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小雛ゆかり、止めて引く。

『逃げ遅れた人はいませんか!?』

『声が出せない人は、なんでもいいので音を出してください!!』


 えみりちゃんが演じる紗枝と、アヤナちゃんが演じる玲奈の二人が一般市民の避難を誘導する。

 その際に武装集団の一部とかちあう。繰り広げられる銃撃戦を私はジッと見つめる。

 えみりちゃんのアクションシーンはなかなかのものだ。スターズウォーでも良かったと聞いてるし、雪白美洲やあくあが上手なのだからそうだろうなと予測していた。

 一方でアヤナちゃんのアクションシーンはまだ改善の余地がある。世界を見据えるなら、私もアヤナちゃんもここは改善しなきゃいけないところだ。


『お姉ちゃん!』


 銃弾のなくなった紗枝が武装集団の一人と組み合う。

 そこに銃を構える玲奈。今、撃てば姉の紗枝を巻き込んでしまう。

 それがわかっているから彼女は引き金を引けなかった。


『玲奈! 撃ちなさい!』

『お姉ちゃん……わかった!』


 玲奈は意を決して、ここしかないというタイミングでピストルの引き金を引く。


『ぐっ……』


 眉間を撃ち抜かれた武装集団の一人が倒れる。

 やったー! 私は玲奈の活躍に喜ぶ。


『お姉ちゃん!』

『玲奈、よくやったわ。さぁ、みんなを避難させましょう。私達、警察の役目は一般市民の命を守る事なのだから!』

『うん!!』


 いいわー。この前、公園で猫と喧嘩してたら、私に職質してきた警察の二人組は見習いなさいよね!!

 本気で猫と喧嘩する大人なんていないって、ここにいるでしょ!! そんな事より、あくなんとかってやつの事を逮捕しなさいよ。歩く猥褻罪かなんかで!!


『おい、あそこだ!』

『あ……』


 仲間との通信が途絶えた事で武装集団の一部が紗枝達のところへと駆けつける。

 一転して再びピンチに陥る紗枝と玲奈。それを助けたのは瞳役を演じる玖珂レイラ率いるお庭番の3人だ。


『二人とも、後は私達に任せて!』

『瞳さん』

『瞳おねーさん!』


 まぁ、この3人のアクションシーンは見応えがあるし華があるわね。3人ともこれで食ってけるレベルのアクションだし、なんなら世界のアクションスター玖珂レイラのアクションは間違いなく日本が誇る最高のアクションだ。


『紗枝、この間に私達も』

『うん!』


 二人は安全を確保しつつ一般市民をビルの外へと誘導する。

 ここでシーンが切り替わると、聳え立つ高層ビル、テレビ日本の本社ビルが映し出された。


『きゃあっ!』


 軽い爆発と飛散するガラス窓。

 外はビルや周囲の建物から避難する多くの人達と、現場に駆けつけてくる緊急車両が入り乱れていた。

 はは、このシーンのためにテレビ日本は本社ビルを爆破するんだからすごい。さすがはドラマ一本一本を本気で作る会社だけはある。


『くっ……』

『大入道!』


 敵の銃撃を受けた大入道は腕を手で押さえる。

 こっちもこっちでピンチだ。


『こうなったら……!』


 希美を演じる雪白美洲は柱の影から飛び出ると、次の柱の影へと華麗なアクションで移動する。

 武装集団を自分の方へと引きつける作戦なのだろう。

 その作戦が功を奏す。大入道は片手を負傷しつつも、一人一人を的確に撃ち抜いて処理をしていく。

 この巨体にバズーカは見応えがあるシーンだったけど、この巨体でこういう小さい銃を使うシーンも悪くないわね。あの楓の父親だけあって、筋肉もゴリゴリだし見栄えがする。


『なんだ、あれは……』


 ここで形成逆転かと思いきや、武装集団の一人がパワードスーツみたいなものを装着して現れた。

 2mは超えているであろう大入道より大きい。パワードスーツを着用した人物が目出し帽を外すと、そこに現れたのは賀茂橋一至だ。

 まさかのスキンヘッド対決である。スキンヘッドのイケオジが好きな女子は、タイプの違うスキンヘッドのイケオジ二人に間違い無くここで気絶してるであろう。そんな気がした。


