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月街アヤナ、誕生日プレゼント。

 私、月街アヤナの誕生日は5月30日だ。

 今日はそれを記念した番組の収録がある日です。


「月街アヤナさん、お誕生日おめでとうございます!」

「はい、ありがとうございます」


 私は商店街の空きビルの中に用意されたスタジオのステージの上で、番組の司会者でもあるアナウンサーさんにお礼を言う。

 実は今日、何をやらされるのか何も聞いてないのでとっても不安だ。


「と言うわけでして。今日はその月街アヤナさんに最高の誕生日を味わってもらおうと、番組から素敵なプレゼント……いえ、プレゼントを贈ってくれる素敵なプレゼンター達を集めてきました」


 観客席にいるファンのみんなが歓声をあげる。

 彼女達はeau de Cologneのファンクラブの人達で、スタジオ見学券が当たった幸運な人達です。


「それでは、プレゼンター達の方にご入場してもらいましょう」


 う〜〜〜〜〜、ファンのみんなは喜んでるけど、なんかすごく嫌な予感がするのは私だけかなあ。


「まず最初はやはりこの人、eau de Cologne月街アヤナの礎を作ったのは私よ!! ファンのみんなは私に感謝しなさい!! 我らがeau de Cologneのキャプテン、城まろんさんです!!」

「言ってない! 私、そんな事、全然言ってないからね!!」


 まろん先輩が手を左右に振りながら、慌てて出てくる。

 良かったー。変な人が出てきたらどうしようかと思ったけど、まろん先輩なら安心できます。


「そしてその城まろんさんとパートナーを組むのはこの人だ! この地球で私以上にアヤナ先輩のことを知ってる人いる? eau de Cologneの小悪魔担当、来島ふらんちゃんです!!」

「私もそんな事なんか言ってませんよ〜。心の中ではそう思ってるけど」


 心の中では思ってるんかい!

 観客席と司会者の両方からツッコミが入る。


「続きまして、月街アヤナさんと同じ学校で共に学び、共に笑い合いあったご学友。しかし、その友情はもはや過去の話だ。アヤナさん、ここの誇りがまだ掃除できてなくてよ? 側室いびりの正妻、白銀カノンさんです!」

「ちょっとぉ!? 私、そんな事、絶対に言わないもん!!」


 ふふっ、カノンさんは絶対にそんな事を言ったりしないよね。

 それがわかってるから観客席からも笑い声が起きる。でも、司会のアナウンサーさんはそろそろ自重してね。


「その白銀カノンさんのパートナーはこの人だ! 月街アヤナのベッドの下の事なら私に聞いてくれ。小雛ゆかりの部屋を掃除しに行った時に月街アヤナの部屋もチェックしました。雪白えみりさんです!!」

「ちょっと!!」


 今度は私がたまらずに大きな声を出す。

 にゃ、にゃんで私のベッドの下まで見てるの!?


「続きまして、月街アヤナさんの終生のライバルにして、eau de Cologneと人気を二分する人気アイドルグループ、フェアリスの可愛いとパワーの両方を担当! 最近はパワー教にハマってる加藤イリアさんです」

「みんなー。今日は私の可愛いを祝ってくれるために来てくれてありがとー!」


 観客席からは笑顔でブーイングが飛んでくる。

 このネタはイリアさんの鉄板ネタだ。ファンもそれがわかっててブーイングしてます。


「その加藤イリアさんと組むのはこの人しかいません! 同じ年に生まれたもう一人のモンスター! 終焉の大魔王ですらこの悪魔の前では泣いて裸足で逃げ出す! 何? あんた、この私になんか文句あんの? 大女優にして大怪獣、小雛ゆかりさんです!!」

「アヤナちゃんの事が一番わかってるのは、こ・の・わ・た・し・よー!!」


 ゆかり先輩の登場に観客席が一番の盛り上がりを見せる。

 でも、それと同じくらいブーイングが多い。あっ、ゆかり先輩、私のファンに喧嘩売らないで!


「えー、本来はこの6名3チームで争ってもらうつもりでした。しかし、この企画を聞いたとある方がですね。急遽出たいと言い出しましてね……。みなさん、彼を呼んでも良いんでしょうか?」

「「「「「きゃ〜〜〜〜〜っ!」」」」」


 彼と言った時点で一人しかいないよね。

 それがわかっているから観客席からも今日一番の歓声が沸いた。

 あ、あれぇ〜? 私がステージに出てきた時より、盛り上がってない? 私の気のせいかな?


