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白銀あくあ、ようやく始まった俺の異世界ハーレム生活!?

 この世界の事について真剣に考えた俺は、色々な人に相談して色々な事を決めた。

 その結果、俺は今、すごく戸惑っている。


「う、嘘だろ……」


 周りを歩く女性たちが、チラチラと俺の方へと視線を送ってくる。

 以前からそういう視線はあったけど、今日は少しだけ勝手が違う。

 みんな視線を送る時、髪を耳にかけるふりをしたりして俺に色のついたリストバンドを見せつけてくる。

 この色がついたリストバンドは政府と俺の間で取り決めた新しい施策の一つだ。


「俺と交際したい女の子がこんなにもいるってマジ!?」


 俺と交際をしたい女性は手首に専用のリストバンドをつける事。それが国の政策として議会の満場一致で決まった。それはいい。それはいいんだけど、明らかに子供抱いているお母さんが手首にリストバンドをつけているのはどうなんだ!?

 後々トラブルにならないように、結婚もしくは恋人がいる場合は、相手の許可を取る事が定められているけど、それって相手も同意してるって事!?

 嘘だろ……。


「あっ、あくあしゃまだ。かっこいー」

「あくあおにーちゃん、リリのおにーちゃんになって?」

「えっとえっと、おにーたんにりすとばんどみせなきゃ」


 おい! 流石に幼稚園児3人組が全員リストバンドつけてるのはまずいだろ!!

 しかも見た感じ、3人とも明らかに今年入園したばっかじゃねぇか!!

 こら、無知なフリをして、お兄ちゃんにリストバンドを見せつけるんじゃない!!

 一応、羽生総理と揚羽さんあたりに、これはまずいんじゃないかとメールで言っておく。


「い、一旦落ち着こう」


 まだ慌てる時間じゃない。俺は一旦、ガムでも噛んで落ち着くためにコンビニの中に入る。


「いらっしゃいませー」


 おっふ。

 レジに立っていた女子大生が笑顔でリストバンドを見せつけてくる。

 恥ずかしさから咄嗟に視線を逸らすと、スーツを着た社会人のお姉さん達と視線が合う。もちろん社会人のお姉さん達も手首にリストバンドをつけている。

 周りをよく見ると清涼飲料水を買ってる足とうなじが綺麗なポニーテールの女子高生も、ツインテールで甘々な感じの女子中学生も、ランドセルを背負った女子小学生も、人妻風店長も、みーんな手首にリストバンドをつけていた。

 ぽ、ぽんぽん痛くなってきたのでおトイレ行ってきまーす。


「はぁ……」


 俺はコンビニのトイレで項垂れる。

 男としては嬉しい。嬉しいんだけどさ! こう、急にぐわっと来られると、引いちゃうわけじゃないけど身構えちゃうんだよなぁ。

 もうちょっと慎みを持ってほしいとは言わないけど、急に360度全方向から迫るようにアピールされると、俺も逆に声をかけづらいよ!!


「ん?」


 気のせいかもしれないが、外に気配を感じる。

 先日の事件があった事もあり、俺はトイレの中で身構えた。

 それこそ前回と違って俺自身が狙われる事だって十分にある。


「あくあ君、大丈夫?」


 あっ、トイレに篭った俺を心配して、店員さんが声をかけにきてくれたのか。

 ホッとした俺は警戒を解く。


「ちょっとで良いから扉開けてくれないかな?」


 違う意味で俺自身がロックオンされていた。


「流石にそれはダメよ」

「あっ」

「気持ちはわかるけど、節度とルールは守らなきゃ」

「う」

「トイレの前に立って逃げ道を塞ぐのは、ちょーっと見逃せないかな」

「ご、ごめんなさーい!」


 あっ、トイレの前から気配が消えた。

 一体、何があったんだろう?

 俺がトイレから出ると、近くに居たスーツを着たお姉さん達と目が合った。


「あ、どうも」


 お姉さん達は俺に対してニコリと微笑む。

 こういうのでいいんだよ!! いくら俺でも、流石にトイレの前に立たれるのは怖かったぞ!!

