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白銀あくあ、やっぱり妹は実妹に限るぜ!

「らぴす。せっかくだし、2人で少しぶらぶらして帰ろうか」

「はい! 兄様と一緒にお出かけできるなんて、らぴすはとっても嬉しいです」


 俺は笑顔を見せると、らぴすの頭を撫で撫でる。

 うーん、やっぱり相手がらぴすだと、性的な気持ちというよりもほんわかとした気持ちになってしまう。


「らぴすは、どこか出かけたいところはあるか? 何か食べたいとか、買い物とかでもいいよ。欲しいものがあったら、しとりお姉ちゃんや母さん達に内緒でお兄ちゃんがこっそり買ってやるから、遠慮せずに言うんだぞ。なーに、お金なら心配するな。こう見えてもお兄ちゃんは、妹のらぴすを甘やかすためにいっぱい稼いでるんだ。ははは!」

「もー、兄様ったら、そんな調子の良い事を言って。お金の管理をしてくれているのはカノン義姉様なんですからね。お小遣いを無駄遣いしちゃったら、カノン義姉様に怒られますよ?」

「大丈夫大丈夫。それにらぴすのために使うお金が無駄遣いなわけがないだろ?」


 それに使った分はまた稼げばいいのよ。

 なーに、兄様の仕事のスケジュールの間隔が10分から5分になるだけだ。っていうのは笑えない冗談だけど、中学生のらぴすがそんな法外な金額がかかるお願いをするとは思えないしな。

 らぴすが急に「兄様、私、1人暮らししたいから、都内の一等地に立ってるマンション欲しいです」なんて言ったら流石に俺も困るけど、らぴすに限ってそれはないだろ。


「兄様……それなら私、お家が欲しいです」

「ふぁっ!?」


 嘘だろ、らぴす!? いや、待て……最近の中学生はませてるっていうしな。さっき会ったふらんちゃんだって大人びてるし、ふらんちゃんなら「あくあ様、ふらんにマンション買ってください〜」とかって甘えてきそうだし、マンションの1棟や2棟を持つのが最近の小中学生の間でブームなのかもしれない。

 って、そんなわけあるか!! 俺は自分で自分にツッコミを入れる。

 しかし家か……。やっぱりセキュリティがしっかりしてる方がいいな。それならやっぱり戸建てよりマンションだ。できれば24時間対応でコンシェルジュと警備員が常駐してて、俺の家の近くで、他の住民とのトラブルを避ける事を考えたら一棟買いが理想か。ヤベェな。流石に小遣いの範囲じゃないぞ。阿古さんにお願いして深夜まで仕事入れまくってもらうか、えみりに怪しいバイトを紹介してもらうか……。


「カノン義姉様から頂いた兄様のぬいぐるみを箱に入れてたんですけど、今日スバルちゃんとみやこちゃんからぬいぐるみを入れるお家があるって聞いて、それで見に行こうかなって」


 そっちかー!! らぴすがませてなくてよかったと俺は胸を撫で下ろす。


「でも、ぬいぐるみのお家っていくらくらいするんだろう……。それなりにサイズがあるから、高いのかな? 兄様、あまり無理しなくていいですからね」

「大丈夫。さっきまでマンションを一棟買いするかどうかどうかで悩んでたから、それに比べたらへーきヘーき」

「マンションを一棟買い!? 兄様、そういう事はちゃんとカノン義姉様に相談してるんですか!? 勝手に買ったら、カノン義姉様が泡を吹いて倒れちゃいますよ!?」

「はは」


 俺はらぴすの頭を優しく撫でる。

 ああ見えてカノンは肝が据わってるから、多少の事では驚かないと思う。

 等身大フィギュアの事とかカノンに相談した時も流石にびっくりするかなと思ったけど、自分から積極的に意見を出してたくらいだしな。気がついたらなぜかプロジェクトのリーダーになってるし……。まさか、俺の等身大フィギュアが自宅に来たりしないよな……? 流石にそれは怖いからやめてくれと、みんなに念を押してお願いしておこう。

