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白銀あくあ、最後はやっぱり。

 スタッフの人からボードを受け取った俺は書かれたお題を確認する。


「なるほどね。次は“藤百貨店といえば”ですか……ここは普通に俺が仕事で行った新宿店か本店だよな。いや、銀座店もありえるか? この前みんなと一緒に、ランチですき焼き食べに行ったんだよな……」


 くっ、二問続けて外している事もあって、どれを選んでいいのかがわからない。

 頭を悩ませた結果、俺は一つの答えに辿り着いた。


「いや、待てよ……! ここは、逆転の発想で、俺が想定していない立川店もワンチャンあるか!?」

「流石に立川は距離的に遠いから止めときなさい。外したら、戻ってくるのでまた時間使うわよ」


 くっ……確かに小雛先輩のいう通りだ。

 移動は車だから、行くのと帰るのだけで2時間は余裕で超えるだろう。


「やっぱ、ここは無難に新宿店にするか」

「うんうん、それがいいわよ」


 俺は車に乗り込むと藤百貨店の新宿店に向かう。


「ところで、最近、藤百貨店では何かお買い物しましたか?」

「この前、楓が引っ越してきたんで、そのために足りないもの買おうかって話になって、嫁やメイドの子達全員で買い物に行きましたよ。その時に、食器もお揃いのに変えたりとかしたかな。それと、藤じゃないけど、その流れでドアノブを買いに行きました」

「ドアノブ!? えっ? それは、どうして?」

「その……うちのドアノブが楓のパワーに耐えられなくて……」

「あっ……」


 スタッフのみんながなんともいえない顔をする。

 わかるよ。俺たちもそんな顔してたもん。


「あっ、目的地の付近に着いたみたいですね。ここで降りて歩いてください」

「頼むぞー。今回こそ誰かいてくれ!!」


 俺は祈るように両手を合わせながら車から降りると、新宿店に向かって歩き出す。


「あっ、あれ! 誰かいるんじゃないですか!?」


 俺は撮影用のカメラを持った人を指差す。

 間違いない。俺はパァッと明るい笑顔になると両手を振って声をかける。


「おーい! 俺だー! 俺が来たぞー!!」


 俺は大喜びで駆け出す。

 とあ達か? それとも丸男達か? いや、ここははじめか!?

 誰でもいい。とにかく誰かと合流できた事が嬉しかった。


「あっ、あくあ!?」

「ほへ!? アヤナ!? それにまろんさんやふらんちゃんもどうしたの!?」


 俺は意外な人物との邂逅にホゲった顔をする。


「私達はロケの途中だよ。ていうか、これ生放送だけど大丈夫?」

「もしかして、あくあ君もロケ?」

「あくあ様はどうしてこんなところにいるんですか〜?」


 ほんとだ。よく見たらカメラにお昼の情報番組のシールが貼られていた。

 勘違いした俺はガックリと肩を落とす。


「いや、今、番組の企画をやっててゴニョゴニョ……詳しくは次回? の、ベリルアンドベリルを見てくれ!!」


 俺はアヤナ達の番組のカメラに向かって手を振る。

 くっそー。もういっそ、企画を無かった事にして、こっちに合流していいか?

 俺もアヤナ達eau de Cologneの3人とデパートでお買い物がしたい!!


「なんかよくわかんないけど……あくあ、頑張ってね」


 アヤナの優しさがボッチの俺に染みる。

 さっきはいいアドバイスをくれたけど、初手で煽ってきたなんとか先輩とは次元が違う。


「あっ、あくあ君、汗でてるよ。じっとしててね」


 まろんお姉ちゃあああああん! 俺の額をハンカチで拭いてくれたまろんお姉ちゃんは、「お仕事を頑張るのはいいけど、熱中症に気をつけてね」と、俺に優しく囁く。

 カメラが回ってなかったから、確定でまろんお姉ちゃんに抱きついいっぱい甘えてた。


「あくあ様、さっきしょんぼりしてた顔してたけど大丈夫ですか? ふらんが、後でこっそり抱きしめて慰めてあげるから、連絡くださいね」


 ふらんちゃんは俺に顔を近づけると、「ふらんになら好きなだけ甘えていいですよ」って、悪魔の囁きをしてくる。あ、あれ? 俺の考えている事が筒抜け……だと?

