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城まろん、アヤナちゃんとのこと。

読みづらいところはその後に[]で翻訳しています。

 少し休憩した私とあくあ君は、砂浜でビーチバレーをしている子達に混ぜてもらう。


「あくあ君、行くよ!」

「俺に任せろ!」


 あくあ君は私があげたビーチボールを、隙間のスポットに落とすような山なりにアタックする。

 それを相手チームの女の子が綺麗にあげると、今度は逆に強烈なアタックをし返された。


「私が拾う!」


 私が一歩を踏み出した瞬間、砂浜に足を取られてバランスを崩してしまう。

 しまった……。勝負事となると、ついつい熱くなりすぎちゃったかも。

 私は勢いがつきすぎて観客の子にぶつかりそうになる。


「まろんさん。危ない!」


 体勢を崩した私の体をあくあ君が引っ張って抱き止める事でなんとか衝突を回避する。


「ご、ごめん。あくあ君。下敷きにしちゃって」

「いえ、俺は全ての女の子の下敷きになれる男、白銀あくあですから」


 女の子の下敷きになれる男の子ってなに? そんな素敵な言葉、聞いた事ないんだけど……。

 私が上体を起こして周りをみると、周りにいた子達や一緒にビーチバレーをしていた子達が赤くなった顔で私を見ていた。


「流石はeau de Cologneのキャプテン」

「はわわ、やる事が大胆すぎるよぉ……」

「まろんさんすごーーーい」

「これが悪夢の世代の実力ですか」

「私知ってました。まろんさんは悪夢じゃなくて実は淫夢だって」


 どういうことだろう。私は改めて自分の状況を確認する。

 あ……。自分が仰向けになっているあくあ君に跨っている事に気がつく。


「ビ、ビーチボール……」


 ん? あくあ君どうしたの?


「まろんさん、完全に女の子の顔しちゃってるじゃん」

「流石はまろんさんです!」

「まろんさんって、実はアイドルじゃなくてサキュバスだった!?」

「確かに、よく見たらまろんさんの身体って……」

「そういえば一時期掲示板でまろんさん捗る疑惑なんてあったなー」

「あったあった」


 ちょっと待って、私にそんな疑惑出てたの!?

 初耳なんだけど……。

 あと、私ってそういうふうに見えるんだ。

 私は過去に男性から来たお手紙の事を思い出す。


【ふらんちゃんの体のファンです。キャプテンの体が女すぎてきつい】

【まろんとかいう女。いつもシャツとか上着の胸部がパツパツになってて見るのもきつい】

【締め付けの強い上着だと、だらしなくぶくぶく肥えた膨らみが隠せてなくて草】

【まじで見苦しいから外してくれ。ふらんちゃんだけでいいわ】

【24歳の胸デカBBAのアイドルに需要なんてあるわけないだろ】


 あっ……思い出しただけで、少しブルーな気持ちになっちゃいそう。

 ただ、そんな私の中でも好意的なファンレターを送ってくれる男の人もいました。

 そういうひどいお手紙が来た時は、私は彼のくれた手紙をいつも思い出します。


【まろんさん、はじめまして!! 僕はまろんさんとeau de Cologneのファンの1人です。

 とろけるルージュのPVを見て、僕はすぐにペンと紙を手に取りました。

 いろんな女性アイドルの映像を見ましたが、僕はまろんさんほど全てにおいて安定している人を知りません。

 いーっぱい努力したんだって、僕だけじゃなくてちゃんと同じくらい努力してる人にはちゃんと伝わってます。

 今はまだいけないけど、いつか、そういつか僕もまろんさんとeau de Cologneがいるところに行きます。

 自分でも、大それた事を言っているのはわかります。

 それでも、大好きなeau de Cologneと尊敬するまろんさんと会うために僕も頑張ります!!

