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白銀あくあ、女子会? いいえ、ここは地獄のカーニバルです。

 変装した俺は、くくりちゃんやラズリーが参加する小雛先輩主催のじょ、女子? 会とやらが行われる会場へと向かった。


「確かこっちだったな……」


 俺は移動の途中で近くにあるショーウィンドウの窓ガラスで自分の姿を確認する。


『ふーん、そういうことなら私達に任せてよ』

『大丈夫大丈夫、私達に任せてくれたら完璧に仕上げてあげるから』

『はぁはぁ、はぁはぁ、天井のシミを数えてる間に終わるから。ね?』


 いつものようにペゴニアさんに変装をお願いしたら、なぜか残ってたクラスの女子達に囲まれてしまった。

 それどころか……。


『大丈夫、あくあ。僕がちゃんと綺麗にしてあげるからね』


 とあに壁ドンされた俺は服をひん剥かれて、着せ替え人形にさせられてしまう。


『ふふっ、あくあ、似合ってるよ』

『に、似合ってるんじゃないか』


 もちろんカノンや慎太郎が助けてくれるわけもなく、とあとペゴニアさん、クラスメイトの女子達に弄ばれる俺の姿を見て笑ってた。

 くっ……まさか同級生の女子達に辱められるなんて……! でも、こういうプレイだと思えば悪くない!! むしろ良い!! 俺は白銀あくあ、こまけーことは気にしない男だ!!


「あ、あの人、すごいね」

「ああいうファッション、高身長の美人さんがすると迫力がちげーわ」

「ふわぁ、お姉様と呼ばせてください!」

「メアリーかな? 聖クラリスかな?」

「わたくし、あのお姉様と姉妹の契りを交わしたいですわ」


 周囲の視線が痛い。

 流石に巻き髪ツインテールと、ゴスロリ調だけどちゃんとしたヴィクトリア期のピンクのドレスにセットでロンググローブはやりすぎだろ。

 俺は知り合いに出会わないように、目立たずにコソコソとしながら目的地へと向かう。


「あ、あくあくあくあ君!?」


 偶然にも外ロケの準備をしていた楓と遭遇する。

 俺は人差し指を立てると静かにするようにお願いした。


「今、俺は重要な任務の最中なんだ。内密にな」

「う、うん。わかった」


 楓が単純でよかった。こんなので言いくるめられるのは楓とカノンくらいだろう。

 できればずっとそのままの楓でいて欲しい。俺がそう楓に伝えると、何故か楓は「やっぱり、あくあ君だけがこのままの私を愛してくれるんだ」と、斜め上の解釈をする。ま、まぁ、喜んでるみたいだし、いっか。

 後ろに居た鬼塚アナが俺を見て固まっていたが、できれば見なかった事にしておいて欲しい。

 俺だって恥ずかしいけど、とあから、女子会が開催される場所に行くならコレくらいの戦闘力がある服装じゃないと弾き返されると聞いたからだ。

 楓を言い聞かせてその場を後にした俺は目的地に向かって歩き出す。

 もうこれ以上、他の知り合いには会わないようにしないと!


「こ、後輩!?」


 そう決断した途端に天我先輩と遭遇した。なんで楓といい、君たちは俺の行く道をうろうろしてるんだい?

 あと、結構バレてないはずなのに、二人ともすぐに気が付きすぎだろ!

 え? 180超えてる美人は目立つから知り合いならすぐわかる? あー、そうですか……。


「天我先輩……。先輩だけには言うけど、今、俺は大事なミッションの途中なんだ」

「ミッション!?」


 天我先輩がそういうのが好きな人で本当に良かった。


「後輩、わ、我に協力できる事はないか!?」


 前のめりになった天我先輩が俺の両肩を掴む。

 うーん、どうしようかな……。


「わかりました。天我先輩、今から俺の目的地と画像データを送るので、対象となる人物が目的地に近づいたら、俺に連絡してください」

「わかった! 張り込みだな! 任せておけ!!」


 天我先輩は、そう言うと目的地とは逆方向に向かって急いで走っていった。

 だ、大丈夫かなぁ。迷子にならなきゃいいけど、とりあえずとあや慎太郎、春香さんにマネージャーのみゆりさんにもメッセージを送っとこ。

 俺はコソコソするのをやめて、堂々と早歩きで目的に向かう。

 どうせコソコソしててもバレるなら、さっさと目的地についたほうがいいと思ったからだ。


「あくあ様!?」

「えみり!?」


 目的地についた俺は、お店の前で自分と似たようなドレス姿のえみりと遭遇する。

 金髪のウイッグに、ブラックメインに白の差し色が使われたドレスがよく似合ってた。

 いやいやいや、ここまで来るともう中世とかファンタジー系のアニメに出てくる本物お姫様じゃん!


