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白銀あくあ、夢の先。

すみません。投稿遅れました。

「あ……これ、またギリ海じゃない?」

「本当だ……」

「いや、よく見ろ! 島だ! 島がある!!」

「確かここは、種子島だな」


 うーん、この場合、どうなるんだろう?

 普通に鹿児島に行くのか、それとも種子島に行くのか。

 俺はスタッフさんに目で合図を送る。


「せっかくですし種子島に行きましょうか。ただし! そのためには鹿児島空港で一つのミッションを遂行してもらいます」


 俺は隣に居たとあと顔を見合わせると、お互いになんとも言えない顔をする。

 ベリルアンドベリルのスタッフの事だ。何をしてくるか予測がつかない。

 変な企画じゃないといいけど……。


「それではサイコロを振ってください」


 お土産代やラーメン代などを引いて残った残金は9480円か。

 福岡空港に移動した俺達は空港に居た利用客の皆さんに囲まれながら巨大なサイコロを振る。

 頼むぞ! 5万なんて大台じゃなくていい。手堅く1万を刻んでいく。そしてあわよくば3万こい!!


「やった! 1万だ!」

「あくあ君、おめ!!」

「みんなもがんばれー」


 よしよしよし! これでいいんですよ!!

 しかしこれに続いたとあが3000円、慎太郎と天我先輩が1000円と金額が伸ばせずに3人とも悲しい顔をする。


「3人とも落ち込むなって! 24480円なら前回とほぼ一緒だし、昨日みたいに節約したらどうにかなるっしょ!」


 そもそもベリルアンドベリルのスタッフの事だ。

 どうせ小さい金額になるように重心をずらしてる可能性だってある。

 俺は3人を励して元気にさせると、空港で福岡空港に居たファンの子達と最後の挨拶をした。


「みんな、またな! ありがとう!!」

「ありがとう福岡! お世話になりました」

「1日しか居られなかったけど、楽しかったよー」

「さようならとは言わない。またいつか会う日まで!!」


 俺達は手を振ってその場を後にすると、飛行機に乗って鹿児島空港を目指す。


「おー! あれが桜島か!」

「すごい!」


 俺は飛行機の中から桜島の写真を撮る。

 くっそ〜。せっかくならもっとこう、ゆっくりと九州をぐるりと回りたかった。


「それではこれが鹿児島でのミッションになります!」


 鹿児島空港に到着した俺達はスタッフの人からフリップボードを受け取る。

 これ捲らなきゃダメ? って顔をしたけど、早くしてくださいとカンペで言われた。

 仕方ないなー。じゃあ、めくっちゃうよ? 俺はスタッフさん達を焦らしつつボードに貼られたシールをペロリと捲る。


【鹿児島県にはベリルに所属するとある男の子の名前と同じ読み方の観光名所があります。さて、それはどこでしょう? 実際にその場所に行って、その人に写真を送ってあげてね】


 俺は天我先輩を見る。


「天我先輩、どこかわかります?」

「いや、全く見当もつかない」

「僕も……」

「同じく。僕も全くわからないな」


 うーん、みんな知らないか。

 いや、知ってたとしてもパッと思い浮かんだりとかしないよな。


「検索されるとダメなので、ここで一旦スマートフォンを没収します」

「「「「えーっ!?」」」」


 俺達は渋々、スタッフさんにスマートフォンを預ける。


「よしっ! こういう時は聞き込みだ!」

「そうしよう」


 さて、誰に話しかけようかな。

 観光客や仕事で来てる人よりも、誰かの見送りに来ている地元の人とか、旅行とか仕事から帰ってきた地元の人とかに聞いた方が良さそうだけど……。


「これって空港で勤務してる人に聞くのってダメ?」

「あー、その手があったか……一応なしではないです」


 じゃあ、それが一番早いよな。

 俺は空港のインフォメーションに行く。


「すみません。ちょっといいですか?」

「あっ、はい。……って、あああああくあ様!?」


 俺はお姉さんにフリップボードを見せて、心当たりがないか聞く。


「あっ、白銀公園の事ですか!?」

「えっ? そんな名前の公園あるの!? マジで!?」

「はい! あくあ様が世に出て以来、大変盛況で、今も多くの人達が訪れていますよ!!」


 これ確定じゃね?

 俺はみんなの方に顔を向ける。


「あくあ、フリップよく見なよ」

「名前だから苗字じゃないんじゃないか?」


 あっ、本当だ!!

 もう少しで騙されるところだったぜ!!

 さすがはベリルアンドベリルのスタッフ、やる事が汚い!!

 俺がスタッフさんに視線を向けると、口笛を吹きながらよそ見をした。


「うーん、名前の方かー」


 あくあ、慎太郎、とあ、アキラ。

 観光案内所のお姉さん達もみんなで一斉に地図を広げて探してくれたが、それっぽい観光名所は見当たらなかった。


「あくあ、これよく見たらBERYLじゃなくてベリルじゃん。もしかしたら孔雀君か丸男君の方じゃないの?」

「そっちか!」


 俺達は再びベリルアンドベリルのスタッフさん達に視線を向ける。

 くっ、また素知らぬ振りをして、これだからベリルアンドベリルのスタッフは!!