 くっ、なんでふらんちゃんが俺より年下なんだ。君がお姉さんだったら、俺のママになってくれと本気で土下座してたと思う。正直、俺も半分くらいはもういいか、後数年もすれば大人になるし今から誰にも取られないように唾だけでもつけておくかと思い始めてるくらいだ。


「スタッフさん、俺、ちゃんと合流できました。俺が合流すべきは、eau de Cologneだったんですね」

「バカ言ってないで、さっさと行きなさいよ。合流は建物の正面玄関なんだから、こっちじゃないでしょ」


 へーい。俺は小雛先輩に押されて正面入り口に向かう。


「ほら、熱中症になるといけないからお水、意外と真夏よりこういう時期の方が熱中症になりやすいんだから、本当に気をつけなさいよ」

「うん」


 俺は小雛先輩に手渡された飲みかけのペットボトルのお水をごくごくと飲む。

 ふひー、生き返るぜ。


「白銀あくあさん、残念ながらタイムアップです」

「って事はアレですか」


 俺はスタッフさんから携帯電話を受け取る。


『みんなもしかして本店行った?』

『って事は、あくあは新宿店なんだね。立川店に行ってなくて本当よかった……』


 ははっ、ははは……小雛先輩が止めてくれなきゃ本気で立川に行くところだった。

 俺の後ろでスタッフの人達も乾いた笑みを浮かべる。


『みんなで行く時は本店が多いし、カノンさんとも本店でお買い物してたから、こっちだと思ったんだよねー』

『ところでそっちはどう? もしかして俺以外全員合流した?』

『うん……』


 そうか。そうだよな。みんなと行く時は、そっちが多いからそうなるか。

 天我先輩が春香さん、丸男と孔雀が暮らしてる場所が神田と秋葉原だし、はじめの家も東の方だし、それもあって、最近は本店を利用する事が多い。うーん、ちゃんとそこまで考えるべきだった。


『あくあ、次からはお互いにシンプルに考えよう』

『うん、そうだな。シンプル、シンプル……わかった!』


 俺はとあ達との通話を切ると、次のお題が書かれたボードを受け取る。


「次のお題は……“ラーメンと言えば”って、竹子じゃん!! これはもう竹子しかないでしょ!!」


 俺は車に乗って竹子に向かう。

 さっきまで後ろをついてきた小雛先輩は、次こそ合流できるしょと言って去っていった。

 あの人はほんま……。


「ラーメン竹子に思い出はありますか?」

「竹子は朝早いし、夜も遅くまで空いてるから、結構みんなで行ってましたね。もちろん個人的にも、何度も通わせてもらいました。個人的には冬とか体調がイマイチな時は熱々の辛味噌、夏とか疲れた時にはガツンと塩が効いている鳥塩そば、あとは朝早い時とか夜遅い時はスッキリとしたどノーマルのサッパリ系、淡麗醤油がおすすめです! 淡麗醤油に煮卵ダブルか、追加チャーシューは鉄板ですよ。あっ、辛味噌も、できたらもやしマシマシで!」


 BERYLのみんなで仕事をした時とか練習で遅くなった時、ヘブンズソードの早朝ロケが終わった後とか、早朝から深夜まで開いている竹子にはすごくお世話になった。

 それこそ、うちの嫁達はみんな何かしら仕事してるし、竹子みたいな営業時間が長い店は助かるんだよな。


「目的地についたみたいですね。ここからは歩きましょう」

「はい」


 俺は車を降りると、ラーメン竹子に向かって歩き出す。

 流石に次こそは合流できる気がする。

 俺は曲がり角を曲がると、そのまま両手を振り上げた。


「うおおおおおおお!」

「「「あくあ!」」」


 俺はBERYLの4人で合流を分かち合う。

 とあがシンプルにって言ってくれたのがよかった。

 あの言葉がなかったら、深読みして違う所に行ってたかもしれない。


「あくあ先輩!」

「丸男! 孔雀! はじめ!! お前らともようやく会えたな!!」


 俺は丸男達とも合流を喜び合う。

 ようやく全員で揃う事ができた!!

 って、あれ? なんか人多くない?


「あくあ」

「あくあ君」

「カノン!? それに琴乃も!?」


 花束を持ったカノンと琴乃が現れる。

 えっ? えっ? 何? 何が起こってるんだ!?

