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名も無き掲示板民、うちの町内会。

「ただいまぁ……」


 仕事が終わってヘトヘトで帰宅すると玄関の前に回覧板が置いてあった。

 なんだろう? 私は手に取った回覧板を覗き込む。


【近隣住民の方へ。お祭りのお知らせ】


 あー、いつものやつかぁ。学生の時によく行ってた事を思い出して、懐かしい気持ちになった。

 確かその日はお休みだし、せっかくだから久しぶりに行ってみようかなあ。


「おかーさーん、回覧板来てたよー。お祭りだって〜」

「ええ? いつの間に来てたのよ、もう。何か、書いてあった?」

「うん、お祭りだって〜」


 私は手に持っていた回覧板をお母さんに手渡す。


「は!?」

「お母さん、どうかした?」


 服を着替えて戻ってくると、お母さんが回覧板を手に持っていたまま固まっていた。


「ああああああくあくあああくああああ」

「お母さん大丈夫?」


 私は小刻みに震える母の手から回覧板を取り上げる。

 さっきは上の辺しか確認しなかったけど、そこから先に何か書いてあったのだろうか?

 私は改めて回覧板に目を通していく。

 うーん……何も書いてないなぁ。私は上から順にゆっくりと読み進めていくと、最後の欄で私もお母さんと同じように固まった。



————————————————————————


 実行委員長:白銀あくあ、小雛ゆかり。

 実行委員:雪白えみり。

 特別協賛:ベリルエンターテイメント、藤テレビ。


————————————————————————



「えらいこっちゃ、えらいこっちゃ!」

「あわあわあわあわあわあわ!」


 私とお母さんはお互いの両肩を掴んで2人で揺さぶり合う。

 え? どういうこと? 小雛ゆかりが暇なのはデフォとして、あくあ様って忙しいのにこんなのする暇あるの!?


「なんで実行委員長が2人なんだろう……」

「多分あくあ様と小雛ゆかりが子供みたいな喧嘩してお互いに譲らなかったから、面倒臭くなってえみり様がW委員長を提案した可能性大よ」


 あ、ありえる〜。その状況が簡単に頭に浮かんできた。

 実行委員に嗜みや姐さん、天鳥社長がいないのは一抹の不安があるけど、えみり様がいるから大丈夫よね。

 えみり様はきっとまとも枠だし、暴走するあくあ様や小雛ゆかりを体を張って止めてくれるはずです。

 これがもし捗るだったら、絶対にとんでもない事になってた可能性すらある。


「と、とととととりあえず、早く回覧板回してあげなきゃ」

「う、うううううん! お母さん、私、行ってくるね」


 私は回覧板を手に持ってお隣さんを訪ねる。


「あくあくあくあくあほあーっ!」

「しっかりして、気を確かに!!」


 私達と同じような反応を見せるお隣さんを見てなんとも言えない気持ちになる。

 私は錯乱するお隣さんをなんとか宥めると、回覧板を回すのを忘れないでねと言ってから自宅へ帰った。


「あれ、お母さんどうしたの?」


 家に帰るとお母さんが服を着替えて玄関で靴を履いていた。


「今から緊急井戸端会議よ! うちの町内会も連動しなきゃ。それじゃあ留守をよろしくね」

「あ、うん。気をつけてね」


 お母さんは両頬を叩いて気合を入れると、戦地に赴くような顔つきで玄関の扉を開けて井戸端会議へと向かっていった。

 このお祭りは地元の神社を中心とした周辺の町内会と連動して合同で行われる。

 もちろんうちの町内会もそのうちの一つです。


「そういえば、隣町で小雛ゆかりさんを見たっけ……」


 その日はお仕事がお休みだった私は、朝早くに横断歩道で黄色い旗を持っていた小雛ゆかりに遭遇した事がある。私はその時の事を思い出す。


『こらーっ、あんたたち余所見してちゃダメでしょ! ほら、ちゃんと車とか自転車とかバイクとか信号機を見なさい!!』

『あーっ、こひにゅゆかりだー』

『ちがうよ。だいかいじゅうゆかりごんだよー。あくあしゃまがそういってたもん』


 今や全国の幼稚園、保育所に置いてある大怪獣ゆかりゴンの絵本のおかげで、小雛ゆかりは子供達に大人気だ。

 ただ、人気と言ってもあんまり好かれてる気がしないというか、舐められてる気がするのは私の気のせいだろうか……。


『がおーっ! 言う事を聞かないと食べちゃうわよ!!』

『ぎゃー、あくあしゃまたしゅけてー』


 小雛ゆかりが食べちゃうぞって言うとネタに聞こえないんだよね。

 本当に食べちゃうんじゃないかって思って、現場を目撃した大人たちは一斉に身構えたほどだ。


『あっ。ほら、信号機が青になったわよ。今日は私が見てあげるけど、信号機が青になったからといって油断しちゃダメだからね! ちゃんと周囲をしっかり見て、危険がない事を確認してから渡るのよ!』