「その衣装どうしたの?」

「メアリーお婆ちゃんに借りてきました」


 ガチで本物だったわ……。


「一応確認するけど……いや、しますが、目的はやはり女子会ですか?」

「ええ、ジョシカイという名前の地獄のカーニバルを見物しにきました」


 俺はお店の前でえみりと固く握手を結ぶ。

 良かった。俺一人じゃない。俺には味方がいるんだと心強い気持ちになった。

 ん? 携帯にメッセージ? こんな忙しい時に誰だろう?


【天我アキラ:大変だ! 張り込みに必要な牛乳とあんぱんが売り切れてた!!】


 知らんがな!!

 ていうか、天我先輩が逆方向に向かって走って行った理由がソレ!?


「それではみなさんが来られる前に参りましょう。えみり……いえ、えみりお姉様」

「ええ、そうですわね。オホホ!」


 俺達は手を繋いで店の中に入る。

 あれ? コレってもしかして……。


「「デートでは?」」


 ん?


「えみりお姉様、何か言いましたか?」

「いいえ、何も。それよりも、貴女こそ、何か言いまして?」


 俺は首を左右に振る。

 どうやら俺の気のせいだったらしい。


「あ、すみません。本日、ご予約で埋まっていまして……」


 ええ!? ここって予約しないと入れないの!?

 そんなの聞いてないぞ!


「予約していた淑女の嗜み会です」


 えみり予約してたの!? ていうか、淑女の嗜み会って何!?


「あ、はい。ご予約承ってます。お席の方にご案内しますね」


 俺たちは店員さんに案内されて奥へと足を踏み入れる。

 おー、すごい。西洋風の作りで、いかにも女の子が好きそうなお姫様がいそうな感じの室内だ。

 なるほどね。だからこういう格好で行けってことか。最初は普通にみんなの趣味かと思って疑ってたけど、ごめんな。って、あれ? 俺、みんなに小雛先輩が予約したお店の名前言ってないような……。ま、いっか!


「小雛ゆかりさんはどちらの席をご予約してますか?」

「え? あー……その、それは守秘義務がありまして……」


 まぁ、普通に考えてそうだよな。

 俺はえみりと顔を見合わせると、お姉さんの手首を二人で掴んで近くの個室の中へと押し込む。


「あ、あの……」


 阿吽の呼吸を見せた俺とえみりは、店員のお姉さんを個室内で壁ドンした。

 店員のお姉さんは顔を赤くすると、俺たちの顔を交互に見つめる。


「お姉さん、悪いけど少しだけ協力してくれるかな?」

「えっ? こ、この声って、あくあくあくあ様!?」


 俺がお姉さんの耳元で甘く囁くと、えみりはすかさずお姉さんの顎をクイッともちあげる。


「大丈夫。何かあったら私達が責任を取りますから」

「えっ、えみり様!? って、二人が責任ンンンンン!?」


 コレは人類の存亡……じゃなくて、このお店の存亡が掛かった大事なミッションだ。

 何せ今から女子会を開くのは、あの小雛ゆかりだという事を忘れては行けない。

 小雛先輩が関わっている以上、ワンチャン、店が爆発炎上する事だってあり得ると俺は思ってる。

 そして、何かあった時、それを止められるのはこの世界でただ一人、小雛先輩の全てを把握し尽くしてるこの俺だけだ!!


「そういうわけだから協力してもらえますか? 少しでいいから、ね?」

「少しでいいからぁ!?」


 俺がお姉さんの顔をじっと見つめると、今度は反対側からえみりが囁く。


「そうそう、お姉さん、先っちょだけ。ほんの先っちょだけでいいから」

「先っちょおおおおおおお!?」


 ん? 心なしか、如何わしい感じになってるのは俺の気のせいか?