 俺は状況が理解できずに戸惑う。


「先月は色々あってできなかったけど……芸能活動1周年記念、おめでとう!!」

「あっ……ありがとう。って、1周年!?」


 俺はカノンから花束を受け取る。

 あぁ、そっか……。俺がベリルに入ってから初めての仕事、はなあたの放送からもう一年が過ぎたのか……。

 今までの事を思い出して熱いものが込み上げてくる。


「阿古さん、ベリルエンターテイメント設立1周年、おめでとうございます」

「琴乃さん……ありがとう!」


 琴乃がマネージャーとして同行してくれていた阿古さんに花束を渡す。

 阿古さんは涙ぐみながら、同じく涙ぐんだ琴乃とお互いを健闘し合うように抱擁する。


「え? 待って? この企画ってそういう事!?」

「そういう事です! はい、いつもドキドキしてくれているあくあと阿古さんにドッキリ成功です!! この1年間ずっとあくあにドッキリされ続けられてるから、たまにはこっちがドキドキさせてもいいでしょ!」


 とあはやったーと両手を振り上げる。


「そもそも僕達はともかくとして、あくあ最大の理解者でもある慎太郎が最初にあくあと合流しない時点で不思議に思わないと」

「た、確かに……」


 俺が筆記用具を忘れた時も慎太郎、あ、うん、でペンを貸してくれる仲だもんな。


「おめでとう!」

「おめでとうございます!!」


 駆けつけた楓はもちろんのこと、モジャさんやノブさんからも祝われて嬉しくなる。

 俺と阿古さんはお互いに顔を見合わせると、照れたように笑みを浮かべた。


「あっ、それじゃあ、もしかして小雛先輩も……」

「いえ、あの人は完全にイレギュラーです。多分、普通に暇だったんじゃないですか?」


 紛らわしい。紛らわしいにも程があるよ!!

 それと同時にあの人って本当に暇なんだなと悲しい気持ちになった。


「えー。というわけでね、なんとか今日中に全員が揃う事ができました! 途中、どこかの暇な先輩が出てきたりとか色々あったけど、こうして無事に? 芸能活動1周年をみんなに祝ってもらえて嬉しいです。ね?」

「うん。えっと……テレビの前の皆さん、ベリルエンターテイメント社長の天鳥阿古です。こうして1周年を迎えることができたのは応援してくれるファンの皆様のおかげです。これからも、みんなに夢を届けるそういう企業でありたいと思っているので、変わらずにうちの子達を応援していただければと思います。今日は、ご視聴ありがとうございました」


 俺は再び阿古さんと顔を見合わせると、お互いに満面の笑みを浮かべた。


「テレビの前のみんな。いつも応援してくれてありがとう。俺はみんなの声援がある限りどこまでも走り続けるから、これまでも、そしてこれからも応援よろしくな!」

「走り続けるのもいいけど、あくあ君はたまに休まなきゃね」

「それは天鳥社長もでしょ!」

「ちげぇねぇ!」


 ノブさんとモジャさんからのツッコミに全員が爆笑する。

 俺は再び阿古さんと顔を見合わせると、「そういうわけで、お互いに気をつけましょう」「うん」と言葉を交わし合った。


「それじゃあ、みんな。今日もベリルアンドベリルを見てくれてありがとう。またなー!!」

「はい! お疲れ様でしたー」


 最後の締めを撮った俺は軽く息を吐く。

 なんとか無事に企画を終える事ができて安心したのか、お腹が減ってきた。


「せっかくだし、みんなでラーメン食って行こうぜ!!」

「「「「「「お〜っ!」」」」」」


 俺はスタッフの人達にも一緒にラーメン食おうと声をかける。

 って、よく見たらラーメン竹子の入り口に本日貸切という札がかかっていた。

 なるほど。どうやらここで集合するのも計画の内だったらしい。

 俺は暖簾をくぐってお店の中に入る。


「らっしゃっせー」

「えみり!?」


 えみりが普通にアルバイトしててびっくりした。

 えっ? 企画!? じゃなくて、普通にバイトしてるだけ!?

 ま、紛らわしい……。


「今日のおすすめは、新製品のベリル&あくあ様1周年おめでとうラーメンです!!」

「あ、うん。じゃあ、それで……」


 俺は調理場にいる竹子さんに声をかけてから、いつもの席に座る。


「そっかぁ。もうそんなになるかぁ……」

「どうですか? やっぱり感慨深いですか?」


 隣の席に座ったスタッフさんがカメラを回す。

 あれ? もしかして、まだドッキリ終わってませんか?