 お姉さん達も手首にリストバンドをつけてたけど、他の女性と違ってあからさまにアピールはしてこなかった。


「さすがは白銀あくあ親衛隊……」

「やはり掲示板の有志達で結成された親衛隊のお姉様方ですか」

「ずっとあくあ様の周りで陰から治安を守り続けてるだけの事はある」


 うーん、さっきトイレの前でボソボソと喋る声が聞こえてたけど、もしかしてお姉さん達が俺を助けてくれたのだろうか?

 俺はお姉さん達に声をかける。


「も、もしかして、さっき助けてくれました?」

「あ……は、はい」

「もしかして出過ぎた真似をしてしまったでしょうか?」

「すみません。ご迷惑でしたよね」


 俺は両手と首を左右に振る。


「いや、その、そういうわけじゃなくて、普通に助かりました。ありがとうございます」


 俺はピンチを助けてくれたお姉さん達に頭を下げる。

 お姉さん達が助けてくれたおかげで、俺は危機を脱する事ができた。

 最悪、誰かに電話をして助けてもらうしかなかったからな。

 流石にさっきの行動は俺も普通にビビった。


「よかったら何かお礼させてください」

「じゃあ……サインがもらえたら嬉しいかなって、あっ、もちろん面倒でしたらその別にいいんで……」

「できたら一緒に写真とか……すみません! 調子に乗りすぎちゃいました」

「あの、別にもう見つめてくれるだけで十分ですので」

「えっ? 本当にそんなのでいいの?」

「「「えっ!?」」」


 もっとドギツイお願いをされるのかと思ったら、ものすごく健気なお願いだった。


「せっかくだし、ハグくらいする?」

「はい!」

「ぜひ!」

「お願いします!!」


 俺はお姉さん達とハグをする。

 もちろんサインも書いたし写真も一緒に撮った。


「ありがとね」

「こちらこそ!」

「ありがとうございました!!」

「一生の宝にします!!」


 俺はコンビニでガムを購入すると駅に向かう。

 本当はもっとサービスしてもよかったけど、流石に学校に遅れるのはちょっとね。

 駅に向かう道中もすれ違う女性達が俺に向かってリストバンドを見せてアピールしてくる。

 あかん。これはダメだ。もうちょいオブラートなシステムにしよう。流石にあからさますぎる。

 これで俺が声かけたら、周りのみんなから、どう思われるか……。流石の俺も、そういう羞恥プレイはちょっと耐えられそうにない。


「おっふ……」


 電車に乗ると車両に居た全員が手首にリストバンドをつけていた。

 えーと……一旦、そう、一旦、冷静になって考えよう。

 俺は吊り革を掴むと、目の前に座ったお姉さんを見つめる。

 あれ? 確かこのOLのお姉さんって、俺がこの世界で初めて電車に乗った時にも目の前に居た人じゃ……。


「あ、あの……」


 俺がお姉さんの事をジッと見つめていると、あの時と同じようにお姉さんは持っていたお財布を差し出した。

 相変わらずお財布がすごい厚みだ。お姉さんが一体何の仕事をしているのか、俺はそっちの方が気になるよ。

 よく見ると財布を差し出した時にお姉さんも手首にリストバンドをつけている。

 も、もうだめだ。


「す、すみません。ここで降ります!!」


 俺は目的地に到着すると電車から飛び出た。

 はぁはぁ、はぁはぁ……学校に行くだけなのにキツすぎる。

 正直、俺も男だ。気持ち的には嬉しい!!

 でもな。俺にだって学校があるんだよ!!


「あ、あくあ君、おはよー」

「あくあ先輩、おはようございます」

「おはよう、白銀君」


 俺は通学路を見て、真顔で固まる。

 乙女咲の生徒達は流石にわざとらしい事はしてこなかったけど、俺が見る限り全員が手首にリストバンドをつけていた。

 嘘だろ……。みんな普通に友達のように話しかけてくれていたのに、本当はみんな俺の事を意識してたって事!? くっそー、それならもっと色々と……って、そうじゃない!!

