表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

517/706

鞘無インコ、開演! ベリルインワンダーランド!!

「運良くチケット当たってよかったね」

「ねー」


 ベリルインワンダーランド開園の待機列に並んだうちは口を半開きにしながら周りの様子を伺う。

 夢かと思ってほっぺたをつねったが、めちゃくちゃ痛いからどうやらこれは夢とちゃうみたいや。

 遡る事数時間前、うちが部屋でぐーぐー寝とったらスタッフの人達が扉を蹴破って突撃してきた。


「なんやなんや!? よそのVtuber事務所のカチコミか!?」


 飛び起きたうちは寝癖のついた髪で周囲を警戒する。


「インコさん、おめでとうございます!!」

「「「「「おめでとうございます!!」」」」」


 おめでとう……?

 も、もしかして、うちが知らん間にク……乙女ゲームをクリアしとったとか!?

 え? クリアはまだしてないって? クリアはしてないけど、スタッフがうちの名前でベリルインワンダーランドのチケットを応募したら取れたって!? 嘘やろ……。


「うっ、うっ、やっぱ持つべきもんは仲間なんやなぁ。お前ら、ほんまありがとな……」


 スタッフの人達の心遣いに、うちは感動で涙を流す。

 うちが本社のスタジオに軟禁されてから、もう半年が過ぎている。

 確実に乙女ゲー攻略は進んでいるけど、エンディングまでの道のりは長く、まだ先が見えとらん。

 最近も野生の森川楓が大量発生して、ベリル本社の床ががホゲバナナの皮で埋め尽くされるバグのせいで進行不能になって最初からやり直したところだ。


「インコさんチョロ」

「そこがインコちゃんのいいところだから」

「一説にはチョロい方があくあ様とくっつく可能性が高いというデータサイトがですね」

「な、なんだって〜!? じゃあ、私にもチャンスが!?」

「しめしめ、これで乙女ゲークリアまでインコさんを拘束できるぞ」

「しーっ! そこは黙ってなきゃダメでしょ」


 うちは久しぶりにおめかしすると、優しいスタッフに見送られてベリルインワンダーランドへと向かった。

 そして今に至る。


『ベリルインワンダーランドにご来園の皆様、もう少しで開演いたしますので、しばらくお待ちください』


 公式のアナウンスに待機列に居た人達全員が沸く。

 うちも周りの子達と一緒に手をあげて声を張り上げた。


「あっ、シロくんやたまちゃん達のマスコットが出てきたよ!」

「らぴすちゃん達も出てきた!! らぴすちゅわーん!」

「丸男くーん! 孔雀くーん!」

「カノン様がいる! あんま無理しないでねー」

「リアルえみり様、綺麗!」

「天鳥社長と姐さんもいる!!」


 ベリルインワンダーランドから出てきたみんなが待機列の中央に敷かれたレッドカーペットを歩く。

 みんなはカーペットの端で折り返すと、入場ゲートの前で横一列に並んだ。

 うちもみんなと一緒に声を張り上げて歓声をあげる。


「楓ー! バグで大量発生すなー! 食ったバナナの皮はゴミ箱に捨てろー!」


 うちの言葉に周りにいた何人かの女子が吹き出す。

 あかん。今、反応したのは確実にうちのリスナーさんや。

 ばれんようにせんと……うちはコソコソする。


「ん? 今、インコの声が聞こえてきたような……」


 お前、いつもはホゲっとる癖に、なんでそんなに耳がええんや!!


「いや、あいつは配信部屋に軟禁されてるはず。こんなシャバに出て来る事なんてないよな……」


 そうやそうや! お前はそれでええんや!

 楓はつまらんことで脳みそ使うな! 有事の時以外は一生寝させとけ!!


「あ」


 誰かの一声でみんなが一瞬だけ固まる。


「天我先輩! 魔術師のローブと杖、それっぽいよ!!」

「黛くん! モノクル似合ってる!! こんな執事さんが欲しい!!」

「とあちゃん!! 小さなシルクハットとショートパンツかわいい!!」

「えっ? えっ? みんな間に合ったって事!?」

「やったあ!!」


 よかったー!! BERYLのみんなはちゃんと間に合ったんや!!

