白銀結、プレゼント交換会。
あー様が番組で旅を満喫している一方で、無事、白銀キングダムに引っ越した私達は、引越祝いのプレゼント交換会を実施する事になりました。
「というわけで、今から1人ずつ前に出て、この箱からくじを引いてください。なお、当たりはあくあ様からの引越祝いのプレゼントになっております!!」
「「「「「きゃ〜!」」」」」
あー様からのプレゼントという事もあって、皆さんが手を叩いて喜び合う。
「それではまず、この私、えみりが手本として最初にくじを引かせてもらいます!!」
司会進行のえみりさんは、不正がないように自分で用意した箱をみんなに回して振って貰う。
す、すごくドキドキしてきました。
小、中、高と友達の居なかった私は、お友達同士でプレゼント交換会なんてした事がありません。
うう……私の買ってきたプレゼントは大丈夫でしょうか?
少し心配になります。
「それでは、えみり、イっきまぁ〜す!!」
「えみり先輩、がんばれ〜」
「は・ず・れ! ハ・ズ・レ!」
「楓さん……プレゼント交換会にハズレなんてあるんですか?」
「そこはほら、あれじゃない? 楓とかえみりちゃんからのプレゼントはハズレじゃない?」
「そういうゆかりが何を選んだのか、長年の友人としてはとても心配なんだけど……」
「はは……ははは……」
周りの声援? に包まれながら、えみりさんが箱の中から一枚のくじを引くと、それを天高く掲げて周りにアピールする。
「とったど〜!」
「「「「「おぉ〜!」」」」」
えみりさんは恐る恐るくじをめくろうとする素振りを見せる。
「早くしろ〜!」
「焦らすな〜!」
それに対してすぐ楓さんと小雛ゆかりさんの2人がヤジを飛ばす。
えみりさんは2人に促されるようにしてくじを捲ると、中身を見て驚いた顔をする。
なるほど……こういうリアクションをしろってことかな?
「私が引いたくじは……な、な、なんと、カノンのプレゼントです!」
「「「「「おぉ〜!」」」」」
えみりさんはニコニコした顔でカノンさんの用意したプレゼントの袋を手に取る。
一体、何が入ってるのでしょうか?
「こい! こい! カノンが出産した後に使うために、あくあ様に内緒でこっそり買ってたピンクの紐の奴こい!!」
「ちょ、なんでえみり先輩がその事を知ってるんですか!?」
2人のやり取りに周りから笑い声が起きる。
良いなぁ。えみりさんもカノンさんもすごく仲が良くて羨ましくなります。
「へぇ〜、やっぱりカノンさんってやる事やってるんだ」
「と、とても参考になりますわ……」
「ぴ、ピンクの紐……私も買おうかな。ううっ、でも私のサイズだと色々とはみ出そう」
あー様やカノンさんのクラスメイトでもあるココナさん、リサさん、うるはさんの3人が顔を赤くして袋の方へと視線を向ける。
うるはさん、その悩み、私にはよくわかりますよ。私も貴女と同じで紐だと色々とはみ出てしまいます。
「こっ、これは!?」
えみりさんはプレゼントの袋を開封すると、ニヤリとした表情を見せる。
「こーれ、間違い無く布です。当たりきました!!」
「だからそんなのプレゼントに入れてないって言ってるでしょ! もーっ!!」
2人のやり取りにまた笑い声が起きる。
まさか、えみりさんがあの見た目でこんなにも面白い人だとは思いませんでした。
黙っている時や外行きの時に見せる印象と、ご友人達と喋っている時の印象がいい意味ですごくギャップがあります。