「あ、それって丸尾滝じゃない?」

「丸男?」

「丸男じゃなくて丸尾です。男じゃなくて尾っぽです」


 へぇー、そんな所があるのか。


「あっ、それならバスがもう来ますよ!」

「私、案内します!!」

「急いでください。こっちです!」


 俺達はお姉さんの誘導に従ってバス乗り場に急ぐ。

 しかし、残念ながらバスは出発した後だった。


「次のバスが来るまで2時間だって……」

「またヒッチハイクする?」


 うーん、ヒッチハイクしたとして帰りが不安になるな。

 帰りのヒッチハイクが捕まらない可能性だってあるし、バスにまた乗り遅れる事だってある。

 そんな事を考えている俺にとある看板が目に入った。


「レンタカー、借りよう」

「ええっ? レンタカーって結構お金いるんじゃない?」


 背に腹は代えられない。俺は帰りのリスクの事を考えてみんなに説明する。


「確かに帰りの事を考えたらそうした方がいいかも」

「だろ? じゃあ、天我先輩、運転お願いできますか?」

「うむ。任せてくれ!!」


 俺達はレンタカー屋さんに行って一番小さい車を借りる。

 190cmの天我先輩も天井スレスレだが、俺と慎太郎も180あるから車内がすごく狭く感じた。


「こ、こっちか?」

「いやいや、先輩、そこ左っす!!」


 観光案内所でもらった地図を駆使しつつ、俺達は目的地に向かう。

 もちろん一番安い奴を借りたからナビなんてついてないし、没収されたスマートフォンはまだ帰ってきてない。


「つ、ついたぞ!」

「やったー!!」

「先輩、運転お疲れ様です」

「あっ、あそこが駐車場だって」


 俺達は車を止めると、スタッフの人達からスマートフォンを返してもらう。


「あくあ様!?」

「とあちゃんや慎太郎君もいる!」

「天我先輩!!」


 おっ、やっぱり観光名所だけあって観光客の人たちがたくさんいるな。

 俺達は笑顔で手を振ると、丸尾滝を目指して歩く。


「「「「おおー」」」」


 すごく綺麗な乳青色の滝だ。

 確か、温泉が混じってるからこういう色なんだっけ。

 想像してたよりすごく綺麗だよ。


「よし、写真撮ろうぜ」

「うん!」

「ああ!」

「うむ!」


 俺達は観光客のお姉さんに声をかけて、丸尾滝をバックに写真を撮ってもらう。


「わっ!」

「きゃー!」

「すごいすごい!」


 ん? 写真を撮っていたらそれを見ていた観光客の人達がすごく盛り上がる。

 どうしたどうした!? 何やら俺達の後ろを見て騒いでいるようだ。


「あくあ様! 写真撮れました!」

「あくあ様、後ろ、後ろ!」


 後ろがどうしたんだろう?

 俺達は後ろをに振り返る。


「わっ! 虹だ!!」

「うおおおおおおおお!」

「これはすごいな。普通に感動した」

「すげぇ! ミラクルじゃん!!」


 俺達はお姉さんに撮ってもらった写真を確認する。

 横並びになった俺達4人の後ろに丸尾滝が流れてて、その間に綺麗な虹がかかっていた。

 これ、もうCMか何かにそのまま使えるんじゃね?

 俺は撮った写真をみんなに送ると、ミッションにもなっている丸男に、今度はみんなで行こうなという文章を添えて送信する。


「それではミッション達成です。どうしますか?」


 うーん。そうだな。

 俺はとあ、慎太郎、天我先輩の顔をぐるりと見渡す。


「せっかくだから温泉に入って帰らないか?」

「えっ? 時間とかお金とかいいの?」


 俺はとあの言葉にこくんと頷く。


「ああ、せっかくの旅企画。ミッションはともかくとして、もう時間とお金を気にするのはやめよう。せっかくだからみんなで旅を楽しもう!!」


 名古屋の始球式には行かなきゃ行けないけど、それはどうにかなるでしょ。

 なーに、俺なら沖縄からだって泳いでも行けるだろ!! えっ? 流石にそれは無理?

