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白銀あくあ、ぼくのなつやすみ。

 2ねんAくみ しろがね あくあ


 7がつ22にち どようび

 きょうは、よめたちと、いっぱいいちゃいちゃできて、とてもたのしかったです。

 ちょうしにのって、アヤナのかおをまっかにしたら、こひなせんぱいにおこられました。

 げせぬ。


 7月23日 日曜日

 今日は朝からベリル本社に行って雑誌のインタビューを受けたり、写真撮影をこなしたりしました。

 やっぱり仕事をしてる時は最高に楽しいです。

 帰る時に隣の打ち合わせ室を覗くと、ベリルアンドベリルのスタッフ達が小雛先輩に正座させられました。

 うん……まぁ、仕方ないよね。助けてあげたかったけど、そうしたら自分も小雛先輩に説教されそうだったので、俺はそのまま見なかった事にして帰りました。

 よしっ、明日からは本格的にお休みだ! いっぱい遊ぶぞー!!


 7がつ24にち げつようび

 しごとをがんばってるめいどさんたちに、かんしゃのきもちをこめてよるのプロレスごっこをしました。

 あしたは、ほかのスタッフさんたちとも、よるのプロレスごっこをしようとおもいます。

 きれいでせいそなこうきゅうのおひめさまたちも、やっぱりよるのプロレスごっことかにきょうみがあるのかなあ? そうぞうしたら、ぼくのちんちんがむずむずしてきました。

 ほんとうは、こひなせんぱいとしたかったけど、ぼくはこのかんけいがこわれるのがイヤでいいだせなかったです。


 7月25日 火曜日

 今日は天我先輩と約束してたツーリングに行ってキャンプしました。

 綺麗な星空を見上げながら、天我先輩といっぱい熱い話ができてよかったです。

 寝る時に、天我先輩が延々と話しかけてきたけど、俺は疲れてたのですぐに寝ました。

 でも、天我先輩は楽しくて寝られなかったのか、ずっと起きていたらしいです。

 翌日、朝起きたら天我先輩がハムエッグを作ってくれていました。

 それはすごく美味しかったです。

 今度は慎太郎も巻き添えにしようと思いました。親友、次は一緒に行こうな?

 あと、熊注意の看板を写真に撮って、小雛先輩に「これ、先輩の事ですか?」って、送ったら怒られました。解せぬ!!


 7月26日 水曜日

 インコさんの元気がないと聞いてたので2人で一緒にゲームしました。

 今日もオマエスゲエヨと連呼してたら、いつものインコさんに戻ってくれて嬉しかったです。

 途中から楓や小雛先輩と合流して、4人でバトロワをしたら、廃人とチーターしか残ってなくて秒でしばかれました。どうやらこのゲームにはもうカジュアル勢は残っていないようです。

 おまけに俺たちをしばいたパーティーの視点を見たらめちゃくちゃ嫁でした。カノンちゅよい……。あと、えみりは楓の箱を死体撃ちしようとして、間違えて小雛先輩の箱を死体撃ちしてました。えみりはすぐにゲームをログアウトしてたけど、いますぐに国外に逃げた方がいいと思います。

 僕はやっぱり身内でも死体撃ちはしない方がいいなとおもいました!!




 よしっ、こんなもんだろ!

 なんで高校の宿題に絵日記があるのかわからないけど、この世界の男子の宿題なんてこんなもんだ。

 深く考える方が負けである。なんなら朝顔も育てなきゃいけないし、工作だってあるしな。

 ちょっと色々と書きすぎてる気がするけど、杉田先生しか日記を読まないから大丈夫だろう。


「さてと、今日はどうしようかな」


 やっぱりここは定番のアウトドア系か?

 でも、昆虫採集はなつきんぐが手伝ってくれるって言ってたし、庭で工作を作ってたら、メイドさんたちがバタバタと倒れて、小雛先輩に「あんたは外で工作するな!!」って怒られたしなあ……。

 俺は慎太郎にメッセージを送る。



 白銀あくあ

 今日、暇?


 黛慎太郎

 すまない。今日は淡島さんとデートだ。


 白銀あくあ

 慎太郎、オマエスゲエヨ。頑張れよ!!


 黛慎太郎

 ああ! 任せろよ。親友!!


 白銀あくあ

 とあ〜、なんかしようぜ〜。


 猫山とあ

 ごめん。今日、僕、仕事。


 白銀あくあ

 マジか。それじゃあ、また遊ぼうな!