えみりさんは袋の中に手を突っ込むと、一気に中身を引き出してみんなの前に広げて見せる。
「あ……く、靴下? って、これ。ねねちょさんの絵じゃない!?」
あ、本当です。靴下をよく見るとねねちょさんデザインのグデグデあくあ君がメリーさんにもたれかかった絵が書かれていました。
って、このデザインはもしかして!? 私と同様に、このアイテムの重要性に気がついた人達から悲鳴に近い声が漏れる。
「うん。そうだよ。私も冷え性だから夏に少しもこっとした靴下を履くから、みんなも冷え性対策にどうかなと思って。それにこの靴下はなんといってもねねちょさんコラボの限定デザインで、知っての通り、森長のキャンペーンで当たった人限定の超レアアイテムです。私、ほら、2つも持ってるから……」
す、すごい……。
私もたくさん食べて応募したのに、カノンさんって2個も当たったんだ……。
「がーん! 私なんかアレだけ買ってて、一個も当たらないのに……」
「まりんちゃん、それは私もだよ。むしろこれだけいて、当たったのはカノンさんだけなんじゃないか?」
「あ、じ……実は私も持ってます。カノン義姉様に代わりに応募してもらって……」
「ふーん。らぴすって意外としたたかよね。私もあーちゃんの靴下欲しかったなぁ〜」
へ〜、らぴすちゃんも持ってるんだ。
わ、私もどうしても欲しいグッズがある時は、勇気を出してカノンさんにお願いして代わりに応募してもらおうかな。
「ほーん、カノンの使用済みじゃなかったのは残念だけど、これはこれで有り難く使わせてもらいます! ありがとう、カノン!」
「なんでそっちの方が嬉しいのよ! もう!!」
2人のやり取りを見て、また周囲からくすくすと笑い声が漏れる。
えみりさんがお嫁さんに加わってからというもの、ますますお嫁さん同士の距離感が近くなった気がします。
カノンさんとみんなの間を繋いでくれるえみりさんがお嫁さんに加わったのは、出産が近くなってきたカノンさんにとっても凄く心強いのではないかと思いました。
「それじゃあ、私がカノンのプレゼントを引いたので、次はカノン、よろしくね」
「う、うん」
カノンさんは箱の前に立つと、手をパンパンと叩く。
「えみり先輩のプレゼントだけは絶対に引きませんよーに!!」
「ちょ! おま!!」
ここでまた笑い声が起きる。
さっきからずっとイチャイチャしてるカノンさんとえみりさんを見て良いなあと思った。
私も2人みたいにイチャイチャできるお友達が欲しいな……。
『やっぱり女の子がイチャイチャしてる姿っていいよな。男として2人の間に挟まりたくなる』
私の隣で真剣な顔付きをしたあー様が、物思いにそう呟いていた事を思い出しました。
なんでその間に挟まりたくなるのか、その理由は全くと言っていいほどわかりませんが、きっと、あー様が言ってる事だからとても意味がある事なんだと思います。
だって、あのあー様がキリッとした真剣な顔付きで呟いてたんだもん。きっと、意味のない事じゃないです。
私には理解できないとても深い話なのだと思いました。
「カノン、フラグ立ってるぞ〜!」
「楓さんこそフラグが立ってる気がしたのは私の気のせいでしょうか?」
「ハ・ズ・レ! ハ・ズ・レ!」
「ゆかり先輩、楓さんの声真似で煽っちゃダメですよ。もう!」
「そうだそうだ。いつもお前ばっかりずるいぞ〜。掲示板民を代表して嗜み死ね〜」
こんなところで嗜み死ねなんて言ってるのは誰でしょうか?