 まろんさんが好きなファンの1人より】


 最後の名前を書いたと思わしきところのサインが抽象的というか、難解すぎて解読できなかったから誰が送ってくれたのかはわからないけど、私はこの手紙を読んですごく元気が出た。

 男の子でも私の事をちゃんと見てくれてる子がいるんだって。今まで頑張ってきた事は無駄じゃなかったんだってわかって、嬉しくなったのを覚えてる。

 そういえば、あの手紙を書いてくれたファンの子はeau de Cologneのライブに来てくれたのかな?

 男の子はお外に出るのも大変だから、私に会いに来るのも大変だよね。

 あくあ君みたいなのが特別なだけで……。


「まろんさん、本当にすみませんでしたぁ!!」


 あくあ君は何度もぺこぺこと謝る。

 私は身だしなみを整えながら、あくあ君に対して優しく微笑みかけた。


「いいのいいの。そんな事、気にしなくていいから。あくあ君、咄嗟に助けてくれてありがとう」

「いえ。まろんさんに怪我がなくてよかったです。それより日が暮れてきたし、そろそろ飯喰いませんか?」

「うん、いいよ」


 私は一旦ホテルに戻ると服を着替える。

 一応シャワーも浴びたし、臭くないよね?


「あくあ君、待った? ごめんね。遅くなっちゃって」

「全然。むしろ待ってる間に、まろんさんがどんな格好でくるんだろうって想像しただけで、楽しかったですから」


 あくあ君……私の事を考えながら待っててくれたんだ。

 どうしよう。それだけですごく胸の奥がキュンキュンする。

 私はあくあ君の前でくるりと回った。


「ど、どうかな? 想像通りだった?」

「想像以上に決まってるじゃないですか」


 あーーーーーーーーーーーー。無理。

 これで堕ちない女の子いる?

 こんなに褒めてくれる男の子なんて、あくあ君以外じゃBERYLの子達かあの手紙の男の子くらいしかいないよ!?


「さぁ、行きましょう」

「う、うん」


 私はあくあ君が差し出した手のひらの上に自分の手のひらを重ねる。

 男の子からエスコートされるのってこんな感じなんだ……。

 私はあくあ君と一緒に、ホテルの近くにあるお店に入る。


「まろんさん、どれ食べてみたい?」

「ニンジンシリシリと、ジーマーミ豆腐かな。あっ、それとラフテー!」

「俺はグルクンの唐揚げとか島ラッキョウの天ぷらが気になるなあ。あと、沖縄そば!」


 ふふっ、あくあ君って結構、麺類好きだよね。

 私とあくあ君は注文した料理を取り替えっこしながら舌鼓を打つ。

 本場で食べてるからっていうのもあるかもしれないけど、沖縄の料理ってすごく特徴的なのに、どれもすごく美味しいよね。


「そういえば、アヤナの事なんですけど……」

「うん」


 食事の最中、あくあ君の口からアヤナちゃんの話題が切り出される。


「また変な奴に絡まれたりとかしてないですか?」

「うーん……。私が見る限り大丈夫だと思う」


 あくあ君が言ってるのって、前に襲われそうになった事件の事だよね。

 そっか、あくあ君はずっと、ちゃんとアヤナちゃんの事を気にかけてくれてるんだ。

 自分の事じゃないけどすごく嬉しくなる。

 私はここでeau de Cologneのキャプテンとして、ううん、アヤナちゃんの仲間として、少しだけあくあ君に踏み込んだ質問をしてみた。


「ねぇ。あくあ君はアヤナちゃんの事をどう思ってるの?」

「大切な友人でライバルの1人だと思ってます」


 そっか、アヤナちゃん、よかったね。

 ちゃんとあくあ君もアヤナちゃんの事をライバルだって思ってくれてるみたいだよ。

 ただ、アヤナちゃんがあくあ君に対して素直になりきれないのも、それが理由なんだよね……。

 もう、それはそれ、これはこれで分けて素直になれば良いのに……。でも、アヤナちゃんのそういう不器用なところがあくあ君も好きなのかなと思ったら、それはそれで嬉しくなった。