 それとこの前、風邪引いたばっかなんだから、仕事であんま無理すんなよ!!


 猫山とあ

 うん!



 どうやら俺以外、みんな用があるらしい。

 天我先輩は……この前、一緒にキャンプした時に、春香さんと実家に行くって言ってたしなあ。

 俺は他にも何人かにメッセージでそれとなく、今日って何してるの? って聞いてみたけど、みんな何かしらの予定が入ってるみたいだった。

 仕方ない。そういう時もあるよな。



 小雛ゆかり

 あんた、今日、暇?



 俺は何もみなかった事にして、念の為にスマホの電源を切る。

 よし! せっかくだから、ベリル支社にでも顔を出すか。

 俺は自分の部屋から出ると、白銀キングダム内にある支社に顔を出す。


「あれ? あくあ君、どうしたの?」

「どうしたもこうしたも、阿古さんこそ何してるんですか? 確か今日はお休みだって、しとりお姉ちゃんが言ってた気がするんだけど……」

「ぎくっ!」


 阿古さんは分かりやすく俺から視線を逸らす。

 これはダメだ。早くなんとかしないと!!

 俺は阿古さんの手を掴むと、本社に電話をかけて今日は強制的に休ませるからと言って、阿古さんを外に連れ出した。


「阿古さん、本当にここで良かったんですか?」

「う、うん。だって、きゅ……急にデートって言われても他に思いつかなかったんだもん」


 俺と阿古さんはあまり人気のない古ぼけた映画館の中に入る。

 へー、こんなところに映画館なんてあったんだ。

 ていうか、ラインナップがかなり古いな。どれも見た事がないタイトルばっかだ。


「すみません。汚泥のハイドシーカー、2枚お願いします」

「あいよ。今日は珍しく、あのちんちくりんじゃなくて良い男を連れてるじゃないか。もしかしてデートかい?」


 どうやら、阿古さんはこの映画館の主と知り合いみたいだ。

 珍しく阿古さんが照れていた。


「阿古さん、チケットなら、デートに誘った俺が払いますよ」

「ううん。良いの。それにこの映画はあくあ君に見てほしかった映画だし、今日は忙しかったあくあ君への慰労って事で私が払います!」

「ありがとうございます」


 俺たちは貸切状態になっている映画館の1番良い席に隣り合って座る。

 それから少しして映画が始まった。


『悠木中佐。ここはなんだ? 貴女はここで何をしている!? ここにいる子供たちはなんだ!?』

『佐久田中尉、その質問に私が答えなければいけない理由を述べたまえ。私は君の上官だぞ』


 おおー。この映画、結構、豪華だな……。

 刀の鋒を突きつけられている悠木中佐役が睦夜星珠さんで、その刀を突き刺している佐久田中尉役が美洲母さんか。7、8年前だから2人ともちょっとだけ若いな。

 映画の時代的には昭和初期、いや、もっと古いか? それくらいだと思う。


『くっ! そんな事……』

『正義と道理の上で……か? 君は正義や道理が好きだな。だが、正義や道理では国を救う事はできない』


 立ち上がった悠木中佐は佐久田中尉の刀を掴むと、自分の方に引き寄せて髪を掴む。

 悠木中佐は窓のカーテンを開けると、そのまま佐久田中尉の頭を窓ガラスに押し当てた。


『佐久田中尉、この窓から見える景色をよく見ろ! 辺り一面いるのは、女、女、女……女ばかりだ!! この歪で異常な世界のどこに正義と道理が存在している!?』

『くっ、だからと言って、子供達を集めてこんな事を……! こんな事が許されるわけがない!!』


 どうやら、悠木中佐は子供達ばかりを集めて、非人道的な何かをしているようだ。

 おそらく正義感の強い佐久田中尉はそれを阻止させたいのだろうが、覚悟の決まっている悠木中佐を前にしては、少し覚悟が足りないように見える。

 逆に拘束されてしまった佐久田中尉の回想が始まった。

 武家の家に生まれた佐久田中尉はいわゆる上流階級の人間なのだろう。

 曲がった事は嫌いで、尊敬する軍人の母と姉からは正義と道理を説かれて育ってきた。

 学生時代から優秀だった佐久田中尉は、そのまま母と姉を追って軍に入隊する。

 軍でも素晴らしい功績を収めた佐久田中尉は、母と姉が関係するとある軍学校へと送られた。

 ここで佐久田は悠木と出会う。


『佐久田中尉、最初の命だ。105号室に行って、これを渡してこい』


 悠木中佐に命令された佐久田中尉は、軍学校の地下にある寮に行って105号室を訪ねる。

 そこから出てきたのは意外な人物だった。


「小雛先輩!?」


 っと、びっくりして思わず声を出しちゃった。

 いやいや、小雛先輩の出てる映画なら全部見てるけど、こんなの知らないんだけど!?