 今思えば、嫁達にこれはやめてくれというのは今回が初めてかもしれない。


「それじゃあ行くか」

「はい、兄様」


 俺はらぴすをバイクの後ろに乗せて藤百貨店に向かう。

 一応、俺の個人的なスポンサーだし、こういう時にちゃんと利用しとかないとな。

 藤百貨店に到着した俺達は、外商には行かずに普通に店舗内をうろつく。


「あ、あくあ様だ」

「本当に藤でお買い物してるんだ……」

「何買うんだろ」

「隣にいるのはらぴすちゃんだよね。聖クラの白セーラー可愛すぎでしょ」

「私も聖クラの白セーラー憧れたなあ。メアリーと聖クラは幼稚園から高等部までガチで制服可愛いんだよね」

「え? もしかして全女子が憧れるお兄ちゃんとお買い物デートってやつですか!?」

「なんだってぇー!?」

「私もあくあ様みたいなお兄ちゃんとお買い物デートができる妹になりたかったです。一人っ子だけど……」

「いいなー」

「すぐに掲示板で報告よ! あくあ様がまた何かやらかしてます。っと……送信!」


 しめしめ。何を話してるかまではわからないけど、みんな俺たちの事をチラチラ見ているな。完全に俺の思惑通りだ。

 はっきり言って普通に買い物するだけなら、外商の方が静かに買い物ができる。しかし、俺が実際に店舗を利用する事で、ちゃんと俺が藤を利用しているという事をアピールする方が、藤にとっても俺にとってもメリットが大きい。

 少なからずこれで藤の売り上げが上がれば藤もウハウハだし、それで藤が俺との契約を続行してくれたら俺もウハウハだ。

 いつの日か、らぴすにマンションを一棟買いできるように、俺もお小遣いを貯めておかなきゃいけないからな。ははは!


「おっ、らぴす。化粧品とか売ってるけど、らぴすはそういうの買ったりしないのか?」

「兄様、中学生にデパコスは早すぎます。こういうのは大人になって、自分でお金を稼いでる自立をした大人なお姉さんが買うんですよ。ほら、周りを見てもそんな感じのお姉さんばかりでしょ?」


 おー、確かに。

 周りを見ると確かにやたらとキリッとしたお姉さんが多い気がする。


「ねぇ、聞いた?」

「自立した大人のお姉さんだって」

「さすがはらぴすちゃん。見る目があるわ」

「そんなこと言ってても、さっきまであくあ様を見てだらしない顔をしてたけどね」

「私もらぴすちゃんみたいな妹が欲しい。お姉ちゃんの事を褒めて甘やかして欲しいよぉ」


 うーん、でも、らぴすは事務所でお掃除の手伝いとかしてた時もお小遣いを出してたし、その頃からちゃんと自分で稼いでるんだから十分に自立してると思うけどな。それにお小遣いを切り崩して買うなら、好きなのを買えばいいと思う。

 まぁ、でもここら辺はしとりお姉ちゃんとか母さんとかが使ってそうな感じのブランドだし、中学生のらぴすにはまだ早いか。化粧品がだめだとすると香水……コロールのミスコロールとかも可愛くて女の子らしい匂いがするけど、これは結やえみりみたいなお姉さんの方が似合いそうな匂いだし、中学生のらぴすにはまだ早いか。