 とあちゃん達はレッドカーペットを折り返した後に、他のみんなと一緒になって入場ゲートの前で横一列になる。

 こうなるともう、最後に出てくるの1人しかいない。

 全員が固唾を飲んでレッドカーペットの先を見守る。


「あっ! お城から何か出てきた!」

「本当だ!!」

「あくあ君!?」

「って、馬!?」


 ほんまや! 白馬に乗ったあくあ君がお城からまっすぐこちらに向かって走ってくる。

 クリスマスコンサートの再現を意識した演出にみんなが沸く。

 ふぁ〜、やっぱり男前は馬に乗ると絵になるわぁ。

 白馬に乗った王子様服のあくあ様が到着すると、今日1番の歓声に包まれた。

 馬を降りたあくあ君は1人レッドカーペットを歩く。

 やっぱりランウェイを何度も歩いてるだけあって歩き慣れとるわ。

 もうどっからどう見えてもあんた1人のためのランウェイや。

 やっぱり主役はものが違うな!!


「ようこそ、夢の国へ。私がこの国の王子、白銀あくあだ」


 おぉー!

 ちゃんとした王子様モードのあくあ君だ。

 あくあ君はベリルインワンダーランドのおすすめ施設について軽く説明していく。


「と、硬い挨拶はここまでにして、みんな、今日は本当に来てくれてありがとう!!」

「「「「「「「「「「ありがとうございます!」」」」」」」」」」


 いつもの感じに戻ったあくあ君を見て、またみんなが大きな歓声をあげる。

 ベリルのみんなは横一列になって手を繋ぐと、私たちに向かって頭を下げた。


「それでは只今より、ベリルインワンダーランド開園です!!」

「「「「「「「「「「わあああああああああ!」」」」」」」」」」


 すでにチケット認証を済ませてる私達は、さっきあくあ君達が歩いていたレッドカーペットを通ってベリルインワンダーランドの中に入る。


「あくあ様ー! こっちみてー!」

「マユシン君ー! 手振ってー!」

「とあちゃん、今日も可愛い!!」

「天我先輩、私に魔法かけてー!」


 ふぉおおおおおおお!

 うちらが歩くレッドカーペットの両脇には、みんなが立ってお出迎えしてくれていてすごく興奮した。

 流石にカノンさんとかは椅子に座ってたけど、それはしゃーない。むしろうちらとしてはそっちの方が安心する。カノンさん達は妊婦さんなやから、無理せんでええんやで!

 レッドカーペットを歩くファンの中にはカノンさんのお腹に向かって、子供にまで挨拶してる人がいた。

 うちも元気に生まれてくるんやでーて声かけとこ!


「どこ行こっか?」

「見たいとこいっぱいあって悩む!」


 わかる! わかるで!!

 とりあえずうちは近くの土産屋さんに入る。

 本当は土産なんて最後に買うべきなんやろうけど、うちのためにチケットを取ってくれたスタッフの子達や後輩達のためにも限定品のグッズを買ってあげたかった。

 幸いにもベリルインワンダーランドは購入したお土産を預かってくれるサービスや配送サービスがあって、店舗で購入したお土産をクロークカウンターで受け取る事ができるし、直接、家や会社に送る事もできる。


「うーん、やっぱりここは王子様ルックのあくあ君やな。かっこよかったもん」


 うちはあくあ君の限定品を各種購入限度数まで買う。

 みんなに上げる事考えたら、このくらいは買っとかんとな。


「数は十分に用意してますからねー。安心して、ゆっくりとご購入くださーい」


 店舗の中に、赤い軍服のジャケットにミニスカートをつけたらぴすちゃん達が入ってくる。

 くっそかわぇぇぇえええええ! 帽子のサイズがちょっとあっとらんところとかが、思わずギュッとしたくなるわぁ。

 らぴすちゃん達はお客さん達に注意を促すと同時に、困ってそうな人たちに声をかけていく。

 うわぁ。ベリルの子達と触れ合えるとか、もうそれだけで神やんか。


「お土産送付お願いします」

「はい、わかりました。えーと……ホロスプレー本社ビル!?」


 お姉さんは送り先の住所とうちの顔を交互に見て何かに気がついた顔をした。

 アッチャー、流石にわかっちゃうかぁ。うちは唇の前に人差し指を突き立てると、お姉さんんに、「すまん、黙っとってな」とお願いした。

 お姉さんはわかりましたと、無言でコクコクと頷く。

 って、よく見たら、この子。ベリルのスタッフになった藤林美園さんやないか!

