白銀あくあ、コーディネート対決。
すみません投稿日時間違えてました。
ある日、俺達BERYLは馴染みの藤百貨店新宿店に呼び出された。
「はい、というわけで、今から皆さんには、抽選で選ばれた幸運な4人の女性達を上から下まで全身コーディネートして貰おうと思います!!」
「「「「コーディネート?」」」」
この唐突な感じと事前説明のなさ。どうやら、また、ベリルアンドベリルの収録らしい。
なんでも視聴者の中から抽選で選ばれたファンの子達を、俺達一人一人がコーディネートをする企画だそうだ。
「4人の女性達は、みんな自分のファッションに自信がありません! だから、BERYLのみんながかっこよく彼女達を生まれ変わらせてくださいね。それと、2つほどルールがありまして、まず、BERYLの皆さんには、コーディネートした女性と最後にデートをしてもらいます」
ふーん、なるほどね。
つまり自分がコーディネートをした女の子と最後にデートをするって事か?
で、2つ目はなんだろう?
「ただし、コーディネートをする女性とデートをする女性は別です。例えば、あくあ君がデートをする女性は、とあちゃん、黛君、天我君の誰かがコーディネートする事になるのと、2組に分かれての交換は禁止なのでうまく4人でばらけさせてくださいね」
なるほどな。
つまりはとあと俺、天我先輩と慎太郎でお互いに交換し合うのはダメという事か。
さて、どうしようかなと考えていたら、真っ先にとあが手を挙げる。
「はいはい、僕があくあとデートする子の担当やる!」
とあが俺の担当か、となると俺が選ぶのは天我先輩か慎太郎になるのかな?
どっちにしようか。わかりやすいのは天我先輩だけど、ここは親友のために俺が一肌脱いじゃいますか。
「それじゃあ、慎太郎のデート相手は俺が担当するわ」
おいおい、慎太郎。そんな不安な目で見つめてどうした?
あっ、もしかして知らない女性とデートって聞いて緊張してるんだな〜。
なーに、それなら心配するな。一緒に大人の本を買いに行った俺に任せろ!!
俺がちゃんと慎太郎好みの女の子になるように全身コーディネートさせて見せるぜ!!
「じゃあ、僕が天我先輩担当かな?」
「ああ。そうだな。つまり我がとあの担当か。いいぞ。我に任せろ!」
最初の2人が決まったら残りはあっさり決まったな。
「はい。それでは担当が決まったので、今回、幸運にもデート相手に選ばれた4人のファンの子達どうぞ〜」
スタッフのお姉さんの指示で4人の女性が1階の化粧品フロアに入ってくる。
どうやら4人とも俺達より年上のようだ。20代くらいの女子大生とかOLさんっぽい感じがする。
「あくあ君のデート相手に選ばれた霧島心さん。とあちゃんのデート相手に選ばれた河合空さん、天我君のデート相手に選ばれた真野えるさん。そして、黛君のデート相手に選ばれた漆原未亜さんの、超・超! 幸運な4人の女性達です!!」
「「「「おーっ!」」」」
俺達4人は選ばれた4人のファンを拍手で出迎える。
慎太郎のデート相手に選ばれた漆原さんはと……よっしゃ! 慎太郎好みの貧乳だ!! これならいけるぞ!!
俺は約束された大勝利を確信した!!
「漆原さん、白銀あくあです。よろしくお願いします」
「えっ? あ……あくあ様、担当なんですか!?」
漆原さんが戸惑った素振りを見せる。
大丈夫ですよ。この、白銀あくあがちゃんとどうにかしてますから!
慎太郎の心を惑わせるような恋の難破船、いや、慎太郎が恋に堕ちる愛の沈没船に乗った気持ちでいてください!!
「それでは、スタートです!! 皆さん、頑張ってくださいねー!」
どうやら時間制限はないらしい。
ていうか、こういうのって普通は営業時間外にやるんじゃないのか?
周りを見たら、お客さん達が普通にこっちを見て見学してる。
こういう緩さがいかにもベリルアンドベリルって感じだ。
俺は漆原さんとすぐにエスカレーターに乗って上に向かう。
その時にエスカレーターに乗りづらそうにしているお婆ちゃんを見つけた。
「あっ、おばあちゃん、足元大丈夫」
「ありがたや。ありがたや」
お年寄りには意外と危険だから、さりげなく次からはエレベーターに乗りましょうと言った。
おばあちゃんを見送った後、俺は漆原さんを連れて目的となる最初のショップに向かう。
「まずは服ですね。全体的に慎太郎が好きそうなお淑やかな感じでいきましょう。漆原さんは今の時点でもお淑やかなコーデなんですが、もうちょっと特別感を出した服に変えましょうか」
俺は野暮ったくならないようにと心がけて服を選ぶ。
まずは上か……。シフォンのブラウスなんかがいいじゃないかな。色味も白がいいだろう。
白は汗で汚れやすいのが難点だが、夏に白トップスはやはり外せない。もちろん下着が透けないような素材を選ぶ。俺としては透けてる方がありがたいが、TPO的な問題でだ。
その分、袖口はちょっと広めで通気性を確保してと……おっ、これなんかいいんじゃないか?