 私は可愛い後輩のために、ここでさらに踏み込む。


「じゃあ、女の子としてはどう思ってるの?」

「もちろんすごく魅力的だと思ってますよ」


 真剣な顔をする私に対して、あくあ君もまたキリッとしたふざけた顔じゃなくて真剣な表情で応えてくれる。

 だから私も嫌われても良い覚悟でさらに踏み込んだ。


「もし……もし、良い加減な気持ちでアヤナちゃんの事を泣かせたら、私、あくあ君でも許さないからね」

「はい、わかりました。俺もちゃんと本気ですから」


 あくあ君の気持ちを確認した私は、固くなった表情をふっと崩す。

 それを見たあくあ君もまた真剣な表情を崩すと、いつもアヤナちゃんを見ている時のような優しげな笑みを浮かべる。


「まろんさんみたいな人がアヤナの先輩で本当に良かったです。やっぱり、俺の目に狂いはなかったんだなと思いました」

「え? え? どういう事?」


 私は頭の上にたくさんの疑問符を浮かべる。


「はは、実は俺、昔、まろんさんにファンレターを送った事があるんですよ。ファンレターっていうか、あれは挑戦状みたいなもんなんですけど……」

「ファンレター?」


 あくあ君が私にファンレター? 男の子から来たファンレターなんて……。

 って、あの大事にしてあるファンレターってもしかしてあくあ君が送ってくれたのなの!?

 え? ちょっと待って……。それじゃあ、同じところに行くってライブハウスに行くとかじゃなくて、同じステージに立つって事を行ってたの!?

 な、なるほど。あくあ君の文章に黛君の通訳が必要な理由がよくわかりました。

 って、それどころじゃないでしょ私!!

 ま、待って。じゃ、じゃあ、あのファンレターの男の子とあくあ君は一緒って事だよね?

 えー!? どうしよ……。私、体が熱ってきちゃったんだけど……。

 私は近くにあったコップを手に取ると、頭と体を冷ますために水をグビグビと一気飲みする。


「まろんさん!?」


 はれぇ? にゃんか、からだのおくがあちゅい……。

 ちょっとだけまえのボタンはずしちゃお。

[あれえ? なんか……体の奥が熱い気がする]

[ちょっとだけ前のボタン外しちゃおうかな]


「おっ……」


 ん〜? あくあくん、どうしたの〜?

 もしかして、おねえさんのことがきになるのかにゃー?

 ずーっとわたしのむねばっかみてたの、ぜーーーんぶしってるんだよ?

[ん? あくあ君、顔を真っ赤にしてどうしたの?]

[もしかして、私の事が気になるのかな?]

[ずっと私の胸をチラチラみてたの、私、ぜんぶ知ってるんだよ?]


「さわる?」

「い、いい……んですか? じゃないだろ俺! しっかりしろ!!」


 あー、とまどってる。とまどってる。

 あくあくんはほんとうにすなおでかわいいにゃあ。

 わたしはゆっくりとあくあくんにちかづいていく。

[ふふっ、戸惑ってる。戸惑ってる]

[あくあ君は本当に反応が素直で可愛いなあ]

[私はゆっくりとあくあ君に近づいていく]


「ふたりでさっきのつづき、すりゅ?」

「ちょ、まろんさん?」


 とまどうあくあくんがかわいくて、おねーさん、ちょっとだけいたずらしたくなっちゃったな。

 そんにゃことをかんがえていたら、だれかがわたしとあくあくんだけのこしつにはいってくる。

[戸惑うあくあ君が可愛くて、お姉さん、ちょっとだけイタズラしたくなってきちゃった]

[そんな事を考えていたら、誰かが私とあくあ君だけの個室の中に入ってくる]


「すみません。さっき水と泡盛を間違えて……って、失礼しましたー。どうぞごゆっくり子作りAVの撮影頑張ってください!!」

「ちょ、店員さん待って。勘違いだから! それと、会計お願いします!!」


 えー、せっかくきたにょにもうかえるのー?