「この映画、配給元の権利が複雑でサブスクも解禁されてないし、配信やソフトパッケージ化もされてないのよね。当時のフィルムが残ってるところでかろうじて見れるってくらい。それに、この頃のゆかりは、まだ小雛ゆかりじゃなかったし、ただのちょい役だったしね。でも、これがゆかりのデビュー作だったの」


 これが小雛先輩のデビュー作……。

 歳は中学生か高校生くらいだろうか? よく見ると顔に幼さが残ってる。


『何?』

『悠木中佐が君にこれをと』

『そ』

『あっ! おい!』


 小雛先輩演じる少女は、佐久田中尉から封筒を受け取るとそのままバタンと扉を閉める。

 え? もしかしてこれで出番終わり?

 佐久田はその後も教師として軍学校で勤務を続けるも最初の日に出会った彼女の事を気にかける。


『羽田野? ああ、あいつなら死んだんじゃないか』

『え?』


 気がつけば1人、また1人と学校から人が居なくなっていく。

 それも悠木中佐に命じられて、自らが命令書の入った封筒を手渡した生徒達から順番に……。

 ある日、佐久田中尉は、絶対に開けるなと言われた封筒の中身を開封する。


『なんだこれは?』


 そこに書かれていたのは謎の暗号と数字だけ。

 佐久田中尉はその意味が理解できなかった。

 ここで佐久田は軍学校での事を思い返していく。

 佐久田中尉が担当していたのは一般教養の授業であり、それ以外の授業で彼女達が何をしているの知らなかった。

 不審に思った佐久田中尉は軍学校だけではなく、関係者である母のいる実家や、姉の住んでいる寮を探る。

 その結果、佐久田中尉はこの軍学校が何のために存在しているかを知った。

 ここで佐久田中尉の長い回想が終わる。


『悠木中佐。佐久田中尉が反省房からから逃げ出しました』

『そうか』


 反省房から抜け出した佐久田は軍学校の地下を目指す。

 そこに居たのはまだ幼い少女ばかりだった。


『さぁ、ここから出るんだ! こんな馬鹿げた大人のゲームために、君達が命を散らす必要なんてない!!』


 佐久田中尉の言葉に誰も出て行こうとはしない。

 むしろみんな、佐久田中尉に向かって冷たい視線を向けていた。


『無駄だよ。佐久田中尉。ここにいる彼女達は、子供といえど全員が同意の元でここにいる』

『悠木中佐……!』


 悠木中佐は佐久田中尉とすれ違うと、1人の少女を優しく抱き寄せる。


『三園、君の妹はもう8歳になったそうだ。すごく元気そうだったよ』

『ありがとうございます。全ては悠木中佐のおかげです! だから、どうか、どうか、妹だけには手を出さないでください』


 悠木中佐はもう1人の少女を抱き寄せる。


『片桐、お母さんが君に会いたいと言ってたよ』

『ひっ……! いやだ、いやだ、いやだ。悠木中佐、私がここに居れば、母は一生、独房の中にいると約束したではありませんか!?』

『もちろんその通りだとも。だから、君がいい子にしているうちはダメだと言っておいた』

『ありがとうございます。ありがとうございます。なんでもしますから、なんでもしますから』


 なるほど……。

 一言で言って、この悠木中佐はクズだな。

 少女達の弱みを握ったり、家族を人質にする事で、彼女達を自らのコントロール下に置いてあるのだろう。

 それに気がついた佐久田が激昂する。


『悠木ぃぃぃいいいいい! そうやって少女達を支配して、自由を奪い、使い捨てにした彼女達を人体実験の道具にするだなんて言語道断! それのどこに正義と道理があるというのだ!!』