声の方向に顔を向けると、ペゴニアさんに何もなかったかのような顔で微笑みを返されました。
カノンさんの忠実なる侍女であるペゴニアさんが、あんな言葉を言う訳がないですよね。きっと私の空耳です。
「げっ」
くじを引いたカノンさんはゲンナリとした表情で滅多に出さない声を出す。
どうやらカノンさんはある意味で当たりを引いてしまったみたいですね。
「えみり先輩の……」
「「「「「おー!!」」」」」
やっぱりカノンさんって豪運なんですね。
逆にここでちゃんとえみりさんのくじを引くのすごいと思いました。
みんなが手を叩いて喜ぶ。
「カノン……やっぱり私達は相思相愛だったんだな」
「ちょっと! あくあみたいにキリッとした顔で言わないでよ!」
それを聞いて小雛ゆかりさんがお腹を抱えて笑う。
隣に居た天鳥社長が心なしか肩を震わせて笑っているように見えました。
「一応、ありがとうって言っておくけど、変なの入ってたら、本気で怒るからね」
カノンさんはえみりさんからプレゼントの袋を受け取る。
あの袋の中に、一体、ナニが入っているのでしょうか……。
カノンさんは無駄に引っ張らずに袋の中を開けると怪訝な表情をする。
「何これ?」
カノンさんは袋の中から、猫のしっぽのようなものを取り出す。
「その尻尾は中に入っているリモコンとセットで使います」
えみりさんは袋の中からリモコンを取り出すと、「ポチッとな」という言葉と共にリモコンのボタンを押す。
すると猫の尻尾がヴヴヴと振動しながら、グネグネと動き出しました。
「これ、何に使うの?」
「それは、あくあ様に聞いてください!! 他にもオプションとして猫耳もセットで入れておきました!! いやー、誰が引いても良かったのですが、カノンかアヤナちゃん、いや、ここは大穴狙いで姐さんや揚羽お姉ちゃん、結さんや小雛先輩辺りに引いてもらいたかったので、バイトした甲斐があります!!」
「え、えみりさん!? わわわ私ですか!?」
「えみりちゃんは何を言ってるのかな!?」
「うぅ……カノンさんが引いてくれて本当に良かった」
「はぁ!? なんで私がアイツのためにそんなのつけなきゃいけないのよ!!」
私は自分のお尻に手を当てて顔を赤くする。
あー様がかっこよくリモコンを押す姿を想像したら、体の中がすごく熱くなって火照ってきました。
しかし、女子高生の月街さんや、カノンさんはいいけど、私が猫耳や尻尾を装着して可愛く語尾に「にゃん」ってつけても許されるのでしょうか? きっと世の中に存在してるほぼ全ての男性から、物をぶつけられそうで凄く怖いです。
「そしてこのプレゼントには、な、な、なんと! あくあ様ご本人から、誰が引いてもにゃんにゃんプレイをしてくれる完全同意チケットが同梱されています。ええ、私、えみりが頑張りました」
あくあ様と確定でそういうプレイができるとわかって、私達全員から今日一番の大きな拍手と悲鳴に近い歓声が部屋の中に響き渡る。
「というわけで、カノン、おめでとう!! 出産した後に、夜にこっそりと2人でにゃんにゃんプレイを楽しんでくださいね。ぐへへ!」
「えみり先輩のばか。あくあもばか。絶対に使わないもん。ふんだ」
カノンさんは顔を真っ赤にしてステージから降りる。
へぇ、プレゼント交換会ってプレゼントを引いた人を辱める会だったんですね。
私、全然知りませんでした。
「よーし! じゃあ私たちは2人で完結しちゃったので、ここで切り替えて、我こそはと思う人は挙手してください!!」
「はいはい!」
「私も引きます!!」
えみりさんの言葉に釣られてみんなが手を挙げていく。
あ、私も上げとこ。でも、流石に多いし、私は別にいつでもいいからやっぱり引っ込めようかな。
「じゃあ、私も!」
そう言って白龍先生が手を挙げた瞬間、みんなが示し合わせたかのように一斉に手を引っ込めて静かになる。
「はい! じゃあ、白龍先生、前にどうぞ!」
「ちょっとぉ!? なんか今の嵌められてない!? 私の気のせいかな!?」
白龍先生のリアクションにみんなから笑い声が漏れる。
ごめんなさい、白龍先生。私が手を引っ込めたタイミングは本当に偶然だったんです。
「それじゃあ白龍先生、おなしゃす!」
「わかったわよもう」
「かーえーで! かーえーで!」
「ゆーかーり! ゆーかーり!」
白龍先生が箱の中に手を突っ込むと、なぜか楓さんと小雛ゆかりさんの2人が煽り合うようにお互いの名前をコールする。
「ちょっとそこの2人、言っとくけど私だってハズレなんて引く気ないからね!!」
白龍先生はそう言うと、箱の中から一枚のくじを引く。
何が書いてあったのでしょう。白龍先生は手を挙げてガッツポーズを見せる。
「琴乃さんのきた!! これは絶対に当たりでしょ!!」
周りから大きな歓声と拍手が起こる。
琴乃さんは贈り物のセンスが良さそうだし、絶対に変なのは選んでなさそうな気がします。
「何が出るかな?」
白龍先生は笑顔でプレゼントが入った箱を開封する。
次は何が出てくるんでしょう。すごく楽しくなってきました。
「あくあ君のぬいぐるみ? ありがとう。琴乃さん」
白龍先生は箱の中から取り出したぬいぐるみを抱き抱える。
見たことないタイプのぬいぐるみです。もしかして新製品でしょうか?
