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月街アヤナ、なんでそうなるのよ!!

「それではプレゼントに自信がある人ー!」

「ハイっ!」

「はいはーい!」

「はぁい!!」

「はいはい!」


 4人が前のめり気味に手を挙げる。

 大丈夫かなぁ。不安になるなぁ……。


「それじゃあ、ここは無難にえみり様で!」

「任せてください!」


 えみりさんはキリッとした顔で前に出る。

 さ、流石に変なのは買ってきてないよね?


「アヤナちゃん、お誕生日おめでとう。今のアヤナちゃんにとって何が必要なのか。お子様なカノンと違って、私にはちゃーんとわかってますからね」

「えみりさん、ありがとうございます」


 私はえみりさんから紙袋を受け取る。

 何だろう? すごく軽い。

 私は布袋を取り出すとリボンを解いて中に手を伸ばす。


「なんだろう? ハンカチかな?」


 私は取り出したものを広げて固まった。


「あ、そっちはパンツの方ですね。メインはブラです」


 えみりさんは布袋の中からブラジャーを取り出すと、得意げな顔で広げてみんなに見せる。

 遠くに居たあくあが心なしか、三歩ほど前に出てきていた。


「いいですかアヤナちゃん。これはただのブラではありません。その名もなんと、チュチュエミリから発売された禁断のアイテム。特盛ブラです!! このブラをつければこの私、雪白えみりのような胸の膨らみになれます!!」

「「「「「な、なんだってぇー!?」」」」」


 う、嘘!? 私でも、本当にえみりさんみたいになれるの……?

 会場に居た何人かのお姉さん達と司会をやってるアナウンサーのお姉さんが自分の胸にそっと手を置く。


「俺もえみりさんのおっぱいになれる……?」


 って、なんで、あくあも自分の胸に手を置いてるのよ! 男の子のあくあにはいらないでしょ! とあちゃんなら必要かもしれないけど!!


「アヤナちゃん、勝負どきに使ってください」

「は、はひ……」


 私は赤面しながらも、頂いたものをそそくさと袋の中に戻す。

 は、恥ずかしい。恥ずかしいけど、いらないと言ったら嘘になる。

 帰ったら、部屋で1人、こっそりと試着しよ。


「あ、あ、あ、次はふらんでお願いします!」

「わかりました。それでは来島ふらんさん、どうぞ」


 ふらんは意気揚々と前に出ると、可愛らしく私に紙袋を手渡す。


「アヤナ先輩、お誕生日おめでとうございます。アヤナ先輩って案外、子供っぽいじゃないですかぁ。だからふらんが気を利かせて高校生のお姉さんに相応しいプレゼントを買ってきました!」

「ふらん、ありがとう」


 まさかえみりさんと似たようなプレゼントじゃないよね?

 私はジトーっとした目でふらんを見つめる。


「あはは。アヤナ先輩、そんなに疑心暗鬼にならなくても大丈夫ですって。ふらんが変なのをプレゼントするわけないじゃないですかー」

「信じていいのよね?」

「もちろん! まろん先輩に誓って変なのは入れてません!!」


 私はふらんの言葉を信じて、紙袋の中から紙箱を取り出す。

 恐る恐る紙箱の蓋を開けた私は、中身を見て固まる。


「な、何よこれ!?」

「何って……アヤナ先輩、見てわからないんですか? 黒いリボンがついたピンクのフリルベビードールに決まってるじゃないですかぁ」


 ふらんは中に入っていたベビードールをカメラと観客席に向かって広げて見せる。


「みんなー。これ、可愛いよね?」

「「「「「可愛い!!」」」」」

「めちゃくちゃ可愛い!」


 なんであくあの声が一番大きいのよ!!


「あ、下の方もセットで入れておきました」


 って、ダメダメダメ!

 これ、後ろ紐じゃん!! 嘘でしょ。こんなの穿く人いるの!? は、恥ずかしい……。


「ナイスゥ!」


 あくあはボクシングの試合で勝ったみたいに至福の表情でガッツポーズをする。

 なんで、あくあが喜ぶのよ! 言っておくけど、土下座したって見せないし、明日から……ううん、今日から業者の人に来てもらって部屋に鍵つけるもん!!


「はいはいはい。次こそは俺が行きます!」

「わかりました。それでは白銀あくあさんどうぞ」


 あくあは紙袋を手に持って自信満々な表情で前に出てくる。


「アヤナ、次は大丈夫だ。俺を信じてくれ!」

「うん。ありがとう。でも、変なのが入ってたら怒るからね」


 私は紙袋の中から布袋を取り出す。

 その布袋についていたリボンを取り外すと、中から何かが入った箱が出てきた。


「これって、リップ?」


 それにしては箱が少しだけ大きい気がするけど……。パッケージには口紅の画像が描かれている。

 も、もしかして、この色が好きだから、俺と会う時はこの色をつけて欲しいって合図かな?