「月街アヤナの好物はもちろんのこと、彼女の部屋のレイアウトからクローゼットの中まで知り尽くした世界で唯一の男。あの月街アヤナとキスどころかラッキースケベを起こした男。月街アヤナキラーの白銀あくあさんです!」

「ちょっと待って、ドラマでしたキスはともかくとして、なんで俺とアヤナのラッキースケベを知ってるんですか!?」


 私は熱くなった顔を両手で覆うと、その場でしゃがみ込んだ。

 ううう……私の誕生日なのに、なんで私が恥ずかしい思いをしなきゃいけないのよ!


「えっ? 本当にそんな事件があったんですか!?」

「えっ? もしかして適当言ってたんですか!? クローゼットの中と部屋のレイアウト知ってるのも事実なんですけど……」


 私は無言で立ち上がると、あくあの背中をポカポカ叩く。もー、あくあってば、簡単に誘導されすぎっていうか、余計な事まで喋らないでよ!! もーーーーー! 見られるのは別に良いけど、見るなら見るで報告してよね!!

 私の反応を見たゆかり先輩とまろん先輩の二人が、アナウンサーさんの頭をスリッパで叩いてくれた。


「プロデューサーから、やりすぎだと思った時はスリッパで叩いてくださいってこっちは言われてるから。このネタの追求はこれ以上なしね」

「うんうん。やりすぎはだめ。絶対に!」

「は、はひ……すみませんでした。私もアヤナちゃんのファンクラブ会員なので、つい、興奮してしまいました……」


 私は頼りになる二人の先輩に泣きつく。

 そんな私をカノンさんやイリアさん、ふらんやえみりさんもよしよしと慰めてくれた。


「それでは気を取り直しまして以上の4チームに、誰が一番、アヤナちゃんの誕生をを祝う事ができるかを競ってもらいます!!」


 なるほどね。そういう企画なんだ。

 私は用意された2人掛けのソファに腰掛ける。


「まず、最初のお題はプレゼント対決です!! 白銀あくあさんと各チームの代表者さんは前に出てください!!」


 あくあ、まろん先輩、ゆかり先輩、カノンさんの四人が前に出る。

 うん、この中のメンバーで心配なのはあくあだけだ。


「えー、実はこのスタジオ。商店街の空きビルを貸していただいて撮影しております。今から4人は私が発表したお題から、月街アヤナさんに相応しいたった一つのプレゼントを選んで購入してきてください」


 あー、だからこんなところにスタジオを作って撮影する事になったんだ。なるほどね。


「また、次のお題はチームの中で今回選ばれなかった加藤イリアさん、雪白えみりさん、来島ふらんさんの3人に白銀あくあさんを加えた4人にプレゼントを選んでもらいます。よって、プレゼントを選ぶ時間の撮影を短縮するために、今から一つ目、二つ目のお題について両方公開します。白銀あくあさん、他の3チームとは違って時間内で1人で2つのプレゼントを選ばないといけませんが大丈夫ですか?」

「任せてくださいよ。この白銀あくあ、プレゼントを選ぶセンスだけは抜群ですから」


 うわぁ。めちゃくちゃ不安になってきた。

 私は頭を抱える。観客席からは私を応援する声が聞こえてきた。みんな、ありがとね。


「それではまず最初のお題です。私の後ろにあるモニターをどうぞ!」


 最初のお題って事は、ゆかり先輩、まろん先輩、カノンさんが選ぶプレゼントのお題って事ね。

 何になるんだろう?


【月街アヤナさんが喜んでくれそうなプレゼント】


 あー、良かった。まともなお題で私はホッとする。

 若干、ゆかり先輩も怪しい所あるけど、あくあが変なの選ばない限りは大丈夫そう。


「そして次のプレゼントのお題はこちらになります!」


 そしてこっちのお題のプレゼントを選んでくれるのは、イリアさん、えみりさん、ふらんの3人だ。


【月街アヤナさんにおすすめしたいプレゼント】


 あくあ、変な狸の置物とか選びそう……。

 えみりさんとかも結構ふざけそうだし、大丈夫かな?