「姐さん、説明お願いできますか?」
「あ、はい」
ステージに上がった琴乃さんはえみりさんからマイクを受け取る。
「えっと、このグッズはまだ未発売のもので、来月8月に販売される予定となっております。このグッズがなぜ8月に出るかというと、夏休み明けが一番自殺が多いからなんですね。だから、それを減らそうと思って、このグッズを販売しようと商品開発部の皆さんが頑張ってくれました」
へぇ、そうなんですね。
確かにあー様のぬいぐるみを抱いてギュッとしただけで、自分は1人じゃないんだってそういう気がします。
「でも、ただのぬいぐるみじゃそんなに意味がないよと、そう思うでしょう? 違うんです。これはただのぬいぐるみじゃありません。白龍先生、ぎゅっと力強く抱きしめてみてください」
「う、うん。わかった」
白龍先生は琴乃さんに言われた通りに、あー様のぬいぐるみを力強く抱きしめる。
『愛してる。大好きだ』
ふぁ〜っ!
あー様のぬいぐるみから、あー様の声が聞こえてきました。
これにはみんなびっくりです。
「しゅ、しゅごいぃ……」
白龍先生がフラフラしています。大丈夫でしょうか?
「白龍先生、しっかりなさい!! あなたが現実に負けてどうするのです!!」
メアリー様の一声でシャキッとする白龍先生を見て、みんなから笑い声が漏れる。
「ついでにこのあくあさんのぬいぐるみの手に触れると、こうなります」
琴乃さんは白龍先生からあー様のぬいぐるみを受け取ると、手を持って白龍先生の頭を撫で撫でします。
『どうしたんだ? 頭を撫でて欲しいなら早くこっちにこいよ。よしよし、よしよし』
あっ、あっ、あっ……!
私はおへその下辺りに手を置くと、これは絶対に発売されたら買おうと心の中で決定しました。
「他にも頭を撫でたりとか、色々なアクションをすると他のセリフを言ってくれます。また、アプリと連動させる事で、それぞれのアクションに対してのセリフを自分好みに変更できますし、内蔵の時計と連動しておはよう。おやすみのコールはもちろんのこと、行ってきますと言えば行ってらっしゃい。ただいまと言えばおかえり。などの反応が返ってくる他、勉強モードや仕事モードを選択すれば、定期的にあくあさんの声でがんばれ頑張れと応援してもらえます!!」
「これはどう考えても大当たりじゃ……」
「私、えみり先輩のじゃなくて姐さんのが良かった」
「いやいや、私のも良かっただろ!?」
「くっ! さっき手を下げなければあああああ!」
「白龍先生、これで執筆のお仕事が捗りますね!」
「流石にそれは鬼すぎない!?」
白龍先生は口を半開きにしたまま固まる。
まさかの大当たりに放心状態というところでしょうか?