 うん、気のせいだな。


「は、はひ、不束者ですが、よろしくお願いします」


 どうやら俺達の説得がお姉さんに届いたみたいだ。

 俺達二人はお姉さんの配慮で、小雛先輩達が予約した席がよく見れる位置に案内してもらう。

 さてと、あとは小雛先輩達が到着するのを待つだけだ。

 俺とえみりは一般客を装うために、食べ物と飲み物を注文する。


「お嬢様ランチのお紅茶セットが二つですね」

「「はーい」」

「かしこまりました。それでは少々お待ちください」


 注文を終えると俺の携帯が再び鳴る。今度はなんだ?


【天我アキラ:・-・--】


 は? 一瞬だけ俺の顔が【・ー・】みたいなシンプルな顔になった。


「あくあ様、どうかしましたか?」

「えっと、天我先輩がメッセージを送ってきたんですけど……」


 俺はえみりに天我先輩から送られてきたメッセージの画面を見せる。


「ああ、これはテ連送ですね」

「テレンソウ? オトギリソウの親戚みたいなもんですか?」

「いやいや、草じゃなくてテ連送です。日本の海軍が使ってるモールス信号ですよ」


 なるほど……。って、そういうのが好きそうな天我先輩はともかく、えみりはなんでそんな事を知ってるんだろう。俺は頭をゆっくりと傾ける。


「姐さんが詳しくて……」

「なるほどね。で、テ連送って何?」

「敵機発見、つまりターゲットが来たという事だと思います」


 俺はすかさず視線を通路の方へと向ける。

 するとそこに、全く変装してない小雛先輩が現れた。

 って、普通に普段着じゃねぇか! 全くあの人はもう!!


「あくあ様!」


 えみりの言葉でハッとした俺は小雛先輩から視線を逸らす。

 あっぶねー。ちょっと見ただけなのに、あの人、普通にこっちにガン飛ばして来たぞ。

 さっきまで少しのほほんとしていた俺は、自分自身にここは戦場なんだという事を言い聞かせる。


「あくあ様……小雛先輩、ずっとこっちを見てます」

「目を合わせちゃダメだ。絡まれるぞ!」


 一瞬たりとも気を抜けない緊迫した状況に、詰め物をした胸の部分と、編み上げの装飾で隠したファスナーが当たっている背中の部分が汗ばむ。

 えみりはバッグから手鏡を取り出すと、身だしなみをチェックするフリをして、鏡越しに斜め後方にいる小雛先輩をチェックする。えみり……やるな!


「どうやら、ターゲットはこちらへの興味を失ったみたいです」

「ふぅ……」


 頼む。みんな、早く女子会に来てくれ。

 小雛先輩は待ち時間が暇なのか、周囲をキョロキョロと見渡している。

 このままなら一般客である俺らにダル絡みしてくる可能性が出てきた。

 そのプレッシャーの中で、俺とえみりの精神力と体力がゴリゴリと削られていく。

 頼む。俺はそう願いつつテーブルに置いてある携帯へと視線を向ける。

 その願いが通じたのか、外にいる天我先輩から新しいメッセージが送られてきたようだ。


【天我アキラ:こちらコードネーム天我、コードネーム白銀、聞こえているか?】


 もしかしたら監視役の天我先輩に何かあったのかもしれない。そう思った俺はすぐに返信する。


【白銀あくあ:こちらコードネーム白銀、どうかしたか?】


 他の女子会メンバーが到着したのかもしれないと、俺はワクワクした気持ちで天我先輩にメッセージを返す。

 するとすぐに返信のメッセージを受信した。


【天我アキラ:なんでもない。呼んでみただけだ!】


 今はそういうのいらないってぇ!!

 一瞬だけ、他の女子会メンバーが来たのかと思ってホッとしたのに、俺とえみりをぬか喜びをさせるのをやめてくれませんか?

 天我先輩は続け様にメッセージを送ってくる。


【天我先輩:スマホのバッテリーが切れそうだ。コンビニで充電器を買ってくる!】


 くっ……! あんぱんや牛乳をコンビニに買いに行った時に……くっ!

 ダメだ。今の俺には天我先輩に突っ込む気力がない。


「あくあ様あくあ様、くくりのやつが来ました」

「何!?」


 あ、本当だ。

 くくりちゃんはどうやら着替えてきたらしい。

 普段着できた女子力マイナスのなんとか先輩と違って、くくりちゃんは地雷系ヤンデレメンヘラ女子が好きそうなピンクと黒の服装を着ている。

 俺とえみりは息を殺して二人の会話に聞き耳を立てた。


「ど……どうも」

「急に呼んで悪かったわね。まぁ、座りなさいよ」


 大丈夫か?