 大丈夫、楓もスターズのロンドンにある空港で出国停止になった時、ドーバー海峡を単独で泳いで横断してたしどうにかなる。

 流石に渡りきった場所もスターズの領地だったから捕まっちゃったけど、楓が泳ぐ姿を見た現地の漁師さんからまるでトビウオのようだって言われてたっけ。


「あくあの意見に賛成!!」

「ああ! せっかくだから楽しもう!!」

「うむ!! 我も同じ意見だ」


 俺達は近くの温泉に足を運ぶ。

 温泉のスタッフさんが、男性用の温泉が利用されるのは生まれて初めてですと言って涙を流していた。

 これはだめだな。俺は温泉がとても好きだ。

 だから芸能人温泉部部長として、男性の温泉利用を向上させていきたい。


「よし、せっかくだからここも撮影しよう」

「ええっ!? 嘘でしょ!!」


 俺はスタッフさんに水着がないかと聞く。


「ありまぁす!!」


 さすがはベリルアンドベリルのスタッフだ。

 こういう事態も想定して、全員分の水着を用意していたらしい。

 とあは生足を出したラッシュガード姿、慎太郎は普通の海パン姿、天我先輩は競泳用のブーメランパンツを着用する。


「って、あくあ、水着は!?」

「水着? 俺はみられて恥ずかしいところなんて何もないぜ」


 タオルを腰に巻いて出てきた俺を見たカメラさんが鼻血を出しながらカメラを回し続ける。

 なるほど、これが各局から集められた精鋭達で結成されたベリルアンドベリルのスタッフか。

 俺もそれに応えるべくしてカメラの前でポーズを取る。


「ちょっとちょっと! あくあってば、タオルが捲れちゃうって!!」


 とあが必死に俺のタオルを押さえる。

 大丈夫だ、とあ。こういうのって意外と鉄壁だからな。


「あくあ様、いいよいいよ!」

「もっとこう、両手を広げて」

「あー! いいですねー!!」


 前世で女優さんやアイドルがお風呂に入ってるシーンを見て俺達が喜んでたように、この世界の女性達はこういうシーンで喜んでくれるといいな。

 っと、撮影はこんなもんでいいかな。

 途中からはスタッフさんにも出て行ってもらって、4人で温泉を楽しむ。


「ふぅ、最高だったな」

「ね。なんかゆっくりできて良かった」

「ああ、広いっていいな」

「うむ。心がシャキッとした感じがする!!」


 俺達は再び天我先輩に運転をお願いすると、鹿児島空港に戻る。

 観光案内所のお姉さん達にお礼を言うと、俺達は飛行機に乗って種子島に向かう。


「もう鹿児島のミッションはクリアしてるので、ここでミッションをクリアする必要はありません。しかし、皆さんに種子島を楽しんでもらうために番組から素敵なツアーをご用意しました」


 なんだなんだ!?

 俺達4人はスタッフさんからの提案に身構える。


「それじゃあ、めくるぞ!!」


 4人を代表してフリップを受け取った天我先輩は、勢いよくフリップに貼られていたシールを剥がす。


「「「「最新のスペースシャトル見学!?」」」」


 俺達4人は顔を見合わせて、一瞬だけ固まる。

 えっ? 待って、それって結構すごくない?


「今回はエーロイ・マスクさんのSpace Experience X社のご協力で、最新のスペースシャトルを見学させて貰える事になりました。はい、拍手!!」

「「「「お、おぉ〜!」」」」


 俺達は4人でパチパチと手を叩く。

 確か最近SNSを買収した人だよな。


「それではどうぞ!!」


 俺達は番組スタッフの用意してくれた車に乗ってスペースシャトルを置いてある場所に向かう。

 すげぇ! 俺はもちろんの事、天我先輩や慎太郎も楽しそうに周りをキョロキョロする。


「これが最新の2機です」

「2つもあるの!?」

「はい」


 俺はその中の1つを見学させてもらう。


『ようこそ私の中へ』

「「「「わっ!?」」」」


 俺達は驚きで声を上げる。

 どこから聞こえてきた!?


『私はこのスペースシャトルに搭載された最新型のAI、3510theENDです』


 なんかどっかのアイドルグループにいそうな名前だな……。

 俺やとあ、慎太郎は最新型のAIから説明を受けるが、難しくてよくわからなかった。

 だって専門用語が多いんだもん。

 その一方で頭のいい天我先輩は話を理解しているのか、難しそうな質問をAIに投げかけたりしていた。


『そしてこちらが船外で活動するために設計された、新しいスーツです!!』

「えっ? 嘘でしょ?」

「これは驚いた……」

「うおおおおお!?」

「マジかよ……」


 俺達は船内の壁に接続されたヘブンズソードやライトニングホッパー、ポイズンチャリス、バタフライファムやバイコーンビートルを見て固まる。


『例のパワードスーツを開発した町工場と協力して新たに作られた最新鋭のパワードスーツです。従来の宇宙服と比べてハードな船外活動にも耐えられるように設計されており、生命維持装置により本船から遭難した後も76時間活動できるように設計されています』


 すげぇ。ヘブンズソードもついにここまできたか。

 自分達の演じたヘブンズソードが多くの人を熱狂させ、ここまできたのかと思うと嬉しくなった。


「一度でいいからこいつを着て宇宙でライブをしてみたいな」

「面白そう!」

「最近、宇宙旅行のニュースもやってたし、それができる時代が来るかもな」

「ああ、そうだな」


 俺達は誇らしい顔をしながらヘブンズソード達を見つめる。

 あの日、夏フェスで描いた宇宙一のアイドルって夢が本当に叶う時代が来るかもしれない。

 俺達はしばらくその場に踏みとどまって、それぞれのスーツを見つめた。

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https://x.com/yuuritohoney

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― 新着の感想 ―
[一言] 後はもうリアルチジョー用意するだけ…… ってそこらじゅうにおるやないけ(゜д゜)
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