台車に乗せられた白龍先生はフリーズしたままの状態で、メイドさん達に押されてステージから降りていく。
「ふーん、じゃあ、こうしたらどうなるわけ?」
小雛ゆかりさんはあー様のぬいぐるみが気になるのか、白龍先生が抱えたあー様のぬいぐるみのおでこを軽く人差し指で小突く。
『ちょ! さっきデコピンしたでしょ! こんなのするの絶対にうちの先輩だけじゃないですか!!』
「へぇ、なかなか面白いじゃない」
小雛ゆかりさんは面白がって何度も何度もあー様のぬいぐるみのおでこを突く。
すごい。ぬいぐるみとはいえ、あー様のおでこを何度も突くなんて常人にできる事ではありません。
『いたっ! いたっ! これ、絶対に小雛先輩じゃないですか! 何やってるんですか、もう!!』
「これ出たら私も買うわ。アイツにイラついたらずっとデコピンしとこ」
すごい。個別のセリフなんてあるんですね。
でも、琴乃さんの反応を見ると、凄くびっくりした顔をしていたので、多分、商品開発部が勝手にオマケでいれた隠し機能だったのかもしれません。
「こーれ、後で商品開発部が大目玉です」
「ベリルの商品開発部が、ベリベリスタッフの悪い影響を受けてる」
何か思うところがあったのでしょうか。
えみりさんと楓さんの2人は手を合わせて拝む。
「じゃあ、次は姐さん。どうぞ!」
「はい」
琴乃さんはサッとくじを引くと、中身を見ずにみんなにくじを見せる。
こういうところがスマートでかっこいいなって思います。
「おっ、姐さんは阿古さんからのプレゼントですね」
「あっ。本当だ。天鳥社長、ありがとうございます!」
えみりさんからプレゼントの箱を受け取った琴乃さんは、中身を取り出してみんなに見せる。
何やらポスターが入ってそうな大きな筒ですね。
「これなんでしょう?」
「天鳥社長、前に出て説明をお願いします!」
「はい」
天鳥社長はステージの上に登ると、筒の蓋を開けてえみりさんと協力して中に入っていたものを広げてみんなに見せる。
【宇宙一のアイドルになる! ベリルエンターテイメント 白銀あくあ】
それを見た私を含めた皆さんが一斉に固まりました。
これはあくあ様の直筆でしょうか?
あくあ様の文章は時として読解が困難なのですが、字そのものはとても綺麗なんですよね。
「えっと、これは琴乃さんはもちろんのこと、まりんさんとかしとりさんとか、らぴすちゃん以外、ほとんどの人は知らないと思うんだけど、まだ事務所に私とあくあ君しか居なかった時に事務所にかけてあったものです。恥ずかしながら、引越しの際に行方不明になっちゃったものが、つい最近、引越しの際に偶然にも私の部屋から見つかったんですよ」
「それって阿古っちが掃除できてないだけじゃん」
小雛ゆかりさんからのツッコミに笑い声が漏れる。
それと同時に隣にいた楓さんから「お前もな!」という更なるツッコミが入った。
そしてさらにそれを聞いていた司会のえみりさんから「今日のお前が言うな! をいただきました」というツッコミが入る。
なんでこの人達はこんなにも流れるようにボケとツッコミの連続が入れられるのでしょうか……。謎です。
「こ、コホン! ともかく、今はBERYLの4人で描いてくれた新しいものを額縁に入れて壁に掛けているので、せっかくだから倉庫に置いておくより誰かにプレゼントしようかなと思ったわけです」
「なるほど、そうやって自分が掃除してなくて無くしたという証拠を隠滅しようとしたわけですね」
ふふっ、ふふふっ。えみりさんのツッコミにみんなが肩を震わせる。
もう、誰ですか? えみりさんに司会を依頼したのは。それもあって中々プレゼント交換会が進行しません。
でも……1人でお家にいるより、全然楽しくていいです。こんなに楽しいのなら、後何時間だって楽しめちゃうなと思いました。
「姐さん、これどうしますか?」
「う、うーん。じゃあ、支店の壁に貼るのとかどうですか? 私の部屋で独占するより、みんなが見えるところに貼ったほうがいい気がします」
琴乃さんの決定にみんなが手を叩いて喜ぶ。
こういう優しくて器が大きいところも琴乃さんが皆さんから慕われる理由なんだと思います。
普通の人なら独占して部屋に飾っちゃうと思うんですよね。
「後、社長はちゃんとお片付けと掃除ができるようになりましょう。引越しの段ボールの中がぐちゃぐちゃでしたよ」
「は、はひ……」
琴乃さんに叱られる天鳥社長を見てまたみんなから笑い声が漏れる。
こういう滅多に見られないシーンが見られるのも、白銀キングダムならではでしょうか。
いつものしっかりしたイメージの天鳥社長からすると、本当に珍しいなと思いました。
「それじゃあ、阿古さん。気合を入れてくじを引いてください!」
「はい」
天鳥社長は琴乃さんと同じようにささっとくじを引くと、中身を見ずにみんなに見せました。
「あっ、メアリー様からのプレゼントですね。おめでとうございます!」
「メアリー様、ありがとうございます!」
メアリー様からのプレゼントなんて、いったい、何が入ってるんでしょうか?