 よく見たら、この子だけ他の子達と服装が違う。白い制服に胸には支配人代理と書かれていた。

 ほーん、こういう裏側の仕事とかも手伝いに来て、表に出たりしとるんや。

 裏の個室に通されたうちは、藤林さんから完全に表舞台から消えたわけやなくて、半分表、半分裏っていうスタッフとタレントを繋ぐ間の仕事をしてると聞いた。


「おおきに!」


 うちは藤林さんにお礼を言うと配達所を後にする。

 それにしても藤林さんや配達所に居たお姉さん達の制服もくっそ可愛かったなぁ。

 女の子達の制服デザインはあくあ君が全て自分好みの監修してるだけあって、ここで働くのもかなりの倍率だったと聞いている。


「あっ、ヒスイちゃんだ」

「本当だ!」


 おっ、今、話題の新人、祈ヒスイちゃんか。

 役者界の音ルリカさん、アイドル界の祈ヒスイちゃん、そして配信界のラズ様は今年、ファンの中でも界隈の人達の間の中でも最もくると言われとる新人トップ3や。

 ファンの子達に声をかけられたヒスイちゃんは肩にかけていた狙撃銃をくるりと回してファンにサービスでパフォーマンスを見せる。

 おー、えらいかっこええな。って、それ消毒スプレーなんかい! うまいこと作っとるなあ。

 うちもヒスイちゃんに手のひらにシュッシュッと消毒液をかけてもらう。


「ねーねー、そこのお姉さん達、喉乾いてない?」

「か、乾いてます!」

「今、乾きました!!」


 あ、とあちゃんや!

 とあちゃんは可愛くおねだりして、お姉さん達をドリンク屋に連れ込んで行く。

 って、ドリンク一杯1000円やて!? ぼっ、ぼったくりか!? いや、テーマパークとしたらありえる価格帯か。

 あ……看板をよく見たら、一杯、1000円のドリンクは、1000円の寄付に対して無料でドリンクがもらえるって事なんか、なるほどね。よく見たら、隣で普通のドリンク売ってますって書いてあるわ。

 うちもせっかくやから寄付しようかと思ったけど、すごい列だったのと、隣のドリンク屋に人がいなくて可哀想だったのでそっちに行く。


「あ、お客さんだ! やったぞ、孔雀!」

「ばか! まずは、いらっしゃいませ! だろ!!」


 ふぁっ!? 店に入った瞬間、山田君と孔雀君がいてびっくりした。

 どういう事や!?


「いやー、助かります。隣にいるとあちゃん先輩にめちゃくちゃ人の流れが取られちゃってて、誰もこっちに入ってこなくて困ってたんです」


 あ、なるほどな。そりゃ、仕方ないわ。

 うちは楓おすすめのフレッシュバナナジュースを注文すると、2人に、外に出て人を呼び込んだ方がええよとアドバイスした。


「うわー、孔雀君と山田君が入れてくれたフレッシュバナナジュースめっちゃうまいわぁ!!」


 うちは店の外に出た瞬間、わかりやすく大きな声でアピールする。


「え? 隣の店って孔雀君や丸男君がやってるの!?」

「私、そっちいこ!」

「急げ急げ!」


 よし、これでこっちにもお客さんが来るやろ。

 うちはさらに歩いて、ホテルの目の前を通る。

 って、カノンさん!?

 うちはバルコニー席で優雅にお茶を飲んでいたカノンさんに手を振る。


「あ」


 うちの顔を知っとるカノンさんは笑顔で手を振り返してくれた。

 ふぁ〜。隣に本物のメイドのペゴニアさんがおるし、ガチもんのお姫様はやっぱりちゃうわ。

 って、よく見たら、カノンさんと一緒にお茶飲んでるのくくりちゃん様やないか!