 イリアさんはどうかわからないけど、ふらんもちょっとふざけそう。

 こっちのお題はちょっと不安だなあ。


「はい、それでは皆さん、時間がないので一斉にスタートしてください!!」


 アナウンサーさんの合図でみんなが一斉に駆け出す。

 うう、笑顔で走り出したあくあをを見てめちゃくちゃ不安な気持ちになる。


「それでは、プレゼントを選んでいる皆さんの様子を少しだけ映像で見てましょう」


 後ろの大きなモニターの映像が切り替わる。

 なるほど、ちゃんと1人ずつにカメラついてるんだね。


『うーん……』


 何かを見て頭を悩ませるあくあが映し出された。

 って、それ何!? その大きな鎧兜、絶対に売り物じゃなくて装飾品でしょ!!


『アヤナは美少女だからな。やっぱり防犯のために、これくらい、いるでしょ。刀もセットで』

『いらない、いらない! そんなの部屋に置く所ないから!! 私の寝るところがなくなっちゃうよ!!』


 立ち上がって私がツッコミを入れると、観客席からは大きな笑い声が返ってきた。


『あくあさん、それ売り物じゃないらしいです!』

『なーんだ。残念!』


 私はホッと胸を撫で下ろす。良かったぁ〜〜〜。あくあのあの雰囲気じゃ、絶対に買いそうだったから止めてくれて本当によかった。

 次に映像が切り替わると、真剣な顔をしたえみりさんが映し出される。

 ってぇ! どこに入ろうとしてるの!? そのお店、子供が入っちゃダメなところじゃん!!


『えみり様、えみり様!』

『どうかしましたか?』

『あの……知らないのかもしれませんが、このお店は18禁のお店でして、その、撮影とかでもないですし……』


 えみりさんはポンと手を叩く。


『すみません。私とした事が、ファンシーな見た目の店舗だったのでつい間違えてしまいましたわ。おほほほ』


 ほ、本当かなぁ……? その割には迷いなくお店に向かって直進していたように見えたけど……。

 ていうか、そんなところで何買うのよ! わ、わわわ私だって……そぅぃぅのに興味がないわけじゃないけど、そんなのおすすめされても嬉しいですなんて言われるわけないじゃない!!


「えーっと、先ほどは一時的に不適切な映像が流れました。この場を借りて謝罪させていただきます」


 アナウンサーさんはモニターの映像を切ると、ぺこりと頭を下げる。


「それでは、月街アヤナさん。皆さんが真剣にプレゼントを選んでくれている間に、こちらの映像をご覧ください」


 えっ? なになに?

 後ろのモニターの映像が切り替わると、大きな画面にらぴすちゃんの姿が映った。


『うぇっ!? こ、これってもう撮ってるんですか!?』


 録画の映像かな?

 らぴすちゃんは髪を軽く整える。


『アヤナお姉ちゃん、お誕生日おめでとうございます! 前に言ってた桃スイーツのお店、今度、一緒にいきましょうね! もちろん兄様を連れて!』

「らぴすちゃん、ありがとー! 今度、絶対に行こうね! あくあ抜きで!」


 らぴすちゃんからのビデオメッセージに対する私の返答に、観客席や司会のアナウンサーさん、スタッフの皆さんが笑い声を上げる。

 だって、あくあが居たら女の子同士の秘密の会話とかできないもん。


『んぐんぐ。何これ? もしかしてもう映ってるの?』


 映像が切り替わるとお弁当を食べている楓さんが映し出された。

 スタッフさん、せめて楓さんが食べ終わってから撮影してあげなよ……。


『ゴホッ、ゴホッ』


 ほら、慌てちゃった楓さんがむせちゃったじゃない。かわいそう。


『アヤナちゃん! お誕生日おめでとーーーうございます! 高校2年生といえば多感な時期だし、将来の事を色々と考えちゃったりとか、不安になっちゃう年頃だと思います。だから、苦しかったり、辛かったりしたり、すぐに周りの大人達に相談してね。私もそうだけど、アヤナちゃんを見守っている人達はたくさんいるから。そこは絶対に忘れないでください!』


 楓さんって、こういうちゃんとしたコメントの時は頼れる大人の女性って感じがしてかっこいいんだよね。

 だからこそスタッフの人達は、楓さんに口元にお米粒がついてるよって教えて欲しかった。

 お米粒のせいで良い言葉が全部台無しだし、そもそもお米粒が気になって話が何も入ってこなかったよ。

 楓さんに続いて知り合いや仕事仲間の人達のビデオメッセージが続く。

 わー。みんな、私のために本当にありがとう!!


