悪夢の世代のうち2人以上が自陣に出ていないと使えない】
つっよ。小雛さんカードとの相性も悪くないし、これは入れておいてもいいかな。
それに、悪夢の世代で連携できるなら、楓先輩のカードを入れるのもいいかもしれないという気がしてくる。
【ノーマルレア/森川楓のバナナ:以下略】
このカード、忘れた頃にやって来るよね。
私は次のカードを引く。
【ノーマルレア/森川楓のバナナ:以下略】
はいはい、もういいですよ!
私は次のカードを引く。
【ハイパーレア/母性の淑女、白銀カノン:通称おしとやカノン。女になり、母になったカノンの母性で白銀あくあと雪白えみりの体力値が完全回復する。体力がマックスの場合は踏ん張り効果付与】
あー、あくあが引いたのってこれなんだ。
自分のイラストだから少し微妙な気持ちだけど、イラストも綺麗だし、いいカードだと思う。
【ハイパーレア/華の女子高生、白銀カノン:通称はなやカノン。制服を着たカノンを見た白銀あくあと雪白えみりの攻撃力が2倍になる。また、体力値が完全回復します】
うん……。
自分のカードを引くってちょっと微妙な気分だ。
でも、私が欲しい自分のカードはこれじゃないんだよね。
【ノーマルレア/森川楓のバナナ:以下略】
だから、これはもういいって!!
【アルティメットレア/ブルーアイズ・ホワイトドレス・エミリ:体力値100、攻撃力0、防御力0。世界に3枚しかない某カードのパチモンカード。ただの白無垢姿の私でぇす。レアカードだからキラキラしてるけどノーマルカードより弱い。ただし、相手のフィールドにプラチナ・プリンス、白銀あくあと、ブルーアイズ・ホワイトドレス・カノンのどちらかが出てる場合は、強制的にNTRって退場させる事が可能】
エクスカリパーじゃん!!
大事な事だからもう一度言うけど、エクスカリバーかと思ったら、エクスカリパーじゃん!!
しかもこれ微妙につっよ。完全にプラチナプリンスデッキ対策用のカードじゃん。
「えへへ、それを引いてしまいましたか。実はそのカードも結構レアなんですよ」
ふーん、そうなんだ。
私はジト目になりつつ最後のカードを捲る。
お願い! 来て!!
【プラチナアルティメットレア/ブルーアイズ・ホワイトドレス・カノン:体力300、攻撃力0、防御力1000。純白のドレスで防御力がマックスになっている珍しいカノン。白銀あくあ、雪白えみり、ペゴニア、ヴィクトリア・スターズ・ゴッシェナイトはこのカードに一切攻撃できない。プラチナ・プリンス、白銀あくあと並ぶ最高レートのカードで、この二つを自陣に揃えると約束された乙女の大勝利が発動し、無条件で勝利が確定する。その威力は強力で、かの大国すらも滅亡させるらしい。なお、世界に3体しかない】
私が喜ぶより先に、周りにいたみんなが両手をあげて喜ぶ。
ちょ、ちょっと! みんなして、こっち見てたの!? そういうのはちょっと恥ずかしいからやめて欲しい。
私は照れくさそうに、みんなにありがとって言う。
「よかったな。カノン」
「う、うん。ありがと」
えへへ、あくあに褒められちゃった。
私はあくあに抱き寄せられて、デレデレした顔をする。
「あっ、メス臭が濃くなってきたので消臭スプレー入りまぁす!」
だからもうそれはいいって!!
私はえみり先輩に後ろから消臭スプレーをぶっかけられた。
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