『『『はーい』』』


 今、思えば交通誘導員をやってたのも町内会に関連した事だったのかな?

 小雛ゆかりが子供に対して意外と優しかったのが意外だった。


「って、ぼーっとしてる場合じゃない! 掲示板の連中に教えてあげないと!!」


 私はパソコンを起動させると、カタカタと文字を打つ。



————————————————————————


774 ななし

 お前ら大変だぞ!

 あくあ様が町内会のお祭りに参加するって!


775 ななし

 >>774

 今、その話で盛り上がってる。


776 ななし

 >>774

 お前も回覧板勢か。


777 ななし

 ねぇ、なんで実行委員長が2人もいるの?


778 ななし

 >>777

 2人ともやりたいって言ったからだろ。


779 ななし

 >>778

 これだろうな。


780 ななし

 >>778

 間に挟まるえみり様がんばれー!


781 ななし

 本当、えみり様が居てくれてよかったよ。

 これがお前、あくあ様や小雛ゆかりと一緒にふざけるやつだったら大変な事になってたぞ。


782 ななし

 >>781

 それな!


783 ななし

 小雛ゆかりってイメージで勘違いされてるけど、結構こういうのは真面目にやりそうだけどな。

 あくあ君がとんでもない事をやらかすのは事実だけど。


784 ななし

 >>783

 同意!


785 ななし

 >>783

 だよな! むしろあくあ様のストッパーになってくれると思う。


786 検証班◆07218KADO6

 お前らさぁ。雪白えみりだってふざけたくなる時くらいあるだろ。

 小雛ゆかりが不在の時を狙ってあくあ様と一緒にノリノリで色々とやらかして、今頃賢者タイムになって震えてるかもしれないぞ?


787 ななし

 >>786

 ないないw


788 ななし

 >>786

 お前じゃあるまいしw


789 ななし

 >>786

 えみり様の悪口はやめてもらっていいですか?


790 ななし

 >>786

 むしろお前が何かやらかしてるんだろ!!


791 ななし

 >>790

 そーだ! そーだ!


792 検証班◆9n2SARETAi

 >>786

 何かをやらかしてる時は直ぐに報告をお願いしますね。


793 検証班◆07218KADO6

 >>792

 ヒィッ!


794 ななし

 >>792

 捗るがリアルで何かやらかした波動を感じてすぐに出てくる姐さん。


795 ななし

 >>793

 えみり様の爪の垢を煎じて飲ませたいくらいだわ。


796 検証班◆010meTA473

 捗るって本当に成長しないよね。


797 検証班◆THiMPOsuki

 >>786

 ばーか! ばーか!


————————————————————————



 捗るがリアルで何かやらかしたらしい。

 まぁ、いつもの事か……。私はパソコンの画面をそっと閉じる。


「ただいまー」

「あっ、おかえり、お母さん」


 お母さんは帰ってくるなり私に対してドヤ顔をする。

 一体、何があったというのだろうか……。


「うちの自治会の代表の1人に選ばれちゃった!」

「えっ? まじ!? お母さんすごいじゃん!」


 井戸端会議でどうしてそういう流れになったのかはわからないけど、お母さんはあくあ様達実行委員とお祭りの事を話し合ったりする自治会の代表に選ばれたみたいだ。


「やはりチ……森川さんの行っていた通りね。パワーは全てを解決する」

「やめてよ、お母さん。パワー教の二世だなんて私絶対に嫌よ。だってパワー教の信者って脳筋バカしかいないんだもん」

「チッチッチッ、最後は頭で考えるより何も考えてないパワー、森川さんもそう言ってたわ。貴女もいつかこの言葉の重みがわかる日が来るでしょう」

「そんなの、分かりたくないんだけど……」


 正直、パワー教の信者になるくらいなら聖あくあ教とかいうアタオカ集団の信者になった方がマシだ。

 でも本人が認知してない非公式の聖あくあ教と違って、パワー教はあくあ様も認知してるし、若干あくあ様もパワー教の信者的なところがあるんだよね。あ、あれ? そう考えたら森川のパワー教の方がマシじゃない?