下はこれから暑くなるからリネンの涼しげなフレアスカートがいいかな。
色は少しピンクがかったベージュのにしようか。色が濃いと暑く見えるしな。
「いいですね。漆原さん、どうですか?」
「すごくいいです! なんかちょっと避暑地に行くお嬢様になった気分です!」
俺はコーデを見て納得する。ここからは小物だな。
一旦その場を離れた俺は、さっきのコーデに合いそうなものを探しに行く。
「うーん……」
色々と考えたがここは控えめなイヤリングくらいでいいかなと思った。
慎太郎はあまりアクセサリーをつけてる女性は好きじゃなさそうだしな。
これに夏を意識したカゴのバックと、ぺたんこのミュールでいいだろう。
ミュールのデザインで控えめに可愛さを演出するのがコツだ。
「それじゃあ、サロンの方に行きましょう」
「はい」
スパやエステ、ネイルのお手入れなどをしてもらった後にヘアサロンに向かう。
俺と漆原さんはプロの美容師の方と相談して、選んだ服に似合うヘアアレンジをお願いした。
それが終わると、俺は顔見知りの販売員がいる化粧品フロアへと戻ってくる。
「あんまりくどくない夏用の、それもサボンの香りみたいな自然な感じの香水をお願いします!」
「わかりました」
香水を選んだ後は、最後の仕上げに化粧品だ。
俺は慎太郎が好きなナチュラルな感じでお願いする。
「というわけで、全員、無事にコーディネートを終えたようですね」
最後に集合場所となったイベントフロアに向かうと、ちゃんとした観客席が準備されていてたくさんの人が待っていた。
俺は後から来たとあ、慎太郎、天我先輩と顔を見合わせる。
どうやら3人とも自信満々なようだな。
「それじゃあ、最初に誰が行きますか?」
「たまには俺からでしょ」
なんかいつもトリをやっているような気がしたので、たまには自分から行く事にした。
スタッフさんの誘導で慎太郎がステージの真ん中に出る。
「それではあくあ君プロデュースの漆原未亜さん、どうぞ!!」
「「「「「お〜!」」」」」
漆原さんが観客席の拍手に包まれながら登場する。
我ながらいい感じだ。最終的にヘアスタイルも重たくて野暮ったかった髪をふんわりエアリーな感じに仕上げてもらって接しやすさも演出した。
「慎太郎、どう?」
「あ、うん。最初の頃とイメージが変わってちょっとびっくりした。すごくいいと思う」
慎太郎、俺はわかってるぞ。ちゃんとお前も感じ取っているんだろう?
この清楚な服の下に隠れる紐の波動を!! 実は服とは別にそっちもちゃんと仕込んでる。
大丈夫。俺だけはちゃんとわかってるからな!!
「黛君、もちろん、この後に漆原未亜さんと食事デートしていただけますよね?」
「はい、もちろんです」
しゃぁっ! 俺は両手でガッツポーズを決める!!
「それではあくあ君、せっかくだからこの後の2人のお食事デートの行き先を決めてもらえますか?」
「はい」
えーと、確かこれも藤百貨店内から選ばなきゃいけないんだっけか。
うーん、どこにしようかな。俺はフロアガイドを見て考える。
「すき焼き……かな。慎太郎も漆原さんも奥手だから、こういう箸を突いて親睦を深める料理の方がデートに良いと思うんですよ。ちなみに俺も距離を詰めたい女の子と食事に行く時はすき焼きとかに行ったりします! 焼肉は匂いもあるのでケースによるかな」
「おー。だから前にアヤナちゃんともすき焼きに行ったんですか?」
俺はズッコケそうになる。そ、その話は今はいいでしょ!
アヤナは結構ベリルアンドベリルのゲストで来るんだし、スタジオで見てる本人に俺のテクだってバレたらどうするんですか!? 俺はあえて何も答えずにスタッフの言葉をスルーする。
「はい、それでは答えてくれなかったので、次は天我君、前にどうぞ」
「うむ!」
天我先輩のデート相手は慎太郎がコーディネートした真野えるさんだっけ?