『ぐわあっ!』

『大入道!』


 軽々しく投げ飛ばされた大入道に希美が駆け寄る。

 さすがに万事休すか。誰しもがそう思った瞬間、天井から全身黒タイツの男が現れた。

 190cmはあるであろうその男は、パワードスーツを着た賀茂橋一至と互角の戦闘を繰り広げる。

 長い手足を活かしたかっこいいアクションシーン。ふふん、最初は岩成ニコのコピーだったけど、オリジナリティが出てきて良くなったじゃないの。

 男は賀茂橋一至をパワードスーツをつけたままの状態で背負うと、そのまま投げ飛ばして柱に激突させる。

 その衝撃で完全にパワードスーツは機能を停止して、賀茂橋一至は意識を手放した。


『相変わらずここは空気が不味いな。早く帰って土いじりがしでぇ』


 目出し帽を脱いだ天我君は窓の外へと視線を向ける。

 するとそこに戦闘用のヘリが現れた。


『嘘だろ……』

『そんな』


 大入道と希美はここまでかという顔をした。

 旋回した戦闘用のヘリは、窓ガラス越しに3人に対して機関銃を向ける。

 そのヘリを操縦しているのは石蕗宏昌だ。


『悪く思うなよ』


 石蕗宏昌はトリガーに指をかけた。

 その瞬間、ヘリの計器が一斉に乱れる。


『なっ、なんだ!?』


 銃撃を喰らったわけでもないのに制御を失ったヘリが錐揉み状態で落下していく。

 それを近くのビルの中から眺めるコウ君こと、とあちゃんの姿が映し出された。

 コウ君の目の前には電子制御をハッキングする古い機械が置かれている。


『冴島さん、これでこの前の借りは返しておくよ』


 リタイアして農家をやってる天我君もそうだけど、コウ君も実は裏組織に関係する人間だったという事らしい。

 ま、BERYLのメンバーを総動員してて、活躍の機会がないなんてありえないよね。これは司先生によるファンサ脚本だと思う。

 ここでシーンが切り替わると、リョウと薫の追走によって最上階に追い詰められる武装集団の姿が映し出される。


『もう、諦めるんだ!』

『リーシェさんを解放しなさい!』


 追い詰められた武装集団のボスが人質になったリーシェのこめかみに銃口を当てる。


『お前達の方こそ銃を捨てろ!』


 リョウは薫と顔を見合わせると足元に銃を置く。

 薫も手に持っていた警棒みたいな武器を置くと、両手を上げたまま武装集団の方へと一歩を踏み出した。


『ほら、武器なら置いたわよ。だから、リーシェさんを解放しなさい』

『待て、動くな!』


 それでも私が演じる薫は一歩前に踏み出す。


『くっ!』


 武装勢力のボスは薫の圧に気圧されたのか、リーシェのこめかみに当てていた銃口を私の方に向ける。


『来るなと言っている!!』


 放たれた銃弾の一発が私の頬を掠めて、まとめていた髪のゴムを引き千切る。

 傷口に滲んだ血が頬を伝う。ふぁさりと大きく広がった私の髪で、ほんの一瞬だけリョウの姿が相手から消えた。


『ぐわっ!』

『うわあっ!』


 その一瞬を狙ってリョウの放った銃弾が取り巻きの武装集団の命を奪っていく。

 今だ! そう思ったのはリーシェも同じだ。


『っ!?』


 リーシェは武装集団のボスの腕に噛み付く。

 その痛みで一瞬だけ拘束が緩むと、リーシェは薫に走って抱きついた。

 もちろん、走ってる妊婦のシーンなんて撮れないから、ここも従姉妹の子が代わりに演じている。


『くそっ!』


 向けられる銃口、それに勘づいた薫がリーシェを抱えたまま横に転がる。

 薫の後ろに居たリョウが武装集団のボスと向き合う。

 同時に放たれた銃弾がスローモーションになる。

 リョウの放った弾丸が、武装組織のボスが放った銃弾を弾く。


『ぐわあっ!』


 リョウのピストルから放たれた二発目の銃弾によって肩を撃たれた武装集団のボスが仰向けに倒れる。


『観念しろ……』

『いや、まだだ。我々のミッションが失敗したその時は……』


 遠くにミサイルを搭載した戦闘機の影が映る。

 どうやら直接、ミサイル攻撃で空港に到着したジーナ王女を殺害するつもりらしい。

 日本海側から侵入した戦闘機は北陸地方を抜け、新宿を通過する経路で羽田空港へと来ようとしていた。

 シーンが切り替わると、部屋の中から窓の外を見つめる総理の姿が映し出される。


『総理、戦闘機がこちらに向かっています! 退避してください!』


 秘書役を務める阿古っちが総理に退避をするように呼びかける。


『まだ空港内には多くの国民が残っているのに、この私に逃げろって? 私が避難するのは、国民全員の安全が確保できた時だけだ。さぁ、私の事は気にせずに君は部下達と他の議員を連れて避難しなさい。そしてもしも、この私に何かがあった時、君がこの国を率いていくんだ』