 待って、待つのよ、私! 教祖はあの森川よ。冷静になりなさい!!

 いい? パワー教と聖あくあ教の二択なんて、掲示板で例えるとティムスキと捗るの二択で迷ってるようなもんよ。世界にはもっと他にもマシな宗教が……なかったわ!

 世の中に存在する宗教なんて戦争ばっかりしてたり、金に執着したり、ショタに手を出す碌でもない宗教ばっかだったわ。くっ、何千年もやっててパワー教以下とか、その宗教の信者とか教祖とかやってて恥ずかしくないのかしら……。

 ああ、そっか。それで今、世界でも聖あくあ教とパワー教が伸びてきてるんだ。

 私はこの二つの宗教が伸びているとんでもないトリックに気がついてしまう。


「もう日本もパワー教か聖あくあ教の二択でいいか、うん……」


 聖あくあ教もパワー教も他宗教には不可侵だから今回みたいな地元のお祭りもちゃんと残ってるし、日本の神社とかお寺が守られるならそれでいいわ。

 私は深く考える事を止めて眠りについた。

 それから数日間、私はあくあ様の参加するお祭りが楽しみでワクワクウキウキした日々を過ごす。

 自治会の代表に選ばれたお母さんなんか、みるみるうちに綺麗になって……って、肌にツヤありすぎじゃない!? っていうか、若返った!? よく見たら腰回りもシュッとしてるし!!


「あくあ様に見られるのに、だらしのない格好なんてできないわよ。オホホホホ」


 そう言ってお母さんは、ミニスカートをヒラヒラと揺らしながら会合に向かう。

 そういえば最近、一緒に買い物に行ったらお母さんと姉妹に間違われたっけ。

 ははっ、ははは……私は現実からそっと目を背ける。

 やっぱりあくあ様はすごいわ……。


 それから更に数日後。ついにお祭りが開催される当日の朝を迎えた。


「それじゃあ、お母さん先に行くから。戸締りお願いね」

「うん、行ってらっしゃい」


 ふぁ〜っ。私は大きな欠伸をする。

 お祭りが楽しみすぎて早起きしすぎちゃったかも。

 私はお母さんの代わりに色々と家事をこなすと、ちょっとだけ掲示板を覗いてから浴衣に着替えて自宅を出た。


「お祭り楽しみだねー!」

「うんうん!」


 ふふっ、ちょっと早いけどもうお祭りに向かってる人がいる。

 やっぱりあくあ様が参加するからでしょうか?

 みんな浴衣を着てバッチリ気合いが入ってた。


「あっ、露店でてるよ」

「本当だ!」


 ふふふ、この時のために、朝ごはんはあまり食べずに来たのよね!

 お腹を空かせた私は、露店を巡って品定めをする。

 んっ? あそこのお店だけちょっと混んでるけど、なんだろ?

 あっ、たこ焼きの露店だ!

 やはりたこ焼きは祭りの定番だよね。私は列に並ぶ。


「って、あくあ様!?」

「おっ、浴衣のお姉さん、たこ焼きはどう? うちは6個入り200円、10個入りは300円だよ!」

「やっす!! 10個入り買います!」


 あくあ様は慣れた手つきでたこ焼きを串でくるりと回転させる。

 って、よく見たらあくあ様、お祭りの半纏が開いていて腹筋が丸見えだ!!

 周りの女性達の姿を確認すると、みんな冷静を装いつつも目が普通に血走ってた。怖いよ、みんな。気持ちはわかるけど、一旦、落ち着こう。


「うちは使ってる出汁が違うんですよ」


 いや、もうこっちはお出汁がどうこうとかいう次元じゃないですからね。

 あくあ様は呑気にたこ焼きを焼いてるけど、みんなあくあ様の腹筋とか鎖骨をガン見ですよ。


「ちょっとあんた! 紅生姜どこよ!」

「ええ? ソースと同じ箱に入ってませんでした?」

「そのソースが入ってる箱がわかんなくて困ってるんじゃない!!」


 あっ、小雛ゆかりだ。

 って、コスプレ!? あれって確か極東プロジェクトのスカーレット姉妹の姉の方よね。

 えーっ、小雛ゆかりがコスプレとかどうしたんだろ。


「ゆかり先輩、その箱ならこっちにありましたよ」

「さっすがアヤナちゃん、ないす〜」


 はわわわわわ! アヤナちゃんかわわ!