「中学生ならプチプラで十分ですよ。もし、兄様の子供に女の子が生まれても、そうやって簡単に甘やかしちゃだめですからね」

「わ、わかってるって」


 とはいえ、せっかくだし何か買ってあげたいと思うのも兄心ってものだ。

 俺は通り道にあった可愛いリボンがついたボトルの香水を手に取る。


「これとか、可愛くない?」

「あっ、可愛いです」


 って、よく見たら39800円だって!? さすがは藤だ。値段が全く可愛くない。

 とはいえ、質がいいものは高いものだ。実際、香水は成分や濃度によってだいぶお値段が変わるらしい。

 もちろん買えなくはないが、この値段だとらぴすが遠慮しちゃいそうだな。


「何かお探しですか?」

「あっ、はい」


 藤の店員さんがにっこりとした笑顔で出てくる。

 あっ、この人、前に生放送でお世話になった人だ。


「お久しぶりです。朝番組をハシゴした時はお世話になりました」

「あら……。私の事を覚えていてくださったんですね。ふふふ、流石はあくあ様」


 あれ? 何か今、背筋がゾクリとしたような。俺の気のせいか。

 こんな落ち着いたお姉さんがやばい人なわけがないよな。きっと俺の気のせいだ。


「実はらぴす、中学生の妹に何か買ってあげたくて」

「そういう事でしたら、是非とも協力させてください」


 それにしても、黒いタイトスカートに黒タイツ、黒い手袋に白衣のモノトーンコーデか。もう6月が終わるというのに、お姉さんは暑くないのかな? 俺はポニーテールからのぞくうなじをガン見する。

 やはり夏はいい。暑くなると女の子は薄着になるし、うなじや腋が無謀になるからな。


「それでしたら、こちらはどうでしょう? 中学生には人気のブランドでロールオンタイプの香水になっています。持ち運びにも便利で、外でも気軽に使えるので学校やプライベートでお出かけするの時にも、気軽に持って行けますよ。そうですね。私は調香師の資格も持っているのですが、お客様だとこのあたりの香りがおすすめですね」


 お姉さんは10種類以上ある香水のスティックから、3本くらいおすすめの香りをピックアップしてくれた。


「へー、香りの種類も色々あるんだ。らぴす、どれか気に入ったのはあるか?」

「え、えっと、このフレッシュフローラルブーケの香りとか好きかもです」


 おー、確かにいいな。少女っぽいフレッシュでジューシーな香りがする。


「それがトップノートの香りで、ミドルノートだとフローラルな香りになります」


 へー、こんな感じで変化するんだ。少し背伸びをした感じの華やかな香りがする。


「そしてラストノートはバニラやアンバーが入ってて、大人の女性らしい、ドキッとした香りになるんですよ」


 本当だ。甘いムスクな香りがする。大人のお姉さんって感じの香りだ。

 って、これ。2750円!? 藤で売ってる香水、値段の上下が激しすぎだろ……。


「よし、じゃあこれにします! って、これでいいんだよな?」

「はい。ありがとうございます。兄様」

「かしこまりました。すぐにお包みいたしますので、少々お待ちくださいね。あっ、よかったら、この辺とか聖……んんっ! ご親戚の雪白えみり様におすすめですよ」


 えっろ……!

 なんだこの香水。脳みそに深くくる女の子の匂いがしゅる……。

 よしっ、これも買おう。


「お姉さん、これもこっそりお願いします」

「わかりました。あ、雪白えみり様のご住所でしたら登録してますので、こっそり私の方からギフトとして発送しておきましょうか?」

「よろしくお願いします!!」


 いやあ、気が利くなあ。助かるよ。これだから藤はいいんだ。

 俺はお姉さんが商品を準備してくれるまでの間、色々な匂いを嗅ぐ。

 コロールの香水と専属契約してるから、他の香水とか使った事ないんだよな。

 意外とメンズの香水もワンパかと思ったら色々あるのか。

 このキリリとした感じの香水は慎太郎に似合いそう。こっちのちょっと甘い中性的な香りはとあだな。天我先輩は、意外とこういうワイルドな感じの匂いが似合いそうな気がする。