「それでは、真野えるさん、前にどうぞ!!」
うおおおおおおおおお! すごいロックな感じになってる!!
アシンメトリーのショートカットも似合ってるし、身長の高さを生かしたロックのファッションもすごく良い!
身長の高い天我先輩の隣に立っても見劣りがしないというか、バランスが取れてるんじゃないか?
春香さんとは全然タイプが違うってのも、個人的にはいいと思った。
「天我先輩、僕のコーディネートはどうですか?」
「うむ! すごくいいと思うぞ!! この後のデートが楽しみになってきた」
慎太郎は俺と同じようにフロアガイドを見て頭を悩ませる。
さっきと同じで、今度は慎太郎が天我先輩と真野さんのデート先を選ぶようだ。
「さっき真野さんが緊張でご飯食べられないかもって言ってたのと、天我先輩がここに来る前にガッツリ食べてきたって言ってたから、軽食メニューもあるテイスティングカウンターとかの方が、たくさんお話しできるのかなと思いました。大人な雰囲気の2人にもピッタリじゃないですか?」
「「「「「おー!」」」」」
俺は慎太郎のチョイスに涙を流しながら拍手を送る。
慎太郎、俺は嬉しいよ。お前はできるやつだって俺は最初から知ってるからな!
「次はとあちゃんの番ですね。それでは河合空さんお願いします!」
おっ、すごい! さすがは最新のトレンドを抑えた天我先輩だ!
俺、いつの日か、ブティックアキラかファッショニスタTENGAを開くんだって言ってただけの事はある。
「かわい〜! えっ? 天我先輩めっちゃセンスいいじゃん! ごめん、僕、天我先輩が夏でも革ジャン着て熱中症になりかけてたのを知ってるから、これは想像できなかったかも」
「「「「「センスいい!」」」」」
とあ、それは言ってやるな。あん時は俺と慎太郎もバカ焦った。
病院の先生になんで夏にこんなの着てたんですか!? って、なぜか俺たちまでめっちゃ怒られたな。
「とあちゃん、もちろんデートしてくれますよね?」
「うんうん、するする。いっぱいお話ししようね!」
天我先輩はフロアガイドを見てデート先を選ぶ。
「2人はデザートが出るカフェダイニングがいいんじゃないか?」
「さっすが〜、天我先輩わかってるー!」
とあはデザート好きだもんな。
河合さんも一緒にデザートが食べたいって応募用紙に書いてあったし、天我先輩はちゃんとそこまで見てたって事だ。
「それでは最後に、あくあ君、前にどうぞ!」
俺はステージの中央に立つ。あれ? どっちにしろまた俺がトリになってない?
まぁ、別にいっか。
「準備の方はよろしいですね? 霧島心さん、どうぞー!!」
「「「「「おー!!」」」」」
おっふ、大人のお姉さんが着るような胸の膨らみを強調したワンピースに俺は膝をつきそうになる。
「あくあって大人とお姉さんに弱いよね。それと胸のアピールだけは絶対に外しちゃダメ。小さいの好きとか言ってるけど、結局あくあは大きいのが一番好きなんだから!!」
「「「「「だよねー!」」」」」
とあだけじゃなくて観客席にいるみんなにまで俺の全てが把握されてる……だと!?
助けを求めようと慎太郎と天我先輩の方を向いたら、2人もとあの言葉に強く頷いていた。
「あくあ君、どうですか?」
「とっても素敵です。よかったらこの後、個室のあるお店で食事をしましょう!! もちろんカメラ抜きで!!」
観客席から笑い声が起きる。
まぁ、流石に最後の一言は冗談なんだけどね。
「うーん、じゃあ、京懐石のお店にする? そこなら絶対に個室あるでしょ」
「ああ、そうだな。霧島さんはどう? そこでも大丈夫?」
「あ、はい。ご一緒に食事できるならどこでも……」
くっそー、俺はこういう大人のお姉さんに弱いんだよ。
俺達は飲食店のあるフロアに移動すると、そこで解散してそれぞれが選んでもらったお店に入る。
「霧島さん、今日すごく疲れたでしょ。他人に見られるってすごく体力使うし、大丈夫? きつい時は無理しなくて良いからね。ほら、リラックスリラックス」
「あ、あ、ありがとうございます」
俺は霧島さんの緊張をほぐしつつ、向こうが俺に質問しやすいように、色々と話を聞いて会話を弾ませた。
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