 総理は秘書役の阿古っちを諭して先に逃げるように促した。

 一人、控え室に残った羽生総理は、ウィスキーをショットグラスに注ぐ。

 そこに一人の女性がやってくる。


『総理、勤務時間中にお酒とはどういう事ですか?』

『……相変わらず、君は真面目だなあ』


 黒蝶揚羽さんが務める野党の党首は、テーブルを挟んで総理の目の前にあるソファに腰掛ける。

 そんな彼女にウィスキーの入った別のショットグラスを差し出す。


『最後までお付き合いいたします。総理』

『……ふふっ、いいね。君と一緒なら悪くない最後だ』


 二人はウィスキーの入ったショットグラスをカチンと鳴らす。

 このシーン、総理だけ出ると次の選挙でフェアじゃない可能性を考慮して、野党を代表して黒蝶揚羽さんも出演する事になったと聞いた。実際の理由はどうか知らないけどね。

 ここでまたシーンが切り替わる。


『きくり様、お逃げください!!』


 別室にいたきくり様は周りの言葉に優しげな笑みだけを返す。

 いい演技ね。やんわりと否定しつつ、強者としての余裕も見せている。やるじゃない。

 次々とシーンが切り替わっていく。

 割れた窓ガラスから空を見上げるお庭番の三姉妹、警察の姉妹、そして大入道と希美……。


『リョウ……』

『冴島さん』


 誰一人として逃げ出す人などいない。

 みんながリョウを信じている。


『終わりだ。もう何もかも!! もちろん空港だけじゃない。証拠を隠滅するために、ここにもミサイルが落とされる!!』


 再びリョウ達のシーンに戻ってくると、仰向けになった武装集団のボスが目出し帽を外す。

 綾藤翠、世の中がまだあくあを知らない時に、初めてあくあと共演してテイク1であの演技をやり切った女優だ。そんな女優が下手な演技をするわけがない。

 間違いなく、これからの、次世代の女優陣を引っ張っていく一人だと思う。

 アヤナちゃんは大変ね。頑張れ。


『リョウ……』


 リョウは震える薫の身体をギュッと抱き締める。

 ああ、嫌になるわ。この時の感触を思い出した私の身体が勝手に反応する。


『大丈夫だ、薫。俺を信じろ』

『うん、知ってる。だからリョウを信じるよ』


 薫は少しだけリョウから体を離すとお互いに見つめ合う。

 私は無意識のうちに自分の唇を指先でなぞった。


『あんたとパートナーを組む時に思ったの。例え地獄の中で結婚式をしたとしても、あんたがいいってね』

『薫……』


 リョウの顔が薫に近づく。

 私はゆうおにの時の事を思い出した。


「気持ち悪かったらぶっ飛ばすからね」

「それじゃあ、試しに先にやっときますか」


 前にゆうおにでそういうシーンを撮る時、直前に楽屋でそんな話をした。

 この時、いいよって言ってたら、私はどうなってたんだろう。

 あいつとのこの関係が変わりそうな気がして、私はあいつの言葉をスルーした。


『な、何をしてる!?』


 本当にね。こんな時にリョウと薫の二人は何をしてるんだろう。

 リョウはそのまま迫り来る戦闘機に向かって銃口を構える。

 戦闘機は一旦通過した後に旋回して、正確な場所を確認してからミサイルを放とうとしたのだろう。

 それが仇になった。

 静かに鳴り響く銃声の音。

 リョウがピストルの引き金を引いて止める。


『バ……バカな!?』


 リョウの撃った弾丸が、飛行していた戦闘機の燃料タンクに穴を開ける。

 次の瞬間、ミサイルが発射される時のブーストの火花が着火剤となって空中で爆散した。

 はっきり言って無茶苦茶だけど、お祭りドラマならこれでいい。


『もう観念しなさい』