『佐久田ぁぁぁあああああ! 上官に向かってその口の聞き方はなんだ! 正義と道理で国が回るか! 他国だって同じ事をやっている! 今更なんだというんだ!!』


 佐久田中尉と悠木中佐が殴り合う。

 この2人のアクションシーンは珍しいな。

 激しい殴り合いの結果、先に膝をついたのは佐久田中尉だった。


『佐久田中尉、考え直せ。お前の自分勝手な正義で誰が救われる? 誰が救える? だからお前はケツの青いガキなんだ!!』


 佐久田中尉は立ち上がると唇についた血を腕で拭う。


『これから先の未来を生きる子供達だ! 私が救うのは、他の誰でもない。この国の未来と、その未来に生きる子供達である!!』


 佐久田はジャケットの内側にあるポケットから一通の封筒を取り出すと、それを悠木中佐に向かって投げつけた。


『その書簡には、少女の体を使って実際にした人体実験が事細かく書かれている。悠木中佐、その少女に見覚えがあるんじゃないか?』

『あ、あ、あ……』


 なるほど、悠木中佐が少女達を人質にとっていたように、悠木中佐もまた自らの娘をこの計画の首謀者に人質に取られていたのだ。

 しかし、その娘はすでに人体実験の道具に使われその途中に死亡したらしい。

 書類が画面に映し出されると、そこには第二次性徴前の性別転換手術と書かれていた。


『悠木中佐、死んだ娘さんのために、貴女にはまだやれる事があるはずだ』

『佐久田中尉……私は』


 悠木中佐はそこで事切れると前に倒れ込む。


『え?』


 悠木中佐の背中に刺さったナイフがアップになる。即死だった。


『えっ?』


 次の瞬間、佐久田が倒れる。こちらもまた背中から心臓にナイフを刺されて即死だった。

 消えゆく命の灯火の中、佐久田は自分を刺した少女を見つめる。

 あ、小雛先輩だ。生きてたのか……。

 俺はエンドロールを見つめながら口をポカンと大きく開ける。


「えっ? 待って、ここで終わり?」

「後味が悪いでしょ?」

「あ、はい。それもあるけど……」


 ぶつ切りっていうか、なんというか、映画としてすごく未完成な気がする。

 なんなら、こっからじゃない? って、ところで終わった。


「さっき、この映画の版権が複雑だって話してたでしょ。実はこの映画、途中で資金が足りなくなって、配給元が破産しちゃったんだよね。で、借金を踏み倒されたところが、少しでも回収しようと思って、この状態で映画館に流したんだけど、美洲様の事務所としてはこんな中途半端な映画を大手を振って流すのを許すわけにはいかないでしょ? だから、大きい映画館ではやれずに、こういう寂れた映画館でちょこちょこっと公開されただけなんだよね」


 マジかよ……。

 業界の闇というか、そういう話もあるのかと思った俺は、なんともいえない気持ちでエンドロールを見つめる。

 雪白美洲、睦夜星珠がキャスティングされてる上に、脚本だって腹を切るの志水キスカ先生じゃん。

 もし、この映画が最後までちゃんと撮れてたらと余計にモヤモヤした気持ちになる。


「寂れた映画館で悪かったわね。あんた、だんだんとあのちんちんくりんに似てきたわよ」

「おばちゃん、そこは聞かないでよもう」

「ひっひっひっ、まぁ、いいさ。みんなヘブンズソードばっか見てて、うちが閑古鳥なのは事実だしね。さぁてと、私もそろそろ閉館してヘブンズソードの映画を見に行こうかね。あっ、あくあ様、よかったら、ここにサインしてくれませんかね。このばあば、一生のお願いです」

「あ、はい」


 ん? このボード、誰かのサインが書いてあるな。

 うーん、どこかで見た事があるような気がする。


「それ、ゆかりのサインよ。人生で初めてのね」

「あのちんちくりんったら、いつかは大スタァになるんだから、感謝しなさいよねって言って、勝手に書いて行ったんだ。本当に困ったガキだよ」


 は、はは……。

 その状況が簡単に想像できて、なんとも言えない気分になる。

 俺は小雛先輩の隣にサインを書く。んー、サインのサイズが、俺の方が大きかったら文句言いそうだし、同じくらいにしとこっと。よし、こんな感じでいいだろう。

 阿古さんと俺はお婆さんにお礼を言って映画館を出る。


「さてと、あくあ君、どうしよっか?」

「せっかくだから、トマリギとか行きません?」

「いいわよ」


 俺は阿古さんをバイクの後ろに乗せると、2人が出会った思い出のトマリギへと向かう。

 こうして俺は今日も夏休みを堪能した。

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それホンマに7、8年前? 桁一つ間違ってない??(゜д゜)
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