 おまけに、くくりちゃん様のメイドはえみりさんやし、うわー、もうあの空間だけ完全に絵画やんか。


「あ、嗜……カノン様だ!」

「えみり様、綺麗……」

「くくり様!! 洋装もとっても素敵です!!」


 あ、うちのせいで、周りの子達が気がついてもうた。

 いや、でも、確かこれもパフォーマンスの一環やから、みんなに知られてええんやっけ?

 うちは口をパクパクさせて「あんま無理せんようにな」と無言で伝えてその場を離れる。

 それにしても、掲示板民、ほんまどこにでもおるな! ちょっとは自重せぇ!!


「あ、魔術師天我先輩の占いの館があるよ!」

「本当だ! 行ってみよ!!」


 ほーん、そんなのもあるんや。

 普段は映像パネルだけど、今日は本物の天我先輩が対応してくれるんか。

 列を見るとTENGAギャルズがたくさんおった。

 うちはそれを横目にさらに奥に行く。


「あ、森川楓の闘技場だって」

「何それ!?」


 そんなのがあるんか……。うちは施設の前に設置してある看板に書かれた説明を読む。

 ふむふむ。施設内にある各ブースで楓やあくあ君の記録を超えたら素敵なプレゼントがあるって!?

 これは挑戦せなあかんやろ! うちは戦士の顔をして勢いよく闘技場の中に入る。

 結果は惨敗やった。


「人間の出せる数字じゃないよ……」

「無理無理、絶対無理。人類には早すぎた」

「でも、記念品一杯くれたし、最初の期待値が低かったのを考慮しなくてもかなり楽しかったよね」

「うんうん。あんまりパワーとかスピードとかが関係なやつだと、記録超える人もいるんじゃないかな」


 うちは記念品でもらった楓のアクスタキーホルダーを見つめる。

 みんな、あくあ君グッズと引き換えるやろと思って、ついついこっちを選んでもうたけど、意外と楓の記念品と換えてもらう子達が多くてびっくりしたわ。お前、意外と人気あるんやなぁ。うちも嬉しいよ。


 ぐぅ〜。


 体を動かしたせいか、お腹が空いてきた。

 うちは近くのレストランに入る。


「おぉ〜」


 レストランの中にステージがあるやん!

 食事をしていると、オーディション組からベリルインワンダーランドのキャストに転身した瓜生あんこさんが綺麗なドレスを着てステージの上に出てきた。

 おお……ゆかりがあくあ君に頼まれて、その伝手でミュージカルや舞台に瓜生さんを出して鍛えてたって言ってたけど、ゆかりが介入しとるだけあってかなり様になっとるやん!! 瓜生さんはミュージカルで鍛えた歌唱力で、ベリルの曲をジャズ風にアレンジして食事中のうちらをえらい楽しませてくれた。


「皆さん、よかったら15時からのミュージカルショーに見にきてくださいね!」


 みんなで大きな拍手と声援を送る。ちゃんとデビューできてよかったなぁ。

 レストランで食事を済ませたうちは、外に出て人だかりのできているところに近づく。

 これは一部の関西人の気質やと思うんやけど、人がおったら自然と混ざりたくなるんよな。


「黛君、がんばれー!」

「執事マユシン君とマスコット隊とか私得すぎない!?」

「何、この可愛い集団!?」


 お、執事風の黛君がシロくんやたまちゃんを引き連れてマスコット行進のパフォーマンスしとるんか!

 ええなぁ。夕方からは大きなパレードがあるらしいけど、こっちの方が距離感近いし、好きなキャストがやっとる時はファンのみんなはたまらんやろうな。

 ん? よく見るとマスコットの1番最後に森長のメリーさんが混ざってる。

 なんでおんねん! お前、ベリル所属みたいな顔してるけど、森長所属でベリル所属ちゃうやろ!!


「あくあ君が連れてきたんだって」

「なるほど」

「みんな、暑いからあんま無理しないでねー!」


 うんうん。ここ、ちょうど屋根がついとって日陰になっとるし空調も効いとるけどあんま無理したらあかんで!