「おっと、どうやら各チームの皆さんがこちらに戻ってこられたようです」


 スタジオの中に、あくあ達が戻ってくる。

 みんな自信満々な顔をしてるけど、本当に大丈夫かなあ?


「それでは最初のプレゼントを持ってきてくれた4人は前に出てください」


 あくあ、ゆかり先輩、まろん先輩、カノンさんの4人が前に出る。

 最初のお題は私が喜んでくれそうなプレゼントだ。


「それではまず最初に、誰が行きましょうか」


 あくあが勢いよく手を挙げると、他の3人がそれに続く。

 だから、あくあはなんでそんなに自信満々なのよ!


「白銀あくあさんは面白そうだから後にするとして……」

「ちょっとぉ!?」

「最初はやっぱりこの人、城まろんさんでお願いします!」


 まろん先輩は紙袋を持って前に出る。

 わー。なんだろう。楽しみだな。


「城まろんさん、それでは買ってきたプレゼントを月街アヤナさんに手渡してくれませんか?」

「はい!」


 私はソファから立ち上がると、まろん先輩からプレゼントの紙袋を受け取る。


「アヤナちゃん、お誕生日おめでとう。これからもよろしくね」

「まろん先輩、ありがとうございます! こちらこそ、これからもよろしくお願いします」

 

 私はまろん先輩と軽くハグをする。


「それでは月街アヤナさん、プレゼントの開封をお願いします」

「はい」


 私は紙袋からリボンが巻かれた不織布の袋を取り出すと、リボンを解いて中身を広げる。

 するとノースリーブのシャツワンピースが出てきた。


「あっ、かわいー。夏物のワンピースですね。私、こういうの好きです!」

「やったー!」


 落ち着いた少し青みのがかったグレーのワンピースは、腰の後ろに大きめのリボンがついてたり、スカートの裾がふんわりしててすごく可愛かった。


「あっ、そのプレゼントなら、私のプレゼントがぴったりかも!」

「それなら白銀カノンさん、次、行ってみます?」

「はい!」


 カノンさんは紙袋を持って私の方にゆっくりと近づいてくる。


「アヤナちゃん、お誕生日おめでとう。これからも家族ぐるみで仲良くしてね」

「カノンさんありがとう! 身重なのに今日は私のためにごめんね」

「ふふっ、気にしないで。少しは歩いたりしないとダメだから」


 私はカノンさんから紙袋を受け取ると、中に入っていた丸い形の箱を取り出す。

 私はその箱を開けると、中に入ってた帽子を取り出した。


「待って、これ、めちゃくちゃ可愛い!」

「やった!」


 ワンピースと同じ色味のオーガンジーのリボンがついた麦わら帽子を被った私は、まろん先輩から貰ったワンピースを身体に当てて観客席のみんなに見せる。


「どう? みんな、似合ってる?」

「「「「「かわいーーーーー!」」」」」


 観客席にいるファンの声に照れた私は少し恥ずかしそうにする。

 えへへ。みんなに可愛いって褒められちゃった。


「同じチームじゃないけど、これはやったね。カノンさん!」

「はい! まろんさん!」


 カノンさんとまろん先輩の2人は仲良く両手でタッチし合うと笑顔を見せる。

 そこに私も混ざり合って3人でキャッキャしあう。


「もうこれでいいんじゃないんですか? あとの2人いります?」

「ふざけんな! あくあはともかく、この私はいるに決まってるじゃない!」

「いやいや、小雛先輩。そういうのは俺のプレゼントを見てからにしてもらっていいですか?」


 ゆかり先輩とあくあの2人が司会のお姉さんに詰め寄る。

 だから私は司会のお姉さんを助けるべく3人の間に割り込んだ。


「わかりました。それでは小雛ゆかりさん。プレゼントをどうぞ」

「ふふっ、目にものを見せてあげるわ!」


 ゆかり先輩はポケットから取り出した封筒を私に手渡す。

 えっ? なんだろう、これ?


「アヤナちゃん、お誕生日おめでとう! これからもよろしくね」

「ゆかり先輩、ありがとうございます。こちらこそ、これからもよろしくお願いします!」


 私はゆかり先輩から貰った封筒を開ける。

 ん? 何だろう? 私は中に入っていた紙切れを取り出す。


「夏休みの期間、いつでも使えるホテルのチケットです!」

「えぇっ!?」


 待って、ゆかり先輩、これって結構お高い気がするんだけど……本当に貰っていいのかな?