 ここも一応撮ってるだけ? 了解です。


「そうですね。この1年間色々あったなと……」


 きっかけはトマリギのバイトだった。

 あそこで阿古さんと出会った事が大きかったと思う。


「最後のお題がラーメンで良かったです。飲食店ならトマリギに行ってたかも」

「その可能性があったから最後はラーメンにしたんだよね。飲食店をお題にすると、あくあならトマリギか竹子かで悩むんじゃないかって慎太郎が言ったから。喫茶店にしても良かったけど、ベリルのみんなで行く時は近所の喫茶店とかも結構行くしね」

「確かに……お題が喫茶店ならそれはそれで悩んだかも」


 俺はとあの言葉に頷く。

 それにしてもさすがは慎太郎だ。


「そういえば、えみりと初めて出会ったのも喫茶店なんだよな」

「はい!」


 えみりは豪快に中華鍋を振るって炒飯を炒める。

 すげぇ、さすがはプロだ。一度でいいからえみりと炒飯対決してみたいな。


「あの時はえみりが親戚だなんて思わなかったよ」

「私もですよ」

「それが今や一緒の事務所で働いて、この前は一緒に歌ったし……まさか、結婚する事になるなんてな」

「ね」


 俺はえみりと顔を見合わせて笑い合う。

 ん? カメラさん、どうしました? 今、なんかすごい顔してるけど大丈夫?


「えっ? 待って、あくあ様とえみり様がご結婚!?」

「あっ……」


 そういえば俺とえみりが付き合ってるとか結婚するって公表してないんだっけ?

 既に言っているつもりになってた。


「ちょ、え? それって私達に対する逆ドッキリじゃなくて?」

「いや、ドッキリとかじゃなくて普通に。すみません。俺も忙しすぎて言うのが遅れてしまいました」

「ふぁ〜っ!」


 あれ? じゃあ、待って。これが俺とえみりの結婚発表になるって事?

 俺もカジュアルだけど、えみりなんてエプロンに頭に三角頭巾つけて中華鍋振るってるし、結婚発表がこんなのでいいのか?

 こう言うのってお互いにおめかししてから記者会見するもんじゃないかな?