 俺は流石に恥ずかしくて頭を抱える。

 いや、自分がモテてるって事はわかってるんだよ。わかってるけど、知り合いがそう思ってるってのが可視化されるのって思ってたよりも結構恥ずかしいんだな。

 いつかはそれも慣れる日が来るのだろうけど、モテすぎるのも流石に限度があるって事を知った。


「いや、待てよ」


 俺は今日一番のキリッとしたキメ顔になる。

 も、ももももしかして、これってワンチャン、 アヤナとかもリストバンドつけてたりするんじゃね!?

 やべぇ! それならこんなところで油売ってる場合じゃねぇ!!

 俺は猛ダッシュで学校に向かう。


「おはようございます!!」

「おはよー」

「あくあ君、なんで敬語なの?」

「また何か面白いこと考えてる?」


 俺は前のめりで教室に入ると、みんなの手首を確認する。

 嘘だろ……。クラスメイト全員がリストバンドをつけてやがる。

 いや、って事はだ! これはワンチャンあるんじゃね!?

 俺はアヤナを見つけると、手元をガン見する。

 くっ、この位置からじゃ手首が見えねえ!!

 俺は気配を消すと、アヤナの座席にスニークをしながら近づいていく。


「ふふっ、あくあ君がまたおかしいことしてる。かわいー」

「あくあ君って本当に見てて飽きないよね。がんばれー」

「わかる。かっこいいけど、こういうちょっとバカっぽいところが可愛いんだよね」


 俺はスーッとアヤナに近づくと、手首を覗き込むように視線を向ける。


「あくあ……何してるの?」

「いや、なんでもない……です」


 手首に何もつけてないアヤナを見て俺はガックリと肩を落とす。

 こうなると急に恥ずかしくなってくる。

 いや、それよりも、アヤナは俺に対してそういうつもりがないって事!?

 それじゃあ、今までのアレは俺の自惚れだったって事なのか!? 

 しなしなになった俺は茫然自失の状態で自分の椅子に着席する。


「ほげー」

「あくあ、次、数学だけど国語の教科書出てるよ」

「お嬢様、あの旦那様の事ですから、どうせまたしょうもない事を考えてたんですよ」

「大丈夫かな。あくあ、保健室行く?」

「カノンさん、あくあならどーせお昼ごはん食べればすぐに元気になるよ」

「そういえば今日のカレーは、あくあの好きなカツカレーの日だぞ」


 シクシクシクシク。

 カノンと慎太郎の優しさが心に染みる。2人とも、本当にありがとな。

 とあは意外と俺に対して辛口だし、どこかのペゴニアさんなんて確実に俺の事を舐めている。


「あくあ君、本当に大丈夫? 辛かったら言ってね」

「クレアさん……ありがとう!」


 クレアさんは優しいなーって、あ、あれ……? クレアさんも手首にリストバンドをつけてないだと!?

 嘘だろ。クレアさんは俺に気があると思ってたのに、これも俺が自惚れていただけって事!?

 俺が固まっていると、教室の中に杉田先生が入ってくる。


「みんな、もうチャイムは鳴ってるから席つけよー」

 

 杉田先生もつけてないだってぇぇぇえええええ!?

 夢に見ていた担任の先生との禁断の恋は無理って事!?

 俺はあまりの絶望に、口を開いたまま出席の点呼を取る。


「あくあ、あくあ……」

「うぇっ!?」


 カノンが俺の体を揺さぶる。

 気がついたら学校が終わってた。

 どうしよう。今日、自分が何をしていたのか全く覚えてない。

 それくらいショックだったのだろう。

 俺はすぐに羽生総理達に、このシステムだと自惚れた俺の自尊心が崩壊しそうなので何か違うやり方を考えてほしいとお願いのメールを送った。

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