 スカーレット姉妹の妹のコスプレをしたアヤナちゃんを見て、私の周りにみたみんなが同じ反応を見せる。

 なるほど、アヤナちゃんと合わせるために、小雛ゆかりは姉の方のコスプレをしてたんだ。

 お祭り的には巫女服の2人の方がいいんじゃないかなって思ったけど、姉妹キャラをこの2人がやるのはちょっとてぇてぇ感じがする。

 ん? ちょっと待って。それはそうとして、この2人がコスプレする意味ってあるのかな?

 私は勇気を出してあくあ様に聞いてみる。


「なんで2人ともコスプレしてるんですか?」

「30度近い気温の中でたこ焼き作ってる俺のテンションが上がるからです」


 あっ……なるほどね。

 私を含めたその場にいたお客さんみんなで、あくあ様に団扇や扇子を扇ぐ。


「あくあ様、がむばれー」

「あくあ君、たこ焼き上手に作れてえらいね」


 みんなにチヤホヤされたあくあ様は、嬉しそうな顔をしながらたこ焼きをハイペースで作っていく。


「はい、お祭り楽しんでね。お姉さん美人だから2個オマケしちゃう!」

「やったー!」

「お姉さんは可愛いから特別に2個おまけしちゃう! お祭りはまだ始まったばかり、楽しんで!」

「ありがとうございます!」

「ほい、俺好みの大きなお姉さんにはオマケで2個追加しちゃう! 他の露店も見てね!」

「はーい!」


 ふふっ、あくあ様に俺好みの大きなお姉さんって言われちゃった。

 あくあ様は私達以外にもいろんな理由をつけて、全員のお客さんに2個ずつサービスしていく。

 そういうあくあ様が好き!


「ちょっと、あんた、さっきからサービスしすぎじゃない!?」

「いいのいいの! 予算だけは確保してるから!」

「もーっ、本当に調子いいんだから!」

「っと、そんな事より、新しいたこ焼きが焼けましたよ」


 あくあ様は目の前にいる知り合いらしき幼女と母親らしき2人に声をかける。


「はいっ、まどかさんとしぃちゃんで2個サービスな! えっ? お兄ちゃん、結婚してって? ははは、おっきくなったらな!」

「あくあってば、またそんないい加減な口約束して……カノンさんが将来頭を抱える事にならなきゃいいけど……」

「アヤナちゃん、もっと言ったげて! そうじゃないとこのバカはわかんないんだから!!」


 本当にね。

 知り合いの幼女だからって油断してるけど、今の確実に言質取られてるでしょ。

 後で掲示板に書き込んだろ。

 私は熱々のたこ焼きをハフハフしながら完食すると、面白い露店を探して周囲を彷徨く。


「森川楓のパワーくじやってるよぉ!」


 森川楓のパワーくじって何!?

 掲示板民として気になった私は、屋台に近づいて中を覗き込む。

 するとそこに立っていたのは森川本人だった。

 あー、紐を引くタイプのくじか。これって当たらないよね。

 ぷぷっ、どんな人がこんなくじ引いてるんだろ。私はそいつの顔を見てやろうと、首を伸ばして覗き込む。


「ふんぬらば!」


 お母さん!?

 って、そのくじを引くのにそんなにパワーいる!?

 えっ? だからパワーくじだって? しょーもな!!


「大当たりぃ!」

「しゃあっ!」


 えっ? 嘘!? めちゃくちゃ大きい箱じゃん!

 あの箱の大きさって間違いなく中身はゲーム機とか家電でしょ! やばいやばいやばい!

 私はキラキラした目でお母さんを見つめる。


「はい、森川楓のサイン入り鉄アレイね」


 いらねぇー。どう考えてもいらねぇー。

 えぇ……嘘でしょ。お母さん普通に喜んでるけど、ただの鉄アレイだよ。それ……。


「うひひひ、いちまーい、にーまい、さんまーい。今日はお祭り。みんなの財布の紐が緩くなって入れ食い状態でウハウハだぜ」


 ん? 今どこからか声が聞こえてきたような……。私は声がした方を覗き込む。

 するとそこにはお札を数えていたえみり様が立っていました。


「あっ、お客さん、どうされましたか? くじを引くなら列に並んでくださいね」


 うーん、今なんか捗るみたいな事を言ってた気がしたけど、私の気のせいかな?