「待って。今のなし」

「いや、あくあ様、せっかくだからこの機会に言っておきましょう。後にすると忘れちゃいそうだし」

「まぁ、えみりがそれでいいならいいけど……本当に大丈夫?」

「はい! それに竹子で発表できるなら、これほどの事はありませんから」


 えみりは出来立ての炒飯を俺の前に置くと、後ろにいる竹子さんに声をかける。


「竹子さん、そう言うわけで私、雪白えみり、ついに大好きな人と結婚する事になりました!」

「えっ? えみりちゃんが結婚? それって夢の話? 妄想の話?」

「いやいや、なんでその二択なんですか!? 普通に現実であくあ様と結婚するんですよ!!」

「それは良かったじゃない! あくあ君ならたらふくご飯食べさせて貰えるわよ!」

「えっ? 性格とか見た目じゃなくて、そこなの!?」


 竹子さんとえみりのやりとりにみんなが爆笑する。

 さすがは竹子さんだ。えみりがハラヘリーで苦労してるのがよくわかってる。


「えみり様、えみり様、プロポーズの言葉はなんだったんですか?」


 カメラを回されたえみりはキリッとした顔をする。


「えみり……俺が一生、君の隣でラーメンを作るから、君に半チャーハンを炒めて欲しい。大丈夫、意地悪な御局様のカノンには餃子でも作らせておくからって言われました」

「えっ? 私が餃子作るの!? っていうか意地悪な御局様って何!?」

「嘘、嘘。そんな事、言ってないからね!」


 俺はすぐにえみりの言葉を否定する。

 えみりって、たまに……いや、結構な頻度で冗談を言うよな。

 見た目とのギャップもあって、スタッフのみんなもそれで爆笑する。

 でも、俺はえみりがみんなを笑わせたくて冗談を言ったんじゃないと気がついた。

 えみりは結構照れ屋さんだし、俺からプロポーズされた言葉を人に知られたくないんだなと気がつく。


「じゃあ、本当はなんて言ったのー?」


 スタッフさんからマイクを奪った楓がニヤニヤした顔で俺にマイクを突き出す。

 そういえば楓の本業はこれだった。たまに楓がアナウンサーだって忘れそうになる。


「もし、俺がやらかしすぎてベリルをクビになったら、一緒に夜鳴きそばの屋台をひいてくれませんかって言ったんだよ」

「やめて。せっかくのめでたい1周年にフラグを立てないで!!」


 阿古さんのノリのいいツッコミに全員が笑う。


「でも、あくあさんとえみりさんの屋台は絵になりそう」

「琴乃さんまでやめて!! 私も想像してちょっといいなって思ったから」


 いいなって思っちゃったんだ。阿古さんのこういうところが可愛いよな。

 なんか、今日のみんなに弄られてる阿古さんを見ていると初めて会った時の事を思い出す。

 そっか……俺は今まで阿古さんはベリルの社長になるから変わったんだって思ってた。でも、そうじゃないんだ。

 もちろん阿古さんも出会いから今までで成長した部分もあるんだろうけど、本質的なところでは阿古さんは、みんなを守るために変わったフリをしていただけで、何も変わってないんだと気がつく。


「そういえば、阿古さんってトイレに貼ってた俺のポスターってどうしたんですか?」

「ちょっと待って、あくあ君、それは言っちゃダメだって!!」


 顔を真っ赤にした阿古さんがテーブルに突っ伏す。


「で、どこに貼ってるんです?」


 楓が阿古さんのほっぺたにグイグイとマイクを押し付けていく。

 さすが怖いもの知らずの楓だ。この前、テレビで初めて知って頭を抱えたけど、新人の時に環境活動家の人達に、「みなさん怒られないように環境に配慮して徒歩と水泳で来ました! いやー、やっぱり沖縄は遠いですねー。ここに来るまでに2回は溺れかけましたよ。みなさんは何回溺れかけましたか?」って、小学生のような純粋な目でインタビューしてただけの事はある。

 テレビではその時にインタビューされた環境活動家の人が出てたけど、「森川さんとの出会いで自分は抗議だけしてるファッション活動家だったと気がつけました。本物の自然に生きてる人には勝てません」と彼女は抗議活動をやめて、ゴミ拾いをしたりするなど身近な活動に切り替えたと言っていた。

 みんなは俺にドキドキさせられていると言うが、むしろ俺は楓の行動にいつもドキドキさせられてるよ。違う意味で。だって、この俺でも楓とえみりの行動だけは予測できないもん。


「ううっ……今は自分の部屋に貼ってます」

「なるほどね。大丈夫ですよ。阿古さん、みんな一度はトイレにポスターくらい貼ってるから。うちのカノンやえみりもトイレにあくあ君のポスター貼ってたもん」

「ちょっとぉ!?」

「そういう楓パイセンだって貼ってたじゃん! あと、姐さんも!!」

「えみりさん!?」


 えっ? 何? 俺のポスターをトイレに貼るの流行ってたの?

 カノンと琴乃の2人も阿古さんと同じように赤くなった顔を隠すように机に顔を突っ伏した。

 おーい、2人とも、大丈夫かー?


「ううっ、こうなったら巻き添えです。白龍先生もトイレにあくあさんのポスターを貼ってました」

「ぶふぅっ! こ、こここ琴乃さん!?」

「大丈夫大丈夫。アヤナちゃんもみんなから聞いて一回だけ貼ってたって言ってたし」

「アヤナちゃんかわいそう。いないのにえみり先輩にバラされちゃって……」


 ふーん。やっぱり俺が知らなかっただけで、そういうのが流行ってたんだな。

 小雛先輩のところに貼ってなかったから、阿古さんだけかと思ってたがみんなポスター貼ってくれていたのか。

 うーん、ポスターを貼ってくれるのは嬉しいけど、トイレの中はちょっとな……。


「ね? らぴすちゃん」

「ちょっ、えみりさん!? なんでそのタイミングで私に話を振るんですか!?」


 ……この後、実家のトイレに抜き打ち検査行こうかな。

 俺は恥ずかしがるらぴすの頭を撫でる。

 この後、調子に乗りすぎて周りをいじり出したえみりと楓の2人は、琴乃に掴まれてどこかに消えて行った。

 おーい、琴乃ー、程々になー!

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https://x.com/yuuritohoney

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[一言] 屋台引くより世界征服した方が早いんじゃないかな(棒
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