えみりさんから大きな箱を3つも受け取った天鳥社長は、その一個を開封して固まる。
どうしたのでしょうか?
天鳥社長は箱の中におそるおそると手を伸ばすと、その中に入っていたものを取り出してみんなに見せる。
「「「「「ぎゃ〜っ!」」」」」
一斉にみんなから悲鳴に近い声が響き渡る。
それもそのはず、メアリー様からのプレゼントの1つは豪華絢爛な王冠でした。
「えーと、メアリー様、説明お願いできますか?」
「はい。これは我がスターズ王家の戴冠宝珠のうちの1つで、他の箱には笏丈やオーブが入っています! 王家が滅びる前に、私が王城から持ち出してきました!!」
そ、それってなんか色々と大丈夫なのでしょうか……?
黒蝶議員や天鳥社長、カノンさんや琴乃さんが一斉にお腹を抱える。
みなさん、大丈夫ですか? 特にカノンさんと琴乃さんは妊娠してるから気をつけてください。
私は手に持っていたスマホでパシャリと写真を撮ると、念のために総理に、これってここにあって大丈夫なんですか? と、問い合わせのメールを送信する。
「流石はメアリーお婆ちゃん。カノンのお婆ちゃんだけあってファンキーすぎる……」
「あら、ファンキーだなんてありがとう。私、こう見えてブラックメタルとかパンクロックとかが好きなのよね」
一国の女王だった人が反体制的なパンクロックとか、悪魔崇拝的なブラックメタルが好きとか、それって本当に大丈夫なんですか?
もはやボケがあまりにもダークすぎてあの楓さんやえみりさんですら突っ込めません。
「ほ、ほげ〜」
「阿古っち、しっかりして!! あんたがホゲってどうするのよ!! そういうのはいつも楓の役目でしょ!! あんたがそうなるのもわかるけど、まともなあんたが頑張らないと、ここにいるホゲってる連中じゃどうしようもないんだからシャキッとしなさい!!」
小雛ゆかりさんが天鳥社長の両肩を掴んで上下に体を振る。
あっ、これはダメそうですね。
それを見たえみりさんが、カノンさんへと視線を向ける。
「カノン、あとは頼んだぞ」
「ちょっと! えみり先輩ってば、キリッとした顔でこんな重要な問題を私1人に丸投げしないでくださいよ!! 元々、えみり先輩が企画したプレゼント交換会じゃないですか!!」
他の人たちはもう諦めの境地? にでも入ったのでしょうか。
みなさんステージの上に上がって、本物の王冠や笏丈を見てキャッキャと盛り上がっていました。
私も深く考えるのはやめて、あそこに混ざろうかな……。
そんな事を考えていたら、必死の形相をした総理がゴロゴロと回転しながら会場の中に流れ込んでくる。
流石にこれはプレゼントとして危険すぎたのでしょう。
「一旦これは政府預かりにするけど、白銀キングダムのセキュリティが一番安全だから、当面の間はここで預かっててください。それとメアリー様、次からこういうお茶目な事をする時は、せめて私に連絡入れてくださいね」
「えー、それじゃあ、サプライズの意味がないじゃない。けちー」
すごい。あの総理がメアリー様を相手にしたらタジタジになってる。
流石はスターズの元女王にして、あの羽生総理の先生だと思いました。
ともかく、あの宝物の処遇が決まって良かったです。
こうしてプレゼント交換会はさらに盛り上がっていきました。
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