 リーシェの言葉に、武装集団のボスも諦める。

 シーンが切り替わると、空港で行われた本物のジーナ王女の演説が映し出された。

 その後、皇きくり役を務めるくくりちゃんと外交官役を務めるメアリー様が証人となって、羽生総理との間に新たな友好条約が結ばれる。


『ジーナ様……外の世界はどうでしたか?』

『ほんの少しだったけどすごく楽しかったわ』


 ジーナ王女は窓の外を見つめる。

 そこには飛行機を見送る二人の姿があった。


『リョウ……私の初恋の人、どうかお元気で』


 リーシェことジーナ王女は、淡く実りきってはいなかった恋心を封印する。


『ねぇ。リーシェさんからジーナ様の専属護衛にならないかって誘われた話、本当に断って良かったの?』

『ああ』


 少し前の回想に戻る。

 リーシェ役を演じるカノンさんはリョウに誘いを断られた後、自らを偽っていた事を母国語で二人への謝罪を口にした。

 それに対してリョウもまた、彼女の母国語でこう呟く。


『俺だってそうさ。いつだって自分を偽って生きている。だから、本物の君が誰であれ、俺にとって君は唯の一人のリーシェだよ』

『冴島さん……』


 薫はわかってなかったけど、リョウはどこかのタイミングで彼女が本物のジーナ王女だと気がついていたようだ。ていうか、こいつ普通に発音が流暢になっててムカつく! くっ、ただでさえかっこいいのに、これ以上かっこよくなるな。もっとバカになれ、バカ!!


『そんなこと言って、本当は後悔してるんじゃないの?』

『はは、そうかもな。でも、俺にはお前一人で手一杯だよ』


 リョウは薫の頭をポンポンと叩くと、笑顔を見せる。それに対して薫もまた笑顔を見せる。

 二人の笑顔で映像が止まると、そのままのアングルで引いていく。

 それと同時にEDのイントロが流れる。


【コンクリート都会の無機質なビルの隙間で俺は今日も生きている。一時の現実逃避で自分を誤魔化していつだって孤独を感じていた。he's scar and her scar and someone's scarこの生に理由があるのなら。he's regret and her regret and someone's regret誰か教えてくれ】


 脚本


 司圭


【Bet pride and lifetimeどうしようもない思いを抱えて。Bet pride and lifetime孤独な夜に誰かと手を重ねる。Get out of the status quoそうやって自分を誤魔化してきた。Get out of the status quoいつかこの悪夢から抜け出せるかな】


 主演


 冴島リョウ/白銀あくあ

 町野薫/小雛ゆかり


【ネオンライト都会の華やかさの裏で泣いている君がいた。この華やかな街の片隅で毎日自分をすり減らして生きている。he's scar and her scar and someone's scarこの命に理由があるのなら。he's regret and her regret and someone's regret今がその時だろ】


 出演


 上野紗枝/雪白えみり

 上野玲奈/月街アヤナ

 麻生瞳/玖珂レイラ

 一文字希美/雪白美洲

 大入道/内海隼人


【Bet pride and lifetimeどうにもないもどかしさを抱えて。Bet pride and lifetime孤独な夜に一人で空を見上げる。Get out of the status quoそうやって自分を偽ってきた。Get out of the status quoいつかこの悪夢から抜け出せるかな】