 私はドキドキした気持ちで箱の中を開けると、リップみたいな見た目の何かを取り出した。


「あれ? これって……何?」


 よく見たら電池とか入ってるし、これって何かの電化製品なのかな?


「それは電動で動くロ……電動マッサージ機みたいなものです。これで体のコリをほぐしてください」


 ふーん。電動マッサージ機かぁ。でも、これって小さくない?

 こんなに小さいのどこに当てるんだろう? 肩とかに当てるにしたって小さすぎる気がするし……。

 まぁ、帰ってから色々と使って試してみようかな。


「ん?」


 周りを見ると何故かほとんどの人が赤い顔をしていた。

 どうしてだろう? 意味がわかってない私とカノンさんとふらんの3人は、お互いに顔を見合わせて首を傾ける。


「コホン! 気を取り直してまして、最後は加藤イリアさん、よろしくお願いします!」

「はいはーい!」


 イリアさんは前に出ると、私に大きな紙袋を手渡す。


「アヤナちゃん、お誕生日おめでとう。これからもよろしくね」

「イリアさん、ありがとうございます。こちらこそよろしくお願いします!」


 私は紙袋の中に入っていた衣類を取り出す。あっ、よく見たら二つもあった。

 なんだろうこれ? 私は取り出した衣類を広げる。

 って、これ、ゴスロリのドレス!? もう一個は黒猫の耳がついたゴスロリ風のメイド服だった。


「これはあの精霊達とデートをするアニメにもなった某ラノベの人気キャラのコスプレ衣装と、妹ものラノベの金字塔にもなった作品に出てくる人気キャラのコスプレ衣装よ。私、ずっとアヤナちゃんには、これを着て欲しかったのよね。どっちか選べないから二つ買っちゃった」


 へ、へぇ〜。そうなんだ。

 確かに可愛いけど、これ、着る機会あるかな……。


「アヤナちゃんアヤナちゃん、よかったらいつか一緒に合わせでコスプレしよ!」

「えぇっ!?」


 あ……そういえば、カノンさんってコスプレするんだっけ。

 せっかくだし、一緒にやってみようかな。


「はいはい、カメラマンやります!」

「自分、個撮いいですか?」


 あくあとえみりさんが勢いよく前に出てくる。

 なんで、2人がそんなにやる気なのよ……。


「月街アヤナさん、第二弾のプレゼントはどうでしたか?」

「みんな、本当にありがとう。ふらんのはちょっと着れないけど、それ以外はちゃんと使えそうなのでよかったです」


 最初はびっくりしたけど、えみりさんがプレゼントしてくれた盛れるやつは帰ったら絶対にすぐに試そうと思った。


「なんでですか!? ふらんのプレゼントした大人女子のベビードールもあくあ様と一緒に使いましょうよ!」

「そうだそうだ!!」


 なんでそこであくあが加勢するのよ!

 そもそも、あくあと一緒にベビードールとか使う予定なんかにゃいもん!!

 だ、だって、一緒に使うって事はその……モニョモニョするって事じゃん!


「いたっ」

「いてっ」


 ゆかり先輩がぶーぶー文句を言うふらんとあくあの後頭部をスリッパで優しく叩く。


「えーと、それではお祝いのメッセージビデオの第二弾の映像がありますので、そちらをどうぞ」


 次は誰だろう?

 後ろにあるモニターに視線を向けると、仮眠室の中で床で野垂れ死んでいる女性が映し出された。

 って、阿古さん!?


『天鳥社長、天鳥社長、おきてください』

『んにゃ?』


 普通に死んでるのかと思ってびっくりした。

 なんでベッドがあるのに床で寝てるんですか?


「これはベッドに行く前に力尽きましたね」

「全くもう。阿古っち、これは後でお説教よ」


 あくあとゆかり先輩の解説に私もみんなも心配そうな顔をする。

 阿古さんって本当に仕事ジャンキーなんだ……。


『月街アヤナさんのお誕生日メッセージをいただけますか?』


 スタッフさん、私のお誕生日メッセージなんかのために阿古さんを起こさなくていいよ!!

 可哀想だからもっと寝かせてあげて!!


『アヤナちゃん、お誕生日おめでとう。いつもうちのあくあ君と、うちのじゃないけどゆかりの2人が迷惑をかけてごめんね』


 うちのじゃないって言われた時のゆかり先輩が珍しくガーンとした顔をしていた。

 ゆかり先輩、越プロやめてベリルに入ってやろうかしらってブツブツ言ってるけど、それはやめてあげて!