 私がそんな事を考えていると、腕に実行委員会の腕章をつけたスーツ姿の見覚えのある女性が近づいて来た。


「2人とも、このお店はなんですか?」

「あっ、姐さんこれはその……」


 姐さんの登場で森川がしどろもどろになる。

 こーれ、いつものパターンです。

 その場に居た全員が察して、スッとそのお店の周辺から遠ざかる。


「確か届出にこんなお店の出店はなかったはずですが……」

「ぎくっ! いや、これはえみりがですね……」


 森川……いくらなんでもその言い訳には無理があるよ。

 その場に居た全員が、どうせ森川がえみり様を無理やり巻き込んだんでしょって思った。


「えみりさん……? はて、姿が見えませんが……」

「あっ、あいつ、ばっくれやがった!!」


 あっ……気がついたら、さっきまでそこに居たえみり様が忽然と消えていました。

 まぁ、巻き込まれたえみり様は関係ないし、仕方ないよね。


「とにかく、この出店は認められません。すぐに撤去してください」

「へーい……」


 姐さんに取り締まられた森川は渋々と屋台を撤去する。

 まぁ、引いた人はみんな満足げな顔をしてるからいいんじゃないかな。


「っと、そろそろお昼だ。急がなきゃ」


 昼からはこのお祭り最大のイベントが待ってる。

 私は集合場所に行くと、みんなと一緒に巫女さんの服に着替えた。


「巫女さん役に当選できて良かったー」

「ね」


 ここからがこのお祭りのメインイベントだ。

 神輿を担いだ行列で周囲の町内会をぐるりと回る。

 私は巫女の中でも、その神輿の一つを担ぐ重要なお役目に選ばれた。


「今日はよろしくお願いします」


 うぎゃあああああああああああ!

 全員が声にならない叫び声をあげる。

 嗜みの十二単かわいいいいいいいいい。本当のお姫様みたい!! って、国は違うけど本物のお姫様だったわ!!

 私は自分で自分にツッコミを入れる。


「重くないですか?」

「全然!」


 私は神輿に乗った嗜みを担ぐ巫女の1人だ。

 ぐへへ、後で掲示板民に自慢したろ!!


「おっ、そっちも準備できたんだな。カノン、綺麗だよ」

「あ、あくあく……あくあも!」


 おんぎゃああああああああああああ!

 嗜みはよく耐えたよ。神馬に乗った斎服姿のあくあ様カッコ良すぎる!!

 髪もちゃんと鬢付けでセットしてるし、背中に背負った弓と矢筒も良い!

 この前、矢を撃つ謎ゲーで日本代表に選ばれた事もあって、なんかこうすごく似合ってる。


「きゃあああああああああああ!」

「あくあ様ああああああああああ!」

「かっこいいいいいいいいいい!」


 まぁ、そうなるよね。

 私達は黄色い声援を浴びるあくあ様を先頭にぐるりと一周する。

 そういえばこのコース、中央にある白銀キングダムをぐるりと回っているように見えるけど私の気のせいかな?

 反対側にある分社にお参りしてスタート地点に戻って来た時には、時刻は16時を過ぎていました。


「みんな、4時間という長い時間、一緒にやってくれてありがとう!」


 流石に妊婦の嗜みを長い間神輿に乗せておくわけにはいかないので、途中、えみり様や天鳥社長、アヤナちゃんや小雛ゆかりなど色んな人がお姫様役を交代して、なんとか一周を回り切った。

 恥ずかしそうに神輿に乗ってた姐さんを見た時は、担いでた全員がニヤニヤしてたと思う。おい、お前らも絶対に掲示板民だろ!!


「疲れたー!」


 お祭りを終えて帰宅した私は、玄関でぐったりする。


「ちょっと、あんた。こんなところでへばってたらダメじゃない。ほら、お土産の鉄アレイ。見てみて、お母さんすごいでしょ。大当たりで森川さんのサイン入りよ!!」

「いーらーなーいー」


 私は露店で買って来たものを家でお母さんと食べながら、お祭りの話で盛り上がった。

 その翌日、あくあ様と小雛ゆかりの2人が近隣の自治会と町内会を集めて草野球大会を開こうとしてると聞いて、私とお母さんはもちろんのこと、ご近所さんを含めた自治会全体が盛り上がるけど、それはまた別のお話である。

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