 ゲスト出演


 ただのリーシェ/白銀カノン

 町野幸秀/黛慎太郎

 農家の男/天我アキラ

 コウ/猫山とあ

 お庭番の三姉妹/小早川優希、淡島千霧

 ジーナ王女の影武者/ナタリア・ローゼンエスタ


 武装集団のボス/綾藤翠

 パワードスーツを着た兵士/賀茂橋一至

 ヘリを操縦する兵士/石蕗宏昌


 国営放送のアナウンサー/森川楓

 コウ君のお姉さん/桐花琴乃

 受付嬢/本郷弘子、白龍アイコ

 総理の秘書/天鳥阿古

 スターズの外交官/白銀メアリー


 皇きくり/皇くくり

 黒蝶議員/黒蝶揚羽

 羽生総理/羽生治世子


【Bet pride and lifetimeどうしようもない思いを抱えて。Bet pride and lifetime孤独な夜に誰かと肌を重ねる。Get out of the status quoそうやって自分を誤魔化してきた。Get out of the status quoいつかこの悪夢から抜け出せるかな】


 監督


 本郷弘子


【Bet pride and lifetime Bet pride and lifetime Get out of the status quoそうやって俺は……】


 全てが終わった。誰しもがそう思った瞬間、逃げ延びた武装集団の一部がボートに乗って国外へと逃げ出そうとする。それを誰かの銃弾が撃ち抜く。


『ぎゃあっ!』

『うぐっ……』


 生き残った武装集団の一味も眉間と心臓を撃ち抜かれて即死した。

 一体誰がやったのだろう。視聴者の誰しもがそう思った瞬間、カメラがぐるりとターンする。


『リョウ……相変わらずお前はツメが甘いな』


 町野幸秀、薫の弟を演じる黛君だ。

 死んだと見せかけて生きていたって事よね。

 幸秀は武装集団のポケットに手を突っ込むと、中から少し茶ばんだ粉が入ったパケを取り出す。


『ヘヴンズトリップ……やはり奴らがバックにいるのか』


 幸秀はパケを握り潰すと、ベージュのトレンチコートを翻してその場から立ち去る。

 ここでドラマの放送が終わった。

 最後、画面がブラックアウトすると注意書きの後に最後のテロップが映し出される。



 制作


 テレビ日本


 さらば本社ビル。ありがとう本社ビル。本社ビルよ永遠に。



 なにこれ……。

 はぁ、しょーもな。私は隣にいる阿古っちと顔を見合わせる。


「楽しかったね」

「そうね」


 いつか、阿古っちと一緒に見て笑えるようなドラマに出て見せるよ。

 前にそんな事を言った事を思い出す。学生の頃の、私にとっての淡い思い出だ。

 あくあの歌った曲の歌詞のせいか、久しぶりに過去の自分へと思いを馳せる。


「ゆかり、あの時の約束、覚えててくれてありがとね」

「阿古っち、覚えてたの……?」


 阿古っちはもちろんと頷いた。

 あーーーーー、やっぱり阿古っちの事が好き。

 でもこの好きの気持ちってなんだろう。

 この好きは友達に向ける好きでもなければ、家族に向ける好きでも、ましてや恋人に向ける好きでもない。

 いつかこのパズルを解く事ができたら、私も人を愛するって事をちゃんと理解できるようになるのかな?


「あー、お腹すいちゃった。ね? せっかくだし、ご飯食べに行かない?」

「いいわね。行こ!」


 私は阿古っちと手を繋ぐと、学生時代の時と同じように二人で笑い合って観た映画の話で盛り上がりながら古びた映画館を出た。

Twitterアカウントです。作品に関すること呟いたり投票したりしてます。


https://mobile.twitter.com/yuuritohoney


診断メーカーで新年のおみくじ作りました。

もっと色々できるの考えてたけど、これしかなかったんだよね。


https://shindanmaker.com/1191474?c=1

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― 新着の感想 ―
[良い点] >少し茶ばんだ粉が入ったパケ ビスケット!
[一言] 総理次はパワードスーツ乗って大統領してみない?(゜д゜)
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