 せっかくだし3人にも買っていくか。喜んでくれるだろ。


「ふふっ、兄様ったらすごく楽しそう。きっと皆さん、兄様の選んだ香水なら喜んでくれると思いますよ」

「ああ!」


 俺はらぴすと手を繋ぐと香水の置いてあった化粧品フロアを通り過ぎていく。


「お姉さん! 私もさっきらぴすちゃんが買った香水と同じ香水お願いします! 中学生の妹にプレゼントしたいんで!!」

「店員さん、さっきあくあ様が嗅いでた匂いの香水ってどれですか!? 私もえみり様みたいな美人の匂いになりたいです!」

「あくあ君が、マユシン君に買った香水ください!!」

「私はとあちゃんの!!」

「天我! 天我! 天我!」


 ん? なんか化粧品フロアの方が騒がしいな。

 後ろを振り返ると、さっきまで俺たちがいたところが戦場みたいになっていた。

 やべぇ。少しタイミングが遅れてたら商品を買えなかったかもな。よかったよかった。


「そういえばらぴすは夏の水着はもう買ったか?」

「えっと、まだですけど……」

「それならついでにそれも買いに行こう!」


 俺はらぴすを連れて婦人フロアに設置された特設コーナーの水着売り場に向かう。


「いらっしゃいませー……って、あくあ様!?」

「あくあ様だって!?」

「今なら水着を試着して合法的にあくあ様にアピールできるのでは!?」

「おい、やめろ! 掲示板でもまだあくあ様に声をかけられた事がある女性が出てこないし、そういうのを目撃した情報もないんだ。ああ見えてあくあ様は周囲ががっつくとシャイになるから、加減を間違えるな!」

「わー、このヒモみたいな危ない水着いいなあ」

「おい、そこ、やめろ! そんなの買うのは捗るだけだ!!」


 おっ、紐みたいな水着を手に持ってるお姉さんがいる。

 その赤いやつ、うちの結も同じの持ってますよ。ぐへへ!

 おっと、今はらぴすとのショッピング中だ。邪な事を考えるのはやめよう。


「らぴすはどういうのが好きなんだ?」

「うーん、そうですね。やっぱりワンピースタイプとかでしょうか?」


 ワンピースタイプね……。おっ、このマリンタイプの白セーラー風水着とか聖クラリスの制服っぽくて似合いそう。


「あっ、それ可愛いですね。その紺色の切り替えになってるやつも良さそうです」

「じゃあ、両方着てみなよ」


 俺は周りのお客さんをチラチラと観察しながら、らぴすが着替えるのを待つ。

 おっ、あのお姉さんが手に持ってた黒い水着、琴乃が着たら似合いそうだな。

 着れるのは来年になるだろうけど、今から先行投資で買っておくか!?


「兄様、兄様」

「おっ、着替え終わったのか。らぴす」


 俺は試着室から顔だけ出したラピスに近づく。


「どう、ですか?」

「おっふ……」


 ちょっと待って、スカートの部分の生地が薄ら透けてて下のレオタード部分の生地が見えてるのヤバくない? 兄様、びっくりしすぎてドキッとしたぞ!!


「らぴす、流石にこれはダメだ」

「兄様、私、これにします」


 そんな!? らぴすが兄様の言う事を聞いてくれないだと!?


「ほ、ほら、せっかくだし、もう一着の方も試着してみないか?」

「……わかりました。せっかくだし、そっちも着てみます」


 よしよし、もう少しで兄様がビーチやプールに来てる男全員の目ん玉を、片っ端から潰さなきゃいけないところだったぜ。

 しかし……個人的に鑑賞するのは悪くないな。よしっ、さっきの水着を買うなら、プライベートビーチがあるところに行くか。そうすれば見るのは兄様だけだから、あの水着でも問題ない。


「兄様、着替えました」

「おう」


 俺は再び試着室から顔を出したらぴすに近づく。


「兄様、どうですか?」

「おっふ」


 自分で選んでおいてなんだけど、ふ・ざ・け・る・な!!

 レオタードの水着の生地が上下で違ってて、上が白セーラー風、下がスク水だと!?

 こんな1枚で2度美味しい水着、あってたまるか!!


「よし、両方買おう! しかーし! これを買う条件として、兄様以外の男には絶対に見せない事。いいな?」

「はい。大丈夫です。らぴすも兄様以外の男性の前で水着を着たりする事なんてありませんし、そもそも水着を着た女性がたくさんいる夏の海に行こうとする変わった男性なんて、兄様くらいしかいませんしね」


 えっ? そうなの?

 だからヘブンズソードの撮影の合間に夏の海でバーベキューしようとした時、とあ達がそれって大丈夫なのかって顔をしてたのか……。そういうの早く教えてもらいたかったぜ。

 普通に考えたら気がつきそうだけど、意外とそういうのって気がつかないんだよなあ……。


「他にも同じシリーズで色々あるんだな。せっかくだし、ミルクディッパー全員でお揃いのにするか。みやこちゃんを入れて6枚買おう」

「あ、みやこちゃんは大きいから、このビキニタイプのセパレートになってるやつがいいと思います」


 えっ、みやこちゃんがこんなの着ていいのか!?