 ミニミニパレードは時間にしてわずかに5分くらいで終わる。めっちゃ、タイミング良かったわ。

 うちは映像を撮ってスタッフのみんなに送信する。黛くんファンのスタッフが喜んでくれるやろと思ったら、めっちゃ喜んでくれた。せや、ついでに朝撮ったレッドカーペットとかの動画も送っとこ。


「ベリル城はこちらのルートからもいけますよー!」


 あ、あそこにおるのは那月さんやな。

 確か羽生総理の娘さんなんやっけ。

 インフォメーション係と書かれたプレートを胸につけた那月さんは、みんなに声をかけていきたいところに誘導していく。

 なるほど、こっちにベリル城があるんか。じゃ、次はそっちに行ってみようかな。


「おー、ここがあくあ君達の住んでるとされてるお城かー」


 白銀キングダムとは違う。ベリルインワンダーランドの住民達が住んでるという設定のお城に辿り着いたうちは、チケットを見せてその中に入場する。

 おー、みんなとそっくりなマネキンが城内に飾ってあるなぁ……って、よくみたら本物もおるやん!!

 赤海君が緊張した面持ちでみんなに手を振る。ザンダムで一緒に共演してるけど、まだこういうのは慣れとらんなって感じがするわ。


「あ、イ……」

「しーっ!」


 うちに気がついた赤海君に対して、すかさずしーっのリアクションをする。

 赤海君はうちの反応を見て、両手で自分の口を押さえてコクコクと無言で頷いた。

 よしよし、誰にもバレてへんで。うちは、小声で頑張ってなと声をかけた。


「おぉ……」


 ここがあくあ王子の部屋か。

 心なしかええ匂いがする気がする。いっぱい深呼吸しよ。


「こちらが寝室です」


 中を見学してたみんなの目つきが変わる。

 うわー、あそこのシワとかちょっと乱れとるところとか、さっきまで寝てたみたいやん!!

 うちらは悶々とした気持ちのまま、浴室に案内される。


「あ、あくあ君の匂いがしゅる……」

「あくあ様ぁ……」

「あ、あ、あ……」

「ぬれ……びしょ……」


 あっかーーーん! ここに長居したら、あくあ君のええ匂いで脳みそが全部溶けてまう!!

 限りなくお風呂上がりのあくあ様の匂いを再現しましたって書いてあったけど、あの匂いはもう何かの兵器やろ!!

 あかんわ。日本がついに核を超える究極の兵器を開発してもうた。

 足取りをふらふらさせた女性達が部屋から出ると、医務室兼救急室へと運ばれていく。重症な人は車椅子や担架に乗せられて運ばれていった。

 うちは近くにいた琴乃マネに声をかけると、あそこの部屋の匂いの濃度を下げとった方がええでとアドバイスした。このままやと間違いなく死人が出る。

 多分、匂いチェックしたカノンさんとかが慣れすぎてて気が付かなかったんやろな。

 うちはあくあ君とスタジオの中っていう密室で共演した事あるから耐えられたけど、初めての人は絶対に無理や。

 お城から出たうちは中央の広場で人だかりができてたのを見つけて近づく。

 なんやなんや、今度は何が始まったんや!?


「きゃー! あくあ様、かっこいい!!」

「あくあ君、がんばれー!」


 おー! 剣を持ったあくあ君が複数のキャストと共に、中央のステージで殺陣のパフォーマンスをしとった。

 男性のアクションシーンですら一昔前やったらレアやったのに、生でこういうのが見られるなんて本当に驚きしかないわ。

 うちらはパフォーマンスを終えたあくあ君とキャストのみんなに盛大な拍手を送る。


「そろそろミュージカル見にいこ。ピンクのバラ、楽しみだよねー!」

「その後はパレードだし、まだまだイベントがたくさんあるもん。こっからだよ!」


 せやな。うちも今日一日、目一杯楽しむで!!

 改めて気合いを入れ直したうちは、ミュージカルのある会場に向かってスキップした。

Xアカウントです。作品に関すること呟いたり投票したりしてます。


https://x.com/yuuritohoney

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