 二人の邂逅に俺は胸をヤキモキさせる。


「……」

「……」


 おーーーーーーーい!

 なんでそこで無言になるんだよ!!

 小雛先輩、あなたが先輩なんだからもっと会話を広げてくださいよ。

 レストランの中がさっきよりも重苦しくなる。

 すると俺のスマホに新しいメッセージが送られてきた。

 天我先輩か? どうせまたしょうもない事だろう。俺は半目になりながらメッセージアプリを開く。


【小雛ゆかり:ねぇ……高校生って何話せばいいんだっけ?】


 お前かよ!!

 心の中のツッコミとはいえ、思わず小雛先輩の事をお前と呼んでしまった。

 俺は何度も携帯のメッセージにペコペコと頭を下げる。隣にいた外国人がどうしたんだろうという顔をしていたが、これが日本のよくある光景だ。もはや観光名所みたいなものだから、一日も早く携帯電話に頭を下げる日本人に慣れてほしい。


【白銀あくあ:普通に学校生活に慣れたって聞いたらよくないですか?】


 我ながらいいアドバイスだと思う。俺はすぐにメッセージを返す。

 俺からのメッセージを受け取った小雛先輩は、すぐに携帯を見て送られてきた内容を確認する。


「どう? 学校は慣れた?」

「はい」

「……」

「……」


 嘘だろ!? なんでそこで会話が途切れるんだよ!!

 小雛先輩はスマホの画面をタップすると、俺に新たなメッセージを送ってくる。


【小雛ゆかり:全然続かないじゃない。バカ!】


 いやいやいや、俺、全く悪くないですよね!?


【小雛ゆかり:別のやつに聞く】


 あぁ、また新たな被害者が……。誰だか知らないけどなもなも。


「あくあ様、あくあ様」


 ん? えみり、どうかした?

 えみりは俺に自分のスマホの画面を見せる。


【小雛ゆかり:高校生の女子って何話せばいい?】


 よりによって、聞いたのそこかよ!

 えみりはスマホをタップすると、小雛先輩にメッセージを返す。

 一体、どんなアドバイスをしたんだろう。


「友達できた?」

「いえ……ま、まだ」

「……」

「……」


 くっ! 俺とえみりはダブルで頭を抱える。

 いや、さっきのくくりちゃんの言葉を思い出すんだ、あくあ。

 まだって事は、まだ作るつもりがあるという事だ!

 それなら、お前がここで挫けてどうする。

 でも、この空気感だけはどうしようもないので、早く他の誰かに来てほしいと願う。

 天我先輩からのメッセージはまだか!

 俺はスマホの画面を食い入るように見つめる。

 すると天我先輩から新たなメッセージを着信した。


【天我アキラ:不審人物発見! 不審人物発見!! 見る限りに怪しい人物を発見したぞ!!】


 天我先輩……それ、鏡に映った自分とかじゃないですよね?

 さっきも五月がくるのにやたらと暑そうなハードボイルドな格好してたし、後輩としてとても不安になります。


「あくあ様、本当に怪しげな人が来ました」


 俺は通路の方へと視線を向ける。

 すると帽子にサングラス、それにマスクをつけたいかにもな人が入ってきた。

 その人物は店員さんに案内されて小雛先輩とくくりちゃんのいるテーブルへと向かう。


「か、カチコミか!」


 何かあった時の事を想定して、俺とえみりは身構える。


「ど、どうも、司圭です」

「あ……小雛ゆかりです」

「す、皇くくりです」


 司先生!? 嘘だろ!? 年末歌合戦の時に見た先生とは身長からして違う。

 どうやら俺が見た以前の司先生は影武者だったみたいだ。

 くっ……俺の位置からだと司先生のお顔が全く見えない!

 親の顔より見慣れてる小雛先輩の顔なんてどうでもいいから、司先生のお顔を見せてくれ!!