 スタッフに紛れてこっちを見ている越プロの社長さんが、捨てられた子犬みたいな顔をしてて居た堪れなくなる。


『お仕事もいいけど、今しか行けない高校の時間もしっかりと楽しんでください』

『天鳥社長。何度も高校に行ってる加藤イリアさんって人も出てるので……』

『あっ……』


 そこは別にいいでしょ……。


『あっ! それと修学旅行だけど、うちのあくあ君達をよろしくね! とあちゃんや黛君は大丈夫だろうけど、あくあ君が何かをしでかしたら、止められるのはアヤナちゃんしかいないから!!』


 わ、私にあくあが止められるかなぁ……。

 やるだけはやってみるけど、ちょっとだけ不安な気持ちになる。

 カノンさんは出産した後になるだろうし、ここはクレアさんとかに相談してみようかな。

 クレアさんはしっかりしてるし、クラスの中でも比較的あくあに汚染されてないから、きっと私の助けになってくれるよね。


『アヤナちゃん、改めて最後にお誕生日おめでとうございます!』

「阿古さん、誕生日メッセージ、ありがとう!」


 私はビデオに映った阿古さんにお礼を言う。


「それでは次のメッセージビデオで最後になりますが、最後にこの人からのお誕生日メッセージ映像で締めくくりたいと思います」


 誰だろう? 私はみんなと一緒に後ろのモニターを見つめる。


『アヤナちゃん、お誕生日おめでとう』

「お、お母さん!?」


 私はモニターにマネージャーをしてくれているお母さんが出てきてびっくりする。


『高校生になってから一人暮らしを始めた時は心配でしたが、最近はお仕事も学校も楽しいのか、とても笑顔が増えましたね。大好きだった女優としてのお仕事も見事にカムバックして、アヤナちゃんが助演女優賞を取った時にはお母さんも泣いてしまいました。アイドルとしても年末の歌合戦に出たり、モデルとしてもあくあ君と同じランウェイを歩いたりと、とても実りが多い一年だったと思います』


 お母さんの言葉で、あくあに出会ってからの一年とちょっとの事を走馬灯のように思い出して涙が出そうになる。

 本当に色々あったな。途中、嫌な事件もあったけど、あくあやファンのみんなの温かさがその嫌な記憶を良い思い出に上書きしてくれた。

 あの時のあくあ、本当にヒーローみたいでかっこよかったな。


『あくあ君や小雛ゆかりさんには本当にお世話になりました。ありがとうございます。2人にはアヤナちゃんが苦しい時を助けてもらって、親としてもマネージャーとしても、深く深く感謝しております』


 お母さんはeau de Cologneの仲間でもあるまろん先輩やふらん、私と仲良くしてくれているカノンさん達にもお礼の言葉を送る。


『そしてファンの皆様。いつもアヤナちゃんの応援ありがとうございます。これからもうちの可愛い娘をよろしくお願いしますね』

「「「「「はーい!」」」」」


 お母さんは観客席とカメラに向かって手を振る。


『それと最後に旅行だけど、アヤナちゃん。旅行はお母さんとじゃなくてあくあ君と一緒に行きなさいね』

「えっ?」


 待って! どういう事!? お母さんが旅行の件を知ってるって事は……あれ? もしかしてこれってメッセージビデオじゃないの!?

 お母さんの発言に、出演者とファン、スタッフの全員が拍手を送る。


『実はお母さん、裏でこっそり見てます。ふふっ、つまり生中継なの。あくあ君、うちの娘をよろしくね〜。あっ、それと紐の水着ありがとう。今度、プールに行った時に勇気出して着てみるね』

「任せてくださいお義母さん! それとプールに行く時は娘さんと俺との3人でいきましょう!! 大丈夫、俺がプールを貸切にします!!」

「任せてくださいお義母さんじゃないでしょ!」


 そ、それじゃあ、私とあくあが結婚するみたいじゃない!!

 私は赤くなった顔を両手で覆い隠してふるふると首を左右に振る。


「はい、そういうわけでね。最後にみんなでアヤナちゃんを祝って終わりしますか。はい、テレビの前で見ている皆さんもご一緒にどうぞ!」

「「「「「アヤナちゃん、お誕生日おめでと〜!」」」」」


 ちょっと待って、私、今、それどころじゃないから!!

 周りの大歓声に包まれる中、ふらんがそっと私に近づいてくる。


「良かったですね。アヤナ先輩。ベビードールの使い道ができましたよ! ふっふっふー。さすがは天才美少女ふらんちゃん、ここまでまるっと全てが計算通りです!!」


 ふらんのバカー!! ベッドの上で自分がそれを着てるのを想像しちゃったじゃない!!

 私は顔を真っ赤にすると、その場にうずくまった。

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https://x.com/yuuritohoney

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― 新着の感想 ―
[一言] こーれは流石に放送事故ですわ(゜д゜)
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