 そういう葛藤もあったが、みやこちゃんの水着姿を見る事への願望には勝てなかった。

 俺は秒で購入を決断する。


「あれ? 兄様、ミルクディッパー用なのに、経費じゃなくていいんですか?」

「プロデューサーの俺が個人的に鑑賞するだけだからな。最近、そういうの厳しいんだよ」


 俺は会計を済ませると商品を包んでもらってる間に店に出る。

 その間に他の買い物も済ませたかったからだ。


「ほら、せっかく婦人服フロアに来たし、らぴすの夏服も買ってやるよ」

「もー。兄様はそう言ってらぴすを甘やかしすぎです!」


 俺はらぴすの目の前で人差し指を左右に振る。


「らぴす、妹を甘やかすのは兄の特権だ。それともらぴすは俺からのプレゼントが嫌か?」

「……兄様はずるいです。そんな事を言われたら、らぴすも嫌だって言えないじゃないですか」


 頬をピンク色に染めたらぴすが恥ずかしそうなそぶりで俺からそっと視線を外す。


「ふぁ〜〜〜っ!」

「これが本物の兄……ですか」

「一也お兄様とかいう次元じゃねぇぞ!」

「これは沙雪が量産されて当然ですわ。小雛ゆかりが病むのも仕方なし」

「今の顔、兄じゃなくてもう男でしょ」

「私がらぴすちゃんなら、兄様、好き好き大好きって言っちゃうかも」

「ふぅ、らぴすちゃんが沙雪じゃなくて本当に良かった」

「ね。リアルでゆうおにが始まるかと思った」

「司先生は私達の莉奈を返して!」

「それ半年前から言うてますやん」

「掲示板に、急げ。祭りはもう始まってるぞ!! って書きこんどこ」


 俺はらぴすの手を引いてフロアの中を見て回る。

 うーん、らぴすに似合いそうでサイズがありそうなところってあるかな?