「「「……」」」


 もう一人、誰かが来ればこの状況が好転するかもしれない。

 さっきまでそう思っていた能天気な自分を殴り飛ばしたくなった。

 何も変わらない。全く同じ状態のまま重苦しい時間だけがすぎて行く。


【天我アキラ:外に夜の帳が下りてきた。孤独に震える我。思い出すは春香の顔】


 天我先輩……こんな時に謎の暗号文を送ってこないでください。

 俺は天我先輩からのメッセージを無視する。


「あ、あくあ様。ラズ様がやってきましたよ!」


 おお! 頼むぞラズリー! 配信で見せているいつものお前ならこの状況を打破できるはずだ!!


「フハハハハ、下民ども。我がきてやったぞ!」


 ラズリー?

 俺は首を傾ける。

 すると俺の携帯に天我先輩からの新着メッセージが届いた。


【天我アキラ:すまない。後輩の妹に我の存在がバレてしまった】


 は? どういう事?

 天我先輩から続けてメッセージが届く。


【天我アキラ:どうやら我が到着するより早くに来ていたみたいだ。そのせいで挙動不審だった我の存在がバレてしまったらしい。だからそのお詫びとして我がとっておきの挨拶を彼女に伝授した。それと、後輩の事は黙っているから安心して欲しい】


 もはや突っ込む気力も起きない。

 俺は無言でえみりにスマホを見せる。

 するとえみりも俺と同じくらいゲンナリとした顔をした。


「下民? 誰のこと……?」

「私が下民……?」


 小雛先輩!? くくりちゃん様!?

 二人の圧にラズリーが小さくなる。

 すみませんすみません。その子、まだ日本語覚えたてだから、下民って言葉の意味が絶対にわかってないんですよ!


「ふひっ、生のラズ様きゃわわ」


 司先生、見てないで止めてくださいよ!!

 ていうか、先生ってそんな感じの人なんですか!?


「あ、あ、あ……あの、そこら辺に生えてる雑草のラズリーです」


 ラズリーーーーーーーーー!

 小さくなったラズリーが座席に座る。


「だ、大丈夫かな?」

「小雛先輩は通常営業として、意外とくくりはああいうのは怒ってない気がする。多分、びっくりしただけじゃないかな」


 うん、心の狭い小雛先輩はともかくとして、くくりちゃんは優しいから別に怒ってないと思うんだよな。

 ただ……さっきの発言がネットでバレたら、間違いなくラズリーは炎上するので、ここで見聞きした人達は心の中にしまっておいて欲しい。悪いのはうちの天我先輩なんです。


「「「「……」」」」


 おい、嘘だろ!?

 小雛先輩、なんで今日に限って借りてきた猫みたいに静かになってるんだ。

 いつも俺にやってるみたいにグイグイ行けよ!

 そう思っていたら、俺のスマホがメッセージを受信する。


【小雛ゆかり:どうしよう。つい、いつもの癖であんたにやってるみたいに圧かけちゃった……】


 くっ! それならいつもみたいに気にせずガンガン行けよ! それが俺とアヤナの憧れた小雛ゆかりだろ!!

 ていうか、弱ってる小雛先輩、普通にかわいいな! こんな時に限って、俺にそういう部分を見せないでくださいよ!! もっとこう二人きりの時にですね……いや、今はそれどころじゃない。

 ん? 通知? 俺はスマホの通知画面を開く。



 ラズリー・アウイン・ノーゼライト

 HELP ME! リスナーさん、たしゅけて!!



 あかーん! 早くなんとかしないと!!

 俺はすかさず小雛先輩にメッセージを返す。


【白銀あくあ:とりあえず食事を注文しましょう! そこからです!!】


 小雛先輩がすぐにそのメッセージを確認する。


「と、とりあえずお腹空いたでしょ。今日は私の奢りだから好きなの頼みなさい!」


 素直な小雛先輩が可愛くてテーブルをドンドンと叩きたくなる。

 どうせなら、いつもそれくらい素直でいてくださいよ!

 悶える俺を横目に、のちにぼっち四天王と呼ばれる、小雛ゆかり、司圭、皇くくり、ラズリー・アウイン・ノーゼライトの四人による地獄の女子会(カーニバル)が幕を切って落とされた。

Twitterアカウントです。作品に関すること呟いたり投票したりしてます。


https://mobile.twitter.com/yuuritohoney

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― 新着の感想 ―
[良い点] 予想通り・・・いや、予想以上の  大  惨  事  !
[一言] △地獄のカーニバル ○地獄の黙示録(全員黙ってるという意味で
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