 わたしは、あくあくんにおひめしゃまだっこされてとまってたホテルにむかう。

[えー? せっかく来たのにもう帰るの……?]

[私は、あくあ君にお姫様抱っこされて泊まっていたホテルに連れて行ってもらった]


「ほら、まろんさん、到着しましたよ!」

「えへへ。おふとんふかふか〜!」


 わたしはおふとんのうえであしをジタバタさせる。

[私はお布団の上で足をジタバタさせる]


「え、えっと、それじゃあ、俺はここで……」

「にゃんでにげるのー?」


 わたしはあくあくんにうしろからだきつくと、かじばのばかぢからであくあくんをベッドにおしたおす。

[私はあくあ君に後ろから抱きつくと、火事場の馬鹿力であくあ君をベッドに押し倒した]


「えへへ、やっぱりかえにゃんといりにゃんがいってたとーり! ぱわーはすべてをかいけつしてくれるんだにゃ」

「おっふ……」


 ほら、あくあくんはまろにゃんのだきまくらでしょ?

 わたしはあくあくんにだきつくと、だきまくらにすりゅ。

 あくあくんのむにゃいた、かたくてしゅごくドキドキしゅる。

 えへへ、このあせをかいたあとのおすくしゃいにおい、まろにゃんはだいしゅき!

[ほら、あくあ君はまろんの抱き枕でしょ?]

[私はあくあ君に抱きつくと、抱きまくるにする]

[あくあ君の胸板、固くてすごくドキドキする]

[えへへ、この汗をかいた後の男の子のオス臭い匂い、私は大好きだよ]


「おい、嘘だろ……」


 わたしはあくあくんにしがみついたまま、ねむりにつく。

 だって、ねむたかったんだもん……。

[私はあくあ君にしがみついて眠りにつく]

[だって、眠たかったんだもん]


「んん……」


 あれ? 私は目が覚めてすぐに異変に気がつく。

 なんか、このベッド固くない?

 私は自分が下に敷いたものを見て固まる。


「あくあ君、本当にごめんなさい!!」


 全てを理解した私はあくあ君の前で土下座をする。


「いやいや。お店の人が水と間違えて泡盛を出しちゃったせいだし、別に良いですって」

「あ、あの、じゃあ、せめてお会計だけでも」

「それもお店の人が間違えて提供しちゃったって事でサービスしてくれましたから。ね」


 うううううう!

 だからお酒はもう絶対に飲まないって決めてたのに!!

 これじゃあ、アヤナちゃんに申し訳ないよ!!


「あくあ君、本当にごめんね……」

「だから俺は別に良いですって。ただ……」

「ただ……?」


 あくあ君は手に持ったスマホを私に差し出す。

 何かのニュース記事? えーっと、なになに?

 私はニュース記事のタイトルに目を走らせる。


【超速報! あくあ様、夜の沖縄で人気女性トップアイドルをお持ち帰り!!】

【食事処の個室から出てきてホテルに入る2人を激写】

【同じアイドルチームのメンバーK.Fさんのコメント「先輩やるぅ!」】

【アナウンサーのM.Kさんのコメント「まろんはやる女だってわかってました」】

【人気VtuberのS.Iさんのコメント「私もみんなみたいにリアルで乙女ゲーがしたい!!」】

【トップアイドルのK.Iさんのコメント「くっ! まろんさん、負けましたわ!! お幸せに!」】

【大女優K.Yさんのコメント「2人とも何やってんのよ。ばーか」】

【同じアイドルチームのメンバーT.Aさん「まろん先輩、あくあ、どうぞお幸せに」】

【白銀カノンさん「現在、詳細を確認中のため、騒がずに見守って貰えば」】

【BERYLの公式HPやファンクラブ会報、SNSでは2人の事について言及なし】


 うわあああああああああ!

 私はすぐにアヤナちゃん達に電話をかけて事情を説明する。

 ただ2人で一緒に添い寝してただけだから、何もしてないもん!!

 私はあくあ君を見送ると、ベッドに突っ伏した。

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https://x.com/yuuritohoney

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