 あっ、あそことかいいんじゃないか。


「いらっしゃいませ、何かお探しですか?」

「妹に夏服を買ってあげたくて。ここって妹のらぴすに合うサイズの服ってありますか?」

「はい、うちは小さいサイズから大きいサイズまで用意してますし、キッズラインもありますからサイズの幅が豊富なんですよ」


 へー、そうなんだ。そういうのいいな。

 気に入った服があってもサイズがないって事はなさそうだ。


「えーっと、夏服だとこの辺が最近はよく売れてますね」

「あっ、このワンピ! カノン義姉様がチャリティーのクラシックコンサートで着てたのにそっくり! わー、大人のお姉さんっぽい感じがしてすごく素敵」


 おっ、いいじゃん。

 これなら旅行とかでちょっと高いホテルに行っても、食事する時の店選びのTPOのマナーに引っかからないな。

 それに言われてみたら、確かにカノンが着てたのによく似てる気がする。


「ふふっ、多分だけど、カノン様が着ていたのはこれのマタニティ用じゃないかしら」

「あっ、あっ、そうです!」

「やっぱり。私も新聞で見て、あっ、これうちのだって思ったんですよね。これ、マタニティ用はお腹部分がゆったりしてるんですよ」


 へーーー。そうなんだ。初めて知った。

 だから俺の足が自然と吸い寄せられたのか。


「じゃあ、カノンとお揃いのにする?」

「うーん、どうしよう。でも、さっきのも可愛かったし一度着てみます」


 らぴすは試着室で2枚の服を順番に着替える。

 カノンと同じワンピの方が大人っぽくて、らぴすが選んだのはより少女っぽい。

 背伸びをしたいなら前者で、らぴすらしいのが後者って感じか。

 これは悩むな。らぴすもどっちにしょうかと頭を悩ませる。

 こういう時の答えは一つだ。


「じゃあ、両方買うか!」

「兄様……。流石にそういうのはどうかと……」


 俺は再び、らぴすの目の前で人差し指を左右に振る。


「らぴすがお揃いのを着たらカノンは絶対に喜ぶだろ? だから、こっちはおまけ。それにさっきも言ったけど、心配しなくてもこう見えて兄様は金だけはあるんだ」


 俺は店員さんの前でカッコよくマジックテープの財布の音をバリバリさせる。

 みんな知っての通り、マジックテープの財布はバリバリが利かなくなったら替え時だ。

 だからこそあえて俺はバリバリのマジックテープの財布を使用している。

 手入れをして長く使う革財布より、ある意味では何度も買い替えが必要なこっちの方が贅沢品と言えるだろう。


「きゃー、あくあ様かっこいいー!」

「だろ? 男はな、一周回ってマジックテープの財布をバリバリさせてるくらいが一番かっこいいんだ。って、俺の尊敬する天我先輩が言ってました。そういうわけで、店員のお姉さん、支払いはJSBブラックでお願いします」


 JAPAN SEIAQUA BANK。俺みたいな未成年でも持てるクレジットカードの会社だ。

 審査なしで簡単に通る聞いた事のない会社だけど、俺とえみりは主にここのクレジットカードを使ってる。

 何よりも俺と同じAQUAって文字が入ってるのがいいね。


「ありがとうございました」


 俺とらぴすは店員さんにお礼を言うと店を出る。


「カノン様と同じワンピください!! 掲示板民に嗜みとお揃いマウント取れるぞヒャッホイ!」

「えー。私は流石にあの美少女達と同じのを着る自信はないから、この似たやつで」

「急げ! 早くしないと商品が売り切れるぞ!!」

「香水フロアと水着フロアはもう大変なことになってるって!」

「いまだ、駆け込め!!」

「藤百貨店と書いて戦場と読む。去年の今頃を思い出すなあ」

「店長! 上からすぐヘルプが来るそうです!! それまで耐えてください!!」

「おい、私が本部を脅……掛け合って今日一日の給料を倍、いや、3倍にするから、休んでる奴らでこれそうな奴らは全員叩き起こせ!! どうせうちの店員なんて、暇すぎて自宅でのほほんとヘブンズソードかベリルアンドベリルの録画見てるんだろ!!」

「きゃー! 店長かっこいい!!」


 いい買い物ができたな。

 店長にこっそりとお願いして、カノンとお揃いのワンピを購入してヴィクトリア様の住んでいるところに発送してもらったけど、喜んでもらえるといいなと思った。

 恥ずかしいから本人には言えないけど、一度でいいからカノンと双子コーデしてみたいってヴィクトリア様が言ってたのを覚えている。

 あの人、甘えたい時だけめちゃくちゃ素直になるんだよな。ま、常時素直じゃないどこかの大怪獣ゆかりゴンよりかはマシか。


「っと、らぴす、次はどこに行く?」

「……これ以上、兄様に任せてたら色々理由をつけてらぴすに何でも買っちゃいそうだから、さっさとおもちゃ売り場に行きましょう」


 らぴすが俺の事をジト目で見つめる。

 てへっ、バレちゃってたか。

 さてと、そろそろ目的のぬいぐるみハウスを買いに行くか。

 俺はらぴすと手を繋いでおもちゃ売り場へと向かう。


「わっ、これとか良さそうです」

「ん、じゃあ、それにするか」


 本来の目的でもあったぬいぐるみハウスの購入は簡単に決まった。

 俺は荷物を抱えて一階に向かう。流石にこれを全部持っては帰れそうにないな。

 そんな事を考えてると、らぴすが俺の袖をグイグイと引っ張る。


「兄様、喉が渇きませんか?」

「そうだな。ジュースでも飲むか」


 俺はらぴすと一緒にジューススタンドでレモネードを飲む。

 うめー。やっぱ暑くなってくるとソーダやレモネードはうまいな。

 疲れた体に染み渡るぜ。


「兄様、今日はありがとうございました」

「ああ、俺も今日は楽しかったよ。らぴす」


 荷物が多い事もあって俺はらぴすをタクシーに乗せて見送る。

 さーてと、デパ地下言って嫁達に何か買って帰りますかあ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] きゃー! 店長ステキー! [気になる点] 調香師。
[一言] 最近知性の低下が禿しいが大丈夫か(゜д゜) それとも嫁の痴性が移ったか
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