 私はチケットとゆかり先輩の間で何度も視線を彷徨わせる。


「それ、一応ペアのチケットだから、私以外の誰かと行ってね」

「ゆかり先輩以外の……」


 私はまろん先輩やふらんがいるところに視線を向ける。


「夏は確か忙しかったような気がするなぁ〜」

「うんうん、忙しい忙しい。ふらんは小学生だから図工の工作とか、書道とか、自由研究もあるし、朝顔の観察や絵日記もあるから暇じゃないんだよね」


 わ、わざとらしい。

 私は2人の隣に居るカノンさん、えみりさん、イリアさんの3人に視線を向ける。


「夏フェスにアイドルフェスにトップアイドルの私は忙しいのよね」

「今年の夏は暑いし、妊婦だから家でゆっくりしたいなあ」

「あっちゃ〜。その時期はバイトが週7、いや日勤と夜勤とかを合わせると週18だぁ」


 こっちはもっとわざとらしかった。

 ていうか、えみりさん。バイト週18って、日勤と夜勤の7+7を足してもあと4つ足りないけど、残りの4は何? 睡眠時間にもバイトが入ってるの? えっと……流石にこれは冗談だよね? 普通に死んじゃうもん。


「ほら、アヤナちゃん、あっちに目をキラキラさせてる子犬みたいな奴がいるわよ」

「えぇ……」


 あくあがジッとこちらを見つめてる。

 待って、私、そういうのは弱いの。だから私はあえてあくあと視線を合わせなかった。


「えっと、お母さんと一緒に行こうと思います! ゆかり先輩、ありがとうございました!」

「がーん! でもまぁ、お母さんとなら仕方ないよな。うん」


 ゆかり先輩は仕方ないなあという表情で軽く息を吐くと、私の頭をポンポンと叩いた。


「それでは最後に白銀あくあさん、よろしくお願いします!」

「任せてくださいよ!」


 あくあは前に出ると、私にプレゼントが入った紙袋を手渡す。


「アヤナ、誕生日おめでとう。これからも俺の友人として、ライバルとして、よろしくな」

「うん。あくあ、ありがとう。これからもよろしくね」


 私はあくあから受け取った紙袋から布袋を取り出すと、リボンを外して中に入っていたものを広げる。

 なんだろうこれ……って、水着!?


「やっぱり夏といえば水着。小雛先輩なら旅行券かホテル券を渡すと思って、アヤナと一緒に行くプールを想定して水着を買ってきました」


 だから、だからって……いや、これ、可愛いし私の好みだけどさ! その、布面積少し小さくない? 私の気のせいかな? ていうか、これ絶対にあくあの好みでしょ!

 あくあはキリッとした顔で私の肩をポンと叩く。


「一緒にホテルのプールに行けないのは残念だが、その代わりにお母さんの水着も俺にプレゼントさせて欲しい。これの隣に紐のいい奴があったんだ」

「はい、却下ー! 私のお母さんに変な水着を着せないでよ!!」


 もー! あくあったら、油断も隙もないんだから!

 あくあは満足げな笑みを浮かべると所定の位置へと戻っていった。

 こっちをチラチラ見てるけど、水着を体に当てたりなんてしないからね。それは帰ってから、あくあの見てない所で1人でするもん。


「月街アヤナさん、4人からのプレゼントはどうでしたか?」

「全部良かったです。最後以外は……まぁ、最後のもデザインとかは好きだし、水着は欲しいなって思ってたから嬉しいけど……」


 あくあはガッツポーズを見せる。

 もー! 今回だけだからね!


「それでは今回は全員イーブンという事で、次のプレゼントに行きましょう」


 ゆかり先輩、まろん先輩、カノンさんの3人がイリアさん、えみりさん、ふらんの3人と入れ替わる。

 問題はここからです。確か次のお題はお勧めしたいプレゼントよね。

 私はえみりさんとあくあ、そしてふらんの3人が変なものを買ってないといいなと思った。

Twitterアカウントです。作品に関すること呟いたり投票したりしてます。


https://x.com/yuuritohoney

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[一言] 人間諦めが肝心だゾ☆
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